
もの忘れ外来とは
もの忘れ外来とは認知症が心配なときの専門受診先。何科か(脳神経内科・精神科・老年科)、受診の流れ(問診・認知機能検査・画像検査)、持ち物・家族の付き添い、認知症疾患医療センターとの違い、受診の目安を公的資料で解説します。
もの忘れ外来とはの直接回答
もの忘れ外来とは、記憶力の低下や「もしかして認知症では」という不安を専門的に診る外来です。加齢による生理的なもの忘れなのか、認知症など治療が必要な病気によるものなのかを、問診・認知機能検査・画像検査などで見分け、必要に応じて治療や生活の支援につなげます。診断を急いで自己判断するのではなく、早めに相談する窓口として活用できます。
目次
もの忘れ外来の概要と役割
もの忘れ外来とは何をする外来か
もの忘れ外来は、もの忘れを心配している人や認知症が疑われる人のための専門的な診療を行う外来の総称です。誰にでも起こる加齢にともなうもの忘れと、アルツハイマー型認知症・血管性認知症・レビー小体型認知症・前頭側頭型認知症などの病気によるもの忘れを見分け(鑑別診断)、原因に応じた治療や生活の組み立てを支援します。
厚生労働省の資料でも、認知症が疑われるときに受診する科として「もの忘れ外来」など認知症を専門に診ている科が挙げられています。症状が軽い段階で気づいて適切に対応できれば、薬で進行を緩やかにできる場合があり、本人が今後の暮らしを考える時間を持てるという意味でも、早期受診には意義があるとされています。
注意したいのは、もの忘れがすべて認知症につながるわけではない点です。甲状腺機能の低下、ビタミン欠乏、うつ状態、薬の影響、慢性硬膜下血腫や正常圧水頭症など、治療で改善し得る原因が隠れていることもあります。もの忘れ外来はこうした「治せるもの忘れ」を見逃さないための入り口でもあります。
名称は医療機関ごとに少しずつ違う
「もの忘れ外来」という名前は法律で定められた正式名称ではなく、医療機関によって「認知症外来」「メモリークリニック」「老年精神科」などと呼ばれることもあります。診療の中身はおおむね共通していますが、対応する診療科や検査体制は病院ごとに異なるため、受診前に何を診てもらえるかを確認しておくと安心です。
もの忘れ外来は何科が担当するか
もの忘れ外来は何科?担当する診療科
もの忘れ外来は、認知症や高齢者の脳の病気を専門とする複数の診療科の医師が担当します。どの科が中心になるかは医療機関によって異なりますが、代表的なのは次の3つです。
- 脳神経内科(神経内科):脳や神経の病気を内科的に診る科。アルツハイマー型・レビー小体型・血管性など、認知症の原因疾患の鑑別や画像検査を得意とします。
- 精神科・老年精神科:気分の落ち込み、不安、幻覚・妄想、興奮といった行動・心理症状(BPSD)への対応や、うつ状態とのみきわめを得意とします。
- 老年科(老年内科):高齢者を全身の視点で診る科。持病や薬の影響を含めて、もの忘れの背景を総合的に評価します。
このほか、脳神経外科がもの忘れ外来を担っている場合もあります。「もの忘れ外来」を掲げていれば、これらの科の医師が窓口になっていると考えてよいでしょう。かかりつけ医がいる場合は、まずかかりつけ医に相談し、必要に応じて専門の外来を紹介してもらう流れが基本です。どの科を受診すればよいか迷うときは、地域包括支援センターや自治体の高齢者福祉担当課に相談すると、近くの受診先を案内してもらえます。
もの忘れ外来の受診の流れ
もの忘れ外来の診察は、いきなり画像検査をするのではなく、段階を踏んで原因を絞り込んでいきます。厚生労働省の資料に示された一般的な流れをもとに、おおまかな道すじを整理します。
- 予約・問診票の準備:もの忘れ外来は予約制のことが多く、紹介状(診療情報提供書)が必要な医療機関もあります。事前に電話で確認し、問診票が用意されている場合は記入して持参します。
- 問診(病歴をきく):いつ頃からどんな変化があったか、持病(糖尿病・高血圧・頭部外傷・うつ病など)や服用中の薬、これまでの病気、教育歴などを確認します。本人の普段の様子を知る家族の情報がとても重要になります。
