
育成就労・特定技能、介護分野で16万人受入見込み|2026年1月閣議決定・転籍制限2年の経緯と現場への影響
政府は2026年1月23日、令和9年4月施行の育成就労制度で介護分野受入見込みを特定技能126,900人・育成就労33,800人と決定。転籍制限期間は処遇改善加算取得を条件に2年。介護現場と外国人材戦略の節目を整理する。
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この記事のポイント
政府は2026年1月23日の閣議で、外国人材の新制度「育成就労」と既存の「特定技能」の分野別運用方針を決定。介護分野は令和10年度末までに特定技能126,900人・育成就労33,800人の計160,700人を受入上限とし、転籍制限期間は処遇改善加算取得等を条件に2年と設定した。令和9年4月施行の育成就労は技能実習を発展的に解消する新制度で、3年間の就労を通じて特定技能1号水準の人材育成と確保を目指す。介護現場で働く読者にとっては、多国籍チームでのケア・OJT指導・日本語コミュニケーションが今後のキャリアの前提となる節目の決定であり、自施設の処遇改善加算の取得状況やキャリアプラン作成体制は転籍可否にも直結する論点となる。
目次
解説動画:育成就労・特定技能、介護分野の閣議決定を要点整理
2026年1月23日、政府は閣議で、技能実習制度に代わる新制度「育成就労」と既存の「特定技能」について、19の特定産業分野・17の育成就労産業分野ごとの運用方針を一体的に決定した。介護分野では、令和10年度末(2029年3月末)までの5年間で、特定技能1号で126,900人、令和9年度から2年間の育成就労で33,800人、合計160,700人を受け入れる方針が示された。
背景には深刻な介護人材不足がある。厚生労働省の推計では、令和8年度には全国で約25万人、令和22年度には約57万人の介護職員が不足するとされる。介護分野の特定技能1号在留者数は2025年11月末時点で65,505人と過去最多となっているが、生産性向上や国内人材確保の取り組みを行ってもなお不足する数値として、今回の受入見込み数が精査・算出された。
もう一つの注目点は、本人意向による転籍ルールである。技能実習では原則認められなかった転籍が、育成就労では一定要件下で可能になる。介護分野では転籍制限期間を2年とし、その期間を設定する事業者には介護職員等処遇改善加算の取得など追加要件が課される。本稿では閣議決定の数字を出発点に、制度の関係整理・転籍制限の固有要件・現場の介護職が今から備えるべきことまでを通して読み解く。
2026年1月閣議決定の受入見込み数 ― 介護16万700人の内訳
5年間で計123万人、介護はうち16万人
閣議決定された分野別運用方針では、2024年度から2028年度末(令和10年度末・2029年3月末)までの5年間で、特定技能1号と育成就労を合わせて全分野計1,231,900人の受入上限を設定した。内訳は特定技能1号が805,700人、育成就労が426,200人。育成就労は令和9年4月の制度開始以降の受入で、施行から令和10年度末までの2年弱が今回の数値の対象期間となる。
介護分野はこの全体枠の中で、特定技能1号126,900人、育成就労33,800人の合計160,700人が割り当てられた。工業製品製造業(31万9,200人)、建設(19万9,500人)、飲食料品製造業(19万4,900人)に次ぐ規模であり、対人サービス分野では最大級の受入見込みである。
数値の根拠 ― 「人手不足数 − 生産性向上 − 国内人材確保」
各分野の受入見込み数は、出入国在留管理庁の資料によれば「令和10年度末の人手不足数 −(生産性向上による人材確保相当数 + 国内人材確保数)」という計算式で算出されている。介護分野では、必要就業者数235.7万人、就業者数209.8万人と推計され、人手不足数25.9万人から生産性向上による効率化(介護ロボット・ICT活用等で約2%)と国内人材確保数を差し引いた残差として、16万700人の受入が必要とされた。
この数値は単なる目標値ではなく「受入上限」として運用される。実際、外食業分野では特定技能1号の在留者数が上限の5万人に近づいたことを受け、2026年4月13日以降、在留資格認定証明書の交付が原則停止される措置が取られた。介護分野も今後、上限到達時には新規認定停止が現実の論点となる。
現在の介護分野外国人材の在留状況
介護分野で就労する外国人材には、現行で4つの主要ルートがある。在留者数は厚生労働省・出入国在留管理庁の公表データに基づくと、特定技能1号「介護」が65,505人(令和7年11月末速報)、技能実習「介護」が20,065人(令和6年12月末)、在留資格「介護」が13,949人(令和7年6月末)、EPA介護福祉士候補者等が3,004人(令和8年2月時点・うち資格取得者435人)となっている。
