
処遇改善加算(介護職員等処遇改善加算)とは
処遇改善加算(介護職員等処遇改善加算)とは、介護報酬に上乗せして介護職員の賃金改善に充てる加算制度。2024年6月に3加算が一本化され、2026年6月の臨時改定で訪問介護28.7%、月最大1.9万円の賃上げが実現。定義から加算率・申請要件まで用語集としてわかりやすく解説します。
目次
処遇改善加算とは(30秒で要点)
処遇改善加算(正式名称:介護職員等処遇改善加算)とは、介護保険サービスの介護報酬に上乗せして支払われる加算で、その全額を介護従事者の賃金改善に充てることが事業所に義務づけられた制度です。
- 根拠:介護保険法に基づく介護報酬上の加算(厚生労働大臣告示)
- 対象:介護保険サービスを提供する事業所と、そこに勤務する介護従事者
- 加算率:訪問介護で最大28.7%(2026年6月以降の加算Iロ)など、サービス種別ごとに4〜10区分
- 賃上げ規模:2026年度改定で介護職員1人あたり最大月1.9万円(6.3%)の賃金改善を実現する設計
- 歴史:2009年の「介護職員処遇改善交付金」が起点。2012年に加算化、2024年6月に3加算を一本化、2026年6月に臨時改定で拡充
本ページでは「処遇改善加算とはどんな制度か」を定義中心にやさしく解説します。給与明細での確認方法や転職時の見極め方など実務寄りの情報は、関連記事「介護職員等処遇改善加算とは|いくらもらえる?仕組みと計算方法」をご覧ください。
処遇改善加算の定義と法的位置づけ
処遇改善加算は、介護保険法および介護報酬の告示・通知に基づく介護報酬上の加算です。サービスごとに定められた基本報酬(単位数)に加え、一定の要件を満たす事業所が請求できる「上乗せ報酬」で、その全額を職員の賃金改善に充てなければなりません。
正式名称と通称の使い分け
- 正式名称:介護職員等処遇改善加算(2024年6月以降)
- 通称:処遇改善加算、介護処遇改善加算、新加算(一本化後の総称として)
- 2024年5月までの旧制度では「介護職員処遇改善加算」「介護職員等特定処遇改善加算」「介護職員等ベースアップ等支援加算」の3つが並立していました。
介護報酬上の位置づけ
介護給付費は「基本報酬+各種加算減算」で構成されます。処遇改善加算は「サービス提供分の介護報酬総単位数」に加算率を掛けて算定する方式で、利用者は1〜3割の自己負担分のみを負担します(残りは介護保険から給付)。
賃金改善の使途義務
事業所は受け取った加算額を全額、介護従事者の賃金改善に充てる義務があります。さらに2025年度から本格適用された「月額賃金改善要件Ⅰ」により、加算額の2分の1以上を基本給または毎月決まって支払う手当として支給することが必要です。一時金(賞与)のみによる配分はできません。
誰が対象か(賃金改善の対象職員)
2024年改定で配分対象が大幅に柔軟化されました。
- 主な対象:介護職員(介護福祉士、初任者研修・実務者研修修了者、無資格の介護スタッフ)
- 2024年6月から配分可能:看護職員、機能訓練指導員、生活相談員、事務員、調理員など他職種にも、介護職員への配分を確保したうえで配分可
- 2026年6月から拡大:訪問看護・訪問リハビリ・居宅介護支援にも処遇改善加算を新設、ケアマネジャー等が直接対象に
制度の沿革|2024年6月一本化と2026年6月臨時改定
処遇改善加算は介護人材の賃金水準を引き上げる目的で創設され、たびたび拡充・再編が行われてきました。直近の重要改定は2024年6月の一本化と2026年6月の臨時改定です。
2024年5月まで:3加算並立
- 介護職員処遇改善加算(2012年度〜)
- 介護職員等特定処遇改善加算(2019年10月〜)
- 介護職員等ベースアップ等支援加算(2022年10月〜)
3つの加算は要件・対象範囲が異なり、事業所の事務負担と職員側の理解しにくさが課題でした。
2024年6月:3加算を「介護職員等処遇改善加算」に一本化
- 区分は加算I・II・III・IVの4段階に整理
- 2024年度に2.5%、2025年度に2.0%のベースアップを目指す加算率に