- 診察・血液検査:神経学的な所見や全身の状態を診て、血液検査で甲状腺機能やビタミン、血糖などをチェックし、治療で改善し得る原因がないかを調べます。
- 認知機能検査(神経心理検査):MMSEや改訂長谷川式簡易知能評価スケール(HDS-R)などの質問形式の検査で、記憶や見当識の状態を評価します。所要時間はおおむね10〜20分程度です。
- 画像検査:CTやMRIで脳の形(萎縮や出血の有無)を、SPECTやPETで脳の働きを調べ、認知症の原因疾患を見分けます。予約が別日になることもあります。
- 結果説明・治療方針:検査がそろった後、診断結果と今後の方針を本人・家族に説明します。初診から診断確定まで日数がかかることがあります。
認知機能検査の点数は、加齢によるものか病気によるものかを判断する目安にすぎません。医師の問診や画像検査を総合して診断名が決まるため、検査の数字だけで結果を決めつけないことが大切です。
もの忘れ外来の持ち物と家族の付き添い
受診時の持ち物と家族の付き添い
もの忘れ外来をスムーズに受けるために、準備しておくとよいものがあります。厚生労働省の資料でも、本人の普段の様子をよく知る人が付き添い、変化の経過をメモにして持参することがすすめられています。
持っていくとよいもの
- 健康保険証・各種医療証、お薬手帳(服用中の薬がわかるもの)
- 紹介状(診療情報提供書):かかりつけ医から発行されている場合
- 症状の経過メモ:いつ頃から、どんな場面で、どんなもの忘れや変化があったかを具体的に記したもの。受診前の1〜2週間ほど書き留めておくと役立ちます
- これまでの病気やけがの記録、健康診断や脳ドックの結果があれば
- 記入済みの問診票(事前配布がある場合)
家族の付き添いが大切な理由
認知症の特徴のひとつに、本人が自分のもの忘れに気づきにくい(病識が乏しい)ことがあります。そのため、本人の説明だけでは日常の変化が正確に伝わらないことがあります。普段の暮らしを見ている家族が付き添い、医師に経過を伝えることで、診断の精度が上がります。診察結果も聞き漏らさないよう、家族がメモを取っておくと後で役立ちます。
本人が受診を嫌がる場合は、無理に「認知症の検査」と伝えるより、「健康診断のついでに」「気になる体調を診てもらおう」といった形で、不安を強めない誘い方が現実的な選択肢になります。それでも難しいときは、家族だけで相談に行ける窓口(認知症疾患医療センターや地域包括支援センター)を利用する方法もあります。
もの忘れ外来と認知症疾患医療センターの違い
「もの忘れ外来」と「認知症疾患医療センター」は混同されやすいですが、役割の重なりと違いがあります。
| 項目 | もの忘れ外来 | 認知症疾患医療センター |
|---|---|---|
| 位置づけ | 医療機関が設ける外来の呼び名(正式な制度名ではない) | 都道府県・指定都市が指定する、地域の認知症医療の拠点 |
| 主な役割 | もの忘れの診察・鑑別診断・治療 | 専門医療相談、鑑別診断、行動・心理症状や身体合併症への対応、地域連携 |
| 相談窓口 | 外来診療が中心 | 専門相談員による電話・面談相談の窓口がある |
| 連携 | 必要に応じて専門機関へ紹介 | かかりつけ医・地域包括支援センター・介護機関と連携する拠点 |
多くの認知症疾患医療センターは、その中に「もの忘れ外来」を設けています。つまり、もの忘れ外来は「診てもらう外来」、認知症疾患医療センターは「相談から診断・地域連携までを担う拠点」と整理するとわかりやすいでしょう。どちらを受診すべきか迷う場合は、まずかかりつけ医や地域包括支援センターに相談し、状況に合った窓口を案内してもらうのが安心です。
なお、本人が受診そのものを強く拒む、家庭訪問からの支援が必要、といったケースでは、市町村が設置する「認知症初期集中支援チーム」が自宅を訪問して受診や介護につなげる役割を担います。もの忘れ外来・認知症疾患医療センター・初期集中支援チームは、それぞれ入り口が違う支援の選択肢です。
もの忘れ外来を受診するタイミングの目安
