37,000円の給与アップ?新処遇改善加算についてまとめました。昨今騒がれている介護人材の不足から、近年介護職員の賃金上げ問題が取り上げられることが多くありました。そこで今回は、平成29年度における介護処遇改善加算の改定について取り上げます。今回の改定で、キャリアアップの仕組みを構築し、月額平均3万7千円相当の処遇改善を実施するため、臨時に1.14%の介護報酬改定を行うものになります。介護処遇改善加算をとらないのは経営に大きなダメージになると発言する経営者も増えています。そこで、今回は改定の実態をみてみましょう。
介護処遇改善加算の報酬について

まずは上記のグラフを見てください。加算(I)を獲得できれば、なんと月間4万近く給与に影響がでるのです。26万か30万か。結構大きいですね。さて要件が5段階にわかれています。一つづつ見ていきましょう。
要件の定義
「キャリアパス要件Ⅰ」…職位・職責・職務内容等に応じた任用要件と賃金体系を整備すること
「キャリアパス要件Ⅱ」…資質向上のための計画を策定して研修の実施又は研修の機会を確保すること
「キャリアパス要件Ⅲ」…経験若しくは資格等に応じて昇給する仕組み又は一定の基準に基づき定期に昇給を判定する仕組みを設けること
「職場環境等要件」…賃金改善以外の処遇改善を実施すること
加算(Ⅰ)の要件
- キャリアパス要件Ⅰを満たす
- キャリアパス要件Ⅱを満たす
- キャリアパス要件Ⅲを満たす
- 職場環境等要件を満たす
加算(Ⅱ)の要件
- キャリアパス要件Ⅰを満たす
- キャリアパス要件Ⅱを満たす
- 職場環境等要件を満たす
加算(Ⅲ)の要件
- キャリアパス要件Ⅰまたは、キャリアパス要件Ⅱを満たす
- 職場環境等要件を満たす
加算(Ⅳ)の要件
- キャリアパス要件Ⅰ
- キャリアパス要件Ⅱ
- 職場環境等要件
のいずれかを満たす。
加算(Ⅴ)の要件
- キャリアパス要件Ⅰ
- キャリアパス要件Ⅱ
- 職場環境等要件
のいずれも満たさない。
加算率について

介護処遇改善加算の金額が変更になった背景
冒頭でも少しお伝えしましたが、処遇改善加算の変更の背景についてお伝えします。
介護人材の安定確保のため
介護人材の安定的確保及び資質の向上を図るためには、介護業務の負担の軽減や事務の効率化を図る他、事業者における取組を評価する必要性があるからです。
人材の職場定着のため
他業界に人が流れて行く中で、いま介護業界で働いている人材が流失しないようにするために、働きやすい環境づくり、仕事に見合った賃金を払う必要があるからです。
新キャリアパスの取り組み事例
新たに、「経験若しくは資格等に応じて昇給する仕組み又は一定の基準に基づき定期に昇給を判定する仕組みを設けること(就業規則等の明確な書面での整備・全ての介護職員への周知を社保審-介護給付費分科会第 135 回(H29.1.18) 参考資料12含む)」とのキャリアパス要件を設け、これらを全て満たすことを要します。
ケース1: 「経験に応じて昇給する仕組み」
経験によって下記のように設定をします。
- 主任:5年〜 40万円
- リーダー:2-5年まで 35万円
- 一般:~2年まで 30万円
ケース2: 資格等に応じて昇給する仕組み
「介護福祉士」、「実務者研修修了者」などの取得に応じて昇給する仕組みを想定。ただし、介護福祉士資格を有して当該事業所や法人で就業する者についても昇給が図られる仕組みであることを要します。
- 主任 :ケアマネ 40万円
- リーダー:介護福祉士士 35万円
- 一般 :資格なし 30万円
ケース3: 一定の基準に基づき定期に昇給を判定する仕組み
「一定の基準に基づき定期に昇給を判定する仕組み」…「実技試験」、「人事評価」などの結果に基づき昇給する仕組みを想定。ただし、客観的な評価基準や昇給条件が明文化されていることを要します。
- 主任 :試験でA評価 40万円
- リーダー:試験でB評価 35万円
- 一般 :試験でC評価 30万円
加算算定対象サービス
処遇改善加算取得による影響
賃金改善の影響は大きいです。すべての事業所で処遇改善加算を取得できている状況ではありません。そこで処遇改善加算1を取得して、他事業所と差別化するメリットを見ていきましょう。
採用の間口が広がる
給与があがれば、採用広告の反響もあがります。しかし今だからこそ訴求できる内容であり、どこもかしこも導入をすれば大差はなくなってきますね。
定着率の向上
定着率が向上します。なぜならば加算取得要件にキャリアップ制度の明確化があげられているからです。経験、資格、評価を事業所のスタイルに合わせて設定することができるので職員が健全に社内をステップアップできる仕組みができます。そうすることで職員は以前よりも成長を感じやすい環境にあり、事業所は、従業員が長期的に働きやすい環境を提供することができるようになるのです。
逆に従業員の方は特定事業所加算1を取得できていない法人は敬遠したほうがいいかもしれません。稀に『利用者への請求額をあげるのが嫌だから、加算を取得しません。』という法人もありますが、実質サービスを提供する職員が疲弊する環境は結局のところ職員にとってもよくないです。利用者、従業員の事を考えている事業所での定着率は向上していってほしいものですね。
そうすることで、事業所として人件費は削減され、コストの大半をしめる人件費の削減につながっていくのです。離職する人が1人減るだけで、年間数十万のメリットになりますから、影響は大きいですね!
最後に
介護処遇改善加算を獲得しないと他社に採用優位性で負ける可能性がでてきています。ここで処遇改善加算取得にとりくむことは必須。厚生労働省によれば7割が対象になるので、あなたの事業所でも早速獲得にむけて準備をすすめてはいかがでしょうか。施設長に関しては別途会社負担で用意してあげることが望ましいでしょう。
▼参考
http://www.mhlw.go.jp/file/05-Shingikai-12601000-Seisakutoukatsukan-Sanjikanshitsu_Shakaihoshoutantou/0000148986.pdf