デイサービスは儲かる!一概に、そう考えてしまうのは危険でしょう。これまでは正直デイサービスをひらけば、利用者獲得は用意にでき、経営能力がなくても簡単に売り上げが立つ時代でした。
しかし近年状況は変わってきており、きちんとした経営をしなければ行き残ることが難しくなってきています。とはいえ、運営次第で着実に利益をあげることができます。
デイサービスを経営するのに、押さえるポイントが決まっています。今回は、報酬改定にも耐えられるデイサービスの経営手法についてお伝えしていきます。
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デイサービス運営の前提
あなたは、介護業界で毎年どのくらいの事業所が倒産しているかご存知でしょうか?金額にして230億ほどの事業が潰れています。背景にあるのは、介護報酬改定による報酬の削減と、経営力の低い経営者が多いことがあげられますね。その中で、いかに黒字を出すことができるのか、具体的な方法についてお伝えしていきます。もしあなたがまだ赤字デイの経営者なら早急に対応が必要です!
これから企業する方向け
これから起業される方は、以下を参照ください。法人設立のポイントや、どんな準備が必要かをまとめています。デイサービスの人員基準、運営ルールをまずは見てください。
デイサービスの定員数別の売り上げ
売り上げは下記の通りです。規模が大きくなるほど、人件費、採用費、日用品や諸経費の面から、コストメリットが効いてくるので、利益率が高くなってきます。
そして、稼働率を100%にするのではなく、どのような利用者で構成されているかも重要なポイントです。売り上げを安定化させるためには、週5の利用者がいて抜けた時の穴が大きいよりも週2の人をたくさん獲得した方がリスクが少なくなりますからね。早速各定員数における売り上げをみていきましょう。
10人定員: 売上げ200万 – 250万/月
10人規模の小規模売り上げは大体200万 – 250万/月になります。10人規模の定員の場合は、午前、午後の2回転制で運営している法人が多いですね。小規模で入浴をやるとスタッフの負担が多いのでやらないところが多いです。入浴は、1回あたり50単位(※500円程度)なので、スタッフの精神的・肉体的疲労に対して、見返りは少ないです。ただ入浴ができると、利用者獲得がしやすいので、トレードオフですね。食事もないことが多いです。利益率は6%-10%です。月あたりの利益は30万程度あればいいですね。そのため年間300-400万程度になります。
15人定員: 売上げ300万 – 380万/月
15人定員では売上げ300万 – 380万/月になります。10人定員でうまく回り始めた法人は、15人定員に拡大を行います。稼働率9割が安定的に維持できていたら早期に15人定員に拡大するといいですね。いきなり15人定員だと、固定費が増大して赤字が続く可能性があるので10人から始めるのが得策でしょう。
25名定員: 売上げ500万 – 630万/月
25名定員になると、月額での売り上げは500万 – 630万/月になります。この定員数の代表がツクイのデイサービスです。この規模になってくると基本的には1日デイが中心になります。25名の2回転で送迎となると、かなりスタッフの負荷が高くなるので、1日デイが基本になります。
30人定員: 売上げ700万 – 880万/月
35名定員になると売上げ700万 – 880万/月になります。この規模になると、経営基盤がしっかりしていないと、なかなか運営が難しいですが、利益率も高くなるので、腕に自身がある経営者は、ぜひ挑戦してみてはいかがでしょうか。
売り上げをアップする方法1: 定員を増やす
介護事業は、保険ビジネスなので、”売り上げ=定員数 × 単価 × 利用回数”の方程式が成り立ちます。いってしまえば、これが全てです。これ以上でも、以下でもありません。売り上げをアップするために、今回は定員を増やす場合の、メリットデメリットを、定員規模ごとに見ていきましょう。
不安定な10人の小規模デイサービス
もしあなたが、10人の小規模デイで運営をしているなら、次のような経験はあるかもしれません。利用者が、入院、ご逝去してしまった時、採算ラインを割って一気に赤字に転換してしまった。利用者と向き合う時間を減らしたくないから営業にいけない。業務処理をしていたら、営業に行く時間が捻出できなくなっていた。既存のケアマネへの報告だけで営業を完結している。外部要因に委ねられる経営は、プロの仕事とはいえません。ちょっとした出来事に左右されます。少しの影響で、採算ラインを割ってしまう小規模デイは、リスクの高いビジネスと言えるでしょう。
18人まで定員を増やす
そこで、もしあなたが小規模デイサービスを運営されていれば、地域密着型のデイサービスに移行することを推奨します。移行により、18人まで定員人数を拡大することが可能になりました。稼働率を仮に70%ととしても、当たり前の話ですが、10人定員より経営は安定します。ケアマネから緊急の依頼があった際も受け入れが可能になるので、メリットは大きいですね。それだけでなく、利用者が多ければ多いほど口コミしてくれる利用者も物理的に増加するので、あなたのデイの評判にも大きく影響していくでしょう。利用者獲得が難しくなってきたとはいえ、ケアマネの緊急の要望に答えることができる事業所は利用者紹介の観点から強いですね。
定員増加のデメリット
必要になる人員数が増えるので、固定費のコストが増加します。もし利用者を獲得できなければマイナスになってしまう可能性を孕んでいるものの、圧倒的に定員を増やすメリットの方が大きいですね。職員の数も増えるので、コミュニケーショコストが発生することも挙げられます。
売り上げをアップする方法2: 稼働率を上げる
