CS-30(30秒椅子立ち上がりテスト)とは

CS-30(30秒椅子立ち上がりテスト)とは

CS-30は椅子から立ち座りを30秒間に何回できるかで下肢筋力を測るテストです。測り方、中谷らの年代別標準値、転倒・サルコペニア・ロコモとの関係、介護予防での活用を解説します。

ポイント

CS-30とは(直接回答)

CS-30(30-second Chair Stand test、30秒椅子立ち上がりテスト)とは、椅子から立ち上がって座る動作を30秒間に何回くり返せるかで下肢の筋力を評価する体力テストです。高さ40cmの椅子に座り、腕を胸の前で組んだ状態で行います。特別な機器が要らず、椅子とストップウォッチがあればどこでも実施でき、介護予防や機能訓練の現場で下肢筋力の指標として広く使われています。

目次

CS-30の概要と成り立ち

CS-30(30秒椅子立ち上がりテスト)の概要

CS-30は、椅子からの立ち座りという日常的な動作を使って下肢筋力を簡便に評価する方法です。立ち上がり動作には股関節、膝関節、足関節を協調して伸ばす力が必要で、大腿四頭筋(太ももの前)だけでなく、大殿筋(おしり)やハムストリングス(太ももの裏)の筋力、さらに30秒間動作をくり返す筋持久力も反映します。そのため、CS-30は下肢全体の総合的な筋機能のスクリーニングとして機能します。

もとになったのは、Jonesらが1999年に地域在住高齢者の下肢筋力評価として考案した30秒椅子立ち上がりテストです。これを日本人向けに修正・標準化したのが中谷敏昭らの研究で、日本人高齢者を対象とした妥当性検証(体育学研究、2002年)と、年代別・性別の標準値の作成(臨床スポーツ医学、2003年)が行われています。中谷らの研究では、CS-30の回数と膝伸展筋力との間に有意な相関が報告されており、機器を使った筋力測定の代わりとなる現場向けの指標として位置づけられています。

機器を使う等尺性膝伸展筋力の測定と違い、CS-30は椅子1脚とストップウォッチだけで実施できます。この手軽さから、病院のリハビリだけでなく、地域の体力測定会、介護予防教室、デイサービスの機能訓練など、設備の限られた場でも下肢筋力の変化を追える点が大きな利点です。

CS-30の測り方の手順

CS-30の測り方

標準的な手順は中谷らの方法に準じ、次のように行います。

  1. 高さ40cmの椅子に、やや浅めに腰かける。背もたれには寄りかからない。
  2. 両足を肩幅程度に開いて床につけ、かかとはやや手前に引く。体幹を少し前傾させる。
  3. 腕は胸の前で交差させて組む(反動や手の支えを使わないため)。
  4. 「はじめ」の合図で、ひざが完全に伸びるまで立ち上がり、再び座る。これを30秒間くり返す。
  5. 30秒間に完全に立ち上がれた回数を記録する。途中で立ち上がりかけた回も、しっかり立ち切れていれば1回として数える。

転倒の危険があるため、測定者は対象者のそばに付き添います。手すりなどの補助具は安全確保のために用いてもよいですが、腕の力で体を押し上げるのは原則として不可です。痛みや強い疲労がある場合は無理をさせず中止します。立ち上がった回数(量)だけでなく、ひざが内側に入っていないか、上肢で代償していないか、後半でフォームが崩れていないかといった動作の質も合わせて観察すると、筋力強化や動作指導など次の介入の手がかりになります。

CS-30の年代別・性別の目安(標準値)

年代別・性別の目安(標準値)

CS-30の回数は年齢と性別で大きく変わるため、回数そのものではなく「同年代の中でどの水準か」で見るのが基本です。次の表は、中谷らが日本人を対象に作成した5段階評価(臨床スポーツ医学、2003年)のうち、65歳以上の「普通(ふつう)」にあたる回数の目安を抜き出したものです。この範囲を下回る場合、同年代の平均より下肢筋力が低下している可能性を示します。

65歳以上の「普通」の目安(30秒あたりの回数)

年齢男性女性
65〜69歳18〜21回17〜21回
70〜74歳16〜20回15〜19回
75〜79歳15〜17回13〜17回
80歳以上14〜16回13〜16回

原典の評価表は「優れている・やや優れている・普通・やや劣っている・劣っている」の5段階で構成されており、たとえば男性70〜74歳では11回以下が「劣っている」、25回以上が「優れている」に相当します。回数が「劣っている」段階に入る場合は、転倒や生活動作の低下のリスクが高まっていないか、専門職による評価につなげることが望まれます。

