笑い・ユーモア療法は高齢者のうつ・QOLに効くか|ラフターヨガを含む研究エビデンスを介護現場目線で読み解く
介護職向け

笑い・ユーモア療法は高齢者のうつ・QOLに効くか|ラフターヨガを含む研究エビデンスを介護現場目線で読み解く

笑い療法・ユーモア介入(ラフターヨガ含む)が高齢者や施設入居者の抑うつ・生活の質・孤独感に与える効果を、RCTや系統的レビューの一次ソースから読み解く。効果の確実性や研究の限界も率直に整理し、レクリエーション・BPSDケア・職員と利用者の関係づくりにどう活かすかを介護職目線で考える。

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この記事のポイント

「笑い」や「ユーモア」を使った関わり、いわゆる笑い療法ラフターヨガ(おかしさに頼らず、あえて声を出して笑う体操のような方法)が、高齢者の気分の落ち込み(抑うつ)をやわらげ、生活の質(QOL)孤独感を改善しうることが、複数の研究のまとめで示されています。とくに施設で暮らす高齢者を対象にした研究の統合では、抑うつや孤独感が下がり、生活の質が上がる方向の結果が報告されています。

ただし、ここで正直に押さえておきたいことが2つあります。1つは、研究の質そのものが高くないものが多いこと。笑う側もケアする側も「いま自分は笑い療法を受けている/していない」が分かってしまうため、思い込みの影響を取り除きにくく、効き目が大きめに出やすい性質があります。もう1つは、もの忘れなどの頭の働き(認知機能)そのものを良くする効果は、いまのところ確かめられていないこと。つまり笑いは「認知症を治すもの」ではなく、気分・つながり・その人らしい時間を支える非薬物的な関わりの選択肢として捉えるのが正確です。介護現場では、レクリエーションやBPSDケア、そして職員と利用者の関係づくりに、無理なく織り込める手段になりえます。

目次

レクリエーションの時間に利用者が声をあげて笑った日、その後のフロアがなんとなく穏やかになる。そんな手応えを感じたことのある介護職は多いはずです。「笑いは健康にいい」とはよく言われますが、では実際に、笑いやユーモアを使った関わりは、高齢者の気分の落ち込みや生活の質に、研究で確かめられるほどの効果があるのでしょうか。

この記事では、笑い療法・ユーモア介入・ラフターヨガを高齢者に行った臨床試験(くじ引きで2グループに分けて比べる試験などを含みます)や、それらを束ねて分析した研究のまとめを、できるだけ大もとの報告(一次ソース)にあたって読み解きます。「効く・効かない」を白黒つけるのではなく、何が・どの程度・どのくらい確かに示されているのか、そして研究の弱点はどこかまでを率直に整理します。そのうえで、施設や在宅の現場で、レクリエーションやBPSD(認知症にともなう行動・心理面の困りごと)への対応、職員と利用者の関係づくりに、どう無理なく活かせるかを介護職の視点で考えます。

笑い療法・ユーモア介入・ラフターヨガとは|研究で何を調べてきたのか

研究の世界で「笑い」を使った関わりは、おおまかに次のように整理されています。言葉の整理から始めましょう。

「自然な笑い」と「つくり笑い」は分けて研究されている

研究では、笑いを2種類に分けて扱うことが多くあります。1つは、おもしろい動画・冗談・ユーモアによって自然にわき起こる「自然な笑い(spontaneous laughter)」。もう1つは、おかしさがなくても、あえて声を出して笑う動作をくり返す「つくり笑い(simulated laughter)」です。ラフターヨガ(笑いヨガ)は後者の代表で、深い呼吸と「ハッハッ」という笑いの動作、軽い体操を組み合わせ、グループで行ううちにつくり笑いが本物の笑いに変わっていく、という流れをねらいます。意外に思えますが、複数の研究を統合したまとめでは、「つくり笑い」のほうが「自然な笑い」よりも抑うつへの効き目が大きめに出る傾向が報告されています(van der Wal & Kok, 2019)。冗談のセンスや認知機能に頼らずに参加できるため、認知症のある人や体力の落ちた人にも取り入れやすい、という実務上の利点もあります。

