介護ハラスメントとは

介護ハラスメントとは

介護現場のハラスメントを利用者→職員/職員間/家族→職員の三類型で整理し、厚生労働省マニュアルに基づく事業所の対策と職員の自己防衛策を解説します。

ポイント

この記事のポイント

介護ハラスメントとは、介護現場で起こる暴力・暴言・性的言動などの嫌がらせ行為の総称です。①利用者・家族から職員への加害(カスタマーハラスメント)、②職員間のパワハラ・セクハラ、③職員から利用者への虐待——という3類型に整理でき、厚労省は事業所向けマニュアルを公開して対策を求めています。

目次

介護ハラスメントの定義と背景

介護ハラスメントは、介護サービス提供の場で発生する人権侵害行為の総称です。利用者宅という閉鎖空間でのサービス、人手不足による職員の精神的余裕の不足、認知症利用者の症状による予測困難な行動など、介護特有の構造的な要因が背景にあります。

厚生労働省は2018年度に「介護現場におけるハラスメント対策マニュアル」を作成し、2022年3月に改訂版を公表しました。事業者にはハラスメント防止の方針策定、対応マニュアル整備、相談窓口設置、職員研修などの取り組みが求められています。

2020年6月施行のパワハラ防止法(労働施策総合推進法)と、2022年4月から中小企業にも適用されたカスハラ対策の指針により、介護事業所も法的に対策実施が求められる立場となっています。

介護ハラスメントの3類型

類型加害者被害者具体例
利用者→職員型(カスハラ)利用者・家族介護職員暴言・暴力、性的言動、過剰要求、土下座要求
職員間型(パワハラ・セクハラ)上司・同僚部下・同僚怒鳴る、仕事を与えない/過度に与える、性的言動
職員→利用者型(虐待)介護職員利用者身体拘束、暴言、ネグレクト、経済的搾取

3類型は別問題に見えますが、実は職場のハラスメント耐性が低い事業所では3つが同時多発しやすい傾向があります。マネジメントの問題として一体的に対処することが必要です。

利用者・家族からのハラスメントの実態

厚労省の調査では、介護職員の約6〜7割が利用者・家族からのハラスメント経験ありと回答しています。具体的な行為類型は次のとおりです。

  • 身体的暴力:叩く、つねる、物を投げる、唾を吐く
  • 精神的暴力:暴言、人格否定、土下座要求、長時間の説教
  • セクシュアルハラスメント:身体への接触、性的発言、入浴時の卑猥な言動
  • 過剰要求:契約外の家事を強要、ヘルパーを家政婦扱い

認知症の周辺症状(BPSD)に起因する行為と、本人に判断能力があるうえでの故意の加害は区別する必要があります。

事業所の対策と職員の自己防衛

事業所が取り組むべき対策

  • ハラスメント対策の方針策定と全職員への周知
  • 相談窓口(事業所内+外部)の設置と匿名通報の仕組み
  • 初回訪問時の重要事項説明書にハラスメント禁止条項を明記
  • ハラスメント発生時のサービス提供拒否・契約解除のルール化
  • 定期研修と事例共有会の実施

職員ができる自己防衛

  • 1人で抱え込まず、サ責・管理者に必ず報告する
  • 記録を残す(日時・行為内容・状況をメモ)
  • ハラスメントが続く事業所からは転職を検討する選択肢も持つ
  • 2人体制訪問への切り替えを事業所に相談

よくある質問

Q. 利用者からハラスメントを受けた場合、サービスを断れますか?

A. 厚労省は「すべからく正当な理由に当たるわけではないが、事案によってはサービス提供拒否も考えられる」としています。重要事項説明書にハラスメント時の対応を明記しておくことが望ましいです。

Q. 認知症利用者からの暴言もハラスメントですか?

A. BPSDの症状としての行為と、判断能力がある上での故意の加害は区別されます。前者はケア内容の見直し、後者は対応方針の検討が必要です。

Q. ハラスメントが原因で離職しても会社都合になりますか?

A. ハラスメントを理由とする退職は、雇用保険上「特定理由離職者」となる可能性があり、自己都合退職より失業給付で有利な扱いを受けられます。記録の保管が重要です。

まとめ

介護ハラスメントは利用者・家族発、職員間、職員発の3類型で起こります。厚労省はマニュアルを整備し事業所に対策実施を求めていますが、現場では依然として6〜7割の職員が被害経験を持つ深刻な課題です。1人で抱え込まず、事業所の対応と自己防衛・転職を含む選択肢を持つことが、長く介護で働き続けるための重要な視点となります。

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執筆者

介護のハタラクナカマ編集部

編集部

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