
認知症地域支援推進員とは
認知症地域支援推進員は、市町村に配置され、認知症の人と家族の相談支援や医療・介護・地域の連携体制づくりを担う専門職。役割・配置先・資格要件・関連施策をやさしく整理します。
この記事のポイント
認知症地域支援推進員とは、介護保険法に基づく地域支援事業の一環として市町村が配置する専門職で、認知症の人と家族への相談支援や、医療・介護・地域の関係機関をつなぐコーディネーター役を担います。2018年4月までに全国すべての市町村に配置され、認知症ケアパス・認知症カフェ・初期集中支援チームなど地域の認知症施策を横断的に推進します。
目次
認知症地域支援推進員の定義と法令上の位置づけ
認知症地域支援推進員は、介護保険法に基づく地域支援事業(包括的支援事業)の中の「認知症総合支援事業」に位置づけられる専門職です。市町村が配置主体となり、認知症の人とその家族が住み慣れた地域で安心して暮らし続けられるよう、医療・介護・地域資源を横断的に結びつける役割を担います。
制度の出発点は2012年の「認知症施策推進5か年計画(オレンジプラン)」で、2015年策定の「新オレンジプラン(認知症施策推進総合戦略)」によって、2018年4月までに全国すべての市町村に配置することが目標化されました。2019年に閣議決定された「認知症施策推進大綱」では、共生と予防を車の両輪として推進員の機能強化が改めて打ち出されています。
推進員は単独で動くポジションではなく、地域包括支援センター・認知症初期集中支援チーム・認知症疾患医療センター・かかりつけ医・民生委員・認知症サポーターなど、認知症に関わるあらゆる主体をつなぐ「結節点」として機能します。市町村ごとに認知症の有病率や社会資源の偏りが大きく異なる中で、地域の実情に応じた施策設計を行うのが推進員の特徴です。
認知症地域支援推進員の3つの役割
厚生労働省の通知では、推進員の業務は大きく3領域に整理されています。いずれも「個別ケース対応」と「地域づくり」の両方を担うのが特徴です。
- 医療・介護等の支援ネットワーク構築:認知症ケアパスの作成・更新・普及、医療機関と介護サービス事業所の顔の見える連携会議の企画、認知症初期集中支援チームとの情報共有体制の整備など、地域単位の連携基盤づくりを行います。
- 関係機関と連携した事業の企画・調整:認知症カフェの立ち上げ支援、認知症サポーター養成講座・ステップアップ研修、若年性認知症支援、本人ミーティング(本人が主体となる集い)の運営支援など、地域全体の認知症対応力を底上げする事業を企画します。
- 認知症の人とその家族を支援する相談業務:地域包括支援センター等の窓口で、診断後の生活相談、サービス利用調整、家族の介護負担相談、権利擁護への接続などを行います。必要に応じて初期集中支援チームへの引き継ぎや、地域ケア会議での個別検討に持ち込みます。
これら3つは独立した業務ではなく、個別相談で見えた地域課題を施策にフィードバックし、施策で整えた資源を再び個別支援に活用する循環構造として運用されることが想定されています。
配置先と資格要件
主な配置先
推進員は市町村の判断で次のいずれか(または複数兼務)に配置されます。
- 地域包括支援センター:もっとも一般的な配置先。地域の相談窓口機能と一体的に運用される。
- 市町村本庁(高齢福祉課・介護保険課等):自治体施策の企画立案と直結したポジション。
- 認知症疾患医療センター:専門医療との連携を強化したい自治体で採用。
- その他、地域の実情に応じて社会福祉協議会等への委託配置も可能。
資格要件
厚生労働省通知では、推進員は次のいずれかに該当する者とされています。
- 認知症の医療や介護の専門的知識および経験を有する医師・保健師・看護師・作業療法士・歯科衛生士・精神保健福祉士・社会福祉士・介護福祉士
- 上記以外で、認知症の医療や介護の専門的知識を有すると市町村が認める者
加えて、認知症介護実践リーダー研修や認知症地域支援推進員研修(国立長寿医療研究センター等が実施)の修了が望ましいとされ、実際の採用要件として明示する自治体も多くあります。配置人数は人口や認知症高齢者数に応じて市町村が決定し、1自治体あたり1名以上の配置が標準です。
認知症初期集中支援チームとの違い
認知症地域支援推進員と混同されやすいのが認知症初期集中支援チームです。どちらも認知症総合支援事業に位置づけられ市町村が配置しますが、対象とアプローチが異なります。
