
2026年6月 介護報酬臨時改定の全容|最大月1.9万円の賃上げと転職への影響を徹底解説
2026年6月施行の介護報酬臨時改定を徹底解説。改定率2.03%、処遇改善加算の拡充で最大月1.9万円の賃上げ。サービス別加算率一覧、施設タイプ別シミュレーション、転職先選びへの影響まで。
この記事のポイント
2026年6月施行の介護報酬臨時改定では、改定率+2.03%(うち処遇改善1.95%)で介護従事者全体に月1万円の賃上げが実施されます。さらに生産性向上に取り組む事業所の介護職員には月0.7万円の上乗せがあり、定期昇給を含めると最大月1.9万円(年間約23万円)のアップが可能。訪問看護・ケアマネにも処遇改善加算が新設され、訪問介護の加算率は最大28.7%と過去最高水準です。ただし全員一律ではなく、事業所の加算区分や配分方針で実際の金額は異なります。
「自分の給料はいくら上がるのか」——2026年6月に施行される介護報酬の臨時改定は、介護職員にとって直接的に手取りが増える重要な制度変更です。
通常3年ごとに行われる介護報酬改定ですが、今回は次回の令和9年度改定を待たず「臨時」で実施される異例の措置。深刻な人手不足に対応するため、政府が「他産業と遜色のない処遇」を掲げ、介護報酬を2.03%引き上げます。介護職員だけでなく、看護師やケアマネジャー、リハビリ職など介護従事者全体が対象になるのも大きな変更点です。
しかし「月1.9万円アップ」と聞いても、「本当に全員が上がるのか」「自分の施設はどうなのか」「加算区分による差はどのくらいか」「転職先選びに影響はあるのか」と疑問を持つ方も多いはずです。
この記事では、改定の全体像からサービス別の加算率一覧(全15サービス掲載)、施設タイプ別の賃上げシミュレーション、転職先選びの5つのチェックポイント、「月1.9万円」の落とし穴まで、介護職員の目線で徹底解説します。2026年6月以降の給与がどう変わるか、自分の状況に当てはめて確認してください。
臨時改定とは?なぜ今回は「異例」なのか
介護報酬改定は通常3年ごとに行われます。前回は令和6年度(2024年)、次回は令和9年度(2027年)の予定です。しかし今回は、次回を待たずに令和8年度(2026年)の途中で臨時改定が行われます。「期中改定」とも呼ばれ、処遇改善に特化した異例の措置です。
臨時改定が行われる背景
政府が通常のスケジュールを待たず臨時改定に踏み切った背景には、介護業界の危機的な人材不足があります。
- 介護職員数が初めて減少:令和5年の「介護サービス施設・事業所調査」で、介護職員数が統計開始以来初めて前年より減少した。これまで「増加ペースが鈍化」だったものが「純減」に転じた衝撃的なデータ
- 全産業との賃金格差が拡大:2025年度の全産業賃上げ率は5.25%だが、介護職の給与上昇は2.0〜2.5%にとどまる。他産業が力強い賃上げを実現する中、介護だけが取り残されるリスク
- 有効求人倍率が依然高水準:介護関係職種の有効求人倍率は3〜4倍台で推移。「求人を出しても人が来ない」状態が慢性化
- 2026年度に必要な介護職員は約240万人:高齢化の進展で需要は増え続けるが、現状のペースでは確保が困難。2040年には約272万人が必要
- 地域別最低賃金の大幅引き上げ:2025年度の最低賃金は全国加重平均で66円(6.3%)の引き上げ。介護報酬が据え置きのままでは最低賃金に追いつかなくなる地域も
補助金から介護報酬への移行(リレー方式)
今回の臨時改定を理解するには、「3階建て賃上げ」の全体像を知る必要があります。政府は賃上げを途切れさせないよう、「補助金→介護報酬」のリレー方式を採用しました。
| 期間 | 仕組み | 内容 |
|---|---|---|
| 2025年12月〜2026年5月 | 補助金(つなぎ措置) | 「介護分野の職員の賃上げ・職場環境改善支援事業」として都道府県経由で補助金を支給。事業所は計画書を提出し、賃金改善と職場環境改善に充てる |
| 2026年6月〜 | 介護報酬(臨時改定) | 補助金を終了し、恒久的な介護報酬の処遇改善加算へ移行。加算率の引き上げと新区分の創設で、補助金と同等以上の賃上げを継続 |