稼働率をあげましょう。あなたのデイサービスを、利用者にたくさん使ってもらうための工夫と、その効用についてまとめました。基本的には8割はキープ、9割を平均で回るような状態が理想です。7割は最低ラインですね。7割では、経営者の給与がまともに払えないような状態でしょう。
現状の空きコマを把握する
まずは、現状を把握してみましょう。どの曜日のどの時間帯で、利用率が高いのか、低いのか?を正確に理解しなければ対処することはできませんね。Excelで、曜日別利用率を時間帯で作成することを始めてみましょう。
利用者の家族・ケアマネに伝える
その上で、利用状況を関係者に伝えましょう。空き状況について、利用者の家族に伝えるこはとても重要です。こまめに空き状況を伝えていきましょう。ケアマネも、利用者を受け入れるか、受け入れないかは理解していることは多いですが、どの曜日、どの時間帯に空いているかを把握できていないため、その情報があることで、ケアマネも紹介しやすくなります。
売り上げをアップする方法3: 一人当たりの介護報酬単価を上げる
高単価のほうがビジネスは安定します。定員に限度があるのであれば、値段を上げましょう。一人あたりの売り上げをあげればよいので、保険外サービスも含めて一人当たりの単価をいかにあげるかを考えてみてください。
要介護度の高い利用者を獲得する
利用者の要介護度平均があがると、1人あたりの単価が上がります。要介護1で使える介護保険料は、最大約15万、要介護度3なら最大約25万、要介護度5なら最大約35万と、一人当たりの単価は倍以上になりますね。要するに要介護5の利用者10よりは、要介護度1の利用者20名に匹敵するのです。(単純計算ではありますが。)それならば、要介護者をターゲットとして狙わない手はないですね。なぜ、狙わないのでしょうか?取るのが難しいという点はあるでしょう。どこも要介護度3以上が欲しいのが現状です。
要介護度の高い利用者を獲得するためには
要介護度の高い利用者を受け入れるためには、より技術力の高いスタッフや、施設・設備の改修が必要になってきます。医療依存度の高い利用者を受け入れも必要になるでしょう。しかし現場のスタッフが対応できるレベルまでの育成は、1日にしてなりません。スキルのない人材の確保でさえ厳しい介護業界では、スキルのある人材を上手に採用をしなくてはなりません。どのように獲得するかは、別の記事でお伝えしたいと思います。
技術力の高いスタッフを採用することのメリット
技術力が高いスタッフの採用はとても重要です。スタッフの観点からは、スキルをたかめることができる働きやすい環境のため、離職率がさがり、利用者の立場からは、質の高いサービスが受けられるため、満足度が上がり、経営者としては、結果として利用者の満足度があがり口コミで、次の利用者を獲得することができるようになります。実現できれば素敵ですね。
業務の効率化で無駄を減らす
ここまでは利益をあげる方法についてお伝えさせていただきましたが、ここからはコストを削減する方法についてお伝えさせていただきます。
具体的には下記を参考に!
デイサービスの業務効率化の方法
スタッフの負担になる業務
- 関連する記録の書式を整理、同じ情報を記録しなくていいようにする
- タブレットを配布し、業務の間に情報を記入できるようにする
- タブレットから常時、情報を送れるようにする
- 書類に記入をすると、自動で転記される
業務を削減することの効用
スタッフの負担を削減すると、スタッフはその分利用者と向き合うことができる。一人のスタッフのケアできる利用者が増えるため、コストが削減される。そのほかにも、職員の負担を減らすことで、職員の教育や、残業代の削減にも寄与しますね。
有名経営者Aの戦略
全国でセミナーを行なっている、デイサービスを運営する某経営Aさんの戦略についてです。
要介護3以上しかとらない
基本的に要介護3以上しかとらないとのこと。要介護2でもビジネスとしてもうたり立たないとおっしゃっていました。立ち上げ時期は厳しいかもしれませんが、国の戦略を考える以上、これを実現しないと経営は立ち行かなくなるでしょう。
デイサービスは、リハ特化で専門性をたかめる
要介護度3以上の利用者を集めるために、専門性を高める。戦略なのでここではお伝えできませんが、病気A、病気Bに特化して、ケアマネに営業をかけているとのことでした。
徹底的な業務削減
スタッフの負担をへらすことで、介護の質をあげることが重要とのことです。
大手法人が仕掛ける方法
大手法人になると、業績がマストで求められます。そこで少しでも売り上げ目標を達成するために多くの努力がなされています。今回は大手法人がどのようにデイサービスでの売り上げを上げているのかを見ていきましょう。ちなみに小規模法人でも100人規模のデイサービスはちらほらでてきていますね。売り上げのいい事業所はまた別途紹介させていただきます。
居宅とセットで運営
まずデイサービスを運営するなら、居宅もセットです。居宅セットの場合は、50%は自社の居宅からの送客になるそうです。30名のデイサービスなら、15名が自社送客からです。『もし居宅がなければ、どんなにがんばっても稼働率6割くらいまでしかいかないだろう。』と、ある法人の事業部長はおっしゃっていました。
デイサービスの利用者獲得営業
利用者獲得のための営業は、施設長と相談員がセットで行う法人様が多いと思いますが、居宅に施設長と相談員がセットで行くことで、ケアマネのニーズに答えやすい環境を作ることができます。やはりどこまでいっても、利用者獲得は営業です。営業を科学している法人は強いです。
最後に
売上をあげるためには、1.定員を増やし、2.稼働率を上げ、3.1人あたりの単価をあげること。が重要になってきます。介護報酬は削減され続ける中で、売上を維持するには、最低限売上の向上施策と、コスト削減が必要になってくるので、うまく両輪を回していきましょう。あなたの、事業所の運営に少しでも役に立てればと思います。