あなたは、通所介護計画書の正しい書き方を知っていますか?今回は、計画書の目的から、具体的な作成の方法、家族の意見を反映させた、利用者に寄り添った計画書の記入例について紹介します。
Contents
計画書を作成する目的
家族に安心感を与えるため
介護計画書を家族へ提示、スタッフの説明によりどういうケアを提供しているのかの実際を知ることにより、利用者家族は安心感を得ることが出来ます。現状を知ることで、利用者の家族も精神的に楽になりますよね。
提供する介護の質が向上するため
実際にあった事例を紹介します。例えば、当初自力で階段を登ることができなかった利用者が、介護計画書を立て改善を繰り返すことにより、最終的に、利用者の動ける範囲が広がり、散歩を出来るようになったというケースです。このように介護計画書は既存の機能を把握し、具体的に何を改善すべきかを明確にするのです。
スタッフが効率的にケアを提供できるため
あらかじめ計画が示されているとこにより、やることが明確化されます。そのため余計な労力を使わなくて済み、介護スタッフの負担軽減につながっていくのです。また利用者にとっても、あらかじめ希望どおりのケア計画を提示されている事でサービスの内容が把握でき、安心して介護を受けることが出来るのです。
介護スタッフの研修資料になるため
利用者ごとの計画書から利用者ごとに違う介護(個別ケア)を提供することが出来ます。そのことを新人職員にマスターしてもらうことにより、介護技術を養う教材となるのです。また介護計画の立案・作成例として、更には事例検討会の材料となり、より良い介護を行う材料となるのです。
訴訟の時に証拠となるため
もし万が一、訴訟に持ち込まれた場合。計画書は、適切なケアを行っていたという唯一の証拠となります。介護計画が作成されていないという事は、適切な介護を行っていないとみなされ、ケアをしていたとしてもどのような介護を提供しているのか詳細を第三者に伝えることはできないのです。その結果、最悪の場合莫大な損害賠償を命じられることになります。
全体概要
- アセスメント
- 計画書の作成
- 実行
- モニタリング
要約すると上記を繰り返すことになります。このサイクルを繰り返すことが重要です。
ケアマネジメントサイクル:PDCAの考え方
- Goal:利用者、家族の希望をもとに、目標を決める
- Act:目標に対して、現状とのギャップをアセスメントで把握する
- Plan:ケアマネは、ケアプランを、事業所はケアプランをもとに計画を立てる
- Do:計画をもとにサービスを提供する
- Check:その結果、目標に対して利用者の改善度合いをモニタリングする
- Act:上記を受け、アセスメントを施し、目標と現状のギャップを捉えて、次の計画を作成
PDCAをただ行うだけでは意味がありません。しっかりと利用者の要望、家族の想いがあってこそのPDCAです。正しい方向に向かって改善を行えるように、目指すべき道を始めにきちんと汲み取ることが重要になってきます。
アセスメント: 利用者のニーズの把握、家族の想いの把握
利用者のニーズの把握
アセスメントは、利用者の今の状況を把握する作業になります。今どのような状態にあって、これからどこを目指していくのかを決める上で重要な作業になります。具体的には以下を把握しておけば問題ありません。(※居宅は23項目網羅が必須)
- 利用者基本情報
- 生活状況
- 利用者の被保険情報
- 現在利用しているサービスの状況
- 障害老人の日常性生活自立度
- 地方性老人の日常生活自立度
- 主訴
- 認定情報
- 課題分析理由
- 健康状態
- ADL
- IADL
- 認知
- コミュニケーション能力
- 社会との関わり
- 排尿・排便
- 褥瘡・皮膚の問題
- 航空衛生
- 食事摂取
- 問題行動
- 介護力
- 移住環境
- 特別な状況
家族の想いを汲み取る
利用者の想いは重要ですが、併せて家族にどうなってほしいのか、もし現実的に不可能であれば、家族との目的のすり合わせも必要になってきます。
計画の方向性の作り方
長期目標と短期目標の設計