研究が見てきた「効き目の対象」

高齢者を対象にした研究で測られてきた主なアウトカム(効果の有無を確かめる項目)は、気分の落ち込み(抑うつ)/生活の質(QOL)/孤独感/不安/心理的なしなやかさ(レジリエンス)などです。一方で、もの忘れなどの頭の働き(認知機能)も調べられてきましたが、こちらは「改善した」とは言いにくい結果が続いています。つまり研究は「笑いで認知症が治るか」ではなく、おもに「気分・つながり・その人らしい生活実感を支えられるか」を見てきた、と理解するのが正確です。

背景にある高齢者のうつと孤独

国立長寿医療研究センターによれば、65歳以上の高齢者の約10%に何らかのうつ病性の障害がみられるとされ、加齢にともなう心身機能の低下や社会的な役割の喪失・孤独感が、その発症に深く関わると指摘されています。施設入居や在宅介護の場面では、人との関わりが減りやすく、気分の落ち込みや孤立が起きやすい。ここに、人とのつながりや笑いを生む関わりが注目される理由があります。

主要な研究と報告された数値|系統的レビューと施設RCT

笑い・ユーモアを使った関わりが高齢者に「効くか」を検証した代表的な研究の数値を、一次ソースから整理します。比の数字(効き目の大きさを表す指標)は、できるだけ「100人中何人」「約何割」といった日常感覚の言葉に置き換えて読みます。

研究ごとの主要結果

研究デザイン・対象主なアウトカムと効き目
高齢者対象メタ解析
(Geriatric Nursing, 2024)
9件のランダム化比較試験+4件の準実験、計984名の高齢者を統合抑うつ:効果の大きさの目安SMD −0.66(本当の値が入る幅=95%信頼区間 −0.95〜−0.36)。一般的なものさしでは「中くらい〜大きい」。
孤独感:SMD −1.52(−2.66〜−0.39)と大きめだが幅が広い。
生活の質:SMD 0.42(0.23〜0.62)で「小さい〜中くらい」。
頭の働き(認知機能):はっきりした改善は確認できず(非有意)。
笑い誘発療法の系統的レビュー
(Social Science & Medicine, 2019
van der Wal & Kok)
笑いを誘う各種療法の研究を統合(成人全般を含む)抑うつ・不安・ストレス感をやわらげる方向。つくり笑い(ラフターヨガ等)のほうが自然な笑いより抑うつへの効き目が大きめ。ただし全研究で偏り(バイアス)のリスクが大きく、質は総じて低いと明記。
笑い・ユーモア介入のメタ解析
(J Adv Nurs, 2019, Zhao ら)
ランダム化比較試験10件・814名(成人)抑うつ・不安を減らし、睡眠の質を改善。抑うつは長期に続けたほうが効きやすい傾向。著者は「質の高い研究と追跡が今後必要」と結論。
ラフターヨガ vs 運動 RCT
(Int J Geriatr Psychiatry, 2011
Shahidi ら)
うつ状態の高齢女性60名(3グループ)。ラフターヨガ/グループ運動/対照ラフターヨガ・運動とも対照群より抑うつが有意に低下。ラフターヨガは運動と少なくとも同等で、生活満足度は対照より有意に向上。
施設でのラフターヨガ pilot RCT
(Geriatric Nursing, 2023
Ozturk ら)
ナーシングホーム入居者65名。週2回×4週=8回孤独感が低下し、心理的なしなやかさ(レジリエンス)と生活の質が向上(いずれも偶然では説明しにくい差)。少人数の予備研究である点に注意。
施設での笑い療法
(Malays J Med Sci, 2020
Heidari ら/イラン)
ナーシングホーム入居者90名(45/45)。週3回×10回高齢者用うつ尺度(GDS-15)が6.87→2.57、SF-36の生活の質が47.15→59.96へ改善。ただし準実験的デザインで自己申告の偏りに注意。