つまり、2025年12月から始まった補助金による賃上げを途切れさせずに介護報酬に引き継ぐのが、今回の臨時改定の位置づけです。補助金は一時的な措置ですが、介護報酬は恒久的な制度のため、毎月確実に賃上げが続くことが保障されます。
過去の処遇改善の歩みと今回の位置づけ
| 年度 | 制度 | 効果 |
|---|---|---|
| 2012年 | 処遇改善加算の創設 | 月1.5万円相当の賃上げ |
| 2019年 | 特定処遇改善加算の新設 | 10年以上の介護福祉士に月8万円相当 |
| 2024年 | 処遇改善加算の一本化 | 3加算を統合、区分Ⅰ〜Ⅳに整理 |
| 2026年 | 臨時改定 | 最大月1.9万円。対象拡大、新区分創設 |
今回の臨時改定は、2012年以来の処遇改善の集大成とも言える大型改定です。
改定の全体像|改定率・賃上げ額・3階建て構造

改定率の内訳
| 項目 | 改定率 | 内容 |
|---|---|---|
| 全体改定率 | +2.03% | 処遇改善分+食費見直し分の合計 |
| 処遇改善分 | +1.95% | 介護従事者の賃上げに充てる |
| 食費基準費用額の見直し分 | +0.09% | 施設の食費を1日100円引き上げ(2026年8月〜) |
改定率2.03%は、前回の令和6年度改定(+1.59%)を上回る水準です。通常改定ではなく「臨時」でこれだけの改定率を確保したのは、政府の危機感の表れと言えます。
「最大月1.9万円」の3階建て構造
「最大月1.9万円の賃上げ」は、3つの要素が積み重なった金額です。それぞれの条件と対象を正確に理解しておきましょう。
| 階層 | 対象 | 金額 | 条件 |
|---|---|---|---|
| 1階(ベース) | 介護従事者全体 | 月1.0万円(3.3%) | 処遇改善加算を取得する全事業所。介護職員だけでなく看護師・ケアマネ等も含む |
| 2階(上乗せ) | 介護職員 | 月0.7万円(2.4%) | 生産性向上・協働化に取り組む事業所の「介護職員」が対象。他職種は含まない |
| 3階(定期昇給) | 介護職員 | 月0.2万円 | 事業所の自主的な定期昇給(例年の実績ベース。国が強制するものではない) |
| 合計 | 介護職員 | 月1.9万円(6.3%) | 上記すべてを満たした場合の最大値 |
施行スケジュール
| 時期 | 内容 |
|---|---|
| 2026年3月 | 改定告示・通知の発出。加算の算定要件・届出様式が確定 |
| 2026年4月 | 届出受付開始。事業所は賃金改善計画書を都道府県に提出 |
| 2026年6月 | 処遇改善加算の新区分・加算率引き上げが施行。給与への反映開始 |
| 2026年8月 | 食費の基準費用額の見直し(1日1,510円→1,610円。月額約3,000円の利用者負担増) |
| 2027年3月まで | 令和8年度中に要件対応を誓約した事業所は、この間に要件整備を完了する必要あり |
2026年6月の給与明細から反映される事業所が多い見込みですが、届出の遅れにより7月以降になるケースもあります。自分の事業所がいつから反映するかは、管理者に確認しましょう。
当サイト独自分析:年収ベースでの影響
月1.9万円のアップは、年収にすると約22.8万円の増加です。これは介護福祉士の平均年収(約400万円)に対して約5.7%の上昇に相当します。ボーナスの算定基礎に処遇改善手当を含む事業所であれば、さらに上乗せされます。
一方、1階部分(月1.0万円)のみの場合は年収約12万円の増加にとどまります。上乗せ分(月0.7万円)を受けられるかどうかで年収に約8.4万円の差が生じるため、転職先選びでは生産性向上への取り組み状況の確認が重要です。
また、今回の改定は2025年12月からの補助金(月1万円相当)を引き継ぐ形のため、2025年12月以前と比較すれば実質的に月1万円以上の「新規の」賃上げです。補助金期間中(2025年12月〜2026年5月)に既に反映されていた分は、6月以降も介護報酬として継続されます。
