
地域支援事業とは
地域支援事業は市町村が主体で実施する介護保険の事業群。総合事業・包括的支援事業・任意事業の3区分と、地域包括支援センターの位置づけ、財源構成までを一次資料ベースで整理します。
この記事のポイント
地域支援事業とは、市町村が介護保険法第115条の45に基づき実施する事業群で、高齢者が要介護状態になることを予防し、住み慣れた地域で自立した生活を送れるよう支える取り組みです。「介護予防・日常生活支援総合事業」「包括的支援事業」「任意事業」の3区分で構成され、地域包括支援センターの運営を含みます。
目次
地域支援事業の位置づけ
地域支援事業は、2006年(平成18年)4月の改正介護保険法の施行と同時に創設されました。介護保険のサービスが「要介護・要支援認定を受けた人への給付」を中心としているのに対し、地域支援事業は認定の有無を問わず、地域に暮らすすべての高齢者を対象とした予防的・包括的な仕組みです。実施主体は市町村(特別区を含む)で、財源は介護保険料・公費・利用者負担で賄われます。
事業の目的は、介護保険法第115条の45で次のように規定されています。被保険者が要介護状態または要支援状態になることを予防し、社会に参加しつつ、地域において自立した日常生活を営むことができるよう支援することです。これを実現するため、地域包括ケアシステムの中核機関である地域包括支援センターを市町村が設置し、相談・予防・権利擁護・ケアマネジメント支援を一体的に提供します。
地域支援事業は大きく3つの区分で構成されます。第1に、要支援者と基本チェックリスト該当者を対象とする「介護予防・日常生活支援総合事業(総合事業)」。第2に、地域包括支援センターの運営や認知症施策・在宅医療介護連携などを担う「包括的支援事業」。第3に、市町村が地域の実情に応じて選択する「任意事業」です。それぞれが補完し合いながら、住み慣れた地域での暮らしを支えます。
地域支援事業の3区分
1. 介護予防・日常生活支援総合事業(総合事業)
要支援1・2の人、および基本チェックリストで事業対象者と判定された人を対象とする事業です。介護予防・生活支援サービス事業(訪問型サービス・通所型サービス・その他の生活支援サービス・介護予防ケアマネジメント)と、一般介護予防事業(65歳以上の全高齢者を対象とした介護予防把握・普及啓発・地域介護予防活動支援・一般介護予防事業評価・地域リハビリテーション活動支援)の2系統があります。
2. 包括的支援事業
地域包括支援センターの運営を中核とし、4つの基本業務(総合相談支援、権利擁護、包括的・継続的ケアマネジメント支援、第1号介護予防支援事業)に加えて、社会保障充実分として在宅医療・介護連携推進事業、生活支援体制整備事業、認知症総合支援事業、地域ケア会議推進事業を実施します。地域包括支援センターには社会福祉士・主任介護支援専門員・保健師(または準ずる職種)の3職種が配置されます。
3. 任意事業
市町村が地域の実情に応じて実施する事業で、介護給付費等費用適正化事業(ケアプラン点検・住宅改修指導など)、家族介護支援事業(介護教室・認知症高齢者見守り)、その他の事業(成年後見制度利用支援・福祉用具住宅改修支援など)が含まれます。実施は任意のため、自治体ごとにメニューが異なります。
介護給付サービスとの違い
介護保険には大きく「介護給付・予防給付」と「地域支援事業」の2つの柱があります。両者の違いを整理すると次のとおりです。
対象者の違い
介護給付・予防給付は要介護1〜5・要支援1〜2の認定を受けた被保険者が対象です。一方、地域支援事業のうち総合事業の介護予防・生活支援サービス事業は要支援者と基本チェックリスト該当者、一般介護予防事業は65歳以上の全高齢者、包括的支援事業は地域に暮らすすべての高齢者と家族が対象になります。
サービスの提供主体
介護給付は都道府県・市町村の指定を受けた事業者が全国共通の基準で提供します。地域支援事業の総合事業は市町村が基準を設定でき、NPO・ボランティア・民間企業など多様な主体が参画できる柔軟な制度設計です。
報酬の決まり方
介護給付は介護報酬として全国統一の単位数で算定されます。総合事業の単価は市町村が独自に設定でき、訪問型サービスA(緩和した基準によるサービス)など低廉な単価メニューも設けられます。
介護職のキャリアにどう関わるか
地域支援事業は、介護施設や訪問介護事業所で働く介護職にとっても無関係ではありません。地域包括支援センターには主任介護支援専門員・社会福祉士・保健師が配置され、介護現場で経験を積んだ介護福祉士が主任介護支援専門員を経由してセンター職員になるキャリアパスがあります。
また、総合事業の訪問型・通所型サービスでは、緩和した基準(訪問型サービスA・通所型サービスA)により無資格・短時間の従事者でも従事できる枠組みが設けられており、介護助手や生活支援員の入口として機能しています。介護職員初任者研修修了者がパート・登録ヘルパーとして関わるケースも多く、要介護認定前の段階から高齢者と関わることで予防的視点が養われます。
転職活動でも、求人票の「総合事業対応」「地域包括支援センター連携」などの記載は、その事業所が地域とのつながりを大切にしているシグナルです。職場選びの判断材料として活用できます。
よくある質問
Q. 地域支援事業は誰が実施するのですか?
A. 市町村(特別区を含む)が実施主体です。介護保険法第115条の45で規定されており、市町村が地域の実情に応じて事業内容を設計します。
Q. 総合事業のサービスは要介護認定がなくても使えますか?
A. 介護予防・生活支援サービス事業は、要支援1・2の認定を受けた人のほか、地域包括支援センターで基本チェックリストを受けて事業対象者と判定された人が利用できます。一般介護予防事業(介護予防教室など)は65歳以上の全高齢者が対象です。
Q. 地域包括支援センターは地域支援事業の一部ですか?
A. 地域包括支援センターの運営は包括的支援事業に含まれます。市町村が直営または社会福祉法人・医療法人などへの委託で設置し、人口おおむね2〜3万人ごとに1か所が目安とされています。
Q. 任意事業にはどのようなものがありますか?
A. ケアプラン点検などの介護給付費等費用適正化事業、介護教室・認知症高齢者見守り事業などの家族介護支援事業、成年後見制度利用支援事業などがあります。市町村によって実施メニューは異なります。
まとめ
地域支援事業は、市町村が主体となり高齢者の介護予防と地域での自立した生活を支える介護保険の事業群です。総合事業・包括的支援事業・任意事業の3区分で構成され、地域包括支援センターを中核として相談・予防・連携・権利擁護を一体的に提供します。介護給付の手前で機能する予防的な仕組みであり、介護職にとっても地域包括支援センターでのキャリアや総合事業での就業機会など、関わり方は広がっています。
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執筆者
介護のハタラクナカマ編集部
編集部
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