
6分間歩行試験(6MWT)とは
6分間歩行試験(6MWT)は平らな場所を6分間でできるだけ歩き、その距離で持久力・運動耐容能・心肺機能を評価する検査。方法、SpO2や息切れの観察・中止基準、距離の目安、TUGやCS-30との違いを解説。
6分間歩行試験(6MWT)の定義
6分間歩行試験(6MWT、6-Minute Walk Test)とは、平らな場所を6分間でできるだけ長く歩き、その歩行距離(6分間歩行距離、6MWD)から持久力や運動耐容能、心肺機能を評価する検査です。特別な機器がいらず、COPD(慢性閉塞性肺疾患)や心不全のリハビリ効果の判定に広く使われます。日常生活に近い「歩き続ける力」を直接みられるのが特徴です。
目次
6分間歩行試験(6MWT)の概要
6分間歩行試験は、患者さん自身が選んだペースで6分間歩き、その間に進めた合計距離(6分間歩行距離、6MWD)を測る「フィールド歩行テスト」のひとつです。トレッドミルや自転車エルゴメーターを使う運動負荷試験と違い、平らな廊下を往復するだけで実施でき、日常生活の動作にもっとも近いかたちで「歩き続ける力(持久力)」を評価できます。
評価できるのは主に次の3つです。第一に機能的運動耐容能、つまりどれだけの身体活動に耐えられるかという全身の余力です。第二に歩行持久力で、外出や買い物といった生活範囲の広さに直結します。第三に心肺機能の代理指標で、運動中にどれだけ酸素を取り込めるかの目安になります。最大酸素摂取量(VO2peak)との相関も報告されており、簡便ながら全身状態をよく反映します。
アメリカ胸部学会(ATS、American Thoracic Society)がガイドラインを示しており、歩行コースは30mの平坦な直線を折り返して使うことが推奨されています。コースが短いと折り返しの回数が増えて距離が短く出やすいため、施設内で条件をそろえ、同じコースで経過を追うことが大切です。検査前は椅子に座って10分ほど安静を保ち、安静時の心拍数・血圧・必要に応じてSpO2(経皮的動脈血酸素飽和度)を確認してから始めます。
対象となるのはCOPDや間質性肺疾患などの呼吸器疾患、慢性心不全などの循環器疾患が中心ですが、フレイルや手術後、リハビリ全般の効果判定にも応用されます。介護現場では、利用者がどの程度の距離を歩けるかを客観的な数字でとらえ、外出支援や活動量アップの計画づくり、リハビリ前後の変化の見える化に役立ちます。
6分間歩行試験(6MWT)の方法と中止基準
6分間歩行試験の進め方と観察・中止基準
実施の流れと、安全に行うための観察ポイントは次のとおりです。
- 準備:椅子座位で10分ほど安静をとり、安静時の心拍数・血圧・SpO2・息切れ(Borgスケール)を記録します。ふだん使っている杖・歩行器・在宅酸素などは原則そのままの条件で行います。
- 教示:「6分間にできるだけ長い距離を歩いてください」「つらければ立ち止まったり休んだりしてかまいません(時間は止めません)」と説明します。
- 声かけ:成績が変わらないよう、1分ごとに決まった言葉だけをかけます。例として「順調です。あと5分です」「半分まで来ました」のように、残り時間と励ましを一定の文言で伝えます。余計な応援はしません。
- 測定:6分後に歩いた合計距離(6MWD)を記録し、終了直後の心拍数・SpO2・息切れ・疲労感も測ります。前後の変化をセットで残すことが重要です。
ただちに中止する基準(ATSガイドライン)として、次のいずれかがあれば検査を止めます。
- 胸痛・狭心症を思わせる症状
- SpO2が85%未満に低下(または安静時から急激に低下)
- 耐えがたい呼吸困難(Borgスケールで強い息切れ)
- 強いふらつき・失調の悪化・転倒の危険
- 顔面蒼白・多量の冷や汗・チアノーゼ
- 本人が「もう続けられない」と明確に訴えたとき
一方、歩行速度の低下や軽い疲労感、許可した範囲での休憩はただちに中止する理由にはなりません。タイマーは止めずに観察を続けます。重い低酸素症状が出る前に終了する判断が、安全な実施の基本です。
6分間歩行試験(6MWT)の距離の目安
歩行距離(6MWD)の目安と読み方
6分間歩行距離は年齢・性別・身長・体重で変わるため、数値だけで良し悪しを断定しないのが原則です。そのうえで、解釈の目安として次のような値が知られています。
- 健常者の予測距離の例(Enright & Sherrill 1998の予測式より):60〜69歳でおおむね男性535m前後・女性490m前後、70〜79歳で男性500m前後・女性455m前後。
- COPD:350m未満で予後不良のリスクが高まるとされます。リハビリ前後で意味のある変化量(MCID、最小臨床重要差)は25〜33m程度(中央値30m前後)です。
- 慢性心不全:300m未満で入院リスクが高い一方、450mを超えると生活上の機能的自立の目安とされます。意味のある変化量はおよそ36m前後です。
- 生活範囲の目安:一般に400m以下になると外出に制限が出やすく、200m以下では生活範囲が身近な範囲に限られやすいといわれます。
大切なのは「1回の絶対値」よりも「同じ条件での変化」です。同じコース・同じ補助具・同じ時間帯でくり返し測り、距離が前回より30m前後以上のびていれば、リハビリや運動の効果が表れているサインと読み取れます。
6分間歩行試験(6MWT)と他の体力評価の違い
CS-30・TUGなど他の体力評価との違い
