
介護予防とは
介護予防とは、高齢者が要介護状態になることを防ぎ、すでに要支援・要介護の人の状態悪化を遅らせる取り組み。一次・二次・三次予防の3段階の考え方、介護予防給付の対象(要支援1・2)、総合事業との違いを介護職向けに解説。
この記事のポイント
介護予防とは、高齢者が将来要介護状態になることをできる限り防ぎ、すでに要支援・要介護状態にある人については状態の悪化を遅らせ改善することを目的とした取り組みのこと。介護保険法に位置づけられており、活動的な高齢者への一次予防、リスクの高い人への二次予防、要支援・要介護者への三次予防の3段階で展開されます。
目次
介護予防の定義と法的位置づけ
介護予防は、介護保険法(平成9年法律第123号)の理念に基づく取り組みで、厚生労働省は「高齢者が要介護状態となることをできる限り防ぐ(遅らせる)こと、要介護状態となっても状態がそれ以上悪化しないようにすること」と定義しています。単に運動機能の維持だけを指すのではなく、栄養・口腔機能・社会参加・認知機能まで含めた生活機能全体の維持・向上を目的とする幅広い概念です。
2006年(平成18年)の介護保険法改正で「予防重視型システム」への転換が打ち出され、要支援者向けの予防給付と、市町村が地域の実情に合わせて実施する地域支援事業(介護予防・日常生活支援総合事業)の二本立てで提供される仕組みが整いました。2012年(平成24年)以降は両者を切れ目なくつなぐ運用が進み、現在は2026年改定に向けてさらに地域包括ケアシステムへの統合が進められています。
介護現場で働くスタッフにとっては、利用者を「お世話される人」ではなく「自分の力を活かして生活する人」として捉え直す視点と直結しており、機能訓練指導員・理学療法士・作業療法士・管理栄養士・歯科衛生士など多職種連携の核となる考え方でもあります。
介護予防の3つの柱(一次・二次・三次予防)
厚生労働省の整理では、介護予防は対象者の状態に応じて3段階に分けてとらえます。介護現場で頻繁に出てくる用語なので、それぞれの守備範囲を押さえておきましょう。
- 一次予防(健康な高齢者向け):活動的な状態にある高齢者を対象に、生活機能の維持・向上を図る取り組み。地域の通いの場、サロン活動、健康教室、運動プログラムなど。要介護リスクが顕在化する前に介入するのが特徴。
- 二次予防(リスクの高い高齢者向け):要支援・要介護状態に陥るリスクが高い高齢者を早期発見し、状態悪化を防ぐ取り組み。基本チェックリストでスクリーニングされた事業対象者が中心で、短期集中型の運動・栄養・口腔プログラムが提供される。
- 三次予防(要支援・要介護者向け):すでに要支援1・2、要介護1〜5の認定を受けた人を対象に、状態のさらなる悪化を防ぎ改善を図る取り組み。介護予防訪問看護やデイサービスでの機能訓練など、給付サービスの中で実施される。
近年は、これに先立つ「ゼロ次予防」(社会参加できる地域環境づくり)も注目されており、フレイル対策や認知症予防と組み合わせて語られる場面が増えています。
介護予防給付と介護予防・日常生活支援総合事業の違い
介護予防の文脈で混同されやすいのが、要支援1・2の人を対象とする介護予防給付(予防給付)と、市町村が運営する介護予防・日常生活支援総合事業(総合事業)です。担い手と財源の構造が異なります。
| 項目 | 介護予防給付 | 介護予防・日常生活支援総合事業 |
|---|---|---|
| 根拠 | 介護保険法 第8条の2 | 介護保険法 第115条の45(地域支援事業) |
| 対象者 | 要支援1・要支援2の認定者 | 要支援者+基本チェックリストでの事業対象者 |
| 主なサービス | 介護予防訪問看護、介護予防通所リハ、介護予防短期入所、福祉用具貸与など | 訪問型サービス、通所型サービス、一般介護予防事業、生活支援サービスなど |
| 運営主体 | 都道府県指定の介護サービス事業者 | 市町村(住民組織やNPOも担い手) |
| 支給限度基準額 | 要支援1:月50,320円/要支援2:月105,310円 | 市町村ごとに単価設定(通常は給付水準と同等) |
2015年(平成27年)の改正で、要支援者の訪問介護・通所介護は予防給付から総合事業に段階的に移行しました。現場のケアマネジャーは利用者の状態と地域資源に応じて両者を組み合わせるケアプラン作成が必要です。
