喀痰吸引等研修 第3号研修とは
介護職向け

喀痰吸引等研修 第3号研修とは

第3号研修は特定の利用者(ALS・重症心身障害児者など)に対する喀痰吸引・経管栄養を行うための研修。基本研修8時間+演習1時間+実地研修で構成され、重度訪問介護や障害者支援施設で活用される。1号・2号との違いと受講手順を解説。

ポイント

この記事のポイント

喀痰吸引等研修 第3号研修は、ALSや重症心身障害児者など特定の利用者一人ひとりに対してのみ喀痰吸引・経管栄養を実施できる介護職員向けの研修です。基本研修8時間の講義と1時間の演習、対象者ごとの実地研修で構成され、不特定多数を対象とする1号・2号研修と区別されます。

目次

第3号研修の定義と法的位置づけ

喀痰吸引等研修は、2012年4月施行の改正社会福祉士及び介護福祉士法に基づき、介護職員等が一定の医療的ケア(喀痰吸引・経管栄養)を業として実施できるようにする制度です。研修は第1号・第2号・第3号の3区分に分かれており、対象利用者と実施できる行為の範囲が異なります。

このうち第3号研修は、ALS(筋萎縮性側索硬化症)や類似の神経・筋疾患、筋ジストロフィー、高位頚髄損傷、遷延性意識障害、重症心身障害児者などの「特定の者」を対象に、その利用者個人に必要な行為のみを実施できる研修です。重度訪問介護や障害者支援施設、特別支援学校など、日常的に同じ利用者へケアを提供する現場で活用されます。

登録研修機関で実施され、修了者は都道府県知事から「認定特定行為業務従事者認定証」(第3号)の交付を受けます。さらに事業所側も「登録特定行為事業者」として都道府県に登録することで、合法的に喀痰吸引等の提供が可能になります。

第1号・第2号・第3号研修の違い

3区分は「対象利用者」と「実施できる行為」「カリキュラム時間」が異なります。

区分対象実施できる行為基本研修時間
第1号研修不特定多数の利用者喀痰吸引(口腔内・鼻腔内・気管カニューレ内部)と経管栄養(胃ろう・腸ろう・経鼻)の全行為講義50時間+演習
第2号研修不特定多数の利用者第1号の行為のうち気管カニューレ内部吸引と経鼻経管栄養を除く限定行為講義50時間+演習
第3号研修特定の利用者(個別対象)その利用者に必要な行為のみ講義8時間+演習1時間

第3号は対象が個別の利用者に限定される代わりに、講義時間が大幅に短く、費用負担も軽い点が特徴です。利用者が変わると、新たに当該利用者向けの実地研修を改めて修了する必要があります。

第3号研修のカリキュラム構成

厚生労働省の「介護職員等による喀痰吸引等の実施のための研修」に基づき、基本研修と実地研修で構成されます。

研修区分内容時間
基本研修(講義)重度障害児・者の地域生活等に関する講義2時間
基本研修(講義)喀痰吸引等を必要とする重度障害児・者の障害および支援に関する講義3時間
基本研修(講義)緊急時の対応および危険防止に関する講義3時間
基本研修(演習)喀痰吸引・経管栄養に関する演習(シミュレーター使用)1時間
実地研修対象利用者本人に対する喀痰吸引・経管栄養(医師・看護師の指導下)回数制限なし(評価で習得認定まで)

