デイサービス開業の際に、指定された人員基準があります。あなたが、指定申請の前に所定の職種のスタッフを募集する上で管理者、生活相談員、看護職員、介護職員、機能訓練指導員、介護スタッフ等の必要な人員を設定し、開業後に国からペナルティーを受けないように準備をしておきましょう。
利用者の定員やデイサービスの運営形態によって人員基準は異なりますので、あなたが運営されるデイサービスの人員基準をしっかり押さえましょう。
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地域密着デイサービスの人員配置は?
利用定員が10名以下の地域密着デイサービスの人員基準について見てみましょう。日本のデイサービスの8割が小規模デイサービスですので、多くの事業所が下記の人員基準で運営されています。
人員基準
・管理者 1名(常勤)
・生活相談員 1名
・看護師または介護職員 1名以上(基本介護職員で進めることが多いです。)
・機能訓練指導員 1名以上
人員配置の特徴: 看護師は採用しないことが多い
定員が10名以下のデイサービスでは、
- 生活相談員
- 看護師
- 介護職員
上記3名のうち、1名は常勤である必要があります。営業にも管理者がいくケースが多いです。大手さんが複数事業所を行う場合は、役割を分けてやられる場合もありますが、基本的に小規模で数拠点の運営を考えていれば、兼務で問題ないでしょう。看護師はコストがかかるので、基本は看護師は採用しないケースが多いですね。
通常規模デイサービス開業時の人員基準は?
地域密着デイサービス同様、通常規模のデイサービスにも職員の配置人数に決まりがあります。地域密着よりも看護師の採用がマストになることが難易度が上がる要素として出てきています。
定員が10名を超えるデイサービスの人員基準
- 管理者 1名(常勤)
- 生活相談員 1名以上
- 看護師 1名以上
- 介護職員 1名以上
- 機能訓練指導員 1名以上
10名以上の人員基準の特徴
定員が10名を超えるデイサービスでは、管理者と生活相談員、看護師と機能訓練指導員。両方の仕事を兼務することができる場合もあります。また、看護師または介護職員のうち、1名は常勤である必要があります。この看護師を採用コストが大きいので、定員を10名に留める事業所もありますが、基本は10名以上で事業を展開しないと、採算がとれないのであまりオススメはできません。
各職種ごとの役割
各職種ごとに役割を見ていきましょう。事業所は18名を超えてくると役割が機能しているケースもありますが、10名前後くらいまでは、全員が各職務を助け合うほうが効率的です。
管理者
何でも屋さんです!実際に小規模事業所の管理者をみていると、多くの業務をこなしているのが職員の管理や、業務管理がおもな仕事です。事務所にて職員の勤怠管理から、事業運営のサポート、ケアマネさんへの営業をしたり、現場でサービスの状況を把握まで。更には利用者からの苦情や相談があった際に、利用者さんのお宅への訪問なども行う場合があります。
生活相談員
介護支援専門員から新規の利用者さんの紹介を受けて、その方のお宅へ訪問します。特別養護老人ホーム、指定介護老人福祉施設、通所介護事業所などで働くことがあります。利用者本人やご家族、介護支援専門員らと、介護保険に関する話や、施設での受け入れ、居宅サービスの利用についての話し合いを行います。
看護師
利用者さんの体のチェックを行います。医療的な知識も深いため、バイタルの様子を月間でみながら利用者さんの健康バランスをチェックします。利用者への全体ケアの中でも中心的な役割を果たすのが看護師になります。機能訓練指導員のリハビリテーションのお手伝いもする場合があります。
介護スタッフ
入浴、食事、レクリエーション、排泄、誤嚥予防の口腔体操などの介助を行います。基本はパートスタッフで賄われているケースが多くあります。それゆえ103万円までしか働けず、年末になると扶養控除の範囲からはずれてしまうため、出勤が厳しくなるケースがでてきます。
機能訓練指導員
別名PTとも呼びます。デイサービスに通う利用者が、自立した生活を送るため、また、事故をおこすことなく、自宅で生活するためのリハビリテーションや機能訓練のお手伝いをします。
各職種に必要な資格とは?
- 管理者・・・資格要件はありません
- 生活相談員・・・社会福祉士、社会福祉主事、精神保健福祉士の資格が必要です。
※都道府県によっては、介護福祉士のみでも可能な場合もあります。 - 看護職員・・・看護師、准看護師の資格が必要です。
- 介護職員・・・資格要件はありません
- 機能訓練指導員・・・看護師、准看護師、理学療法士、作業療法士、言語聴覚士、柔道整復師、あん摩マッサージ指圧師のいずれかの資格が必要です。
人員基準の違反をすると?
人員基準を違反すると、事業運営停止のリスクもあります。返戻といって国保連請求する金額が支払われないこともあるので、ルールを守るのはとても重要です。
人員基準を違反した場合
人員基準を違反した場合は、事業所の指定の取消しや、新規利用者の受け入れ停止、デイサービス停止(期限つき)などの処分を受けます。
違反が発見されるのはどのタイミング?