- 配分対象を介護職員以外にも柔軟化、職場環境等要件の見直し
- 経過措置として「加算V」(1〜14のさらに細かい区分)を当面設置
2025年12月〜2026年5月:補正予算による追加賃上げ
2025年度補正予算で1,920億円を計上し、介護従事者向けに「3階建て」の臨時補助金を支給。介護職員には1階+2階+3階で最大月1.9万円を上乗せしました。
2026年6月〜:介護報酬の臨時改定
2026年1月の社会保障審議会介護給付費分科会で決定された臨時改定の主な内容は次の通りです。
- 処遇改善加算の対象を「介護職員のみ」から「介護従事者」に拡大し加算率を引き上げ
- 生産性向上・協働化に取り組む事業所向けの上位区分「加算Iロ」「加算IIロ」を新設
- (介護予防)訪問看護、(介護予防)訪問リハビリテーション、居宅介護支援・介護予防支援にも処遇改善加算を新設
- 介護職員1人あたり最大月1.9万円(6.3%、定期昇給0.2万円込み)の賃金改善を実現する設計
- 補助金で先行した賃上げを介護報酬の本体加算として恒久化
サービス種別ごとの加算率(2026年6月以降)
処遇改善加算の加算率は、サービス種別と区分(加算Iロ/加算I/加算II〜IV)によって異なります。2026年6月以降の主要サービスの加算率は次の通りです。人件費比率が高い訪問系サービスほど加算率も高く設定されています。
| サービス種別 | 加算Iロ(最上位) | 加算I | 加算II | 加算III |
|---|---|---|---|---|
| 訪問介護 | 28.7% | 24.5% | 22.4% | 18.2% |
| 定期巡回・随時対応型訪問介護看護 | 27.8% | 24.5% | 22.4% | 18.2% |
| 夜間対応型訪問介護 | 27.8% | 24.5% | 22.4% | 18.2% |
| グループホーム(認知症対応型共同生活介護) | 22.4% | 18.6% | 17.8% | 14.0% |
| 小規模多機能型居宅介護 | 17.5% | 14.9% | 14.4% | 11.6% |
| 特別養護老人ホーム(介護老人福祉施設) | 16.4% | 14.0% | 13.6% | 11.0% |
| 有料老人ホーム等(特定施設入居者生活介護) | 14.1% | 12.0% | 11.6% | 9.4% |
| 通所介護(デイサービス) | 10.8% | 9.2% | 9.0% | 8.0% |
| 介護老人保健施設(老健) | 9.9% | 8.4% | 8.0% | 6.4% |
| 通所リハビリテーション | 8.9% | 7.6% | 7.3% | 5.9% |
※2026年6月以降、加算Iロ・IIロを取得するには「生産性向上要件」「協働化要件」の追加充足が必要。値は厚生労働省「令和8年度介護報酬改定(処遇改善の臨時改定)」資料より。
2026年6月から新たに対象になるサービス
- (介護予防)訪問看護:加算率1.8%
- (介護予防)訪問リハビリテーション:加算率1.5%
- 居宅介護支援・介護予防支援(ケアマネジャー):加算率2.1%
1人あたり賃金改善の目安
| 区分 | 介護職員の月額賃金改善目安 |
|---|---|
| 加算I/Iロ取得 | 月額3.5〜5万円+追加賃上げ最大1.9万円 |
| 加算II | 月額3〜4万円 |
| 加算III | 月額2.5〜3万円 |
| 加算IV | 月額1.5〜2.5万円 |
加算率は売上(介護報酬)に乗ずる形のため、施設規模・利用者数によって1人あたり額は変動します。
算定要件と申請・適用フロー
処遇改善加算を算定するには、事業所が3種類の要件を満たし、都道府県・市町村に届出を行う必要があります。
3つの算定要件
- キャリアパス要件(I〜V):任用要件・賃金体系の整備、研修機会の確保、昇給の仕組み、経験に応じた賃金水準、介護福祉士等の配置など
- 月額賃金改善要件:加算額の2分の1以上を基本給または毎月の手当で支給
- 職場環境等要件:入職促進・資質向上・両立支援・心身の健康管理・生産性向上・やりがい醸成の6分野からの取組実施