サービス別 処遇改善加算率一覧(2026年6月〜)
2026年6月以降の処遇改善加算率をサービス別に一覧で掲載します。「Ⅰロ」「Ⅱロ」が今回新設される上乗せ区分です。転職先のサービス種別でどの程度の加算が適用されるか確認してください。
主要サービスの加算率(2026年6月〜)
| サービス | Ⅰイ | Ⅰロ(新) | Ⅱイ | Ⅱロ(新) | Ⅲ | Ⅳ |
|---|---|---|---|---|---|---|
| 訪問介護 | 27.0% | 28.7% | 24.9% | 26.6% | 20.7% | 17.0% |
| 通所介護(デイ) | 11.1% | 12.0% | 10.9% | 11.8% | 9.9% | 8.3% |
| 地域密着型通所介護 | 11.7% | 12.7% | 11.5% | 12.5% | 10.5% | 8.9% |
| 特養(介護老人福祉施設) | 16.3% | 17.6% | 15.9% | 17.2% | 13.6% | 11.3% |
| 老健(介護老人保健施設) | 9.0% | 9.7% | 8.6% | 9.3% | 6.9% | 5.9% |
| 有料老人ホーム(特定施設) | 14.8% | 15.9% | 14.2% | 15.3% | 13.0% | 10.8% |
| グループホーム | 21.0% | 22.8% | 20.2% | 22.0% | 17.9% | 14.9% |
| 小規模多機能 | 17.1% | 18.6% | 16.8% | 18.3% | 15.6% | 12.8% |
| 看護小規模多機能 | 16.8% | 17.7% | 16.5% | 17.4% | 15.3% | 12.5% |
| 定期巡回・随時対応 | 26.7% | 27.8% | 24.6% | 25.7% | 20.4% | 16.7% |
| 認知症対応型通所介護 | 21.6% | 23.6% | 20.9% | 22.9% | 18.5% | 15.7% |
| 訪問入浴介護 | 12.2% | 13.3% | 11.6% | 12.7% | 10.1% | 8.5% |
| 短期入所生活介護 | 16.3% | 17.6% | 15.9% | 17.2% | 13.6% | 11.3% |
| 短期入所療養介護(老健) | 9.0% | 9.7% | 8.6% | 9.3% | 6.9% | 5.9% |
| 介護医療院 | 6.2% | 6.6% | 5.8% | 6.2% | 4.7% | 4.0% |
※出典:厚生労働省 第250回社会保障審議会介護給付費分科会 資料
新たに対象となるサービスの加算率
| サービス | 加算率 | 備考 |
|---|---|---|
| 訪問看護・介護予防訪問看護 | 1.8% | 看護師の処遇改善が初めて制度化。訪問看護ステーションの看護師・准看護師・保健師が対象 |
| 訪問リハビリ・介護予防訪問リハビリ | 1.5% | PT・OT・STの処遇改善。在宅リハビリ領域での人材確保が狙い |
| 居宅介護支援・介護予防支援 | 2.1% | ケアマネジャーの処遇改善が初めて制度化。ケアマネの人材不足は深刻で受験者数は10年で約1/4に |
加算率の見方と金額イメージ
加算率は「介護報酬の総額に対する上乗せ割合」です。例えば訪問介護でⅠロ(28.7%)を算定し、月の介護報酬が100万円の事業所なら、処遇改善加算として28.7万円が上乗せされ、それが職員の給与に充てられます。
訪問介護の28.7%は全サービス中最高です。これは訪問介護の深刻な人手不足(2024年の倒産件数は過去最多の72件)を反映しています。逆に老健の9.7%は、医療法人が母体で医療報酬側での処遇改善も受けられるため低めに設定されています。
加算区分の違いによる影響は大きく、訪問介護の場合、Ⅰロ(28.7%)とⅣ(17.0%)では加算率に11.7ポイントの差があります。月の介護報酬が100万円の事業所なら、年間で約140万円もの差になり、職員の給与に直接影響します。
施設タイプ別シミュレーション|自分の給料はいくら上がる?