定期的に実地指導が行われます。実地指導は、都道府県の担当者が事業所に訪問し、事業運営が正しく行われているかチェックをする、というものです。現場の実務をあまり理解していない担当者がくるため、難癖つけられることもあるので、丁寧に対応することが必要です。よって都道府県によって基準のレベルにかなりばらつきが出てきます。ですので運営方法や、書類等不安がある場合は、事前に各都道府県の担当部署に確認をとっておくとよいでしょう。
利用者の告発か家族の相談で発覚
実地指導で、違反の可能性があるとみなされた場合や、利用者さんやその家族からの苦情や相談がある場合には、監査が行われます。この監査で、人員基準の違反が発覚することが多いです。ここまでくると運営停止のリスクもありますので健全に事業運営を行なっていきましょう。
機能訓練加算取得の場合の人員基準
機能訓練加算を取得するにも人員基準がありあす。機能訓練加算とは、デイサービスにて、個別機能訓練を行った場合に算定される加算です。加算をとるためには、所定の要件を満たす必要があります。単位によっても違いがあります。
機能訓練加算Ⅰの場合
常勤、専従の機能訓練指導員を1名以上配置する必要があります。リハビリテーションは利用者にとって重要な位置付けになっているので、取得をおすすめします!
機能訓練加算Ⅱの場合
専従の機能訓練指導員を1名以上配置する必要があります。常勤じゃなくてもいいのが特徴です!スポットでパートのPTさんを獲得するでも問題がありません。加算Ⅰ同様に、リハビリテーションを行わない事業所は評価されづらい構造になってきているので、1と合わせての取得する方向での運営がよいでしょう!
人材不足に悩む福祉介護の現場
「人員基準はクリアしているけど、実際は職員の疲弊がとまらない。」現場ではトラブルがたくさん起きています。実際の現場で何がおきているのか見ていきましょう。
人員基準は満たしているが、兼務で離職増加
人員基準は満たしていますが、看護師が、看護と介護、両方の仕事をしていたり、生活相談員が、生活相談員の仕事と介護の仕事を兼務していたりと、最低の人員基準で運営されているデイサービスも存在します。それでも、人員基準はなんとか満たしているため、設立する際の指定申請は通ってしまいます。そういった厳しい労働環境に置かれている職員の離職が続く負のスパイラルに入ってしまうので注意が必要です。
休みが取れない厳しい雇用状況
最低の人員基準で運営されている、というのは、職員に代わりがいないということです。職員が1人、体調不良や冠婚葬祭などで、仕事を休んだだけでも、デイサービスの仕事がまわらなくなってしまいます。
デイサービスの職員は、入浴介助、機能訓練、リハビリテーション、レクリエーション、排泄介助、食事介助、誤嚥の予防のための口腔体操など、様々な仕事をしています。利用者さんごとに利用するサービスも異なりますので、一人休んだ場合に代用がきかないというケースも起きてしまうため、休みが取れないケースもでているようです。
事務処理とケア業務の両立による残業増加
生活相談員が、事務所での仕事と、現場での介護の両方をする、というのは、とても大変なことです。最低の人数を配置しているだけでは実際、仕事をまわしていくことも、利用者さんたちへ満足のいくサービスも提供できません。福祉の現場は、常に人手不足に悩まされています。「そういった事務処理をするために介護の現場に入ったのではない!」という職員の声も一度は聞いたことがあるのではないでしょうか?
まとめに:介護士の声
初めて介護の仕事をする、という職員に話を聞いてみました。すると、多くの職員からこんな言葉が聞かれました。「介護って、お年寄りと楽しく会話をしたり、食事介助をしたりして、お年寄りに“ありがとう”と言ってもらえる仕事だと思っていました。」「排泄介助や入浴介助のことはイメージしづらくて、よく分からないまま介護の仕事を始めました。」「こんなに大変な仕事だとは思っていませんでした。」
福祉の明るく楽しい部分だけのイメージを持って福祉の仕事を始める人は多いです。しかし実際、認知症の方とのコミュニケーションや、レクリエーション、排泄介助、入浴介助などを経験し、「こんなに大変な仕事だとは思っていませんでした。」と辞めていってしまう人が多いのが現状です。
福祉の仕事に就く前に、福祉の良いイメージばかりを伝えるのではなく、
福祉の仕事の見えない部分もきちんとイメージしてもらうことが大切です。
適切な人員基準を満たして、利用者さんに満足して頂けるサービス、納得して頂ける介護支援を提供するためには、人手不足は大きな課題です。開業、設立し、指定申請をするときから基準を満たすことはもちろん、それ以上の人数を配置し、利用者さんをお迎えすることが理想だと思います。それが利用者の満足度をあげ、安定した事業運営に繋がっていきます。