区分別の必要要件
| 区分 | キャリアパス要件 | 月額賃金改善 | 職場環境等要件 |
|---|---|---|---|
| 加算I | I〜V全て | 必須 | 6分野すべてから |
| 加算II | I〜IV | 必須 | 5分野以上から |
| 加算III | I〜III | 必須 | 4分野以上から |
| 加算IV | I・II | 必須 | 3分野以上から |
| 加算Iロ/IIロ(2026年6月〜) | I〜V全て | 必須 | 6分野+生産性向上・協働化要件 |
申請・適用フロー
- 計画書の作成:年度ごとに「処遇改善計画書」を作成し、賃金改善の方法・対象職員・支給予定額を明記
- 都道府県・市町村への届出:原則として算定開始月の前々月末日まで(4月分から算定する場合は2月末日まで)
- 職員への周知:賃金改善の内容を計画書ベースで全職員に周知
- 算定・支給:介護報酬請求時に加算分を上乗せ請求、受け取った金額を職員に賃金として配分
- 実績報告:年度終了後(毎年7月末まで)に「処遇改善実績報告書」を提出。賃金改善実績が計画額未満の場合は加算返還
2026年6月改定における届出スケジュール
- 2026年4〜5月:従来の加算I〜IVで算定(経過措置)
- 2026年6月以降:新区分(加算Iロ・IIロ)を含む新加算率に切替
- 新加算の算定届出:2026年4月15日まで(自治体により異なる)
旧3加算と一本化後の違い
2024年6月の一本化で「介護職員等処遇改善加算」に統合された旧3加算との違いを整理します。
| 項目 | 旧3加算(〜2024年5月) | 新加算(2024年6月〜) |
|---|---|---|
| 制度の数 | 3つ(処遇改善/特定/ベースアップ等) | 1つに統合 |
| 区分 | 処遇改善I〜V、特定I・II、ベースアップ加算 | 加算I・II・III・IV(経過措置で加算V) |
| 配分対象 | 加算ごとに対象職種・配分ルールが異なる | 事業所裁量で柔軟に配分(介護職員優先) |
| 月額賃金要件 | 明確な義務なし(特定加算で一部) | 加算額の1/2以上を月給で支給する義務 |
| 事務負担 | 計画書・実績報告を3種類提出 | 1本化で大幅軽減 |
| 2026年6月以降 | ― | 加算Iロ・IIロの上位区分追加、対象サービス拡大 |
賃上げ規模の比較
- 旧制度(2023年度時点):3加算合計で月額平均約7.5万円の賃金改善
- 新制度(2025年度):加算Iで月額3.5〜5万円+ベースアップ目標2.5%+2.0%
- 2026年6月改定:上記に加え最大月1.9万円(6.3%)の追加賃上げ
違いを一言で
旧制度が「複雑だが手厚い」のに対し、新制度は「シンプルかつ毎月の給料に確実に反映される」仕組みに進化しました。さらに2026年6月改定で「介護職員のみ→介護従事者全体」へと対象が広がり、ケアマネ・訪問看護師にもメリットが及びます。
処遇改善加算に関するよくある質問
Q処遇改善加算とは一言でいうと何ですか?
介護報酬に上乗せして支払われ、その全額を介護従事者の賃金改善に充てることが事業所に義務づけられている加算制度です。正式名称は「介護職員等処遇改善加算」で、介護保険法に基づく制度です。2024年6月までの「処遇改善加算」「特定処遇改善加算」「ベースアップ等支援加算」の3制度が一本化された総称でもあります。
Q処遇改善加算は誰のお金ですか?
原資は介護保険財源(公費50%+保険料50%)と利用者の自己負担(1〜3割)です。介護報酬の一部として事業所に支払われ、事業所はそれを全額職員の賃金改善に充てる義務があります。施設の利益や設備投資には使えません。
Q処遇改善加算がもらえる職種は?
主な対象は介護職員(介護福祉士・初任者研修修了者・無資格スタッフ)です。2024年6月の一本化で看護職員・機能訓練指導員・生活相談員・事務員・調理員などへの配分も柔軟化されました。2026年6月以降は訪問看護師・ケアマネジャー・訪問リハビリのPT/OT/STにも処遇改善加算が新設され、直接の対象となります。
Q加算Iロ・IIロとは何ですか?
