
シーティングとは
シーティングとは車いすや椅子で適切な座位姿勢を整える支援です。ずり落ちや仙骨座り、褥瘡、誤嚥の予防と活動性・QOL向上を目的に、クッションや骨盤の角度を調整します。
シーティングの定義(直接回答)
シーティングとは、車いすや椅子に長時間座る人の心身機能や生活状況に合わせて、良好な座位姿勢を保てるように車いす・椅子やクッションを評価・調整する支援技術です。単に座らせるのではなく、ずり落ちや仙骨座りを防ぎ、褥瘡や誤嚥のリスクを下げながら、食事や活動のしやすさと生活の質(QOL)を高めることを目的とします。
目次
シーティングの概要と位置づけ
シーティングとは何か
シーティングとは、座位で行うさまざまな活動や参加を支援するために、姿勢を快適に安定させ、必要な動きを促すための最適なサポートと調整を実現する技術の総称です。厚生労働省の「高齢者の適切なケアとシーティングに関する手引き」では、シーティングによって整えられた椅子・車いすやその付属品は、国際生活機能分類(ICF)の「環境因子」に位置づけられると整理されています。環境を変えることで、本人の心身機能・活動・参加を促し、尊厳ある自立した生活を支えることがねらいです。
制度上の動きとして、2017年には診療報酬上で疾患別リハビリテーション料における「シーティング」の算定が認められ、2021年度の介護報酬改定では介護保険サービスのなかにシーティングの考え方が組み込まれました。医療・介護の両面で、座る姿勢を整えること自体が専門的なケアとして評価されるようになっています。
重要なのは、ただ一つの「正しい姿勢」を押しつけることではない点です。人は本来、目的や場面に応じて姿勢を変えながら生活しており、シーティングでも「変化と多様性の確保」が基本とされます。偏った姿勢が固定化しないように整えることが、関節拘縮や褥瘡などの二次障害の予防につながります。
シーティングの目的と基本要素
主な目的
- ずり落ち・仙骨座り(滑り座り)の防止:骨盤が後ろに倒れてお尻が前に滑る姿勢を防ぎ、安定した座位を保つ。
- 褥瘡(床ずれ)の予防:体圧を分散させ、仙骨部など一点への圧迫を減らす。
- 誤嚥の予防:頭部や体幹を支えて前のめりを防ぎ、食事に適した姿勢を整える。
- 活動性とQOLの向上:安定した姿勢により食事・会話・作業など日常動作が行いやすくなる。
- 介護者の負担軽減:姿勢が安定すると、座り直しや見守りの手間が減る。
調整する基本要素
- 座面クッション:体圧分散と骨盤の安定。前滑りを抑える形状のものを選ぶ。
- 骨盤の角度:骨盤がまっすぐ、またはわずかに前傾する位置を目指す。
- バックサポート(背もたれ):体幹を左右・後方から支え、背骨の自然なカーブを保つ。
- フットサポート(足台):足裏がしっかり接地する高さに合わせ、ずり落ちを防ぐ。
- ティルト・リクライニング機能:座位を保てない人は座面ごと後傾させて姿勢を安定させる。
シーティングとポジショニングの違い
ポジショニングとの違い
シーティングと混同されやすい言葉に「ポジショニング」があります。両者はどちらも姿勢を整える支援ですが、対象とする姿勢と用具が異なります。
| 項目 | シーティング | ポジショニング |
|---|---|---|
| 主な姿勢 | 座位(座った姿勢) | 臥位(寝た姿勢)が中心 |
| 主な場面 | 車いす・椅子での生活、食事、活動 | ベッド上での休息、体位変換 |
| 主な用具 | 車いす、座面クッション、バックサポート | ベッド、体位変換用クッション、枕 |
| 共通の目的 | 褥瘡・拘縮・誤嚥などの二次障害の予防と、安楽・活動性の確保 | |
実際のケアでは、ベッド上でのポジショニングと車いす上でのシーティングは連続したものとして考えます。寝ている時間と座っている時間の両方で姿勢を整えることが、二次障害の予防につながります。
シーティングに関わる専門職と観察ポイント
関わる専門職と現場での観察ポイント
関わる専門職
シーティングは多職種で取り組むケアです。理学療法士(PT)や作業療法士(OT)が座位能力の評価と用具の調整を担い、福祉用具専門相談員が車いすやクッションの選定・適合を支援します。看護師は皮膚や褥瘡の状態を、言語聴覚士(ST)は食事姿勢と嚥下を確認します。ケアマネジャーが全体の計画をまとめ、日々ケアにあたる介護職員と家族が変化に気づく役割を担います。
厚生労働省の手引きでは、介護職員は高齢者の最も近くにいて普段との違いに気づく「課題の第一発見者」と位置づけられ、必要に応じてリハビリ専門職へ相談することが重要とされています。
現場での観察ポイント
- お尻が前に滑っていないか(仙骨座りになっていないか)
- 体が左右どちらかに傾いていないか
- 足裏がフットサポートにしっかり接地しているか
- 頭や首が前に倒れ、食事や呼吸がしづらくなっていないか
- お尻や腰に痛みや赤みがないか(褥瘡の前兆)
これらは床ずれや誤嚥のサインにつながるため、気づいた段階で専門職に共有することが大切です。
シーティングのよくある質問
よくある質問
Q. シーティングとポジショニングは何が違いますか。
シーティングは主に座った姿勢(座位)を車いすやクッションで整える支援、ポジショニングは主に寝た姿勢(臥位)をベッド上で整える支援です。どちらも褥瘡や拘縮などの予防という目的は共通しています。
Q. シーティングは誰が行うのですか。
理学療法士・作業療法士・福祉用具専門相談員などの専門職が評価と調整を担い、介護職員や家族が日々の変化に気づいて共有します。多職種が連携して取り組むのが基本です。
Q. なぜ座る姿勢を整えるだけで褥瘡や誤嚥を防げるのですか。
骨盤や足の位置が整うと体圧が一点に集中しにくくなり、床ずれの予防につながります。また頭や体幹が支えられると前のめりを防げるため、食事中の誤嚥のリスクを下げられます。
Q. シーティングは介護保険の対象になりますか。
2021年度の介護報酬改定でシーティングの考え方が介護保険サービスに位置づけられ、車いすやクッションは福祉用具貸与・購入の対象になる場合があります。詳細はケアマネジャーや福祉用具専門相談員に確認してください。
シーティングの参考資料
- [1]
- [2]
- [3]
シーティングのまとめ
まとめ
シーティングは、車いすや椅子で適切な座位姿勢を整えることで、ずり落ちや仙骨座り、褥瘡、誤嚥を防ぎ、活動性とQOLを高める支援です。一つの正しい姿勢を固定するのではなく、骨盤・クッション・フットサポートなどを調整し、その人に合った安定した座り方を多職種で実現していくことが基本となります。日々の小さな変化に気づき、専門職へつなぐことが質の高いケアの第一歩です。
この用語に関連する記事

