今回は、通所介護事業(デイサービス)の指定申請をするまでのステップから、どんな職員が必要なのか、定員別にどれくらい儲かるのかをお伝えします。
✓ 開業までのおおまかな流れってどうなっているの?
✓ 指定申請は、どのように進めればいいの?
✓ 物件の見つけ方についてどうすればいい?
✓ 立ち上げる際に、事業運営上注意すべきポイント
上記のテーマを中心にまとめました。
Contents
STEP0:会社を設立するには?
必ず法人格であることが条件となります。法人格として下記の形態で運営されています。どの形態にしても変わらないので、株式会社、同号会社でサクッと登記してしまうことを推奨します。NPOや社会福祉法人は設立にあまりにも時間がかかりますので、事業が軌道にのってから、グループ会社として運営をすればいいでしょう。
株式会社:費用20万程度
資本金1円から始めることができ、取締役1名と手軽に設立ができます。3週間から1ヶ月もあれば、登録ができます。他の形態よりも税金が一番かかるのが株式会社です。必ずかかる費用としては、20万円(※登録免許税の15万円、定款認証費用の5万円)がかかってきます。
合同会社:費用10万程度
定款が不要なため設立費用は安く、スピードも早いです。必ずかかる費用も登録費用の6万円のみになってきます。株式会社と比べて何も変わることはありません。むしろ税金も株式会社より安いので、株式会社より認知度が低くて、怪しいと思われることくらいです。最近は同号会社も増えてきたので、認知度も高まってきています。frereを使って、法人登記をされている方も増えていますね。
NPO法人
NPO法人のメリットは、世間からの信用度が高いことです。あなたも、NPO法人と聞けば、”なにかいいことしている団代なのだろう”と想起しませんか?そういった社会的な評判だけでなく、資本金も、納付する税金も不必要なのは、メリットです。ただ残念なのは、4-5ヶ月と非常に認定までの期間がかかること、理事3名、幹事1名が必要だと人件費がかかることが挙げられますが、公益を加味して判断されるからこそ、信頼も大きく、認定までに時間がかかるのです。
社会福祉法人
特別養護老人ホームを中心として社会福祉事業を運営することが目的ですので、今回は省略します。認定までの時間もかかりハードルが高いです。
STEP1:サービスコンセプト決め
食事、入浴、機能訓練。この3つをどうするかで、選ぶ不動産も、必要になってくる準備も、採用も変わってきます。そこで、どのようなサービスを提供したいのかコンセプトを決めていきましょう。サービスコンセプト極めによって、物件選び、その他準備に大きく影響してきますのでしっかりと考えましょう。
機能訓練サービス
自立支援が重要になってきます。法改正の方針の中でも、機能訓練がしっかりとできないデイサービスは潰れてもおかしくないような方向性になっているのが事実です。その際に、機械を設置することが必要になりますが、それに適した物件を選ぶ必要がでてきます。
入浴サービス
入浴対応の有無は物件選びの前にマストで必要です!重度対応する場合は、さらにハイレベルな設備が必要になります。入浴は50単位と安くなっていますが、顧客ニーズとして入浴は多く、差別化になるので実費用対に見合わないですが、集客効果として導入しているケースは大きいです。
食事サービス
調理を行うか、行わないかで変わります。調理を行う場合、調理場がもちろん必要になります。食事は毎日するものですので、食事で利用者の満足度が変わることも多々あります。そういった差別化もあります。
STEP2:商圏を選ぶ
どこにデイサービスを建てるかは、とても重要です。どの定員数で展開するかも併せて重要ですので全体の流れの中でみていきましょう。
商圏探しの流れ
物件探しはオープンの6ヶ月前くらいにすることが一般的です。その後、2~3ヶ月かけてリフォームを行なっていきます。オープン3ヶ月前には備品の準備を締めて、指定申請を2ヶ月前に行い、1ヶ月前に各種申請を行います。
魅力ある商圏を選ぶこと
下記の3点に注意してみてみましょう
- エリア特性
- 競合
- 自社
エリア特性
エリア特性で見るべきポイントとしては、
- 高齢者の人口増減
- 高齢者の総数
- 所得層
- 採用環境
に着目する必要があります。今後高齢者が増えなければ、パイを多くの競合と奪い合うことになりますので、注意が必要です。
競合環境
- 事業所の数
- 人気のあるの事業者
- 候補物件の周辺の特徴
に着目が必要です。人気がある事業所が存在するということは、そこには利用者がいっぱいいるということです。そこでは何が人気になっているのか、そこに来ている利用者のニーズに他の形で答えることができないのか等を考えていきましょう。
自社の要素については
- コンセプトをどうしていくのか。
- 集客力を担保できるか
- 採用ができるかどうか
上記に着目します。今の時代なかなか採用が難しい状況ですので、『利用者を獲得しても、採用ができずサービス提供ができません』といった声も多くいただきます。集客できるコンセプトをもち、採用できるのかどうかも合わせて考えていきましょう。
STEP3:物件探し
実際に商圏をきめ、サービスのコンセプトも決めた上でどこに物件を決めるかはとても重要になります!