※SMD(標準化平均差)は、ものさしの違う複数の研究の結果を同じ土俵で比べられるようにした数字です。マイナスは「抑うつ・孤独感が下がった(良い方向)」、プラスは「生活の質が上がった(良い方向)」を意味します。信頼区間が0をまたがない(例:−0.95〜−0.36)ほど、「偶然ではなさそう」と読めます。

数値の正しい読み方|効果量・確実性・「効くとは限らないこと」

表の数字を現場で誤読しないために、押さえておきたい4つの読み方を整理します。ここを飛ばすと、「笑えば認知症が良くなる」のような言いすぎにつながりかねません。

1. 「効き目の大きさ」と「結果の確からしさ」は別物

効き目の大きさはSMDという値で表します。一般的な目安では、0.2前後で小さい、0.5前後で中くらい、0.8以上で大きい効き目とされます(これは効き目を読むための共通のものさしで、研究そのものの数字ではありません)。高齢者対象のまとめでは、抑うつが −0.66=「中くらい〜大きい」、生活の質が 0.42=「小さい〜中くらい」でした。一方で、その効き目がどのくらい確かかは別の話です。後述するように、これらの研究は質の低いものが多く、効き目はやや大きめに見積もられている可能性があります。

2. 「自分が受けていると分かる」介入は、効果が大きく出やすい

薬の試験では、本物そっくりの偽薬を使って「自分がどちらの群か分からない」状態(盲検)をつくれます。ところが笑い療法は、受ける人もケアする人も「いま笑い療法をしている」と分かってしまうため、盲検が困難です。「効くと期待しているから良くなった気がする」「測る側も良く評価しがち」といった思い込みの影響を取り除きにくく、その分効き目が実際より大きめに出やすい性質があります。系統的レビューが「全研究で偏りのリスクが大きい」と明記しているのは、このためです。

3. 「孤独感に大きく効いた」は幅の広さに注意

孤独感のSMDは −1.52 と非常に大きい一方、信頼区間(本当の値が入る幅)は −2.66〜−0.39 と広く開いています。これは「大きく効いたかもしれないが、ごく小さい効果にとどまる可能性も残る」という意味で、研究によって結果のばらつき(異質性)が大きいサインです。数字の大きさだけを取り出して「孤独に絶大な効果」と読むのは行きすぎです。

4. 「頭の働き(認知機能)」を良くする効果は確認されていない

高齢者対象のまとめでは、認知機能へのはっきりした改善効果は確認できませんでした(非有意)。笑いは「認知症そのものを治す・進行を止める」ものではありません。ここを取り違えると、本人・家族への説明で誤解を生みます。効果が示されているのは、あくまで気分・生活の質・つながりの領域です。

研究知見を介護現場でどう活かすか|レクリエーション・BPSDケア・関係づくり

ここからは介護職の視点で、この研究知見を現場にどう落とすかを考えます。ポイントは、笑いを「特別なイベント」ではなく、レクリエーション・BPSDケア・日々の関係づくりという既にある営みの質を上げる切り口として使うことです。

1. レクリエーションを「盛り上げる」から「気分とつながりを支える」へ

研究で効果が示されたのは、気分の落ち込み・生活の質・孤独感でした。これはレクリエーションの目的そのものと重なります。大切なのは、笑いを「上手な人が笑わせる芸」ではなく、参加者どうし・職員と利用者が一緒に笑える場の設計として捉えること。ラフターヨガが示すように、おかしさやセンスに頼らなくても、声を出して笑う動作・呼吸・グループの一体感そのものが効きうるのですから、口数の少ない人や認知症の進んだ人も「参加できる笑い」を組み立てられます。勝ち負けや正解のあるレクよりも、失敗しても笑い合えるゆるい設計が、孤立しがちな人を取りこぼしません。