車椅子のシーティング|ずり落ち・仙骨座りを防ぐ姿勢保持とクッション・フットレスト調整
車椅子のシーティングとは座位姿勢を整える技術。ポジショニングとの違い、仙骨座り・ずり落ちが招く褥瘡や誤嚥、90度ルール、座面・背もたれ・フットレスト・クッションの調整、PT・OTとの連携まで介護職向けに実務解説。

介護中の親のお風呂環境作り|ヒートショック対策・福祉用具・浴室リフォームの段階的整備
親の介護でお風呂環境をどう整えるか、消費者庁・厚労省の公的データに基づき解説。ヒートショック予防の温度差5℃以内ルール、介護保険で買える入浴補助用具7品目、住宅改修20万円給付の活用、滑り止め・手すり・シャワーチェア・浴室暖房の段階的導入、訪問入浴への切替判断まで網羅。

家庭でできる高齢者の転倒予防|住環境チェック・運動・薬剤見直しの3本柱
高齢者の転倒は要介護原因の13.9%。住環境チェックリスト、ロコトレ、薬剤見直し、介護保険住宅改修の活用法を国立長寿医療研究センター・厚労省・東京消防庁データで解説。家族が今日から始められる転倒予防策。

介護家族の腰痛を防ぐ|ボディメカニクス・福祉用具・ストレッチで体を守る方法
ご家族の介護で生じる腰痛を予防し、長く介護を続けるための実践ガイド。厚労省指針・ボディメカニクス7原則・介護保険の福祉用具レンタル・ストレッチ・受診すべき危険サインまで体系的にまとめました。
執筆者
介護のハタラクナカマ編集部
編集部
介護業界の転職・キャリア情報を発信。厚生労働省の公的データと現場の声をもとに、介護職で働く方・転職を検討する方に役立つ情報をお届けしています。