体力評価にはいくつもの方法があり、それぞれ測っているものが異なります。6分間歩行試験は「歩き続ける持久力・運動耐容能」を測る点で他と区別されます。
- 6MWT(6分間歩行試験):6分間で歩ける距離。全身の持久力・運動耐容能・心肺機能をみる。外出や生活範囲の広さの予測に向く。
- TUGテスト:椅子から立ち上がり3m歩いて戻り座るまでの時間。動的バランスと転倒リスクの評価が中心で、持久力は測らない。
- CS-30(30秒椅子立ち上がりテスト):30秒間に立ち座りできた回数。主に下肢筋力をみる。心肺の持久力とは別の指標。
- SPPB(簡易身体能力バッテリー):バランス・歩行速度・立ち上がりの3項目を12点満点で総合評価。下肢機能の全体像をみる。
- 歩行速度(10m歩行など):歩く速さの効率をみる。短距離の速度であり、6MWTのように長く歩き続ける耐久力は測らない。
つまり、転倒リスクを知りたいならTUG、下肢筋力ならCS-30、下肢機能全体ならSPPB、そして「どれだけ動き続けられるか・外出できるか」という運動耐容能を知りたいときに6MWTが選ばれます。目的に応じて組み合わせると、利用者の状態を立体的にとらえられます。
6分間歩行試験(6MWT)の介護現場での活かし方
介護現場での活かし方
6分間歩行試験は医療・リハビリの検査ですが、その結果は介護の計画づくりにも役立ちます。歩けた距離を「外出のしやすさ」の目安として共有すれば、買い物や通院、散歩などの外出支援をどこまで見込めるかをチームで判断しやすくなります。たとえば距離が短い利用者には休憩ポイントを多めにした外出計画を、距離がのびてきた利用者には活動範囲を少しずつ広げる計画を立てられます。
リハビリ前後で同じ条件をそろえて測り、距離の変化を記録に残すと、運動やリハビリの効果が数字で見えるようになります。本人や家族に「前より◯m長く歩けるようになりました」と伝えれば、モチベーションの向上にもつながります。実施・解釈は理学療法士や看護師など専門職が担いますが、介護職もSpO2や息切れの様子、休憩の頻度を共有することで、安全で根拠のある支援に役立てられます。
6分間歩行試験(6MWT)のよくある質問
6分間歩行試験は何のために行いますか?
6分間でできるだけ長く歩いた距離から、持久力・運動耐容能・心肺機能を評価するために行います。COPDや心不全の重症度の把握、リハビリや治療の効果判定、外出など生活範囲の見通しに使われます。
歩くコースの長さは決まっていますか?
ATSガイドラインでは30mの平坦な直線を折り返すことが推奨されています。施設の都合で短くなる場合は、同じコースに固定して経過を比較することが大切です。
途中で休んでもいいですか?
はい。つらければ立ち止まったり休んだりしてかまいません。ただしタイマーは止めず、休んだ時間も6分に含まれます。歩ける範囲で再開します。
どんなときに検査を中止しますか?
胸痛、SpO2が85%未満への低下、耐えがたい息切れ、強いふらつき、顔面蒼白や多量の冷や汗、本人が続けられないと訴えたときは、ただちに中止します。
何メートル歩ければよいのですか?
年齢や性別で変わるため一概には言えません。目安としてCOPDで350m未満、心不全で300m未満は注意が必要とされます。重要なのは絶対値よりも、同じ条件で測ったときの距離の変化です。
6分間歩行試験(6MWT)の参考資料
- [1]ATS Statement: Guidelines for the Six-Minute Walk Test (2002)- American Thoracic Society / Am J Respir Crit Care Med
6MWTの標準プロトコル。30mコース、1分ごとの定型的な声かけ、即時中止基準(SpO2低下・胸痛・ふらつき等)を定めた一次ガイドライン。
- [2]6分間歩行試験について- 日本呼吸ケア・リハビリテーション学会誌(J-STAGE)
6MWTの目的・方法・測定項目(HR・SpO2・呼吸困難)と、300m未満で予後不良などの解釈、COPDのMCID(25〜33m)を解説した査読論文。
- [3]Reference equations for the six-minute walk in healthy adults (Enright & Sherrill 1998)- Am J Respir Crit Care Med
健常成人の6分間歩行距離の予測式。年齢・性別・身長・体重から目安距離を推定する根拠論文。
- [4]
6分間歩行試験(6MWT)のまとめ
まとめ
6分間歩行試験(6MWT)は、平らな場所を6分間でできるだけ歩き、その距離で持久力・運動耐容能・心肺機能を評価する検査です。特別な機器がいらず、COPDや心不全のリハビリ効果の判定に広く使われます。実施時はSpO2や息切れを観察し、SpO2が85%未満になるなどの中止基準に注意します。距離は年齢や性別で変わるため、絶対値より同じ条件での変化に注目するのが基本です。転倒リスクを測るTUG、下肢筋力をみるCS-30とは目的が異なり、「どれだけ動き続けられるか」を知りたいときに選ばれます。
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執筆者
介護のハタラクナカマ編集部
編集部
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