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介護業界におけるM&Aの傾向
売上で、4つのカテゴリに分けられる
- グループ1: 売上30億以上
- グループ2: 売上規模5-30億
- グループ3: 売上規模1-5億
- グループ4: 売上規模0-1億
売上規模30億以上の会社
売上50-100億の地域ではNo1クラスの企業になります。このグループでは、他産業からM&Aにより参入が加速しています。例えば、記憶に新しいところでいけば、外資による長谷川介護の買収。損保ジャパンによる、ワタミの介護や、メッセージの買収が見られました。その他にも、ALSOKの買収など、今後も他産業のM&Aトレンドは続いていくでしょう。この買収で損保の本気度が垣間見えたのは、売上TOP7の中でも、利益率TOP3から最も高い2社を選んでいる点。さらに効率化を進め利益率を高めていくでしょう。
他産業がM&Aすることのメリット
ずばり業務の効率化です。この介護業界では、大手企業でもアナログな側面が大きいです。そこで一般業界で業務効率が徹底されているノウハウや方針を元に、介護業界にメスを入れることで、大幅な経営改善が行えるとと共に、労働集約ビジネスである介護ビジネスのネックの人材不足問題にも寄与します。
葬儀会社からの買収
介護事業を買収するでシナジーのある会社は葬儀会社ですね。言葉を選ばず申し上げると、”死にゆく人々のリスト”を購入できるのです。かなり相性はいいですね。そういった買収案件は今後でてくるでしょう。反対に、介護会社が葬儀会社を買収する事例もでてくるかもしれません。
売上規模5億~30億までの会社
10億~30億までの企業は、2015年度の介護報酬改定により、単独資本での成長戦略を描けない状況にあります。そこで、10億以上の企業はM&Aの対象になりやすく、売上5-10億までの企業は、売る難易度が高い状況にあります。次の報酬改定でも、順当に行けば削減になるので、さらに厳しい状況になることでしょう。
最近のトレンド
そのためか、以前は自分たちでIPOを目指していた10-30億の企業でも、1-5億の買収を進めていくより、100%株式の途上で売り先を探す動きが水面下で出てきています。100%の譲渡ではないもの、一部売却による資本提携の流れが多くの企業でおきています。
売上規模1-5億までの会社
売るのが難しい案件
施設系では、状況が厳しい企業もでていきている。このグループの上位半分は売り案件として成立しますが、それ以下だとかなり厳しい状況です。というのも1施設だけでは、なかなか利益を上げていくは厳しい状況にあるのです。買い手の事業とのシナジーも生まれづらく、採用の非効率も産みやすい。自力でもう少し規模化を図る必要がありますね。
人員の育成ノウハウがない
このサイズの企業になると、ノウハウの欠如に伴う、介護サービスの質のばらつきがあります。品質の標準化が難しいステージにあり、管理が属人的なものになってしまいます。いかに優秀な管理者を採用できるかが鍵ですね。利益を上げていれば、買収対象になります。
やるならドミナント戦略
ドミナント戦略で、複数の施設を運営している方が、買い手にとっては魅力的。利益を上げやすいからです。
エリアによる採用の難易度の影響
ドミナントといえ、採用難、利用者が減っていくエリアであれば、もちろん企業価値はさがります。やはり、都心での案件は、既存施設の人材面から、シナジーを利かすこともできるのもいい点です。
売上規模0-1億までの会社
基本経営状況が厳しく、売上は上がっているものの、コスト構造が歪になっていたり、売上がそもそも立てれていない等、飲食の中小事業所のような杜撰な経営状況であるため、オーナーが売りたいとおもっていても、買い手が見つからない状況にあります。
思いを持って運営
このサイズの事業者は、”利用者をたすけたい”、”なんとかしたい”と思っている経営者が多いです。しかし、経営能力の欠如により、事業運営が厳しい事業所が多いのも事実です。毎年多くある介護事業の倒産も、多くはこの規模感の企業の中から生まれています。
他業界からみた介護業界
介護案件より、医療案件
他業界のMA担当に、案件の紹介で介護を紹介すると、しぶい反応が返ってくることが多いです。参入に積極的かといえば、疑問が残ります。介護より、医療案件は収益性が高く、より買い手にとっては魅力的に移る。損保ジャパンや、ALSOLなど、”介護業界周辺企業にまかせた”というのが、資金力のある法人の本音です。
介護周辺事業はポジティブ
葬儀や、配食、不動産、見守りといった、介護とシナジーがうまれやすそうな事業においては、以前ポジな状況も続いて居ます。逆に利益を上げている介護事業社は、周辺事業を買いにいくのも経営基盤を作る上での一手になりますね。
ファイナンス理由のM&A
売り手の背景
譲渡側がM&Aを選択する背景としては、
- 事業再生
- 後継者不在
- アーリーリタイア・リセット
と従来と同じ理由が並びますが、以前よりもファイナンスの問題が強くなってきているのを感じています。30-50代の経営者は見切りも早く、前回の報酬改定から、2018年の報酬改定で同様の報酬削減をされた場合に、経営が立ち行かなくなると考えています。そのため、次の報酬改定までに、譲渡先や、ドミナントで展開するためのパートナー探しを進めている経営者が増えています。
介護ビジネスに経営力が問われる時代
当初は介護サービスを非効率に運営していても生き残れる時代でした。介護保険制度に甘えて企業努力をしなくても生き残ることができたのです。しかし、国もいつまでも甘やかしているわけにはいきません。企業努力を経営者に求めているのです。一般業界では当たり前のように行なっている、人口動態から、施設を展開し、業務の効率化を意識した、住まいの設計から、人員のOPS設計が必要になってきているのです。
まとめ
介護業界の再編・統合の流れは良いことです。サービス提供側が、健全に業務を効率し無駄を省くことで、価値の提供先である、利用者が適切なサービスを受けられることを望んでいます。