4ルート合計で約10万人超が既に介護現場で就労しており、特定技能1号の伸びが顕著だ。2019年12月末時点でわずか19人だった特定技能1号の在留者数は、6年で約3,500倍に拡大した。今回の閣議決定はこの増加トレンドをさらに5年で約2倍に押し上げる規模感である。
育成就労・特定技能・EPA・在留資格「介護」― 4ルートの整理
育成就労(令和9年4月施行)― 3年で特定技能水準へ
育成就労制度は、2024年6月公布の「出入国管理及び難民認定法及び外国人の技能実習の適正な実施及び技能実習生の保護に関する法律の一部を改正する法律」(令和6年法律第60号)に基づき、令和9年4月1日に施行される。3年間の就労を通じて特定技能1号水準の技能を有する人材を育成・確保することを目的とし、技能実習制度は発展的に解消される。
介護分野で育成就労を開始するには「日本語教育の参照枠」A2.2相当以上の日本語能力が入国前に求められる。1年経過時には「介護育成就労評価試験(初級)」合格、3年間の育成就労終了時には「介護育成就労評価試験(専門級)」合格と「介護特定技能日本語評価試験」合格が条件となる。技能実習制度にあった前職要件・復職要件は廃止される。
特定技能1号「介護」― 即戦力人材の在留資格
特定技能制度は2019年4月施行の在留資格で、人手不足分野における一定の専門性・技能を有する外国人材の受入を目的とする。介護分野では「介護技能評価試験」「介護日本語評価試験」「日本語能力試験N4等」の合格が必要で、在留期間は通算5年。育成就労の3年を修了し試験に合格すれば、特定技能1号「介護」へ移行できる。
なお、介護分野には在留期間更新無制限・家族帯同可の特定技能2号は設定されていない。これは在留資格「介護」(介護福祉士国家資格取得者向け)が同等の機能を担うためで、介護分野の外国人材は「育成就労3年 → 特定技能1号5年 → 介護福祉士取得 → 在留資格『介護』で無期限就労」という長期キャリアパスを描く設計になっている。
EPA介護福祉士候補者・在留資格「介護」― 制度趣旨が異なる2つの枠
経済連携協定(EPA)に基づくフィリピン・インドネシア・ベトナムからの介護福祉士候補者は、二国間連携を強化する枠組みで、在留資格は「特定活動」。国家資格取得前は原則4年、取得後は更新無制限となる。受入調整は国際厚生事業団が担い、介護研修計画の作成が必須となる点が特徴である。
在留資格「介護」は、介護福祉士国家資格を取得した外国人材が制限なく更新できる専門的・技術的分野の在留資格。2025年6月末時点で13,949人が在留しており、長期にわたり介護現場の中核を担う想定だ。特定技能から介護福祉士を取得して在留資格「介護」に移行するルートが、外国人材政策の到達点として位置付けられている。
転籍制限2年と処遇改善加算 ― 介護分野固有要件が意味するもの
なぜ介護分野は2年か ― 3つの理由
育成就労制度では、技能実習で原則認められなかった本人意向による転籍が一定要件下で可能になる。転籍制限期間は分野ごとに1〜2年で設定され、介護分野は2年とされた。出入国在留管理庁の有識者会議資料で示された2年設定の理由は3点ある。第1に、介護は継続した利用者のいる対人支援サービスであり、信頼関係の醸成と多様な状態像の変化に対応できる専門知識・倫理の習得に一定時間を要すること。第2に、地方から都市部への過度な人材流出を防ぐ必要性。介護分野の都道府県別有効求人倍率は令和7年6月時点で全国3.87倍に対し東京都は8.21倍と倍以上の開きがある。第3に、認知症利用者を中心に「顔なじみの職員による継続ケア」が生活の質維持に大きな意味を持つこと、である。
「介護職員等処遇改善加算の取得等」が転籍制限の前提条件
1年を超える転籍制限期間を設定する育成就労実施者には、追加の要件が課される。他分野では「直近の昇給率を基準に毎年昇給率を設定・公表し、1〜2年目で当該昇給率で昇給する」という待遇向上策が求められるが、介護分野はその特殊性から異なる扱いとなった。
介護分野で育成就労外国人が就労する施設は、公定価格である介護報酬等に基づき事業者経営が成り立っており、賃金原資にも制約がある。介護報酬の決定プロセスは予算編成過程を含み、事前に具体的な昇給率を明示することが難しい。そこで介護分野では「介護職員等処遇改善加算の取得等」を待遇向上策の要件とすることとされた。同加算は、算定額に相当する介護職員等の賃金改善を実施することが要件となっており、これと同等報酬要件によって日本人と外国人の同等の昇給が担保される設計だ。
キャリア支援プラン作成の義務化
もう一つの介護分野固有要件が「育成就労キャリア支援プラン」の作成義務である。1年を超える転籍制限を設定する事業者は、育成就労外国人ごとに、本人の希望に沿う仕事内容や中長期的なキャリア形成・昇進昇給の見通しを記載したプランを作成しなければならない。
