グリーンケアファーム(農福連携・ケアファーム)とは

グリーンケアファーム(農福連携・ケアファーム)とは

グリーンケアファームは農業活動を通じて高齢者・障害者・認知症の人にケアを提供する取り組み。オランダで1990年代から発展し日本でも農福連携として2023年度末7,179主体まで拡大。

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この記事のポイント

グリーンケアファーム(Green Care Farm/ケアファーム)とは、農業活動そのものをケアの手段として用い、高齢者・障害者・認知症の人・社会的に困難を抱える人などに作業・交流・リハビリの場を提供する取り組みです。1990年代にオランダで発展した「ケアファーミング(care farming)」が起源で、日本では「農福連携(のうふくれんけい)」として制度化され、令和5年度末で全国7,179主体まで拡大しています。

目次

グリーンケアファームとは|農業×ケアの統合モデル

グリーンケアファームは、農場(farm)を医療・福祉サービスの提供拠点として活用し、土を触る・作物を育てる・動物の世話をするといった農作業を治療的・支援的な活動に位置付けるモデルです。「グリーンケア(green care)」は欧州で広く使われる概念で、農業のほか園芸療法・動物介在療法・自然療法を包含しますが、その中核に位置するのが「ケアファーム」です。

このモデルの特徴は、「ケアを受ける」のではなく「働き手・参加者として農場の運営に関わる」点にあります。施設の中で椅子に座って活動する従来型デイサービスとは異なり、屋外で自然光を浴び、季節の変化を感じ、自分の手で収穫物を生み出すプロセスそのものが、認知機能の維持・精神安定・身体活動量の確保に寄与すると考えられています。

オランダでは1990年代後半から急速に拡大し、認知症高齢者向けデイケアや障害者の就労支援拠点として制度化されました。日本では2019年に「農福連携等推進ビジョン」が策定され、2024年に改訂版が公表され、農林水産省・厚生労働省・内閣官房が連携して取組主体を増やす政策が進められています。

オランダのケアファームモデルが持つ4つの特徴

オランダは「ケアファーム先進国」と呼ばれ、1998年時点で75か所だったケアファームが、2000年代には1,400か所以上にまで増加しました。日本が農福連携を設計するうえで参照モデルとなっており、次の4つの特徴があります。

  • 1. 医療・介護保険制度との接続:オランダではケアファームでのサービスが個人介護予算(PGB:Persoonsgebonden Budget)の対象となり、利用者は公的給付を使ってケアファームを「選ぶ」ことができます。これが市場原理によるサービス品質向上を促しました。
  • 2. 認知症高齢者デイケア機能:多くのケアファームが認知症高齢者向けのデイサービス機能を持ちます。利用者は朝に農場へ通い、家畜の世話・野菜の収穫・調理などに参加し、夕方に帰宅します。徘徊や不穏が減ったという報告もあります。
  • 3. 「労働」と「ケア」の境界をあえて曖昧にする設計:参加者は「患者」ではなく「ファームメンバー」として位置付けられ、農場の生産活動に貢献するという主体性が回復されます。これが自己効力感を高めるとされています。
  • 4. 国レベルの品質保証団体(Federatie Landbouw en Zorg):全国規模のケアファーム連合体が品質基準・研修・認証を担い、玉石混交を防ぎながら数を拡大してきました。

日本の農福連携:拠点数と政策目標

日本における農福連携の取組数は、農林水産省の集計によると以下のように推移しています(出典:農福連携をめぐる情勢/農福連携等推進ビジョン2024改訂版)。

  • 令和元年度(2019年度)末:4,117主体
  • 令和4年度(2022年度)末:6,343主体
  • 令和5年度(2023年度)末:7,179主体(4年間で+3,062主体)
  • 令和12年度(2030年度)末の目標:12,000主体以上
  • 地域協議会の参加目標:200市町村以上