小規模で始める?大規模で始める?
初期投資の少ないのは、10人以下の小規模事業所です。しかし、今の介護保険の報酬を知っていれば10人以下のデイサービスはかなり厳しい状況にあります。10名規模のデイサイービスは、絶対に潰れていきます。いまから10人規模のデイサービスを始めるのは、ボランティアの精神で高齢者を助けていくのか、誰か得する人がいて始めさせられている可能性が高いので注意が必要です。
物件決める際の注意ポイント詳細
・事業所の契約者は法人名で行うこと。(※個人名だと受理されません)
・契約書の、使用目的が”事務所”になっていること。
物件を選ぶ際の注意点
- お散歩コースに、地域の住民とか買われる施設がある
- 働き手のアクセスのしやすい場所を選ぶ
- 近所に溜まり場となるカフェがあるどうか
- 小学校・幼稚園がそばにあるどうか
- 他の事業所は少ないかどうか
- 高齢者が多いかどうか
- 従業員が通勤しやすい場所か
- 市街化調整区域ではないか(都市計画法)
- 用途変更手続きが不要か(建築基準法)
- 自動火災報知機等の設置の要否(消防法)
- 建物が介護事業所として適合するか(条例)
- 建物、場所の許可が下りるか(介護保険法)
こういった特徴は事業所選びに大きな影響を与えます。地域とどのように関わり、その地域にあるリソースを活用できるのか。そもそもリソースがなければ活用することもできないので、上記に陳述したリソースがあるかは重要なポイントになってきます。
STEP3:物件を建てる・借りる
上記で事業所の場所をきめたら、早速物件を借りるか、改修を行い、あなたの求める環境を作っていきましょう。すでにあるデイサービスを引き継ぐ形であれば問題ないですが、今後の流れとして機能訓練型のデイサービスでなければ、事業運営は報酬的に厳しいので改修は必要になります。そのため、機能訓練特化型のデイサービスを念頭に改修をすることをおすすめします。
STEP4:施設内備品の準備
-
- パソコン
- 介護保険請求ソフト決め
- 送迎車
- プリンタ・ファックス・電話
これらがあれば最低限請求に必要な仕組みは揃えることができますが、サービス提供に当たって、机や、椅子、ベット、といった器具もちゃんと準備しましょう。
STEP5:人員基準と募集
あなたのデイの規模にあった人員を募集しましょう。採用は介護サービスの根幹なので、とても重要なポイントです。ハローワーク、求人サイト、フリーペーパー、知人の紹介や、大学に営業をかけるがありますが、最近はweb求人を使うことが一般的です。オープニングスタッフの採用のみであれば紙を利用してもまだ反響があるかもしれません。
管理者
常勤で1名が必要。資格は関係なく、生活相談員、介護職員、機能訓練指導員との兼務が可能です。
生活相談員
常勤で1名設置が必要です。生活相談員としての業務を遂行できるのは、以下の資格を持ったものになります。基本は、介護福祉士か、ケアマネが行なっているのが一般的です。
- 社会福祉士
- 精神保健福祉士
- 介護福祉士
- 社会福祉主事任用資格
- 介護支援専門員
介護職員
利用者15名までは専従1名、15名を超える場合は5名またはその端数をますごとに1名づつの増員が必要になります。特に資格は必要ありません。そのため、パートの紙媒体で募集することも多々あります。
機能訓練指導員
通所介護の単位ごとに専ら当該通所介護の提供に当たる者1名以上が必要です。
看護職員
通所介護の単位ごとにその提供を行う時間帯を通じて専従する必要はありませんが、提供時間帯を通じて事業所と密接かつ適切な連携を図るものとし、その提供に当たる者1名以上が必要です。
STEP6:申請書類の準備
指定申請に必要な書類は3つです!