2. BPSDケアでは「笑いは中核症状を治さない」前提で位置づける

笑いやユーモアは、不安・興奮といったBPSDのある場面で、緊張をほぐし関係を立て直すきっかけになりえます。ただし研究上、認知機能そのものや興奮を直接抑える確かな効果は示されていません。「笑いでBPSDが消える」と期待するのではなく、本人が安心できる関係・場の空気をつくる非薬物的な手立ての一つとして、環境調整やなじみの関係づくりと組み合わせて使うのが現実的です。ユーモアは相手を見下す「からかい」にならないことが絶対条件で、本人が一緒に笑えているかを必ず確認します。

3. 職員と利用者の関係づくり、そして職員自身の支えに

笑いは利用者だけのものではありません。ともに笑う体験は、職員と利用者の信頼関係を縮めるうえでも働きます。さらに、笑い・ユーモアの研究はもともと成人のストレス軽減でも検討されてきました。感情労働が重く離職も語られる介護の職場で、チームで笑える空気は職員自身の心理的な支えにもなりえます。これは利用者ケアの質と職場の定着の、両方に効く視点です。

4. 科学的介護(LIFE)の発想で「効果を記録に残す」

研究の弱点は「効果があいまいで質が低い」ことでした。だからこそ現場では、いつ・どんな笑いの関わりで・誰の表情や発語・落ち着きがどう変わったかをケア記録に残す価値があります。LIFE(科学的介護情報システム)に代表される、ケアの内容と状態変化を記録して見直す発想と相性がよく、アセスメントや多職種連携の素材になります。「なんとなく良さそう」を、その人にとっての効果の有無として確かめていく姿勢が、過大評価も過小評価も防ぎます。

研究の限界|介護職が結果を過大評価しないために

笑いの効果を現場で語るとき、次の限界を必ずセットで押さえておくと、言いすぎを防げます。

盲検が難しく、効き目が大きめに出やすい

前述のとおり、笑い療法は「自分が受けているか」が分かってしまうため、思い込みの影響を取り除きにくい介入です。系統的レビューが「全研究で偏りのリスクが大きく、質は総じて低い」と明記している点は重く、報告された効果量は実際よりやや大きめに見積もられている可能性があります。

短期・少人数の研究が多い

施設での研究は、8回・10回といった数週間の短期のものや、数十人規模の予備的研究(pilot)が中心です。「半年・1年と続けたときに効果が保たれるか」「大人数でも同じか」は、まだ十分に確かめられていません。あるメタ解析は「抑うつは長く続けたほうが効きやすい」傾向を示しており、1回きりのイベントより、無理なく続けられる形のほうが理にかなっていそうです。

施設・文化による差、海外データの当てはめに注意

効果が大きく出た施設研究には、イランやトルコなど海外のナーシングホームのものが含まれます。笑いの感覚や集団活動への慣れ、施設の雰囲気は文化によって異なり、日本の現場にそのまま同じ効果が出るとは限りません。また、対象が「うつ状態の高齢女性」など特定の集団に限られる研究もあり、すべての利用者に一般化はできません。

「認知症を治す」効果ではない

くり返しになりますが、認知機能そのものを改善する効果は確認されていません。笑いは治療ではなく、気分・つながり・生活実感を支えるケアの選択肢です。本人・家族には「効くと約束する」のではなく、「副作用が少なく、気分や交流を支えうる関わりの一つ」と、確実性の程度まで含めて誠実に伝えることが、専門職の説明責任にかないます。

