
なじみの関係とは
なじみの関係とは、認知症の人や高齢者が慣れ親しんだ人やものに囲まれ安心して過ごせる関係性のこと。BPSD軽減やその人らしさの維持に重要で、グループホームやユニットケアで重視される理由をわかりやすく解説します。
なじみの関係とは(定義)
「なじみの関係」とは、高齢者や認知症のある人が、慣れ親しんだ人やもの、住み慣れた場所に囲まれて安心して過ごせる人間関係や環境のことです。記憶力が低下しても、見慣れた顔やよく知った職員との関係は安心感につながり、不安や混乱から生じるBPSD(行動・心理症状)をやわらげ、その人らしい暮らしを支える土台になります。認知症ケアの基本的な考え方の一つとして、グループホームやユニットケアで特に重視されています。
目次
なじみの関係の概要と認知症ケアでの位置づけ
なじみの関係とは何か
なじみの関係とは、認知症のある人や高齢者が「よく知っている」「慣れている」と感じられる人・もの・場所との結びつきを指します。認知症が進むと新しいことを覚えるのは難しくなりますが、長く親しんできた記憶や感情は比較的保たれやすいといわれます。そのため、見慣れた職員の顔、いつもの食卓、使い慣れた道具といった「なじみ」のある要素は、本人にとって確かな手がかりとなり、安心して過ごせる環境をつくります。
認知症のある人は、知らない場所や知らない人に囲まれると、強い不安や緊張を感じやすくなります。その不安が、不穏、興奮、帰宅願望、拒否といった行動・心理症状(BPSD)として表れることがあります。逆に、なじみの関係が築かれている場面では、本人は「ここにいてよい」「この人は味方だ」と感じやすく、落ち着いて過ごせます。なじみの関係づくりは、本人の安心感を高めることでBPSDの予防・軽減につながる、認知症ケアの中心的な考え方です。
この考え方は、その人を一人の人として尊重するパーソン・センタード・ケアの理念とも深く結びついています。なじみの関係は、本人の歴史や好み、これまでの暮らし方を理解し、それを生活の中に活かすことで初めて成り立つためです。
なじみの関係が認知症ケアで重視される理由
なじみの関係が大切にされる理由
- 安心感が生まれる:慣れ親しんだ人ともの、場所は、認知症のある人にとって確かな手がかりとなり、不安や混乱をやわらげます。
- BPSDの軽減につながる:不安や緊張が減ることで、不穏や興奮、帰宅願望、ケアへの拒否といった行動・心理症状が起こりにくくなります。
- その人らしさが保たれる:本人の好みや習慣を活かした関わりは、これまで歩んできた人生や尊厳を支えます。
- 持っている力を活かせる:慣れた環境では、本人が自分でできることに取り組みやすく、残された力(残存能力)を発揮しやすくなります。
- 信頼関係が深まる:同じ職員が継続して関わることで、本人は安心して頼れる相手だと認識し、ケアが受け入れられやすくなります。
なじみの環境とリロケーションダメージの関係
なじみの環境と「環境が変わること」の影響
なじみの関係は、人との関係だけでなく、住み慣れた場所やなじみの品といった「環境」によっても支えられます。一方で、入院や施設への入居などで生活の場が急に変わると、安心の手がかりだったなじみの環境を失い、心身が大きく不安定になることがあります。これをリロケーションダメージと呼びます。
| 状態 | 本人への影響 |
|---|---|
| なじみの環境が保たれている | 安心して過ごせ、混乱や不安が起こりにくい。持っている力を発揮しやすい。 |
| 環境が急に変わる(リロケーション) | 不安・混乱が強まり、BPSDが悪化したり、活気や食欲が低下したりすることがある。 |
新しい環境へ移るときは、使い慣れた家具や写真、愛用品など「なじみの品」を持ち込む、担当する職員をできるだけ固定する、これまでの生活リズムを尊重するといった工夫で、なじみの要素を引き継ぎ、移行による負担をやわらげることが大切です。
職員がなじみの存在になるための関わり方
職員が「なじみの存在」になるために
なじみの関係は自然にできあがるものではなく、日々の関わりの積み重ねで育まれます。介護職が本人にとって「安心できる、なじみの人」になるための関わり方を整理します。
- 担当制を活かす:同じ職員が継続して関わると、本人が顔と関係を覚えやすく、信頼が積み重なります。
- 本人の歴史を知る:生い立ちや仕事、趣味、好きな食べ物などを家族から聞き取り、会話やケアに活かします。
- 毎回ていねいに挨拶する:名前を呼び、目線を合わせ、笑顔で接することで「味方だ」という安心が伝わります。
- 生活の流れを一定に保つ:起床や食事、入浴の時間やお気に入りの場所を大切にし、見通しの持てる毎日をつくります。
- なじみの品を生活に取り入れる:使い慣れた道具や思い出の品をそばに置き、本人が落ち着ける環境を整えます。
なじみの関係に関するよくある質問
よくある質問
なじみの関係はなぜ認知症ケアで大切なのですか。
認知症のある人は、知らない人や場所に不安を感じやすく、その不安がBPSD(行動・心理症状)として表れることがあります。なじみの関係があると本人が安心して過ごせ、不安や混乱がやわらぐため、認知症ケアの土台として重視されます。
グループホームではどうしてなじみの関係を築きやすいのですか。
グループホームは5人から9人ほどの少人数のユニットで生活し、職員や入居者の入れ替わりが少ないためです。日本認知症グループホーム協会も、少人数の中でなじみの関係をつくることが生活上のつまずきや認知症状の軽減につながると説明しています。
なじみの環境とリロケーションダメージはどう関係しますか。
入院や入居で住み慣れた環境が急に変わると、安心の手がかりを失い、心身が不安定になることがあります。これがリロケーションダメージです。なじみの品を持ち込む、担当職員を固定するなど、なじみの要素を引き継ぐ工夫で負担をやわらげられます。
家族にもできることはありますか。
本人の生い立ちや好み、習慣を職員に伝えることや、使い慣れた品や思い出の写真を用意することが、なじみの環境づくりに役立ちます。家族との面会や声かけ自体も、本人にとって大切ななじみの関係です。
なじみの関係の参考資料・出典
- [1]
- [2]パーソン・センタード・ケア(その人を中心としたケア)について- 認知症介護情報ネットワーク(DCnet/認知症介護研究・研修センター)
本人を中心に据え、その人の歴史や好みを尊重する認知症ケアの理念。なじみの関係づくりの背景となる考え方。
- [3]
- [4]
なじみの関係のまとめ
まとめ
なじみの関係とは、認知症のある人や高齢者が、慣れ親しんだ人やもの、住み慣れた場所に囲まれて安心して過ごせる関係性や環境のことです。安心感を通してBPSDをやわらげ、その人らしい暮らしを支えるため、グループホームやユニットケアといった少人数・担当制のケアで特に重視されます。職員一人ひとりが本人の歴史や好みを知り、継続して関わることで、なじみの存在として安心を届けることができます。
この用語に関連する記事

