先行きが不明だ!そういった声を、様々な場所で聞くことが増えてきたのではないでしょうか。『迫り来る30年の法改正によって、報酬削減がされるかもしれない。どうすればいいですか?』といった相談も増えています。
このままでは運営自体が難しいかもしれません。デイサービスの未来と今後について考えるために、前回の改定を振り返りながら、今後の改定について見ていきましょう。
Contents
- 1 通所介護の今後の基本方針
- 2 地域密着型デイサービスへの移行
- 3 今後のデイサービス
- 3.1 1:在宅生活の継続に資するサービス提供をしている事業所の評価
- 3.2 2:心身機能訓練から生活行為向上訓練まで総合的に行う機能の強化
- 3.3 3:地域連携の拠点としての機能の充実
- 3.4 4:小規模型通所介護の基本報酬の見直し
- 3.5 5:看護職員の配置基準の緩和
- 3.6 6:地域密着型通所介護に係る基準の創設
- 3.7 7:小規模多機能型居宅介護のサテライト型事業所への移行に向けた経過措置
- 3.8 8:通所介護(大規模型・通常規模型)のサテライト事業所への移行
- 3.9 9:通所介護と新総合事業における通所事業を一体的に実施する場合の基準上の取扱い
- 3.10 10:夜間及び深夜のサービスを実施する場合の運営基準の厳格化
- 3.11 11:送迎時における居宅内介助等の評価
- 3.12 12:延長加算の見直し
- 3.13 13:送迎が実施されない場合の評価の見直し
- 4 デイサービスの現状
- 5 通所介護の報酬体系
- 6 最後に
通所介護の今後の基本方針
通所介護の事業は、要介護状態となった場合においても、その利用者が可能な限りその居宅において、その有する能力に応じ自立した日常生活を営むことができるよう生活機能の維持又は向上を目指し、必要な日常生活上の世話及び機能訓練を行うことにより、利用者の社会的孤立感の解消及び心身の機能の維持並びに利用者の家族の身体的及び精神的負担の軽減を図るものでなければならない。
(※2017年6月21日の厚生労働省資料より)
一言でまとめれば、『利用者が自立して精神的にも社会的にも暮らせるようなケアをしましょう』というのが方針です。そこに沿った方向性であれば、加算の取得や、安定的な事業運営が可能になります。
利用者の社会生活をサポートできているか
利用者の身体機能だけを支援すればよい訳ではありません。社会生活の背景を理解した上で支援ができている状態を求められています。3ヶ月に1回の計画書の書き直しの中で、早いスパンでPDCA=Plan(計画)→ Do(実行)→ Check(評価)→ Act(改善)のサイクルを回しながら、高齢者のサポートがもとめられているのです。
地域連携の強化による社会資源の活用
生活相談員の専従要件を緩和することで、サービス担当者会議だけでなく、地域ケア会議への出席等が可能になりました。社会にあるリソースを活用し、連携を取りながら、地域にあったサービスの提供をすることがデイサービスには必要です。そのために地域密着型のデイサービスがスタートしました。
地域密着型デイサービスへの移行
平成28年4月1日より試行されました。18名以下のデイサービスが対象です。
✓地域密着デイサービスとは何か?
✓地域密着デイサービスに映ることで起きる悩みとは?
✓地域密着が解決課題と現状とは?
について見ていきましょう。そのあと、今後のデイが目指す先についてみてみます!
地域密着型デイとは?
特徴としてしては以下の4つが挙げられています。
- その区市町村の住民のみがサービスの利用が可能
- それぞれの区市町村が地域のニーズに応じた整備をそれぞれで促進
- 指定権限を区市町村に移譲し、地域の実情に応じた指定基準、介護報酬を設定
- 指定、指定基準、報酬設定には地域住民、高齢者、経営者、保険・医療・福祉関係者等が関与
地域密着型の種類は
- 定期巡回・随時対応型訪問介護看護
- 夜間対応型訪問介護
- 認知症対応型通所介護(介護予防)
- 小規模多機能型居宅介護(介護予防)
- 認知症対応型共同生活介護(介護予防)
- 地域密着型特定施設入居者生活介護
- 地域密着型介護老人福祉施設入所者生活介護
- 看護小規模多機能型居宅介護
が新しく加わった地域密着型デイサービスです。地域密着に変わることで、通常のサービスより地域に根ざしてサービス提供が求められるので、提供エリアが狭められますが、代わりにサービス単価が少し上がります。この変更によって生じる問題点については後述しますが、かなり多くの事業所で問題が発生しています。
今後のデイサービス
今後の方針として、ざっくりお伝えすると、地域に根ざしながら、高齢者が社会の中で生きていけるのをサポートする事業所が評価されます。具体的に見ていきましょう。
1:在宅生活の継続に資するサービス提供をしている事業所の評価
認知症高齢者の日常生活自立度Ⅲ以上に該当する高齢者や要介護3以上の高齢者を積極的に受け入れる事業所を評価。認知症の高齢者は増え続けているので、認知症のニーズを受け入れていける事業所は評価されます。認知症のひどい方が入ってしまうと、対応が大変なため断られるケースも多くあります。
2:心身機能訓練から生活行為向上訓練まで総合的に行う機能の強化
個別機能訓練加算の算定要件に、居宅を訪問した上で個別機能訓練計画を作成することを要件として加え、加算の評価を引き上げました。それは、より利用者の生活に根ざした形で改善をしやすく計画書を作ることができるからです。利用者が生活しやすい場所を考えたうえで支援することが大事ですね!
3:地域連携の拠点としての機能の充実
利用者の地域での暮らしを支えるため、医療機関や他の介護事業所、地域の住民活動等と連携し、事業所を利用しない日でも利用者を支える地域連携の拠点としての機能を展開できるように、生活相談員の専従要件を緩和します。(運営基準事項)
4:小規模型通所介護の基本報酬の見直し
小規模型通所介護の基本報酬は、通常規模型事業所と小規模型事業所のサービス提供に係る管理的経費の実態を踏まえ、評価の適正化を行う。報酬がこれ以上削減されるのは小規模型にとって厳しいので、国の動向に注目です!
5:看護職員の配置基準の緩和
看護職員については、訪問看護ステーション等と連携。健康状態の確認を行った場合には、人員配置基準を満たしたものとする。(運営基準事項)なかなか看護師の採用は難しく、コストがかかってしまうので、このような緩和はとても助かります!
6:地域密着型通所介護に係る基準の創設
平成28年度に地域密着型通所介護が創設されることに伴い、地域との連携や運営の透明性を確保する運営推進会議の設置など新たに基準を設ける。(運営基準事項)
7:小規模多機能型居宅介護のサテライト型事業所への移行に向けた経過措置
小規模型通所介護が小規模多機能型居宅介護のサテライト型事業所に移行する際、小規模多機能型居宅介護のサテライト型事業所に必要な宿泊室は、平成29年度末までの経過措置を設ける。(運営基準事項)
8:通所介護(大規模型・通常規模型)のサテライト事業所への移行
小規模な通所介護事業所が通所介護(大規模型・通常規模型)事業所のサテライト事業所へ移行するに当たっては、一体的なサービス提供の単位として本体事業所に含めて指定を行う。(運営基準事項)
9:通所介護と新総合事業における通所事業を一体的に実施する場合の基準上の取扱い
通所介護事業者が、通所介護及び新総合事業における第一号通所事業を一体的に実施する場合は、通所介護及び介護予防通所介護を一体的に実施する場合の現行の基準に準ずるものとする。(運営基準事項)
10:夜間及び深夜のサービスを実施する場合の運営基準の厳格化
通所介護事業所の設備を利用して、夜間及び深夜に通所介護以外のサービスを提供する場合は、届出を求めることとし、事故報告の仕組みを設ける。(運営基準事項)深夜の時間帯は特に事故が起きやすいので、注意が必要です。
11:送迎時における居宅内介助等の評価
送迎時に実施した居宅内介助等を通所介護の所要時間に含めることとする。送迎時に、早く済ませようとして起きていた事故も多々ありましたので、こういった配慮は重要になりますね!
12:延長加算の見直し
実態として通所介護事業所の設備を利用して宿泊する場合、延長加算の算定を不可とする。介護者の更なる負担軽減や、仕事と介護の両立の観点から、延長加算の対象範囲を拡大します。
13:送迎が実施されない場合の評価の見直し
事業所が送迎を行わない場合は減算の対象とする。送迎はデイサービスの中で最も重荷です。2回転だと送迎が厳しいので、極力1回転での運営が好ましいでしょう。
デイサービスの現状

