
認知症介護実践リーダー研修とは
認知症介護実践リーダー研修は、実践者研修修了から1年以上+介護業務5年以上+チームリーダー職位の3要件を満たす介護職員が受講する50時間規模の指導者育成研修。グループホーム計画作成担当者・認知症対応型通所介護管理者・認知症専門ケア加算Ⅱの算定要件として位置づけられる、実践者研修と指導者養成研修の中段資格を整理します。
この記事のポイント
認知症介護実践リーダー研修とは、認知症介護実践者研修を修了して1年以上経過し、介護業務に5年以上従事したチームリーダー級の介護職員を対象とする指導者養成研修です。eラーニング・講義演習・他施設実習・自施設実習を合わせて約50時間で構成され、修了後は自施設の認知症ケアチームを牽引する立場として、グループホームの計画作成担当者や認知症対応型通所介護の管理者、認知症専門ケア加算Ⅱの算定要件にも位置づけられます。
目次
認知症介護実践リーダー研修の位置づけと制度上の役割
認知症介護実践リーダー研修は、厚生労働省の通知「認知症介護実践者等養成事業の実施について」に基づき、各都道府県・指定都市が実施する公的研修体系の一つです。研修体系は「認知症介護基礎研修 → 認知症介護実践者研修 → 認知症介護実践リーダー研修 → 認知症介護指導者養成研修」という4段階で構成されており、実践リーダー研修は基礎・実践者で身につけた個別ケア技術を、ユニット・フロア・事業所単位の「チームケア」へ展開する中堅指導者を育てる段階に位置づけられます。
制度上の主な意義は、第一に認知症ケアの質の標準化です。受講生は自施設の課題を整理し、ケア方針・OJT計画・記録様式の改善案を持ち帰ることが研修の到達目標になっています。第二に、事業所運営要件としての機能です。グループホーム(認知症対応型共同生活介護)の計画作成担当者の必置要件、認知症対応型通所介護の管理者要件、認知症専門ケア加算Ⅱの「認知症介護実践リーダー研修修了者をユニットケアに必要数配置」する算定要件などに紐づいており、修了者は事業所の指定・加算双方を支える人的基盤として扱われます。
第三に、キャリアラダー上の意味です。介護福祉士の上位スキルを公的に証明する仕組みとして、処遇改善加算のキャリアパス要件や、施設内の役職昇格・給与テーブルと結びつけて運用する法人が増えています。研修修了は単なる知識習得ではなく、認知症ケアを「自分のチームに広げる責任」を負う立場の証明として理解しておくことが重要です。
受講要件と研修構成の概要
研修受講には、複数の要件をすべて満たす必要があります。自治体ごとに細部は異なりますが、共通する標準形は次のとおりです。
受講要件(共通項)
- 先行研修の修了:認知症介護実践者研修を修了し、修了後おおむね1年以上経過していること
- 実務経験:認知症の人の介護業務に5年以上従事した経験があること(介護福祉士有資格者は10年以上かつ1,800日以上の実務で代替認定する自治体もあり)
- 職位:施設・事業所において主任・副主任・ユニットリーダーなどチームケアの中核を担う立場、またはそれらを指導する立場にあること
- 勤務先:当該都道府県内の介護保険施設・事業所に従事している職員(居宅介護支援事業所を除く自治体が多い)
- 推薦と意欲:施設長・管理者の推薦と、地域での認知症支援活動への参加意思
研修構成(標準形・合計約50時間)
- eラーニング:おおむね5〜6時間(自治体により330分前後)
- 講義・演習:7〜10日間、合計31時間程度
- 他施設実習:3〜5日間、自施設以外の認知症ケアを観察し比較
- 自施設実習:4〜6週間、自施設で設定した課題に取り組む
- 課題研究・レポート:自施設実習の成果を取りまとめ提出
全課程の修了まではおおむね3か月から半年かかるのが一般的で、修了試験はなく全カリキュラム履修+課題提出で修了認定される運用が標準です。
実践者研修・指導者養成研修との違い
同じ「認知症介護○○研修」という名称でも、対象者・到達目標・修了者の役割は大きく異なります。3段階の中での位置を把握しておくと、自分が次にどのステップへ進むべきかが明確になります。
| 項目 | 認知症介護実践者研修 | 認知症介護実践リーダー研修 | 認知症介護指導者養成研修 |
|---|---|---|---|
| 主な対象 | 認知症ケアに従事する一般介護職員 | チームリーダー級の中堅介護職員 | 都道府県・指定都市の研修講師候補 |
| 主な受講要件 | 実務経験おおむね2年以上+基礎研修修了 | 実践者研修修了から1年以上+実務5年以上+リーダー職位 | 実践リーダー研修修了+指導経験 |
| 研修時間の目安 | 講義・演習+自施設実習で合計40〜60時間 | eラーニング+講義演習+他施設・自施設実習で合計約50時間 | 約9週間(約500時間規模、認知症介護研究・研修センターで実施) |
| 到達目標 | 個別ケア・アセスメントの実践力 | チームケアの設計・OJT・指導力 | 都道府県内研修の企画・運営・講師 |
| 典型的な活用 | グループホーム配置基準・専門ケア加算Ⅰの算定要件 | 計画作成担当者・認知症対応型通所介護管理者・専門ケア加算Ⅱ | 実践者研修・実践リーダー研修の講師 |
