
生活支援コーディネーターとは
生活支援コーディネーター(SC・地域支え合い推進員)は、総合事業の生活支援体制整備事業に基づき市町村・社協・地域包括などに配置される地域資源開発の専門職。3層構造と協議体、業務内容、配置数(第1層3,241人・第2層6,162人)まで解説します。
この記事のポイント
生活支援コーディネーター(SC)は、介護保険法に基づく地域支援事業のひとつ「生活支援体制整備事業」を担う専門職で、地域支え合い推進員とも呼ばれます。高齢者の生活支援サービスの担い手を地域で発掘・育成し、ニーズとマッチングする「地域資源開発」の役割を担います。配置は第1層(市町村全域)・第2層(日常生活圏域)・第3層(個別事業者)の3層構造で、市町村や社会福祉協議会、地域包括支援センターなどに置かれています。
目次
生活支援コーディネーターの定義と法的位置づけ
生活支援コーディネーター(Service Coordinator、略称SC)は、2015年の介護保険法改正で創設された「生活支援体制整備事業」に基づき、高齢者の生活支援・介護予防サービスの体制整備を推進するために市町村が配置する人材です。厚生労働省では別名として「地域支え合い推進員」という呼称を用いており、地域における支え合いの仕組みづくりをコーディネートする役割を担います。
SCは介護保険サービス(要介護認定後の専門サービス)を直接提供する立場ではなく、地域住民・NPO・ボランティア・民間企業・社会福祉法人など多様な主体による生活支援サービスを地域で開発し、つなぎ合わせる役割を担います。買い物支援、ゴミ出し、見守り、サロン、移動支援などインフォーマルな生活支援を地域資源として育てる、いわば地域づくりの黒衣(くろこ)的存在です。
事業の根拠は介護保険法第115条の45(地域支援事業)で、介護予防・日常生活支援総合事業(総合事業)の包括的支援事業の一部に位置づけられています。市町村は本事業を実施するにあたり、SCの配置と「協議体」の設置を進めることが求められており、2024年度時点で全国の市町村で実施が進んでいます。
3層構造と全国の配置数(2023年度実績)
生活支援コーディネーターは、活動範囲によって第1層〜第3層の3つのレイヤーで配置されます。あわせて、各層には議論・調整の場として協議体が設置されます。
| 層 | 活動範囲 | 主な役割 | 2023年度配置数 | 協議体数 |
|---|---|---|---|---|
| 第1層 | 市町村全域 | 市町村全体の方針策定、関係機関との調整、第2層SCの支援 | 3,241人 | 2,523箇所 |
| 第2層 | 日常生活圏域(中学校区など) | 圏域内の資源開発・ネットワーク構築・住民活動支援 | 6,162人 | 8,335箇所 |
| 第3層 | 個別の生活支援サービス提供主体 | 個別事業者・団体内でのコーディネート(任意配置) | — | — |
出典:厚生労働省「介護予防・日常生活支援総合事業(地域支援事業)の実施状況(令和5年度実施分)に関する調査結果」(2024年)
配置数を見ると、第2層が第1層の約1.9倍と、住民により近い圏域での配置が手厚くなっているのが特徴です。これは「地域住民が主役の生活支援づくり」という事業趣旨を反映した配置設計といえます。第3層は法令上必須ではなく、サービス提供団体内に置かれる任意配置のためカウントから除外されています。
生活支援コーディネーターの配置先
SCは「市町村が配置する」と定められていますが、実際の所属先・雇用元は市町村ごとに大きく異なります。代表的なパターンは次の通りです。
- 社会福祉協議会(社協)への委託:もっとも多いパターン。住民活動の歴史と地域基盤がある社協がSCを担うことで、住民との関係構築がスムーズに進む。
- 地域包括支援センターへの配置:中学校区単位の包括にSC機能を併設。第2層SCを地域包括の職員が兼務する自治体も多い。
- 市町村の直営(行政職員):第1層SCを行政が直接担うケース。庁内連携が取りやすい一方、住民との距離感が課題。
- NPO法人・社会福祉法人への委託:地域づくりの実績を持つ法人へ外部委託。専門性と柔軟性のバランスが取れる。
- シルバー人材センターや住民団体への委託:高齢者自身が担い手となるモデル。一部の自治体で導入されている。
多くの自治体では第1層を社協または市町村直営、第2層を社協または地域包括支援センターとする組み合わせが採用されており、自治体配置要綱でその構成が定められています。
生活支援コーディネーターの4つの主な業務
厚生労働省は、SCの業務を以下の4つの機能で整理しています。地域の段階によって重点的に取り組む業務は変わりますが、いずれも「地域の支え合いの仕組み」を作るための一連のプロセスです。
1. 地域資源の開発(既存資源の活用・新規開発)
地域に既にあるサロン、配食ボランティア、見守り活動、移動支援などを「生活支援サービス」として見える化し、足りないものは新たに立ち上げます。住民自身が担い手になれる仕掛けを作ることが重要です。
2. ネットワーク構築
NPO、ボランティア団体、自治会、民生委員、地域包括支援センター、ケアマネジャー、医療機関、民間企業など多様な関係者をつなぎます。協議体がその主要な場となります。
3. ニーズと資源のマッチング
高齢者一人ひとりの生活上の困りごとと、地域にある資源を結びつけます。ケアマネとの連携を通じて、フォーマルサービス(介護保険)とインフォーマル資源を組み合わせたケアプランの実現を支援します。
4. 担い手の発掘・育成
住民向けの説明会、研修、サロン体験会などを通じて、地域住民が「支え合いの担い手」として参画する機会を作ります。元気高齢者の社会参加促進という介護予防効果も狙えます。
協議体とSCの関係