デイサービスの事業所数は増加を続け、43400事業所まで増加しました。とくに小規模事業所の割合が増えておりましたが、小規模で利益をだすのが難しいとわかってきた平成27年より、事業所の伸び数は減少トレンドに入りました。実際事業所の売り上げを見ていてもしっかり利益を挙げれているのは、通常規模以上のデイサービスになりますね。多くの事業所の方と話していても、デイサービスを事業として、人の採用から育成、利用者への価値提供を個人でやろうと思うとなかなか難しい面もあるなと日々感じます。
デイサービスの利用者数

約190万人ほど利用者はおり、介護サービス利用者全体の1/3程度がしようしている状況です。一番メインとしては、通常規模のデイサービスが56.4%,次に小規模が30.9%,そして大規模で併せて12.7%という利用状況になっています。デイサービスは、高齢者が生活するにあたって欠かせないものになっていますね。デイサービスは社会資源です。
デイサービスの要介護別利用者

利用率の割合については大きな変化は見られません。要介護度1.2で全体の半分の割合になっています。昨今、要介護度2までは介護保険から切り捨てられるのでは?という声も出てきている中、もし実現すればデイサービスが大ダメージを受けることはこの数値からも間違いないでしょう。
デイサービスの要支援度/介護度別費用

要介護2の割合が全体の25.9%と高くなっていますね。ついで要介護度1と続きます。要介護3以上になると費用以上にケアのレベルがあがるため積極的に欲しいのは、要介護度2あたりになってくるでしょう。要介護5でも利用いただける方が抜けた時は、事業所としては穴埋めが大変なので、極力さけたいという事業所も多いです。

平均週2~3回程度の利用が一般的になっていますね。要介護1は利用回数が少なめです。1回の利用が1万前後なので、だいたい10万強の売り上げが立つかたちになっています。おなじ10万なら、要介護は低い方がいいですね。昔からさかのぼって、デイサービスがより身近なサービスになっていることが数値からも見て取れると思います。今後もデイサービスは、高齢者の中心サービスとして機能していくでしょう。
通所介護の報酬体系
加算を取得しながら、ちゃんと利用者の自立支援ができるところが生き残るような報酬体系や方針をだしているので、機能訓練指導員の獲得や、地域資源をうまく活用して、利用者に価値を提供できる事業所を目指していくとよいでしょう。
最後に
機能訓練などの自立支援・重度化防止に向けた質の高いサービス提供がほとんど行われていないような場合には、事業所の規模にかかわらず、基本報酬の減算措置も含めた介護報酬の適正化を図るべき。
と厚生労働省が方針の中で発表しています。実質的に小さい事業所ではPTの採用が難しい面もあるので、前もって準備をしておかなければなかなか厳しい状況になるでしょう。
■参考:社保審-介護給付費分科会 第141回(H29.6.21)