- 設備基準関係
- 人員基準関係
- 運営基準関係
事業計画書の準備とともに、この時点で、別途用意しなければならないのが、損害賠償保険です。最近では、介護ソフトに損害補償請求が備え付けのものもあります。(※オプション料金なし)電話番号、ファックス番号も必要になります。
STEP7:申請書類の提出
管轄の行政(県民局等)へ申請書類を提出します。提出書類に不備等がなければ受理されます。管轄庁によって提出時期及び提出先が異なりますので、申請の際に確認しておきます。
- 通所介護契約書の作成
- 要事項説明書の作成
- 就業規則の作成
- 社内規定・マニュアルの作成
- 介護報酬請求ソフトの導入
開業後に気をつけるべきリスク
『赤字が1年続きました。』このような状況にならないためにデイサービス運営において、重視すべきポイントを先にチェックしておきましょう。ポイントは利用者の獲得、採用、離職率の高い事業所の3つです。それぞれ見てみましょう。
利用者が集まらない
デイサービスのビジネスモデル上、利用者がいなければお金を稼ぐことはできません、逆にいえば利用者がいれば安定して国からお金を回収することができるのです。利用者を獲得するには、意識したほうがいいポイントが3点あります。
ケアマネへの対応
1点目は、ケアマネージャーへの密なコミュニケーションをとることです。”忙しいから営業できていません”このような声を多くの事業所で耳にします。しかし営業をせずに利用者を増やすことはできませんね。
泥臭くあなたがケアマネージャーのもとに足を運ばなければ利用者は紹介してもらえません。まずは接触回数を増やすことから初めてみましょう。利用者獲得できているところは週に1回はコミュニケーションをとっているところが多いです。
デイサービスの特色づくり
2点目は、デイサービスの特色を作ること。例えばフィットネスができるデイサービスや、脳梗塞に対応したデイサービスなお。わかりやすい特色がなければ、ケアマネは営業を受けても、他の事業所との違いがわかりません。
他の事業所と同じなら、すでに知っている事業所に流したほうが、ケアマネも安心もできますから、あなたのデイサービスに紹介する理由がないのです。簡単な特色だと、お風呂に入れる回数が多いデイサービスも人気です。利用者からの要望が大きいからです。
無茶難題に応えられるキャパ
3点目、ケアマネジャーの無理をきくことです。難病や、性格がやっかい、重度の利用者も始めのうちは受けることです。そうやって相手の無茶を聞いてるうちに、徐々に紹介料も増えてきています。
従業員を採用できない
介護のサービスの肝はなんといっても人材です!『設備もできた、利用者もあつまった。でもサービスを提供する人員を確保できない。』笑えないですね。オープニングスタッフなら集まるだろう。と思うかもしれませんが、全国随所に上記の状況が見られています。
そこにつけこんで、人材紹介会社は30%の紹介料をせがんでくるので、採用における仕組みづくりが必要です。採用方法については、別途紹介させていただきます。
スタッフの関係性が悪化する
デイサービスは基本的に同じフロアにスタッフが一緒にいるのでストレスを感じやすい傾向にあります。訪問介護と比べても離職率は130%くらい高いです。重要になってくるのが、スタッフへのメンテナンス。
定期的なコミュニケーションや、福利厚生をしっかりと整えましょう。福利厚生に関しても、ある大手介護ソフトには、1800円の映画チケットが1200円割引になるなどのサポートをしているところもあります。面倒ではありますが、1人辞めてしまうと、続々と辞めてしまって、人員基準を割ってしまうので、緊急で職員の採用が必要だという時には、人材紹介で数百万となってしまうこともあるので、気を付けましょう。
起業に必要な資金はどれくらい?
