実地指導、監査、処分の仕組み

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今回は重いテーマですね。介護保険における指導監査についてです。これは、大きく監査と指導に分かれています。それぞれ具体的に内容を見ていきましょう。あなたが気になっている実地指導については、後ほど対策方法についてもお伝えできればと思います。介護事業を営んでいれば、誰もが実施指導、監査への準備をしておくことに越したことはないですよね。さっそく見ていきましょう。

  1. 集団指導
  2. 実施指導
  3. 監査

実地指導と監査の違い

実地指導とは、介護事業者が健全に事業の運営ができているか、実際に事業者の状況を見て不備があれば、指導を施す教育的な側面があります。一方、監査は、”不正があるのではないか?”と疑惑がある法人に調査の目的で実施します。しかし、実地指導でも、あまりにも態度が悪い法人や、杜撰な運営が見受けられると監査に変更されることもあるので、万全の準備が必要です。

1:集団指導

複数の事業所を1箇所に集めて行います。制度管理の適正化を図るために、制度理解に関する指導のほか、実地指導では把握された注意喚起が必要な事項や好項例等の紹介等を実施します(年1回以上)。介護保険や、制度はなかなか専門家でも分かりづらいですよね。実際に、サービスを提供する事業所の方に、制度を噛み砕いて説明し、理解してもらうことが主旨になります。

2:実地指導

実地指導のフロー

実地指導は、運営指導と、報酬請求指導の2つの側面から行われます。運営指導は、サービスの提供内容に関するもの。報酬請求指導は、請求が適正に行われているかをチェックします。

運営指導(※抜き打ちもOK)

1つ目が、政策上の課題となっている大きな問題を起こさないための指導になります。

  1. 高齢者虐待防止
  2. 身体拘束廃止

等に基づく運営上の指導を実施すること。よくテレビでも耳にしますね。

2つ目は、一連のケアマネジメントプロセス(アセスメント → ケアプランの作成 → サービスの実行 → モニタリング → 評価 )の重要性について理解を求めるための、ヒアリングを行い、個別ケアの推進について運営上の指導を実施すること。実際の業務の記録を、第三者の目から見て、正しくサービス提供が行われているかどうかをチェックします。

報酬請求指導

不適切な報酬請求防止のために、加算と減算について重点的に指導されます。特に人員基準、申請している設備があるかどうか、過去1年の請求内容をもとに不正がないかを実際にサービス提供記録を元にチェックしていきます。こちらは報酬請求指導マニュアルに基づいて行われます。介護保険の制度で行われる以上、厳格にチェックされるポイントですね。

実地指導点検項目

原則としては、過去1年分の用意が必要です。こちらを用意して、実地指導の担当する職員に提出をします。以下居宅での事例をあげさせていただきます。

  • 運営に関する書類
  • 運営規程
  • 就業規則(各種規程)
  • 職員履歴書
  • 資格証明書等(職員の資格、経験、研修終了状況の確認書類)
  • 利用者数表(利用者数等の確認書類)
  • 勤務割表
  • 出勤簿(又はタイムカード)
  • 雇用関係書類(雇用契約書等勤務形態の確認書類)
  • 職員の健康管理関係書類(健康診断記録等)
  • 職員の研修関係書類(研修記録等)
  • 業務日誌
  • 事業所指定・変更内容等届出書
  • 契約に関する記録(利用契約書)
  • 個人情報の利用等の同意に関する記録
  • 介護予防支援業務委託契約書(介護予防支援業務の受託がある場合)
  • 重要事項説明書(利用料等一覧)
  • 苦情簿
  • 事故簿
  • 諸会議等の会議録
  • 介護給付費請求明細書(直近2ヶ月、紙ベース)
  • 給付管理票(直近2ヶ月、紙ベース)
  • 利用者宛請求書及び領収書(写)
  • 決算書等(事業ごとに会計を区分していることの確認書類)
  • 居宅介護支援における特定事業所集中減算チェックシート(事業所保存用)
  • 利用者サービスに関する書類
  • アセスメントの記録
  • 居宅サービス計画書
  • 個人別ケース記録、介護支援経過等の記録
  • その他の介護支援に係る記録(日誌等)
  • サービス担当者会議等、各種会議録
  • モニタリングの記録
  • 相談記録

※これは都道府県ごとに異なるので注意が必要です。
上記のほとんどがICT化できる情報ですね。特に上記書類は多くの事業所で、同じ内容を転記をしたりと無駄が発生し、職員に負荷がかかっている事業所も見受けられます。

3:監査

監査の流れ

監査とは

指定取り消しをうけるのがこの監査。とても重要です。よくあるのが、元職員の内部告発や、近隣の住民からの報告で監査されることがおおいです。他にも

  • 通報、苦情、相談に基づく情報
  • 国保連、地域包括センターによせられる苦情
  • 介護サービス情報の公表制度に係る報告拒否に関する情報
  • 介護給付費よう適正化システムの分析から得意傾向を示す事業所

が監査の対象になります。監査でひっかかる内容が、

  1. 不正請求
  2. 人員基準
  3. 設備基準

基本的にこの3つになりますので、健全な運営をこころがけましょう。

監査の後に

もし不備や、悪質な状況が発覚した場合以下の対応を取られることになります。

  • 改善勧告:期限を設けて改善を行います
  • 改善命令:改善勧告によって、是正が見られない場合に行います。
  • 指定の効力の全部又は一部停止:一部、または全サービスで、停止を行います
  • 指定の取り消し:取り消された場合、もう介護事業を行うことは出来なくなります

監査による取り消し理由ランキング(H.21)

  1. 介護給付費の請求に関する不正: 48件
  2. 設備及び運営に関する基準: 27件
  3. 不正の手段による指定: 21件
  4. 帳簿書類の提出命令等に従わず、又は虚偽の報告: 19件
  5. 人員基準違反: 16件
  6. 質問に対し虚偽の答弁をし、又は検査を拒んだ: 13件
  7. 介護保険法その他等に基づく命令に違反: 4件

請求に係る不正が多いですね。指定申請を取り消された法人は80以上にも及びます。

最後に

実地指導、監査を乗り切るためには、日頃から健全な事業運営を行なっていくことが重要です。実地指導が入るので、書類の準備をします。となると、管理者だけなく、職員の負担も計り知れません。そのためには、記録を電子化し、必要な資料をすぐにだせるように整理していくことが必要なのです。