| 項目 | 認知症地域支援推進員 | 認知症初期集中支援チーム |
|---|---|---|
| 主な対象 | 地域全体(個別相談+施策推進) | 医療・介護に未接続または中断中の認知症の人 |
| 支援期間 | 継続的・恒常的 | 原則6か月以内の集中支援 |
| 構成 | 個人(推進員) | 複数職種+認知症サポート医のチーム |
| 主な機能 | ネットワーク構築・相談・施策企画 | 訪問アセスメント・初期支援・適切な医療介護へのつなぎ |
実務上は、推進員が個別相談で「医療未受診の認知症の人」を把握した場合、初期集中支援チームに介入を依頼する、といった役割分担と連携が前提です。両者を同じ地域包括支援センター内に配置している自治体も少なくありません。
現場での活かし方と利用のヒント
介護職・家族介護者・ケアマネジャーそれぞれにとって、推進員は使い方を知っておくと支援の選択肢が広がる存在です。
- 介護職・看護職:施設・事業所で BPSD への対応に行き詰まったとき、推進員経由で認知症疾患医療センターや初期集中支援チームに接続できます。地域ケア会議への持ち込みも推進員が窓口になります。
- ケアマネジャー:診断直後で本人の受け入れが進まないケース、家族の介護負担が限界に近いケース、認知症カフェ等の社会参加先を探したいケースで、推進員に相談することで地域資源マップを得られます。
- 家族介護者:「どこに相談していいかわからない」段階こそ推進員の出番です。お住まいの市区町村のホームページや地域包括支援センターに連絡し、「認知症地域支援推進員に相談したい」と伝えれば、配置先に取り次いでもらえます。
- 事業所運営者:認知症対応力向上研修や認知症サポーター養成講座を社員向けに開催したい場合、推進員が講師調整や教材提供で協力してくれるケースが多いです。
推進員は「制度の歯車」ではなく「地域ごとに顔の見える人」として運用されています。配置者の氏名・連絡先を公表している自治体も多いので、まずは市区町村窓口で確認するのが近道です。
よくある質問
Q. 認知症地域支援推進員はどこで会えますか?
A. 多くは地域包括支援センターに配置されています。市町村本庁の高齢福祉部門や認知症疾患医療センターに置かれている場合もあるため、市区町村のホームページで「認知症地域支援推進員」と検索するか、地域包括支援センターに電話で問い合わせるのが確実です。
Q. 介護福祉士でも推進員になれますか?
A. 厚生労働省通知の資格要件に介護福祉士が明記されています。加えて認知症介護実践リーダー研修等の修了が望ましいとされており、実践リーダー研修を経て自治体公募で採用されるルートが一般的です。
Q. 認知症ケアパスとは何ですか?推進員との関係は?
A. 認知症ケアパスは、認知症の状態(軽度〜重度)ごとに、地域で利用できる医療・介護・生活支援サービスを時系列で示したガイドブックです。市町村単位で作成・更新され、その作成・普及・活用を主導するのが推進員の中核業務の一つです。
Q. 相談は無料ですか?
A. 推進員への相談は無料です。地域支援事業として公費で運営されているため、利用者負担は発生しません(紹介先の医療機関やサービスは別途費用が発生します)。
Q. 若年性認知症の相談にも対応してくれますか?
A. 対応します。若年性認知症は就労・経済面の課題が大きく、推進員が若年性認知症支援コーディネーターや障害福祉サービス、ハローワーク等と連携して支援することが想定されています。
まとめ
認知症地域支援推進員は、市町村に配置され、認知症の人と家族の個別相談から、認知症ケアパス・カフェ・サポーター養成・初期集中支援チームとの連携といった地域施策までを横断的に担う専門職です。介護現場で「認知症対応に行き詰まった」「家族の負担が限界」と感じたとき、地域包括支援センターを入り口に推進員へつなぐと、医療・介護・地域資源を再編成した支援が組み立てやすくなります。お住まいや勤務先の市区町村に必ず配置されているので、まずは連絡先を確認しておきましょう。
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執筆者
介護のハタラクナカマ編集部
編集部
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