小規模で500-1000万ほどを目安にしてください。(※3ヶ月の運転資金含めて)それ以上の定員のデイサービスになると条件が変わってきます。大きくなればなるほど運転資金も増加するためです。一概に500-1000万で足りるとは言えませんが、一つの目安にしてください。
資金調達:介護報酬ファクタリング
重要なポイントは、介護報酬は翌々月末に振り込まれるので、サービス提供から、介護報酬の振込みまでにタイムラグがある点です。
立ち上げ初期は資金に苦労をするので、ファクタリングサービスを利用するといいでしょう、翌月の初冬に振り込まれ、0.5%~2.0%の利率で対応しているのが一般的です。
資金調達:日本政策金融公庫
日本政策金融公庫とは、100%政府出資の政策金融機関です。日本政策金融公庫にもいろいろな融資制度がありますが、新たに介護事業をはじめる方は下記の制度が活用できますので、一度参考してみてはいかがでしょうか。
- 新創業融資制度
- 新規開業資金
- 女性、若者、シニア起業家資金
- 再チャレンジ支援融資
デイサービスは儲かるの?売上を徹底分析!
デイサービスは儲かるのでしょうか。報酬削減でダメージを大きくうける通所介護ですが、その実態にせまります。では定員ごとに見てみましょう。
デイーサビス収支差分

売り上げの10%前後が推移しています。300万の売上であれば30万が利益になっています。中小企業の収支差分は3%程度になっており、国としては、まだまだデイサービスは儲けすぎと考えており、報酬削減の方向で考えています。しかしここにはトラップがあり、定員規模によって利益が大きく左右されます。
定員10名 (利益400万~)
物件を借りている場合、だいたい利益は400万程度になります。これだけ大変な思いをして、400万しか稼げないのであれば、サラリーマンしている方が楽ですよね。相当なボランティア精神の持ち主か、社会的な意義を感じていなければ運営を維持するのは難しいでしょう。
定員15名(利益600万~)
だいたい1000万程度です。いわゆる上流サラリーマンと同様の給与ですね。15名定員でやるのであれば、もう少し頑張って20名で運営しても、さほど苦労は変わらないでしょう。10名のデイサービスを開いて、軌道にのってきたということで、定員を増やして15名にしている層が多いように感じます。増築にもお金がかかりますからね。
定員20名 (利益1000万~)
1000万程度。起業した甲斐があったなーと感じることができるラインでしょうか。デイサービス運営のリスクを考えても、このあたりが1つ定員の指針の区切りになります。なぜなら稼働率100%状態を常に維持できるわけではないからです。そこで最低でも20名以上の定員でのデイサービス運営をおすすめします。
高齢者は、ご病気で来れなくなってしまう方もいるので、登録は100%でも実稼働は80%の状況も考えられます。なぜか不思議ですが、1人退院される方がいると、退院される方が多発されるケースも少なくないですよね。一気に3人ぬけてしまうとそこそこのダメージを受けます。そんな時のためにも、ある程度余裕をもった運営が重要です。
定員30名 (利益1500万~)
1500万程度。30名の利用者にサービスを提供するとなると、利用者の獲得も重要になります。デイサービスとしての特色を押し出し、地域住民や、ケアマネさんに密接にやりとりし、営業をかけていく他、従業員を安定して獲得できている状況が必要になります。定員30名で運営ができていると、地元ではそこそこ名の知れた事業所になっているでしょう。一番困難になるのは、利用者獲得より、採用です。定員30名規模になるとパートだけでは運営をまかないきれなくなるので、上手に採用をする必要がでてきますね。