2026年6月の臨時改定で新設される上位区分です。従来の加算I・IIに加え、生産性向上要件と協働化要件を追加で満たした事業所だけが算定できる新区分で、訪問介護では加算Iロが28.7%(従来の加算I:24.5%から大幅アップ)に設定されています。介護ロボット・ICT導入や複数事業所間の連携が要件となります。
Q処遇改善加算は今後も続きますか?
続く見込みです。むしろ拡充傾向にあります。2026年6月の臨時改定では補正予算による補助金(最大月1.9万円)を介護報酬本体の加算として恒久化する形で組み込まれ、対象サービスも訪問看護・訪問リハ・居宅介護支援に拡大されました。介護人材確保が国家的課題である限り、制度自体は維持・強化される方向です。
Q処遇改善加算と特定処遇改善加算は違うのですか?
2024年5月までは別制度でしたが、2024年6月に「介護職員等処遇改善加算」として一本化され、現在はひとつの加算に統合されています。旧特定加算が対象としていた「経験・技能のある介護職員」への重点配分の考え方は、新加算の中の配分ルールとして引き継がれています。
Q処遇改善加算を取得していない事業所もありますか?
取得率は約9割超で、ほとんどの介護保険事業所が何らかの加算を取得しています。未取得の事業所は、キャリアパス要件や職場環境等要件を満たせない、または事務手続きを行っていないケースが大半です。転職時にはハローワーク求人や事業所情報公表システムで取得状況を確認しましょう。
Q加算をピンハネ(中抜き)されたらどうすればよいですか?
処遇改善加算を職員に配分しないのは違法で、加算返還命令や指定取消し処分の対象です。給与明細に処遇改善手当の記載がない・年度を通じて賃金改善が見られない場合、まず事業所に配分方法を確認し、改善されなければ都道府県・市町村の介護保険担当課に相談できます。匿名通報も受け付けています。
参考文献・出典
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関連記事
処遇改善加算をより深く理解したい方は、以下の関連記事もあわせてご覧ください。
- 介護職員等処遇改善加算とは|いくらもらえる?仕組みと計算方法を解説 ― 給与明細での確認方法、転職時のチェックポイントなど実務寄りの完全ガイド
- 処遇改善加算でいくらもらえる?2026年最新の支給額・計算方法 ― 雇用形態・施設別の支給額シミュレーション
- 2026年6月 介護報酬臨時改定の全容|最大月1.9万円の賃上げと転職への影響 ― 臨時改定の制度設計と現場への波及
- 介護職の手取り額シミュレーション|月収別・家族構成別で計算 ― 処遇改善手当を含めた手取り計算
まとめ
処遇改善加算(介護職員等処遇改善加算)は、介護人材の賃金水準を産業平均に近づけるために設計された介護報酬上の加算制度です。重要ポイントを再確認しましょう。
- 定義:介護報酬に上乗せして支払われ、全額を介護従事者の賃金改善に充てる加算
- 正式名称:介護職員等処遇改善加算(2024年6月一本化以降)
- 区分:加算I〜IVの4段階+経過措置の加算V。2026年6月から上位の加算Iロ・IIロを新設
- 主要な加算率(2026年6月以降):訪問介護28.7%、定期巡回27.8%、特養16.4%、デイ10.8%
- 賃上げ規模:2026年度改定で介護職員1人あたり最大月1.9万円(6.3%)の賃金改善
- 対象拡大:2026年6月から訪問看護・訪問リハ・居宅介護支援にも加算新設、ケアマネジャーが直接対象に
- 事業所の義務:加算額の2分の1以上を基本給または毎月の手当として支給、計画書・実績報告書の提出
用語としての「処遇改善加算」を押さえたら、次は「自分の給料にいくら反映されているか」「転職先でどう確認するか」を理解する段階です。実務的な運用や金額シミュレーションは関連記事で詳しく解説しています。
執筆者
介護のハタラクナカマ編集部
編集部
介護業界の転職・キャリア情報を発信。厚生労働省の公的データと現場の声をもとに、介護職で働く方・転職を検討する方に役立つ情報をお届けしています。
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