これは介護福祉士国家資格取得を経て在留資格「介護」での無期限就労へつなぐ長期キャリアパスを支えるための仕組みだ。事業者にとっては、単なる労働力としての受入ではなく、キャリア設計まで責任を負う体制が求められる。逆に言えば、処遇改善加算未取得の事業所やキャリアプラン作成体制が整わない事業所は、転籍制限2年を設定できず、結果として育成就労外国人が早期に転籍する可能性が高まる構造となっている。
介護現場の読者が今から備えること ― 多文化チームと自分のキャリア
多文化チームでのケアが「標準」になる
令和10年度末までに介護分野で16万人超の受入枠が設定されたという事実は、現場で働く介護職にとって「外国人材と同じチームで働く」ことが特殊な状況ではなく標準的な前提になることを意味する。特定技能1号在留者数は2019年12月末の19人から2025年11月末の65,505人へと急増しており、地方の特養や老健、訪問介護にまでその波は確実に届く。
具体的に求められるスキルは「やさしい日本語」での声かけ、利用者・家族と外国人スタッフの間に立つコミュニケーション仲介、夜勤や緊急対応時の安全な指示伝達、そしてハラスメント防止の意識である。育成就労制度では監理支援機関に5年以上の実務経験を持つ介護福祉士等の配置が求められ、事業所側にも育成就労外国人5名につき1名以上の指導員(うち1名以上は介護福祉士等)配置が義務付けられる。介護福祉士有資格者は施設にとってこれまで以上に価値が高まる。
OJT指導者・夜勤リーダーとしての役割が広がる
育成就労外国人が夜勤や緊急対応業務を行う場合、利用者の安全確保と外国人保護のため、指導に必要な体制確保等の措置が事業者に課される。これは現場の介護福祉士・実務者研修修了者にとって「夜勤帯のOJT指導」という新しい職務が加わることを意味する。訪問介護への育成就労外国人従事には、介護職員初任者研修課程等の修了と一定期間の同行訓練が前提となり、ここでも国内側の指導役が必要だ。
これは負担増の側面と同時に、自身のキャリア設計上のチャンスでもある。多文化チームのマネジメント経験は介護主任・サービス提供責任者・施設長候補へのステップとなりうる。介護福祉士・実務者研修・喀痰吸引等研修などの資格を計画的に取得しておくことで、加算取得や指導体制構築に貢献できる立場となり、処遇改善加算の対象としても評価されやすい。
転籍解禁時代の事業所選び ― 加算取得状況がキャリア選択の指標に
育成就労外国人にとって2年経過後の転籍が解禁されることは、日本人介護職の労働市場にも間接的に影響する。地方から都市部への人材流出を防ぐため、都市圏の施設は地方より受入が制限され、転籍前施設だけが来日渡航費などの初期費用を負担しないよう費用分担の仕組みも設けられる。結果として、処遇改善加算を上位区分で取得し、キャリア支援プランを丁寧に運用している事業所が、外国人材からも日本人介護職からも選ばれる構造が強まる。
転職を検討している介護職にとっては、求人を見る際に「処遇改善加算の取得区分」「育成就労・特定技能外国人の受入実績」「キャリアパス制度の有無」が、これまで以上に重要な指標となる。介護報酬・処遇改善加算の改定動向は今後の議論にも直結するため、自施設の加算取得状況と職場のキャリア支援体制を改めて確認しておくことを推奨する。
参考文献・出典
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まとめ
2026年1月23日の閣議決定は、令和9年4月施行の育成就労制度を含む外国人材受入のフレームを5年ぶりに塗り替えた。介護分野の受入見込み数は特定技能126,900人・育成就労33,800人の計16万700人。転籍制限期間は処遇改善加算取得とキャリア支援プラン作成を条件に2年と設定され、技能実習で問題視された転籍不能ルールから、本人意向を尊重しつつ事業者に質の高い処遇・育成を促す仕組みへと制度設計が大きく転換した。
介護現場の介護職にとっては、多文化チームでのケア・OJT指導・夜勤帯のサポートが標準業務になる時代が目の前にある。一方で、処遇改善加算を上位区分で取得しキャリア支援を丁寧に運用する事業所が外国人材からも日本人からも選ばれる構造が強まり、自施設の体制と自身のキャリア設計を見直す絶好のタイミングでもある。介護福祉士資格や指導者としての経験は、加算取得と職場マネジメントの両面で価値を高める。今いる職場の処遇改善加算区分、キャリアパス制度、そして自分の役割を、この制度節目を機に棚卸ししてみてはどうだろうか。
執筆者
介護のハタラクナカマ編集部
編集部
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