基本研修は最短2日程度で修了できるカリキュラム設計です。実地研修は利用者ごとに行い、医師・看護師が技能評価を行ったうえで修了が認められます。

第3号研修の受講手順

  1. 登録研修機関を探す:都道府県が指定する「登録研修機関」を確認し、第3号研修を実施している事業者を選びます。社会福祉法人や民間スクールが各地で実施しています。
  2. 基本研修(講義8時間+演習1時間)を受講:座学で重度障害児・者の支援、緊急時対応、危険防止を学び、シミュレーターで吸引・経管栄養の演習を行います。
  3. 筆記試験を受験:講義内容の理解度を確認するための修了試験に合格します。
  4. 実地研修を受講:対象となる特定の利用者本人に対して、医師・看護師の指導のもとで実技を行い、評価表に基づき判定を受けます。回数制限はなく、習得が認められるまで継続します。
  5. 修了証明書の発行と認定証申請:登録研修機関から修了証明書を受け取り、都道府県に「認定特定行為業務従事者認定証」(第3号)を申請します。
  6. 事業所が登録特定行為事業者として登録:勤務先事業所が都道府県に登録申請を行うことで、業務として喀痰吸引等を実施できます。

第3号研修を活かすための実務ポイント

  • 重度訪問介護事業所では必須クラスの研修:ALSや重症心身障害児者の自宅でのケアを24時間体制で支える重度訪問介護では、第3号研修修了者の配置が運営の前提になります。
  • 利用者ごとに実地研修が必要:認定証は「特定の利用者向け」のため、担当利用者が変わるたびに新たな実地研修を受講します。事業所内で実地研修指導者(医師・看護師)との連携体制を確認しておきます。
  • キャリアの第一歩として選びやすい:基本研修が9時間と短く、費用も第1号・第2号より抑えられるため、医療的ケアの入口として取得する介護職員が増えています。
  • 処遇改善加算との接続:登録特定行為事業者の事業所は、喀痰吸引等実施加算の算定が可能で、賃金改善原資として処遇改善加算と組み合わせて評価される傾向があります。

第3号研修のよくある質問

Q. 第3号研修だけ受講した介護職員は、別の利用者にも喀痰吸引できますか?
A. できません。第3号研修の認定証は「特定の利用者」に限定されるため、対象が変われば新たな実地研修と認定証の追加が必要です。不特定の利用者へ対応するなら第1号・第2号研修の修了が必要になります。
Q. 基本研修の8時間は、どのような形式で行われますか?
A. 多くの登録研修機関ではオンラインまたは集合形式の講義として実施されます。重度障害児・者の地域生活、障害特性、緊急時対応の3科目に時間が割り当てられ、最後に1時間の演習でシミュレーターを使った技術練習を行います。
Q. 実地研修はどれくらいの期間がかかりますか?
A. 利用者の状態や技能習得状況によりますが、短い人で1日、長い人で3日程度です。医師・看護師による評価表で「適切に実施できる」と認められた段階で修了となります。
Q. 介護福祉士でも第3号研修は別途必要ですか?
A. 2017年以降に医療的ケアを含む新カリキュラムで介護福祉士を取得した人は、勤務先利用者の実地研修のみで喀痰吸引等が可能になる場合があります。それ以前に登録された介護福祉士は、原則として第3号研修の修了が必要です。
Q. 費用の相場はどれくらいですか?
A. 登録研修機関によりますが、基本研修と実地研修を合わせて2万〜5万円程度が一般的です。事業所が研修費を負担するケースも多くあります。

出典・参考資料

  • 厚生労働省「喀痰吸引等制度について
  • 厚生労働省「介護職員等による喀痰吸引等の実施のための研修(第三号研修)カリキュラム」
  • 厚生労働省「社会福祉士及び介護福祉士法施行規則」(喀痰吸引等業務の登録要件)
  • 各都道府県「登録研修機関一覧・登録特定行為事業者一覧」
  • 独立行政法人福祉医療機構(WAM NET)「重度訪問介護従業者養成研修 統合課程」

まとめ

喀痰吸引等研修 第3号研修は、ALSや重症心身障害児者など特定の利用者に対する喀痰吸引・経管栄養を行うための短時間カリキュラムです。基本研修9時間と利用者ごとの実地研修で修了でき、重度訪問介護や障害者支援施設のケアを支える基盤資格となります。1号・2号との違いを理解したうえで、自分のキャリアと現場のニーズに合った区分を選ぶことが重要です。

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執筆者

介護のハタラクナカマ編集部

編集部

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