令和4年度末時点の内訳では、約3,300主体が障害者就労施設による取組、約3,000主体が農業経営体・農協による取組となっています。当初は障害者の就労支援が中心でしたが、近年は高齢者介護分野・矯正施設・生活困窮者支援などへ対象が拡大しています。

政策面では、農福連携対象施設の整備費補助(最大1,000万円)、専門人材「農福連携技術支援者」の育成研修、農福連携マルシェの開催支援などが用意されており、介護事業者にとっても新規参入余地があります。

介護事業者・介護職が知っておきたい3つの実務ポイント

  • 認知症ケアとの親和性:農作業は「手続き記憶(procedural memory)」を活用するため、軽度〜中等度認知症の人でも野菜の植え付けや収穫はスムーズに実施できることが多く、達成感を伴うアクティビティとして適しています。バリデーション療法や回想法と組み合わせる事業所もあります。
  • デイサービス・小規模多機能の差別化要素:都市近郊の介護事業者が市民農園・休耕地を借り上げ、屋外プログラムを定期化することで、見学者の印象向上・職員のやりがい向上・新規利用者の獲得につながった例があります。地域包括ケアの「通いの場」としても機能します。
  • 制度活用:農福連携技術支援者の研修は厚労省と農水省の連携事業として実施されており、介護事業者の中堅職員が受講可能です。地域協議会への参加で行政・農業者・福祉施設のマッチング機会が得られます。

グリーンケアファームに関するよくある質問

Q1. グリーンケアファームと農福連携は同じ意味ですか?

ほぼ重なりますが、厳密には異なります。グリーンケアファーム(ケアファーム)は欧州で発祥した「農場をケアの場として活用するモデル」を指す国際用語です。日本ではこの概念を制度化する際に「農業」と「福祉」の連携という言葉に置き換え、「農福連携」として政策用語化しました。実態としては類似の取り組みを指しますが、農福連携は障害者就労支援を主軸に発展してきた経緯があります。

Q2. 認知症高齢者がケアファームに参加するメリットは?

屋外活動による身体活動量の確保、自然光による概日リズムの安定、土・植物・動物との接触による感覚刺激、収穫・調理を通じた達成感などが期待されます。欧州の研究では、不穏行動の減少・食欲増進・夜間の睡眠改善などが報告されていますが、効果の科学的検証は発展途上の領域です。

Q3. 介護事業者が新規にケアファームを始めるには?

休耕地や市民農園の借り上げから小規模に始める方法が一般的です。農福連携技術支援者の研修受講、地域協議会への参加、農水省の整備費補助制度の活用などが第一歩となります。立ち上げ時の安全管理(熱中症・農機具事故)と農業ノウハウの確保がボトルネックです。

Q4. 障害者就労支援との違いは?

農福連携の中核には障害者就労継続支援B型・A型事業所による農作業が含まれます。一方、高齢者介護でのケアファームは「就労」ではなく「アクティビティ・リハビリ」として位置付けられ、介護保険サービス(地域密着型通所介護等)の中で実施されることが多い点が異なります。

Q5. 雨の日や冬季はどうしますか?

多くのケアファームではビニールハウス内での種まき・水やり、収穫物の選別・袋詰め、加工所での調理など、屋内で完結する作業を併用します。年間プログラムを設計するうえで、季節ごとの作業計画と天候対応は重要な運営要素となります。

参考資料

  • [1]
  • [2]
  • [3]
  • [4]
  • [5]

まとめ

グリーンケアファーム(農福連携・ケアファーム)は、農場を治療・支援の場として活用するオランダ発祥の統合ケアモデルです。日本では2019年の推進ビジョン策定以降、令和5年度末で7,179主体へと急拡大し、2030年度までに12,000主体を目指す国家戦略となっています。認知症高齢者ケア・障害者就労・地域包括ケアの「通いの場」など多様な活用余地があり、介護事業者にとっても新規参入領域として注目に値します。

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執筆者

介護のハタラクナカマ編集部

編集部

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