
中核症状とは
認知症の中核症状とは、脳の障害で直接起こり、ほぼすべての人に現れる症状です。記憶障害・見当識障害・実行機能障害・失語失行失認など7つを、BPSD(周辺症状)との違いとともに解説します。
中核症状の直接回答
中核症状とは、認知症のもとになる脳の神経細胞の障害が直接反映されて起こる症状で、記憶障害・見当識障害・理解判断力の低下・実行機能障害・失語・失行・失認などを指します。脳の障害そのものが原因のため、認知症であればほぼすべての人に現れるのが特徴です。本人の性格や環境が加わって二次的に生じるBPSD(周辺症状)とは区別されます。
目次
中核症状の概要と全体像
中核症状とは何か
中核症状は、認知症を引き起こす病気(アルツハイマー型認知症や脳血管性認知症など)によって脳の神経細胞が障害され、その障害が直接反映されて生じる認知機能の低下を指します。国立長寿医療研究センターは、中核症状を「脳の障害が直接反映された症状であって、ほぼすべての認知症例で出現する」ものと説明しています。
つまり、認知症の人であれば程度の差はあっても誰にでも現れうるのが中核症状です。脳の器質的な変化が原因のため、現在の医療では進行を止めることが難しく、ケアの中心は「残された力を活かし、生活のしづらさを減らす」ことに置かれます。
中核症状とBPSD(周辺症状)の関係
認知症の症状は、大きく「中核症状」と「BPSD(行動・心理症状/周辺症状)」の2つに分けて理解されます。両者は原因も性質も異なります。
- 中核症状=脳の障害が直接の原因。認知症ならほぼ必ず現れる。記憶障害や見当識障害など。
- BPSD(周辺症状)=中核症状に本人のもともとの性格・体調・人間関係・環境といった要因が加わって二次的に現れる。徘徊・不安・抑うつ・妄想・興奮など。出現する人としない人がいる。
言い換えると、記憶障害という中核症状があり、「財布が見つからない不安」が周囲とのやり取りで強まると「盗まれた」という被害妄想(BPSD)につながる、といった関係です。中核症状そのものを薬で消すことは難しい一方、BPSDは環境調整や適切なケアによってやわらげられる余地が大きいとされています。だからこそ、中核症状を正しく理解することが、BPSDを予防する介護の出発点になります。
中核症状の主な7つの種類
中核症状の主な種類
中核症状は1つではなく、複数の認知機能の低下の総称です。代表的なものを健康長寿ネット(長寿科学振興財団)などの解説をもとに整理します。
- 記憶障害:新しいことを覚えられず、さっき聞いたこと・したことを思い出せなくなります。進行すると以前覚えていた事柄も忘れますが、幼少期の記憶は比較的保たれやすいのが特徴です。
- 見当識障害:「いつ・どこ・だれ」を把握する力が低下します。日付や季節が分からず季節外れの服装をする、道に迷う、亡くなった家族を探すといった形で現れます。
- 理解・判断力の低下:複数の情報を同時に処理することが難しくなります。一度に2つ以上のことを言われたり、早口で話されたりすると理解しづらく、抽象的な表現も伝わりにくくなります。
- 実行機能障害:物事を計画し、順序立てて効率よく進めることが難しくなります。料理の段取りなど、複数の手順を組み合わせる作業でつまずきやすくなります。
- 失語(言語障害):音としては聞こえていても言葉・話として理解できない、自分の思いを言葉で表現できない状態です。
- 失行:運動機能の障害がないのに、お茶を入れる・服を着るなど日常的に行ってきた動作や物の操作ができなくなります(詳しくは失行とはを参照)。
- 失認:物や人、身体の位置関係を正しく認識できなくなります。半側空間失認では身体の片側の空間を認識できず、「ご飯を片側だけ残す」といった様子が見られます。
これらは原因となる病気や進行度によって現れ方が異なります。たとえばアルツハイマー型認知症では記憶障害が初期から目立ちやすいなど、認知症のタイプごとに中核症状の出方に傾向があります。
中核症状とBPSD(周辺症状)の違い比較
中核症状とBPSD(周辺症状)の違い
