訪問看護におけるICT化の事例、3選

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訪問看護におけるICT化の事例を紹介します。なぜICT化を促進し、実際に取り組むことで、業務効率化にどのような影響がでてきたのかを見ていきましょう。

訪問看護におけるICT化の動機

今回は実際にICT化を進めている法人に、なぜICT化を進めたのか理由を聞いて、まとめてみました。

理由1.看護記録時間の削減したいから

訪問看護記録にかかる時間を短縮し、訪問看護業務に時間を使えるようにしたい。業務時間の削減は、訪問件数に直結してくるので、事業所としては重要な点の1つですね。特に訪問介護においては、記録内容が多かったり、写真で褥瘡の写真を撮らなければならなかったり、記入内容が訪問介護より多いのも特徴になってきます。

理由2.緊急対応の際の情報共有

紙の記録を持ち出さず、緊急対応時の情報(過去の記録など)を安全にスムーズに見ることを可能にしたいという声もよく聞きます。訪問看護での利用者さんは、体調が急変することもしばしばです。そんな時に、いつでも訪問できる体制は便利ですよね。これができるかできないかで看護師さんの働きやすい環境にも寄与しますので、離職率にも影響がでてきています。電子カルテに慣れている看護師が働きやすい環境はホントに大事!

理由3.サービスの質を高めたいから

情報共有にかかる業務時間の圧縮と共に、ステーション内のスムーズな情報共有により、事業の拡大、安定した経営、質の高いサービスに生かしたいという理由です。業務が増えてきてしまうと経験や勘で仕事をこなしてしまうことも増えてきます。そんな時に、簡単に過去の経過記録や、サービス内容をチェックできれば事実をもとにサービスを提供することができるので、介護のサービスの質が高まります。

理由4.ソフト維持コストの削減したいから

訪問看護業務支援ソフトのバージョンアップの度にコストがかからないようにしたいから。医療と介護の報酬改定でソフトの内容が影響をうけるので、バージョンアップ費用がかかったり、ライセンス費用が追加でかかったり、訪問看護は特に維持費が高くなるため、いかに安く抑えれるかという点も重要ですね。

理由5.情報セキュリティーを強めたいから

情報漏洩防止のためセキュリティーレベルが高く、災害時等外部環境からの悪影響を受けにくい仕組みにしたい。地震の際は、紙で保存しているデータはなくなってしまいました。という声もお聞きします。だからこそ、クラウドでのデータ保存はとても安全ですよね。

ICT化の活用内容

実際に導入しどのように活用したのかお伝えさせていただきます。

訪問看護記録書Ⅱの記録

事業所ごとに設定できる観察項目をタッチパネルで選択します。文章はキーボード入力または音声入力で行い、その情報はクラウドに蓄積され、事業所のパソコンでも閲覧・編集・利用ができます。サービスを提供するとリアルタイムで管理者は状況を確認できます。プリンターを持参して、看護記録を印刷し、利用者宅に残す法人もいらっしゃいました。

ケアの手順や、重要点

誰もが見られるよう、訪問看護記録書とは別のフォームに入力し、利用者宅の間取りや保険証情報、褥瘡の治癒経過などは写真で撮って貼り付けるなどの機能を活用することで、個別ケアを担当者以外も提供しやすい環境づくりに貢献しました。介護の質に大きく影響してきます。

アセスメント

紙面で行っており、電子媒体による記録の保管だけでなく、印刷して紙カルテに残しますが、紙での重複はなくなりました。

ICT化導入の効果

障壁を乗り越え、ICT化をすすめるといいことがたくさんありました。もちろん苦労はありますが、その分の費用対効果は大きいですね。

人件費の削減と訪問件数の増加

  • 記録時間が短縮された
  • 看護師の看護記録、計画や報告の時間短縮、情報共有の業務削減ができた
  • 事務員の請求業務、書類送付、利用者登録の業務時間短縮ができた
  • 時間外労働が減った ⇒ 人件費の削減につながった
  • 業務の効率化により訪問件数が増えた
  • カルテは紙で出力しているが、書類の重複がなくなった

直行直帰の実現による、業務負荷の削減

  • 利用者宅やどこでも記録をモバイル端末で確認ができる
  • モバイル端末やスマートフォンは持ち運びが楽
  • モバイル端末があることで緊急対応時、利用者宅から直行直帰が可能になった
  • オンコール用の情報を紙面で準備しなくてもよい(モバイル端末で閲覧可能)
  • 夜間・休日でも自宅から緊急対応が可能になる

どの看護師が訪問しても、利用者の個別性に沿った看護を提供できる

  • 利用者個々の情報をすぐに確認できるので、個別対応がしやすくなった
  • 利用者宅などどこでもモバイル端末で記録の確認ができるようになった
  • カメラ機能(写真)の活用で、新人看護師がベテラン看護師に指導を仰ぐことが可能
    になった
  • 事例検討にも活用できるようになった
  • 残業時間が減り、スタッフ間のコミュニケーションの時間が増え、情報共有や看護ケ
    アの検討に時間を使うことができるようになった

医療事故や書類の紛失による個人情報漏洩等の防止につながる

  • 指示書をシステムに取り込むことで、点滴のダブルチェックなどができ事故が減った
  • サーバーに情報を蓄積するので記録を紛失することがなくなった
  • 以前は USB メモリを持ち歩いていたが、現在はモバイルで見るので安全に情報管理が
    できるようになった

看護師の経験年数による記録内容の差がなくなり、正確な記録ができる

  • 観察項目が細かく記入できるため、ベテランと新人に差が出にくくなった
  • 他の看護師の記録を参考にでき、文章が上手になった

端末自体の機能の活用により、訪問看護ケアの幅が広がる

  • 住所入力により地図のアプリと連動し、GPS 機能で初めての利用者宅でも訪問可能
  • モバイル端末の機能を使ってカラオケやゲーム、ピアノの機能などを使ってリハビリ
    テーション実施に活用している
  • モバイル端末で音楽を聞くことで、パーキンソン病の音楽療法や運動リハビリテーシ
    ョン、認知症の方と懐かしの歌を歌うことに活用している

最後に

業務効率化をすすめることで、看護師の働きやすい環境づくり、利用者へのサービスの質の向上、管理者がサービスを管理しやすくなり、緊急訪問にも対応できるようになります。利用データを見える化しているので、情報共有が用意になるといいことがたくさん。初めはなれるまで新システムが大変ですが、ぜひ乗り越えて、長期的なメリットを感じて業界を改善していってほしいですね。