「結局、自分の給料はいくら上がるのか」を、施設タイプ別にシミュレーションします。あくまで目安ですが、転職先選びの参考にしてください。
施設タイプ別の月額賃上げシミュレーション
| 施設タイプ | 現在の平均月給 | ベース賃上げ | 上乗せ | 合計(最大) | 改定後の目安 |
|---|---|---|---|---|---|
| 特養 | 36.2万円 | +1.0万円 | +0.7万円 | +1.9万円 | 約38.1万円 |
| 老健 | 35.1万円 | +1.0万円 | +0.7万円 | +1.9万円 | 約37.0万円 |
| 有料老人ホーム | 33.5万円 | +1.0万円 | +0.7万円 | +1.9万円 | 約35.4万円 |
| グループホーム | 30.4万円 | +1.0万円 | +0.7万円 | +1.9万円 | 約32.3万円 |
| デイサービス | 28.8万円 | +1.0万円 | +0.7万円 | +1.9万円 | 約30.7万円 |
| 訪問介護 | 28.3万円 | +1.0万円 | +0.7万円 | +1.9万円 | 約30.2万円 |
| 小規模多機能 | 29〜32万円 | +1.0万円 | +0.7万円 | +1.9万円 | 約31〜34万円 |
※平均月給は厚生労働省「令和6年度介護従事者処遇状況等調査」の常勤介護職員の平均給与額(基本給+手当+一時金の月額換算)。上乗せは生産性向上に取り組む事業所の場合。
新たに対象となる職種の賃上げ見込み
| 職種 | 現在の平均月給 | 加算率 | 賃上げ見込み |
|---|---|---|---|
| 訪問看護師 | 約37万円 | 1.8% | 月0.7〜1.0万円 |
| 訪問PT・OT・ST | 約35万円 | 1.5% | 月0.5〜0.8万円 |
| ケアマネジャー | 約36万円 | 2.1% | 月0.7〜0.8万円 |
これらの職種は今回が初めての処遇改善加算対象。金額は介護職員ほど大きくありませんが、「これまでゼロだったものが初めて制度化された」点で歴史的な意義があります。
注意:「全員一律」ではない
上の表は「最大月1.9万円」のフルスペックですが、実際の上昇額は以下の要因で異なります。
- 事業所の加算区分:加算Ⅰロを算定する事業所と加算Ⅳの事業所では、加算額に2倍以上の差がある
- 配分方針:加算額を「誰に・いくら配るか」は事業所の裁量。経験・技能のある介護福祉士を優先する方針
- 生産性向上の取り組み:上乗せ(月0.7万円)は、ケアプランデータ連携システムの導入や生産性向上推進体制加算の取得が条件
- 雇用形態:パート・契約社員も対象だが、勤務時間に応じた按分になる
当サイト独自分析:加算区分による年収差
事業所の加算区分による年収差は無視できません。例えば特養で比較すると:
- 加算Ⅰロ(17.6%)の特養:処遇改善加算の原資が最大。月給38万円台、年収460万円以上も見込める
- 加算Ⅳ(11.3%)の特養:加算原資はⅠロの約64%にとどまる。月給35〜36万円程度
- 年収差:同じ特養でも加算区分の違いで年収30〜50万円の差が生じうる
転職先を選ぶ際は「どの加算区分を取得しているか」を必ず確認しましょう。加算Ⅰロを取得している事業所は、ICT導入や職場環境の整備にも積極的な傾向があり、働きやすさの面でもおすすめです。
今回の改定で変わる3つのポイント
2026年6月の臨時改定の変更点を、介護職員が知っておくべき3つのポイントに絞って解説します。
ポイント1:対象が「介護職員」から「介護従事者全体」に拡大
これまでの処遇改善加算は主に介護職員(介護福祉士・ヘルパー等)が対象でしたが、今回の改定で介護従事者全体に拡大されます。
新たに対象に含まれる職種:
