廃用症候群とは

廃用症候群とは

廃用症候群(はいようしょうこうぐん)とは、安静や活動低下が長く続くことで、筋力・関節可動域・心肺機能・認知機能・嚥下機能など全身に二次的な機能低下が起こる状態の総称で、「生活不活発病」とも呼ばれます。高齢者では1日の安静で1〜3%の筋力が落ちるとされ、寝たきりや要介護化の主要因。原因・症状・予防・介護現場での観察ポイントまで、用語の意味と仕組みをやさしく解説します。

ポイント

この記事のポイント

廃用症候群(はいようしょうこうぐん)とは、過度の安静や活動の低下が続くことで、筋骨格系・循環器系・呼吸器系・消化器系・精神機能など全身に二次的な機能低下が起こる状態の総称です。「生活不活発病」「活動低下症候群」とも呼ばれ、高齢者では1日の絶対安静で1〜3%の筋力低下が起こるとされ、入院や自宅での寝たきりが要介護化を招く主要因です。

目次

廃用症候群の定義と発生メカニズム

廃用症候群(disuse syndrome)は、医学用語で「脱調節(deconditioning)」とも表現される全身性の機能低下状態です。骨折・脳卒中・肺炎などで一定期間ベッド上での安静を強いられたり、自宅で外出機会が減って活動量が落ちたりすると、使われない臓器・組織が予備能を失っていくことで生じます。

とくに高齢者は予備能が低いため進行が速いのが特徴です。健康な成人では1週間の絶対安静で約10〜15%の筋力低下、高齢者では数日〜1週間で20%以上の筋力が落ちることもあります。1度落ちた筋力を回復するには、低下にかかった期間の3〜5倍の時間が必要とされ、「予防>治療」の典型例です。

原因は単に「動かない」だけではなく、①疾患(脳卒中・骨折・肺炎など)による絶対安静、②過剰な安静処方、③社会参加の減少(独居・うつ・外出困難)、④認知症や意欲低下による活動量減、⑤栄養不足、など多重要因が絡みます。コロナ禍では「外出自粛による廃用症候群(コロナフレイル)」が問題化し、社会的にも認知が広がりました。

厚生労働省も「生活不活発病チェックリスト」を発信し、震災後・コロナ後の早期発見ツールとして活用を推奨しています。

廃用症候群の主な症状(全身に出る)

廃用症候群は1つの症状ではなく、全身の臓器・系統に幅広く影響を及ぼします。

  • 筋骨格系:筋力低下、筋萎縮、関節拘縮(関節が硬くなり可動域が狭まる)、骨萎縮(骨密度低下→骨折しやすくなる)
  • 循環器系:起立性低血圧(立ちくらみ)、心拍出量低下、血栓症(深部静脈血栓・肺塞栓)
  • 呼吸器系:肺活量低下、痰の喀出困難、誤嚥性肺炎リスク増
  • 皮膚:褥瘡(じょくそう/床ずれ)、皮膚乾燥、外傷の治癒遅延
  • 消化器系:食欲低下、便秘、低栄養(特にタンパク質不足)
  • 泌尿器系:尿失禁、尿路感染症、結石
  • 精神・神経系:抑うつ、意欲低下、認知機能低下、睡眠リズム障害、せん妄
  • 嚥下機能:嚥下反射低下、誤嚥性肺炎リスク

これらは独立して進むのではなく相互に影響しあい、たとえば「食欲低下→低栄養→筋力低下→活動量低下→さらに食欲低下」という負のスパイラル(フレイルサイクル)を形成します。一度始まると止めにくいため、初期の段階で早期介入することが極めて重要です。

予防とリハビリの基本

廃用症候群は「予防」が最も効果的です。一旦進行すると回復に時間がかかるため、入院初日からの早期離床・早期リハビリが世界的標準になっています。

  • 1. 早期離床(Early Mobilization):医学的に許される範囲で、入院翌日からベッドサイドでの座位・立位・歩行訓練を始める。集中治療室でも実践されており、入院期間短縮・ADL維持に効果がある。
  • 2. ベッド上の運動:絶対安静が必要な期間でも、関節可動域訓練(他動運動)・筋等尺性運動(力を入れるだけ)・呼吸訓練・体位変換は実施できる。
  • 3. ポジショニング:良肢位を保ち、関節拘縮と褥瘡を予防する。2時間ごとの体位変換と、クッション・体圧分散マットレスの活用。
  • 4. 栄養管理:タンパク質を体重1kgあたり1.0〜1.2g/日(高齢者は1.2〜1.5g)、エネルギーと水分を確保する。経口摂取が難しければ栄養補助食品を活用。
  • 5. 嚥下訓練・口腔ケア:嚥下機能の維持と誤嚥性肺炎予防のため、毎日の口腔ケアと嚥下体操を組み合わせる。
  • 6. 専門職の介入:理学療法士(PT)・作業療法士(OT)・言語聴覚士(ST)・管理栄養士・看護師がチームで関わる。在宅では訪問リハビリ・通所リハビリの活用。
  • 7. 社会参加・役割:自宅でも家事の一部、地域活動、デイサービスでのレクリエーションなど、本人が「役割」を持つことが活動量を支える。

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廃用症候群に関するよくある質問

Q. 廃用症候群とフレイル・サルコペニアの違いは?
A. 重なる部分が大きいですが、起点が違います。廃用症候群は「動かない」ことが原因で起こる二次的な機能低下、サルコペニアは加齢や疾患による筋肉量・筋力の低下、フレイルは加齢に伴う心身の衰えで要介護の前段階を指します。3つは互いに重なり合い、悪循環を形成します。
Q. 1日でも安静にすると影響がある?
A. はい。健康な高齢者でも1日の絶対安静で1〜3%の筋力低下が起きるとされます。風邪で2〜3日寝込んだだけでも、外出してみると階段がきつい・足元がふらつくといった変化を体感することがあります。
Q. 認知症の人にも起こる?
A. はい、起こります。むしろ認知症では意欲低下・閉じこもり・転倒不安から活動量が落ちやすく、廃用症候群とBPSD(行動・心理症状)が併存しやすい状態になります。デイサービス・訪問リハビリの活用が予防の柱です。
Q. 介護保険のリハビリは利用できる?
A. 利用できます。要介護認定を受ければ、訪問リハビリ・通所リハビリ(デイケア)・短期入所療養介護でPT/OT/STのリハビリを受けられます。医療保険のリハビリ(疾患別リハビリ)と組み合わせて使うこともあります。
Q. 在宅で家族にできることは?
A. 寝たきりにしないことが最優先。少しでも座位・立位の時間を増やす、家事の一部を本人に任せる、外出機会を作る、栄養(特にタンパク質)を確保する、口腔ケアを毎日行う、です。本人ができる活動を奪わないことが大切です。

参考文献・出典

まとめ

廃用症候群は、安静や活動低下によって全身に二次的な機能低下が起こる状態の総称で、高齢者では1日の絶対安静でも明確に進行する厄介な存在です。「生活不活発病」とも呼ばれ、筋骨格・循環・呼吸・消化・精神まで全身に影響し、フレイル・サルコペニアとも重なり合って要介護化のスパイラルを作ります。早期離床・関節可動域訓練・栄養管理・口腔ケア・社会参加を組み合わせた予防が最大の対策で、介護保険のリハビリサービスや地域支援事業を上手に使うことが本人の自立した生活を守る鍵となります。

執筆者

介護のハタラクナカマ編集部

編集部

介護業界の転職・キャリア情報を発信。厚生労働省の公的データと現場の声をもとに、介護職で働く方・転職を検討する方に役立つ情報をお届けしています。

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