現場ですぐ使える、笑い・ユーモアを活かす関わりのヒント

  • 「笑わせる」より「一緒に笑える場」を作る:芸のうまさに頼らず、参加者全員が声を出せる体操的な笑い(深呼吸+「ハッハッ」など)を導入に。失敗しても笑い合えるゆるさが、口数の少ない人も巻き込みます。
  • からかい・見下しは厳禁:ユーモアは本人が一緒に笑えているかが基準。認知症や聞き間違いを笑いのネタにしないこと。尊厳を損なう笑いは関係を壊します。
  • その人の生活歴から笑いの種を探す:好きだったテレビ・落語・故郷の話など、なじみのある話題は自然な笑いを生みやすい。アセスメントや家族からの聞き取りを選材に活かします。
  • 短く・くり返し続ける:1回の大イベントより、週数回の短い関わりのほうが研究の傾向に合います。朝の体操やレクの冒頭に数分組み込む形が続けやすい。
  • 反応を必ず記録に残す:いつ・どの関わりで・誰の表情や発語・落ち着きがどう変わったかをケア記録へ。効果のあいまいさを、その人にとっての事実で補い、多職種で共有します。
  • 職員も一緒に笑う:ともに笑う体験は信頼関係を縮め、職員自身の気持ちの支えにもなります。チームで笑える空気づくりも立派なケアの一部です。

よくある質問(FAQ)

Q. 結局、笑い療法は高齢者のうつに効くのですか?

高齢者を対象にした複数の研究のまとめでは、気分の落ち込み(抑うつ)をやわらげ、生活の質を高め、孤独感を減らす方向の結果が示されています(抑うつの効き目の目安は中くらい〜大きい程度)。ただし、研究の多くは質が高くなく、効き目はやや大きめに見積もられている可能性があります。「副作用が少なく、気分や交流を支えうる非薬物的な関わりの一つ」と捉えるのが正確です。高齢者のうつ全般については老年期うつ病|高齢者のうつのサイン・認知症との見分け方もあわせてご覧ください。

Q. ラフターヨガは、おもしろくなくても効くのですか?

ラフターヨガは「おかしさ」ではなく、あえて声を出して笑う動作・深い呼吸・グループの一体感を使う方法です。複数研究のまとめでは、むしろこうした「つくり笑い」のほうが、自然な笑いより抑うつへの効き目が大きめに出る傾向が報告されています。冗談のセンスや認知機能に頼らず参加できるのが利点です。

Q. 認知症の人の物忘れや混乱は、笑いで良くなりますか?

いいえ。高齢者対象のまとめでは、頭の働き(認知機能)そのものを改善する効果は確認されていません。笑いは認知症を治すものではなく、不安や落ち込みをやわらげ、関係や場の空気を整える手立てと位置づけるのが適切です。BPSD(行動・心理症状)の理解についてはBPSDとはを参照してください。

Q. 音楽や回想法と、どう違うのですか?

いずれも薬に頼らない非薬物的な関わりで、気分や生活の質を支える点は共通します。手段が違うだけなので、その人が乗りやすいものを組み合わせるのが現実的です。関連して音楽療法は認知症のBPSD・QOLに効くか回想法は認知症の人に効果があるかの研究エビデンス解説もあわせてどうぞ。

Q. 現場で取り入れるとき、何に気をつければいいですか?

本人が一緒に笑えているかを必ず確認し、からかい・見下しにならないこと。1回の大イベントより、週数回の短い関わりを無理なく続けること。そして、表情や発語・落ち着きの変化をケア記録に残し、効果のあいまいさをその人の事実で補うことです。レクの具体的なネタは介護レクリエーションのネタ40選が参考になります。

参考文献・一次情報

  • [1]
    Laughter-Inducing Therapies: Systematic Review and Meta-Analysis- Social Science & Medicine 232:1-8, 2019(van der Wal CN, Kok RN)

    笑いを誘う各種療法を統合した系統的レビュー・メタ解析。つくり笑い(ラフターヨガ等)のほうが自然な笑いより抑うつへの効き目が大きめ。抑うつ・不安・知覚ストレスをやわらげる可能性。ただし全研究で偏り(バイアス)のリスクが大きく、研究の質は総じて低いと明記。DOI:10.1016/j.socscimed.2019.02.018