介護現場で介護予防の視点を活かすポイント
介護職員・看護職員・リハビリ職が日常業務に介護予防の考え方を組み込むうえで、押さえておきたい実務ポイントを整理します。
- 「できること」を奪わない介助:服を着替える、立ち上がるといった動作を全介助で済ませず、利用者ができる部分は時間がかかっても本人に行ってもらう。これは三次予防そのものです。
- 口腔ケア・栄養ケアの徹底:低栄養と口腔機能低下はフレイルの起点になりやすく、誤嚥性肺炎で要介護度が悪化する典型的な経路。歯科衛生士・管理栄養士との連携で予防効果が大きく変わります。
- 社会参加・役割の機会づくり:施設内のレクリエーションも、ただ「やってもらう」のではなく、利用者に役割を持ってもらうことで認知機能・意欲の維持に繋がります。
- 記録と多職種共有:介護記録に「歩行距離が縮んできた」「食事量が減った」といった微細な変化を残し、ケアマネ・主治医・リハ職と共有することが、二次予防的な早期介入に直結します。
機能訓練指導員やリハ職が在籍する施設では、自立支援型ケアプランや個別機能訓練計画書を通じて介護予防の視点が組織的に運用されています。求人を探す際にも「自立支援」「重度化防止」を打ち出す事業所は介護予防への意識が高い職場と判断できます。
介護予防についてよくある質問
Q. 介護予防は何歳から始めればよいですか?
A. 厚生労働省の地域支援事業は原則65歳以上を対象にしていますが、フレイル予防の観点では40〜50代からの生活習慣づくりが重要とされています。地域の通いの場や健康教室は年齢を問わず参加できる自治体が多く、早期からの取り組みが推奨されます。
Q. 要支援認定を受けないと介護予防サービスは使えませんか?
A. 介護予防給付は要支援1・2の認定が必須ですが、総合事業の一部は基本チェックリストで「事業対象者」と判定されれば認定なしで利用できます。地域包括支援センターに相談すると流れを案内してもらえます。
Q. 介護予防と機能訓練・リハビリは何が違うのですか?
A. リハビリ(リハビリテーション)は失われた機能の回復を医学的に図る取り組み、機能訓練は維持・向上を図る運動プログラムです。介護予防はそれらを包含するより広い概念で、栄養・口腔・社会参加・認知機能まで対象に含めます。
Q. 介護予防に関わる仕事には何がありますか?
A. 機能訓練指導員、地域包括支援センターの保健師・主任ケアマネ、デイケアの理学療法士・作業療法士、介護予防運動指導員(民間資格)など多岐にわたります。介護福祉士・初任者研修修了者も自立支援型のデイサービスや小規模多機能で介護予防に携わる機会が増えています。
Q. 2026年以降、介護予防の制度はどう変わる予定ですか?
A. 2024年度介護報酬改定で「自立支援・重度化防止」がより強く打ち出され、2027年度に向けた次期改定の議論でも、ADL維持等加算・科学的介護情報システム(LIFE)と連動した加算評価が拡大する方向で検討が進んでいます。
参考資料・出典
- 厚生労働省「介護予防マニュアル 第1章 介護予防について」
- 厚生労働省「介護予防にかかる事業の実施について」
- 厚生労働省「介護予防・日常生活支援総合事業」
- 厚生労働省「介護予防(地域支援事業)の推進」
- 介護保険法(昭和9年法律第123号)第8条の2、第115条の45
まとめ:介護予防は介護職のやりがいを広げる視点
介護予防は、要介護状態に陥ることを防ぐ一次予防、リスクの高い人への二次予防、すでに認定を受けた人の悪化を防ぐ三次予防の3段階で構成される、介護保険制度の根幹をなす考え方です。介護予防給付(要支援1・2向け)と総合事業(地域支援事業)が車の両輪となって支えています。
介護現場では「できることを奪わない介助」「口腔・栄養への関心」「社会参加の機会づくり」を通じて、日々のケアが直接介護予防に繋がります。自立支援型のケアを志向する事業所は、介護職にとってもキャリアアップの機会が豊富で、機能訓練指導員や生活相談員へのステップアップにも有利な環境です。
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執筆者
介護のハタラクナカマ編集部
編集部
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