実践者研修が「自分のケアを変える」段階、実践リーダー研修が「チームのケアを変える」段階、指導者養成研修が「地域・自治体のケアを変える」段階というイメージで段階的に役割が広がります。実践リーダー研修は、現場の介護福祉士・社会福祉士・看護師などが管理職へステップアップする際の中継地点として最も需要が高い研修と位置づけられます。
受講から修了までの流れ
- 受講要件の自己確認:認知症介護実践者研修の修了証、実務経験年数、現在の職位(主任・ユニットリーダー等)を整理し、5要件を満たしているか確認します。
- 施設からの推薦・申込:所属施設の管理者に研修参加の意思を伝え、自治体の募集要項に沿って推薦書・申込書を提出します。募集は年1〜2回が一般的で、定員制のため早期申込が必要です。
- eラーニング受講:講義開始前にe-learningで認知症ケアの基礎理論・最新エビデンスを学習し、講義演習に備えます。
- 講義・演習(7〜10日間):認知症ケアのアセスメント、チームケア論、OJT・スーパービジョン、ケアカンファレンスの設計など、リーダーに必要な技能を体系的に学びます。
- 他施設実習(3〜5日間):自施設以外の認知症ケア現場を観察し、ケアの違い・気づきをレポートにまとめます。
- 自施設実習(4〜6週間):自施設で設定した「チームケア改善課題」に取り組み、現任スタッフへのOJTやケア方針の見直しを実施します。
- 課題研究レポート提出:自施設実習の成果を取りまとめ、研修事務局に提出します。
- 修了認定・修了証交付:全カリキュラム履修と課題提出をもって修了が認められ、自治体名の修了証が交付されます。
修了後の役割と現場での活かし方
修了者は単なる「研修を受けた人」ではなく、自施設の認知症ケアチームを率いる中堅指導者として位置づけられます。修了後に期待される実務上の役割は次の3つに集約できます。
1. チームケアの推進
ユニット・フロアの認知症ケア方針を統一し、ケアカンファレンスの司会・ケア記録の質向上・行動心理症状(BPSD)への対応標準化を担います。個別ケア計画書と日々の介護記録の整合性を点検し、エビデンスに基づくケアを組織的に根付かせる役割が求められます。
2. 後輩・スタッフへのOJTと指導
認知症介護基礎研修・実践者研修修了者を含む現任スタッフへのOJT、ペアワーク、ケース検討会を主導します。新人の不安を減らし、認知症ケアの離職リスクを下げる「育てるリーダー」としての役割が中心です。
3. 加算・配置基準を満たすための制度貢献
グループホーム計画作成担当者の必置要件、認知症対応型通所介護管理者要件、認知症専門ケア加算Ⅱの算定要件を満たす人材として、事業所の指定・加算双方を下支えします。修了者は法人内の異動でも価値が高く、複数事業所を持つ法人では基幹人材として扱われる傾向があります。
よくある質問
Q1. 認知症介護実践者研修を修了してすぐに受講できますか?
原則として、実践者研修修了から1年以上経過していることが要件です。これは、実践者研修で学んだ内容を現場で実践し、自施設の課題を発見してから受講するための期間と位置づけられています。
Q2. 介護福祉士資格があれば実務経験は短縮されますか?
自治体によっては、介護福祉士資格取得後10年以上かつ1,800日以上の実務経験を「実践者研修修了+1年経過」と同等とみなす特例ルートを設けています。詳細は受講予定の都道府県・指定都市の募集要項を確認してください。
Q3. 修了試験はありますか?
修了試験は義務付けられていません。全カリキュラムの出席と自施設実習レポート・課題研究の提出をもって修了認定されます。ただし、自施設実習で設定した課題は研修事務局がレビューするため、内容が不十分な場合は修正が求められます。
Q4. 受講費用はどれくらいですか?
自治体ごとに異なります。東京都など無料で実施する自治体もあれば、3〜10万円程度を受講者または所属施設が負担する自治体もあります。多くの法人では研修費用を施設が負担する仕組みになっており、申込前に施設の研修補助制度を確認するのが現実的です。
Q5. オンライン受講だけで修了できますか?
eラーニング部分はオンラインで完結しますが、他施設実習・自施設実習・課題研究は対面・実地が原則です。完全オンライン化されている自治体は2026年時点では確認されておらず、現場での実習が必須要素として残っています。
参考資料
- 厚生労働省「認知症施策」 — 認知症介護実践者等養成事業の通知体系
- 東京都福祉局「東京都認知症介護研修の概要」 — 受講要件・カリキュラム時間の自治体公式情報
- 大阪府「認知症介護実践リーダー研修」 — 受講要件・実習構成の自治体公式情報
- 厚生労働省「介護サービス事業所における認知症介護指導者等の養成研修事業の実施について」 — 研修体系の制度的根拠
- 認知症介護研究・研修センター — 全国3センター(仙台・東京・大府)の指導者養成研修実施機関
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執筆者
介護のハタラクナカマ編集部
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