混同されやすい両者を、原因・出現の仕方・対応の観点で比べると違いがはっきりします。
| 観点 | 中核症状 | BPSD(周辺症状) |
|---|---|---|
| 原因 | 脳の神経細胞の障害が直接の原因 | 中核症状に性格・体調・環境・人間関係が加わって二次的に生じる |
| 出現 | 認知症であればほぼすべての人に現れる | 出現する人としない人がいる(個人差が大きい) |
| 主な例 | 記憶障害・見当識障害・実行機能障害・失語失行失認 | 徘徊・不安・抑うつ・興奮・妄想・幻覚・不眠・意欲低下 |
| 対応の方向性 | 進行を止めるのは難しく、残存能力を活かす支援が中心 | 環境調整やケアの工夫でやわらげられる余地が大きい |
介護の現場では、まず「これは脳の障害による中核症状(変えにくい)なのか、関わり方で改善しうるBPSD(周辺症状)なのか」を見分けることが、適切なケアと介護者の負担軽減の両方につながります。
中核症状を踏まえた介護のポイント
中核症状を踏まえた関わりのヒント
中核症状は「治す」より「生活のしづらさを減らす」発想が基本です。現場や家庭で意識したいポイントを挙げます。
- 記憶障害には責めずに補う:同じ話を繰り返しても叱らず、メモやカレンダー、声かけで思い出す手がかりを増やします。
- 見当識障害には環境で支える:大きな時計やカレンダー、トイレの表示などで「いつ・どこ」を分かりやすくします。
- 理解力の低下には一度に一つ:指示は短く具体的に、ゆっくり一つずつ伝えると伝わりやすくなります。
- 実行機能障害には手順を分解:作業を細かいステップに分け、一段階ずつ促すと取り組みやすくなります。
- できることに注目する:できないことを数えるより、残っている力を活かす関わりがBPSDの予防にもつながります。
こうした関わり方の土台になる考え方はユマニチュードなどのケア技法でも重視されています。なお、症状や治療については自己判断せず、かかりつけ医や専門職に相談してください。
中核症状のよくある質問
よくある質問
中核症状と周辺症状(BPSD)はどう違うのですか?
中核症状は脳の障害が直接の原因で、認知症ならほぼ全員に現れます。一方BPSD(周辺症状)は、中核症状に本人の性格や環境が加わって二次的に生じる行動・心理症状で、出る人と出ない人がいます。詳しくはBPSDとはをご覧ください。
中核症状は治りますか?
脳の器質的な障害が原因のため、現在の医療で中核症状そのものを完全に治したり進行を止めたりすることは難しいとされています。ケアは残された力を活かし、生活のしづらさを減らすことが中心になります。治療方針は必ず医師に相談してください。
もの忘れはすべて中核症状ですか?
加齢による「もの忘れ」と認知症の記憶障害は異なります。加齢では体験の一部を忘れヒントで思い出せますが、認知症の記憶障害では体験そのものを忘れ、思い出しにくいのが特徴です。気になる場合は早めに専門医へ相談しましょう。
中核症状にはどんな種類がありますか?
代表的なものに記憶障害・見当識障害・理解判断力の低下・実行機能障害・失語・失行・失認があります。原因となる病気や進行度によって、現れ方や目立つ症状が異なります。
中核症状の参考資料
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中核症状のまとめ
まとめ
中核症状は、脳の障害が直接反映されて起こり、認知症であればほぼすべての人に現れる記憶障害・見当識障害・実行機能障害・失語失行失認などの認知機能の低下です。本人の性格や環境が加わって二次的に生じるBPSD(周辺症状)とは原因も対応も異なります。中核症状そのものを治すのは難しくても、特徴を理解して残された力を活かす関わりが、本人の暮らしやすさとBPSDの予防につながります。
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執筆者
介護のハタラクナカマ編集部
編集部
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