CS-30と転倒・サルコペニア・ロコモの関係

転倒・サルコペニア・ロコモとの関係

CS-30の回数低下は、下肢筋力の低下を通じて次のような状態と関連することが報告されています。

  • 転倒リスク:立ち上がりやバランスに必要な下肢筋力を反映するため、回数が少ないほど転倒の危険が高まりやすいとされ、転倒予防の評価指標として用いられます。
  • サルコペニア(加齢に伴う筋肉量・筋力の低下):日本の地域在住高齢者を対象とした研究では、CS-30がサルコペニアのスクリーニングに有用とされ、男性17回以下・女性15回以下がサルコペニアを疑うカットオフ値の一例として報告されています(BMC Musculoskeletal Disorders)。あくまでスクリーニングの目安であり、確定にはAWGS2019などの正式な診断基準による評価が必要です。
  • ロコモティブシンドローム(運動器の障害で移動機能が低下した状態):下肢筋力はロコモの主要な構成要素であり、CS-30の低下はロコモのチェックにも活用されています。
  • フレイル:外来高齢者を対象とした近年の研究(理学療法学、2026年)では、CS-30を年齢・性別で5段階に分けたグレードと、基本チェックリスト(KCL)によるフレイル評価との間に有意な関連が示され、CS-30のグレードが高いほどフレイルの割合が段階的に低いことが報告されています。

ただし、CS-30は筋力だけでなくバランス能力や注意の持続機能なども反映するため、「回数=筋力」と単純に解釈しすぎないことも重要です。複数の指標と合わせて総合的に判断します。

CS-30の介護予防・機能訓練での活用

介護予防・機能訓練での活用

CS-30は変化への感度が高く、運動の効果を「見える化」しやすいのが特長です。介護予防教室やデイサービスの機能訓練では、開始時にCS-30を測り、数週間〜数か月後に再測定して回数の増減で取り組みの成果を確認する使い方が一般的です。回数が増えれば本人のモチベーション向上にもつながります。

注意点として、CS-30には最小検出変化量(測定誤差として説明できる範囲)が報告されており、2〜3回程度の差は誤差の範囲内として慎重に解釈する必要があります。1回測るだけで一喜一憂せず、同じ椅子の高さ・同じ手順で継続して測り、傾向で評価することが大切です。下肢筋力を高めるには、スクワットや椅子からの立ち上がり運動など、立ち座りに近い動作の反復が有効とされています。

CS-30のよくある質問

よくある質問

CS-30とTUG(Timed Up and Go)は何が違いますか?

CS-30は30秒間の立ち座りの回数で主に下肢の筋力・筋持久力を評価します。一方TUGは、椅子から立ち上がって3m歩いて戻って座るまでの時間を測り、歩行やバランス、動作の俊敏さを含めた移動能力を評価します。下肢筋力に重点を置くならCS-30、移動全体の能力を見るならTUGと、目的に応じて使い分けます。

椅子の高さは何cmが正しいですか?

中谷らの標準的な方法では高さ40cmの椅子を用います。標準値と比較するには、できるだけ40cmに近い高さで、毎回同じ椅子を使うことが重要です。

腕の力を使って立ってもよいですか?

原則として腕は胸の前で組み、上肢の力は使いません。手で支えないと立てない場合は下肢筋力の低下が示唆されるため、その状態自体が評価の手がかりになります。安全のために手すりを使うのは構いませんが、その場合は記録に残しておきます。

何回以下だと危険ですか?

一律の基準はなく、年齢と性別で見るのが基本です。目安として、男性17回以下・女性15回以下はサルコペニアを疑うカットオフ値の一例として報告されています。気になる場合は理学療法士などの専門職に相談してください。

CS-30の参考資料・出典

CS-30のまとめ

まとめ

CS-30(30秒椅子立ち上がりテスト)は、高さ40cmの椅子からの立ち座りの回数で下肢筋力を簡便に測れるテストです。回数は年齢・性別で大きく変わるため、中谷らの標準値を使って同年代のどの水準かで評価します。転倒・サルコペニア・ロコモ・フレイルとの関連が報告されており、介護予防や機能訓練では運動の効果を見える化する指標として役立ちます。誤差の範囲(2〜3回)に注意しつつ、同じ手順で継続して測ることがポイントです。

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介護のハタラクナカマ編集部

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