  • [2]
    Effects of humor therapy on negative emotions, quality of life and cognitive function in older adults: A systematic review and meta-analysis- Geriatric Nursing(2024)

    高齢者に限定した系統的レビュー・メタ解析。9RCT+4準実験・計984名。抑うつSMD -0.66(95%CI -0.95〜-0.36)、孤独感SMD -1.52(-2.66〜-0.39)、QOL SMD 0.42(0.23〜0.62)で改善。一方、認知機能への効果は非有意。本記事の主要数値の原報。DOI:10.1016/j.gerinurse.2024.10.054

  • [3]
    A meta-analysis of randomized controlled trials of laughter and humour interventions on depression, anxiety and sleep quality in adults- Journal of Advanced Nursing 75(11):2435-2448, 2019(Zhao J, Yin H, Zhang G, ら)

    成人対象のRCT10件・814名のメタ解析。笑い・ユーモア介入が抑うつ・不安を減らし睡眠の質を改善。抑うつは長期に続けたほうが効きやすい傾向。Cochraneのツールで偏りを評価し、質の高い研究と追跡が今後必要と結論。DOI:10.1111/jan.14000

  • [4]
    Laughter yoga versus group exercise program in elderly depressed women: a randomized controlled trial- International Journal of Geriatric Psychiatry 26(3):322-327, 2011(Shahidi M, ら)

    うつ状態の高齢女性60名(完了)を3群(ラフターヨガ/グループ運動/対照)に割り付けたRCT。ラフターヨガ・運動とも対照群より抑うつが有意に低下し、ラフターヨガは運動と少なくとも同等、生活満足度は対照より有意に向上。DOI:10.1002/gps.2545

  • [5]
    The Effect of Laughter Therapy on the Quality of Life and Depression in the Elderly- The Malaysian Journal of Medical Sciences 27(4):119-129, 2020(Heidari M, ら/イラン・ナーシングホーム・全文公開)

    24時間ケアの施設入居者90名(45/45)に週3回×10回の笑い療法。高齢者用うつ尺度GDS-15が6.87→2.57、SF-36の生活の質が47.15→59.96へ改善(いずれもp<0.001)。準実験デザイン・自己申告の偏り・文化差が限界。

  • [6]
    高齢者「うつ」の原因は?- 国立長寿医療研究センター(公的医療研究機関)

    公的資料。65歳以上の高齢者の約10%に何らかのうつ病性障害がみられ、加齢にともなう心身機能低下や社会的な役割の喪失・孤独感が発症に深く関わると解説。笑い・交流を生む関わりが注目される背景の裏付け。

まとめ|エビデンスを過不足なく現場に活かす

笑い・ユーモア療法やラフターヨガは、高齢者の気分の落ち込み・生活の質・孤独感を改善しうる関わりとして、複数の研究のまとめで一定の手応えが示されています。一方で、研究の質は高くないものが多く、盲検が難しいぶん効き目は大きめに見積もられている可能性があり、認知機能そのものを良くする効果は確認されていません。

だからこそ介護現場では、笑いを「認知症を治す魔法」でも「ただの気晴らし」でもなく、気分・つながり・その人らしい時間を支える非薬物的なケアの選択肢として、レクリエーション・BPSDケア・職員と利用者の関係づくりに無理なく織り込むのが現実的です。からかいにならないよう配慮し、短くくり返し続け、変化を記録に残す。この積み重ねが、効果の過大評価も過小評価も避け、目の前の一人にとっての意味を確かめていくことにつながります。笑いは、職員自身の支えにもなりうる。そう捉えると、エビデンスは現場の実感を否定するものではなく、それを丁寧に活かすための足場になります。

執筆者

介護のハタラクナカマ編集部

編集部

介護業界の転職・キャリア情報を発信。厚生労働省の公的データと現場の声をもとに、介護職で働く方・転職を検討する方に役立つ情報をお届けしています。

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