【最新版】中国の介護事情を紐解く

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中国の高齢者施設は100年待ちといわれているほど、施設も、人材も追いついていません。その上、中国では”親の世話は子供がするもの”という文化的背景があるため、介護職は専門性の必要ない職業だと、一般的に思われています。

専門職でないだけならまだしも、就業者は、失業者が大多数を占めています。給与も低い、社会保険もない、離職率は世界でもトップレベルといってもいいかもしれません。そして、質の低いサービスにもかかわらず、自分の事がまともにできない高齢者の受け入れをやっていません。(日本でいう要介護2くらいまで)この2つを聞いただけでも日本とは表情がかなり変わってきますね。

とはいえ、中国でも地域格差は起きていて、東京に人口が集中して田舎から人が消えているため、地方の老人施設だと50%近くなるくらい空床率がかなり高いため、地方でなら面倒を見てもらうことはできます。

高齢者数

60歳以上の中国高齢者数は、1,78億人。総人口の13%に当たります。(※2010年地点)2054年にはピークの4.72億人まで増加し、減少トレンドになります。既に、日本の総人口を超えていますね。

都市と農村の人口差

都市人口に7.49億人(54.7%), 農村人口6.18億人(45.3%)となっています。1950年代、高度成長期の日本と同じような軌跡を辿っており、今後も都市に人口集中は進んでいくと予想されています。想定では現状の54.7%から60%までは、人口増加が進むと見られています。

独居高齢者の増加

65歳以上の高齢者のいる世帯:8,800万世帯(全世帯の20%超)あります。そのうち、独居世帯が41.74%もあります。更に独居世帯の10%は、日常生活に全介助が必要な世帯になります。数値からみる中国の高齢社会事業恐ろしいですね。早く整備しないとキツイ未来がまっています。

社会保障制度

中華人民共和国国民経済と社会発展第13次五ヶ年計画要綱において、介護主体を老人施設やコミュニティーによる”社会養老”と家族による”家庭養老”にわけて方針を打ち出しています。基本的には家族が面倒をみるような施作になります。人材の育成にも力を入れ始めましたね。就業報酬に関しても水準の引き上げが検討されています。

在宅サービスを中心とした強化

在宅介護を全体の90%として、家族がサポートをするための基盤を作り。社区養老サービスを7%、施設入居介護を3%とすることに決めました。実際には施策の重点は施設入居介護に偏重しており、メインである在宅介護サービス、社区養老サービスには施策による支援が十分に届かない形となりました。(12次では、施設が4%、社区が6%だったので、在宅よりになったのが伺えます)

養老産業市場を全面開放

民間及び、外資産業による参入機会を許可しました。それにより高齢者施設の拡大が進んでいくでしょう。

養老保険の拡充

以下の3つが大きく上げられていきます。

  • 年金双軌制(ダブルスタンダード)」の廃除
  • 基本年金保険のカバー率の拡大(80%から90%へ)
  • 「介護保険制度」の構築検討

この3点の行方は、中国の高齢者福祉事業に大きな影響を与えます。

年金双軌制(ダブルスタンダード)」の廃除

いきなりというわけではないですが。排除することを決定し、徐々に排除する方針が出されています。これまで20年以上続いてきた制度の改正ということで、注目すべきポイントです!

基本年金保険のカバー率の拡大(80%から90%へ)

既存の年金制度の見直しを行っています。より充実した内容に変更予定。年金加入者は10%増加することで、8000人規模の増加になります。

「介護保険制度」の構築検討

既にモデル地域で介護保険の実験を拡大しています。中国初の介護保険制度の導入はほぼ確実なものになってきています。

医養結合の推進と業界地図の変化予想

中国では、医療サービスの供給が不足しているなか、医療事業と養老事業は異なる行政機関によって所管されていました。そこで、医療サービスと介護サービスが個別に提供されていることから、高齢者の診療行為に関しては議論が続けられていました。そして、ついに医療事業と養老事業がうまく連動するように、発表されました。

医療と介護の連携

医療機関と介護施設との連携制度ができました。進歩です。制度だけにとどまらず、介護施設に医療機構をつくり、医療機構のサービスをコミュニティー(社区)、在宅まで広げる方針を打ち出しております。なんと医養結合事業に民間資本の参入を促進することとなりました。

制度移行の時間軸

これから政府は2017年までに政策体系と基準の雛形の作成を行い、2020年には、運営メカニズムまでを作成します。この2段階目標を設けて、“医養結合”を一層推進する予定です。これにより、医療関連分野の業界地図が塗り替えられることが予想されおり、介護事業を基盤に、単価の高い医療分野にも参入していけるのは、本当に大きいですね。

養老金融体系の拡充措置

高齢者福祉及びシルバー産業関連分野について、2015年末頃から2016年3月にかけて、中央政府は複数の政策を発表しました。大まかに整理すると、今後主に3つの分野で施策が展開されると予想されています。

1.全国社会保障基金投資管理について

全国社会保障基金と基本養老保険基金に関する管理、運営が地方政府から中央政府に一本化されます。これにより、資本市場での投資運用の比率が拡大することが予想されます。しかし国内市場限定の施策です。

2.全国社会保障基金条例

銀行などの金融機関が例えば高齢者向けに専用の窓口を設置するなど、高齢者向けのサービスの拡充や多様化の推進を行います。これまで各地方でバラバラだった投資運営管理機構を一本化します。

3.養老サービス事業のための金融支援

三つ目は、養老債券という特定債券の発行制度が新規に設立され、シルバー産業に関わるインフラ整備プロジェクトに養老債券の発行というファイナンス手法が適用されようとしている点です。条件付きで養老産業特定の債権を発行できます。支援なく、今の中国において施設の建設は難しいでしょうね。(日本でもかなりの助成金がでているくらいですから)

最後に

今、中国で大きな改変が起きています。日本でマーケットがなかった介護市場が10兆円を超える市場になっていたように、中国でも同じような現象がおきます。しかしながら、中国は日本の数倍のマーケットサイズであり、跳ね返りも大きいです。高齢者社会先進国として、中国への外資参入企業として、業界のパイオニアになってほしいですね。今後の動向についても見守りたいと思います。