「いつ受診すればいいのか」は多くの家族が迷うところです。診断を急ぐためではなく、加齢によるもの忘れか治療が必要なものかを早めに切り分けるために、次のような変化が続くときは相談を考える目安になります。
- 同じことを何度も聞き返す、同じ話を繰り返すことが増えた
- 財布・鍵など物を置いた場所がわからなくなることが頻繁にある
- 少し前に聞いた話や約束を思い出せないことが増えた
- 日付や今いる場所がわからなくなることがある
- 慣れた道で迷う、料理や買い物など今までできた作業に時間がかかる
- 家族から見て「以前と様子が違う」と感じる変化がある
加齢によるもの忘れは「体験の一部を忘れる(朝食のメニューを思い出せない)」ことが多いのに対し、認知症では「体験そのものを忘れる(朝食を食べたこと自体を覚えていない)」傾向があるとされます。とはいえ、この線引きを家庭で判断するのは難しいため、気になる変化が続くなら自己判断せず専門の窓口に相談するのが安全です。
受診のタイミングを逃さないコツは、「もしかして」と感じた記憶が新しいうちに動くことです。早い段階で受診すれば、治療で改善し得る原因の発見や、本人が今後を考える時間の確保につながります。まずはかかりつけ医や地域包括支援センターに、いまの困りごとを伝えるところから始めてみてください。
もの忘れ外来のよくある質問
もの忘れ外来に関するよくある質問
もの忘れ外来は予約が必要ですか?
多くの医療機関で予約制です。紹介状(診療情報提供書)が必要な場合もあるため、受診前に電話で予約方法と持ち物を確認しましょう。初診から診断確定まで日数がかかることがあります。
本人が受診を嫌がります。どうすればよいですか?
無理に「認知症の検査」と伝えず、「健康診断のついでに」「気になる体調を診てもらおう」など不安を強めない誘い方が現実的です。それでも難しい場合は、家族だけで相談できる認知症疾患医療センターや地域包括支援センターを利用したり、自宅訪問から支援する認知症初期集中支援チームにつなぐ方法もあります。
もの忘れ外来ではどんな検査をしますか?
問診で経過や持病・服薬を確認し、血液検査で治療し得る原因を調べます。MMSEや改訂長谷川式(HDS-R)などの認知機能検査、CT・MRI・SPECTなどの画像検査を組み合わせて原因を見分けます。検査の点数だけで診断は決まりません。
もの忘れはすべて認知症ですか?
いいえ。加齢による生理的なもの忘れのほか、甲状腺機能の低下、ビタミン欠乏、うつ状態、薬の影響、慢性硬膜下血腫や正常圧水頭症など、治療で改善し得る原因のこともあります。もの忘れ外来はこうした原因を見極める場でもあります。
受診費用はどのくらいかかりますか?
費用は医療機関や検査内容、保険の自己負担割合によって異なります。画像検査を行うと初診の費用は高くなる傾向があります。正確な金額は受診先の医療機関に直接お問い合わせください。
もの忘れ外来の参考資料
- [1]
- [2]認知症の検査(神経心理検査・MMSE・HDS-R・画像検査)- 国立長寿医療研究センター
問診から認知機能検査、CT・MRI・SPECT・PETまでの認知症検査の内容と、カットオフ値が目安である旨を説明。
- [3]
- [4]
- [5]
- [6]
もの忘れ外来とはのまとめ
まとめ
もの忘れ外来は、認知症が心配なときに「加齢によるもの忘れか、治療が必要な病気か」を見分けるための専門的な入り口です。担当は脳神経内科・精神科・老年科などで、問診・認知機能検査・画像検査を段階的に行います。本人の様子を知る家族の付き添いと経過メモが診断の助けになり、受診を嫌がる場合は認知症疾患医療センターや地域包括支援センターへの相談という選択肢もあります。気になる変化が続くなら、自己判断せず早めに専門の窓口へ相談することが、本人と家族双方の安心につながります。
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執筆者
介護のハタラクナカマ編集部
編集部
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