協議体は、生活支援体制整備事業のもうひとつの柱で、SCと一体的に機能する組織です。地域内で支え合い・生活支援に関わる多様な主体が集まり、情報共有や課題抽出、新たな資源づくりを議論する場として位置づけられます。
| 生活支援コーディネーター(SC) | 協議体 | |
|---|---|---|
| 性格 | 個人(職員) | 会議体(組織) |
| 役割 | 実働・調整・つなぎ役 | 情報共有・議論・合意形成の場 |
| 構成 | 第1〜3層に1〜数名配置 | 関係団体・住民代表など複数名で構成 |
| 頻度 | 日常業務として継続活動 | 定例会議(月1〜数か月に1回) |
| イメージ | 地域づくりの「動く担当者」 | 地域づくりの「作戦会議」 |
SCは協議体の事務局機能を担い、議論を実際の地域活動に落とし込みます。協議体の設置や運営は、地域ケア会議や地域包括ケア推進会議と連携して実施されることも多く、生活支援コーディネーターはそうした場の橋渡し役を担います。
生活支援コーディネーターの研修と任用要件
SCは介護福祉士やケアマネジャーのような国家資格ではなく、特定の任用資格でもありません。厚生労働省の通知では「地域における助け合いや生活支援・介護予防サービスの提供実績のある者、または中間支援組織等での活動経験のある者であって、一定の研修を受講した者」が望ましいとされています。
標準的な研修体系
- 都道府県主催の養成研修:おおむね2〜5日間。地域づくりの理論、ファシリテーション、住民参加型プログラム設計などを学ぶ。
- 市町村単位のフォローアップ研修:配置後の実践に基づくスキルアップ。
- 全国・ブロック単位の事例研究:他自治体の好事例を学ぶ。長寿社会開発センターや大阪ええまちプロジェクト等が実施。
SCに向いている人材像
具体的なバックグラウンドとして多いのは、社会福祉士・保健師・元社協職員・元地域包括職員・コミュニティワーカー・福祉系NPO出身者です。資格より「地域に出向いて住民と関係を作る力」「異なる立場の人をつなぐコーディネート力」が重視されます。
キャリアの位置づけ
介護現場の専門職からのキャリアパスとしては、生活相談員・ケアマネ・地域包括支援センター職員を経てSCに移るルートが代表的です。直接介護から一歩離れて地域単位のマクロな仕事に関わりたい人に向いています。
よくある質問
- Q. 生活支援コーディネーターになるのに必要な資格はありますか?
- A. 国家資格や法定の任用資格は必要ありません。ただし都道府県・市町村が実施する養成研修の受講が事実上の要件となっており、社会福祉士・保健師・社協職員・NPO関係者などの実務経験が重視されます。
- Q. 生活支援コーディネーターと地域包括支援センター職員は何が違いますか?
- A. 地域包括支援センターの3職種(保健師・社会福祉士・主任ケアマネ)が個別の高齢者支援とケアマネジメントを中心に担うのに対し、SCは地域全体の支え合いの仕組みづくりを担う役割分担です。第2層SCを包括職員が兼務する自治体もあります。
- Q. 「地域支え合い推進員」とは何が違いますか?
- A. 同じ職種を指す別名です。厚生労働省の通知では「生活支援コーディネーター(地域支え合い推進員)」と併記されており、自治体によって呼称が異なります。「コーディネーター」が広く使われていますが、住民向けには「推進員」の方が分かりやすいとして使われるケースもあります。
- Q. 第3層SCは必ず置く必要がありますか?
- A. 必須ではありません。第3層はサービス提供主体内部に置かれるコーディネート機能で、各団体の判断で設置されます。法令上必置とされているのは第1層、第2層も実態として必置に近い運用です。
- Q. 給与水準や雇用形態はどうなっていますか?
- A. 委託元(市町村・社協・地域包括等)によって雇用形態と給与が変わります。社協配置の場合は社協職員給与表に基づき、地域包括配置の場合は包括の人件費(市町村委託費)から支出されます。常勤・非常勤のいずれもあり、自治体配置要綱で勤務日数が定められます。
参考資料・出典
- 厚生労働省「生活支援体制整備事業の実施について」(老健局通知)
本事業の制度設計・SCの役割・3層構造・協議体設置の根拠通知。 - 厚生労働省「介護予防・日常生活支援総合事業(地域支援事業)の実施状況(令和5年度実施分)に関する調査結果」(2024年)
第1層SC 3,241人・第2層SC 6,162人、第1層協議体 2,523箇所・第2層協議体 8,335箇所の出典。 - 厚生労働省老健局「介護予防・日常生活支援総合事業と生活支援体制整備事業について」(社会保障審議会介護保険部会資料)
制度全体像と総合事業との関係を整理した行政資料。 - 厚生労働省「地域包括ケアシステムの構築に向けたガイドライン」
SCを含む地域包括ケアの全体像と人材配置の考え方を示す。 - 各自治体「生活支援コーディネーター配置要綱」
市町村ごとの配置先・人数・業務範囲を定める要綱。横浜市社会福祉協議会など多くの自治体で公開されている。
まとめ
生活支援コーディネーター(地域支え合い推進員、SC)は、介護保険法の生活支援体制整備事業に基づき市町村・社協・地域包括などに配置される、地域資源開発の専門職です。第1層(市町村全域・3,241人)/第2層(日常生活圏域・6,162人)/第3層(個別事業者)の3層構造で、協議体と一体的に動きながら資源開発・ネットワーク構築・ニーズマッチング・担い手育成の4機能を担います。直接介護とは違う角度で介護現場を支える仕事として、社協職員・地域包括職員・社会福祉士などのキャリアパスのひとつとして広がっています。
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執筆者
介護のハタラクナカマ編集部
編集部
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