計画を作る際は、短期目標だけでなく、長期目標を作ることが重要です。わかりやすく、具体的に書くことが必要ですが、職員によって質のムラも多く、質の低い計画をよく見かけます。
・悪い事例
QOLの向上:QOLの記述だけでは家族が内容をわかりませんし、漠然としていて職員もどうしていいかもわかりません。
・いい事例
自宅の近所のコンビニまで歩けるようになります。一人で料理ができるようになります。こういった形で具体度をあげて改善を目指すことが必要になります。
長期目標の事例
- 自宅周辺あたりを短時間散歩できるようにします。
- 介護職員とのコミュニケーションを図るほか近所の住民とも会話ができるようにして生きがいを
取り戻すようにします。
短期目標の事例
- 週 2 日デイサービスを利用し、足腰の筋力がつくようにします。そのために足のリハビリの為踏み台昇降運動を○分で○回できるようにします。
- なるべく福祉用具(車いす)を使わなくても歩けるようにします。そのために車いす→杖に次第
に移行できるようにします。 - レクレーション時に介護職員とコミュニケーションを取れるようにします。
- 積極的にデイサービスのレクレーションへ参加するようにします。
ICIDHの時代
昔は疾患、出来ないことをできるようにを体の機能を治す計画を作ることが推奨されていました。それがICIDHと言われており、疾患→機能障害→能力障害→社会的不利と考えらていました。しかし、現代ではWHOが提唱したICFの考え方にシフトしました。変えられないことを変えようとしても仕方ない。改善できるところを改善し、様々な活動ができること、社会的な役割を担うことを中心とした計画の立て方に変わったのです。
ICFへの転換

社会的な役割を果たすことを、1.身体機能・身体構造(生命レベル)、2.活動(生活レベル)、3.参加(人生)レベルの観点からみていくことが重視されています。こういった要素に影響を与えるものとして、環境因子(建物、福祉用具、介護者、社会制度)や、個人因子(年齢、性別、ライフスタイル、価値観)といった要素との関わりの中で見られるようになりました。
身体機能・身体構造(生命レベル)の記入例
- 立ち上がり、移動動作がぶらつかずに行えるようになる
- 10分連続で歩けるようになる
- 転倒しても、自力で起き上がれるようになる
活動(生活レベル)の記入例
- 自力で階段を登れるようになる。
- 近所の商店まで歩いて買い物にいけるようになる
- 自宅の風呂の段差を安全に乗り越えられるようになる
- 自力で履物の脱着ができるようになる
参加(人生)の記入例
- 将棋教室まで通えるようになる。
- 家事ができるようになり、妻としての役割を果たせるようになる。
- 以前いた職場に戻れるようになる。
- 近所の公園でおこなっているラジオ体操に参加できるようになる
モニタリング: 計画の達成度合いを確認する
モニタリングの目的
最も重要なのは、設定した長期・短期目標に対して達成度合いをチェックすること。現状をただ把握することが目的ではなく、目標に対してどのような状態であるかをチェックする必要があります。この時に期間の観点もあることをお忘れ無く。
ニーズは変化する
モニタリングでは、当初の目的が正しかったのかを把握する目的もあるため、初回のアセスメントで設定した内容が正しかったのかも注意しましょう。もし状況が異なっていれば、ケアプランの変更も必要になってきます。
利用者との信頼関係構築に繋がる
モニタリングを定期的に行うことによって、利用者・家族・サービス提供者との信頼関係を築くことも重要です。細かい気配りを通じて、利用者からの信頼を勝ち取り、利用者の本音を聞き出し、家族や、事業者との協業をうまく行うことによって、よりよい介護サービスの提供につながっていきます。
最後に
ケアマネジメントサイクルをしっかと回すことで、改善は行われていきます。一般の事業所では6ヶ月更新で行うのが一般的ですが、人気の事業者では3ヶ月更新しているところもあります。アセスメント→介護計画書→実行→モニタリング→アセスメントのサイクルを上手に回して、利用者によりよりサービスの提供を行いましょう。
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