ICF(国際生活機能分類)とは

ICF(国際生活機能分類)とは

ICF(国際生活機能分類)とは、2001年にWHOが採択した健康と生活機能の国際分類。心身機能・身体構造/活動/参加の3レベルに、環境因子・個人因子の背景を加えた相互作用モデル。介護現場での書き方・ICIDHからの違い・ケアプランへの活用を厚生労働省資料で解説します。

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この記事のポイント

ICF(International Classification of Functioning, Disability and Health:国際生活機能分類)とは、2001年5月にWHO(世界保健機関)総会で採択された、健康と生活機能を記述する国際分類です。日本では2002年に厚生労働省が日本語版を公表しました。「心身機能・身体構造/活動/参加」の3つの生活機能レベルと、「環境因子/個人因子」の背景因子、健康状態を相互作用モデルで捉える点が特徴で、それまでのICIDH(国際障害分類)に代わり、介護・医療・リハビリテーション・福祉の共通言語として活用されています。

目次

ICFの定義と歴史

ICF(国際生活機能分類)は、人の健康状態と生活機能を、医学的視点だけでなく社会的・環境的視点も含めて記述する国際的な分類体系です。マイナス面(障害)だけを捉えるのではなく、「生活機能」というプラスの軸で人を理解する点が大きな特徴です。

ICIDHからICFへの転換

ICFの前身は、WHOが1980年に発表したICIDH(国際障害分類)でした。ICIDHは「機能・形態障害(Impairments)→能力障害(Disabilities)→社会的不利(Handicaps)」という一方向のマイナス連鎖モデルで、障害を医学的な欠損として捉える限界がありました。

2001年5月22日のWHO総会で採択されたICFは、これを双方向の相互作用モデルに転換し、「障害」ではなく「生活機能」を中心概念に据えました。日本では2002年8月に厚生労働省が日本語版「国際生活機能分類−国際障害分類改訂版−」を公表し、医療・福祉・介護分野で広く活用が始まりました。

介護分野での位置づけ

介護保険制度では、ケアプラン作成におけるアセスメントの基礎理論として位置づけられています。厚生労働省「課題分析標準23項目」もICFの考え方を参考に整理されており、ケアマネジメント・リハビリテーション計画書・LIFE(科学的介護情報システム)の入力項目にもICFの考え方が反映されています。

ICFの構成要素(生活機能3レベル+背景因子)

ICFは、生活機能の3レベルと、それに影響する背景因子2種、そして健康状態の合計6つの構成要素を相互作用モデルで描きます。

構成要素 意味 介護現場の例
健康状態疾病・けが・加齢など脳梗塞後遺症、認知症、変形性膝関節症
心身機能・身体構造手足の動き・精神の働き・視聴覚・内臓機能、心臓の弁などの身体構造右半身麻痺、嚥下機能低下、見当識障害
活動生活行為(ADL/IADL)食事・着替え・移動、買い物・服薬管理
参加家庭・社会での役割や関与家事の手伝い、地域行事への参加、就労
環境因子物理的・社会的・態度的環境手すり・福祉用具、家族の支援、近隣の協力
個人因子年齢・性別・価値観・職歴など「自分のことは自分でしたい」、長年の趣味、職人気質

相互作用モデルの意味

これらは矢印で双方向につながり、どれか一つだけが単独で決まるのではなく、互いに影響し合います。たとえば「右半身麻痺(心身機能)」があっても、「手すりとシャワーチェア(環境因子)」があれば「入浴(活動)」が自立し、「友人との温泉旅行(参加)」も継続できる、といった見方ができます。

個人因子はICFでは未分類

個人因子は重要な要素として位置づけられているものの、社会的・文化的差異が大きいためICF本体では分類コードが整備されていません。介護現場では「本人の人生観・価値観・人生史」として記述する形で活用します。

介護現場でのICFの書き方・活用ヒント

  • マイナスとプラスを両方書く:心身機能の欠損だけでなく、できていること・残っている能力も明記する
  • 環境因子を「促進因子/阻害因子」に分けて記述する:同じ手すりでも本人にとって使いやすければ促進、合わなければ阻害となる
  • 参加レベルを必ず書く:「ADLは自立」だけで終わらず、本人がどんな社会的役割を持ちたいかまで踏み込む
  • 多職種でICF図を共有する:医師・看護師・リハ職・介護職・ケアマネが同じ図を見ることで、目標設定がぶれない
  • 3か月ごとに更新する:状態変化に応じて再アセスメントを行い、ケアプラン・リハ計画書に反映する
  • LIFE(科学的介護情報システム)との連動:LIFE加算ではADL・認知機能・栄養などをICFの考え方に沿って記録・送信する

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ICFに関するよくある質問

Q. ICFとICIDHはどう違うのですか?

A. ICIDH(1980年)は障害を「機能障害→能力障害→社会的不利」というマイナスの一方向モデルで捉えていました。ICF(2001年)は、これを「生活機能(プラス)」を中心に据えた相互作用モデルに置き換え、健康状態・環境因子・個人因子を含む包括的な枠組みに刷新しました。

Q. ICFは介護現場で必須ですか?

A. 義務ではありませんが、ケアマネジャー・リハ職・介護職の共通言語として全国的に普及しています。介護福祉士養成課程・実務者研修・ケアマネ研修などのカリキュラムにも組み込まれており、LIFE加算でもICFの考え方が前提になっています。

Q. 個人因子が分類されていないのはなぜですか?

A. 年齢・性別・価値観・職歴など個人因子は文化や社会によって意味が大きく変わるため、WHOは国際的な分類コードを設けず、各国・各現場で記述的に扱う方針としました。介護現場では「本人の人生観・価値観・生活歴」として聞き取りで把握します。

Q. ICFを学ぶには?

A. 厚生労働省ホームページに日本語版「国際生活機能分類−国際障害分類改訂版−」が公開されています。ケアマネ・実務者研修・介護福祉士国家試験対策テキストにもICFの章があり、リハビリテーション専門職団体の研修も活用できます。

参考文献・出典

関連する詳しい解説

まとめ|生活機能を相互作用で捉える共通言語

ICF(国際生活機能分類)は、2001年WHOが採択し、日本では2002年に厚生労働省が日本語版を公表した健康と生活機能の国際分類です。心身機能・身体構造/活動/参加の3レベルに、環境因子/個人因子/健康状態を加えた相互作用モデルで人を捉え、ICIDH(1980年)のマイナス連鎖モデルから「生活機能」中心の包括モデルへと大きく転換しました。

介護現場ではケアプラン作成のアセスメント基礎理論として、また多職種連携の共通言語として広く活用されており、LIFE(科学的介護情報システム)の入力項目にもICFの考え方が反映されています。本人の「できないこと」だけでなく「できること」「望む参加」を可視化し、環境因子の調整で生活機能を高めるという視点は、これからの介護・リハビリテーション・福祉に欠かせない考え方です。

執筆者

介護のハタラクナカマ編集部

編集部

介護業界の転職・キャリア情報を発信。厚生労働省の公的データと現場の声をもとに、介護職で働く方・転職を検討する方に役立つ情報をお届けしています。

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