認知症の最大45%は予防・遅延できる|Lancet委員会2024の14リスク因子と介護現場での活かし方
Lancet委員会2024(Livingston G ら)が示した認知症の14の修正可能リスク因子と各因子の寄与割合(PAF)を一次ソースで解説。「最大45%予防可能」の正しい意味、日本の38.9%データ、難聴・社会的孤立・運動・口腔ケアなど介護現場で活かす視点まで、介護職向けにまとめます。

レビー小体型認知症の利用者の施設介護|幻視・転倒・誤嚥を防ぐ観察と多職種連携
レビー小体型認知症(DLB)の利用者を施設で支える介護職向け実践ガイド。認知の変動・幻視・パーキンソン症状・起立性低血圧・誤嚥への観察と接し方、抗精神病薬過敏性を踏まえた看護師・医師への報告のしかたを解説。

前頭側頭型認知症(ピック病)の利用者の介護|常同行動を活かすケアと対応の工夫
前頭側頭型認知症(FTD・ピック病)のある利用者を介護する職員向けに、脱抑制・常同行動・無関心・食行動異常への対応を解説。常同行動を活かすルーティン化ケアの4手順、他の認知症との違い、若年発症と指定難病127の制度まで、現場の役割に絞ってまとめます。

難聴のある高齢者とのコミュニケーション|介護職の話し方・補聴器支援・環境整備
加齢性難聴は高音域と語音明瞭度が低下し聞き取りにくくなる。介護職向けに、正面からゆっくり低めの声で話すコツ、筆談・視覚情報の使い方、補聴器の装着・電池・管理支援、認知症との関わり、環境整備までを公的データをもとに解説します。
執筆者
介護のハタラクナカマ編集部
編集部
介護業界の転職・キャリア情報を発信。厚生労働省の公的データと現場の声をもとに、介護職で働く方・転職を検討する方に役立つ情報をお届けしています。