- 看護職員(看護師・准看護師)
- リハビリ職員(PT・OT・ST)
- 介護支援専門員(ケアマネジャー)
- 生活相談員・支援相談員
- 管理栄養士・栄養士
- 事務職員・調理員・用務員など
ただし、配分の優先順位は明確に定められています。
- 最優先:経験・技能のある介護福祉士(勤続10年以上等)
- 次に優先:その他の介護職員
- その次:その他の職種(看護・リハ・事務等)
全職種に一律に配分されるわけではなく、介護職員を中心に配分する方針は維持されています。これは「介護職員の離職を防ぐ」という制度の趣旨に沿ったものです。ただし事業所の判断で柔軟な配分も認められており、看護師やリハビリ職の確保が課題の事業所ではそれらの職種に手厚く配分するケースもあります。
ポイント2:訪問看護・ケアマネに処遇改善加算が初めて新設
今回最も画期的な変更は、これまで処遇改善加算の対象外だったサービスに新たに加算が設けられることです。
| 新規対象サービス | 加算率 | 意義 |
|---|---|---|
| 訪問看護・介護予防訪問看護 | 1.8% | 訪問看護師の離職率の高さに対応。介護保険の訪問看護で初めて処遇改善が制度化 |
| 訪問リハビリ・介護予防訪問リハビリ | 1.5% | PT・OT・STの在宅リハビリ分野での人材確保 |
| 居宅介護支援・介護予防支援 | 2.1% | ケアマネジャーの処遇改善が初めて制度化。受験者数はピーク時の約14万人から約3.8万人に激減 |
特にケアマネジャーへの処遇改善加算の新設は業界にとって大きなニュースです。これまでケアマネは「介護職員ではない」という理由で処遇改善加算の対象外でした。しかし、受験者数の激減と高齢化(平均年齢53歳)により人材不足が深刻化し、ついに対象に含まれました。将来ケアマネを目指す方にとっても追い風です。
新規対象サービスの事業所は、処遇改善加算Ⅳに準ずる要件(キャリアパス要件Ⅰ・Ⅱ+職場環境等要件)を満たす必要がありますが、令和8年度中に対応を「誓約」すれば算定可能とする経過措置も設けられています。
ポイント3:「上乗せ区分」で生産性向上がさらに評価される
既存の加算Ⅰ・Ⅱに「上乗せ区分(Ⅰロ・Ⅱロ)」が新設されます。この上乗せを受けるには、生産性向上・協働化への取り組みが必要です。
| サービス類型 | 上乗せ区分の要件 |
|---|---|
| 訪問・通所サービス | ケアプランデータ連携システムへの加入(または加入見込み) |
| 施設・居住サービス | 生産性向上推進体制加算(Ⅰ)または(Ⅱ)の取得(または取得見込み) |
| 短期入所・多機能サービス | 生産性向上推進体制加算(Ⅰ)または(Ⅱ)の取得(または取得見込み) |
| 全サービス共通 | 社会福祉連携推進法人への所属でも算定可 |
「見込み」でも算定可能とする経過措置が設けられているため、令和8年度中に対応を誓約すれば、6月から上乗せ区分を算定できます。つまり、ICT導入やデータ連携に前向きな事業所ほど加算額が大きくなり、テクノロジーに積極的な事業所=給料が高い事業所という構図がさらに強まります。
転職先選びで確認すべき5つのチェックポイント

今回の臨時改定は転職先選びに直結します。同じ職種・同じ経験年数でも、事業所によって賃上げ額は大きく異なります。以下の5点を必ず確認しましょう。
1. 処遇改善加算の区分を確認する
最も重要なチェックポイントです。加算Ⅰロ(上乗せ区分)を取得している事業所は、加算Ⅳの事業所と比べて処遇改善の原資が1.5〜2倍。「介護サービス情報公表システム」で施設名を検索すれば、取得している加算区分を確認できます。面接時に「処遇改善加算はどの区分を取得されていますか?」と質問するのも有効です。具体的な区分を即答できる事業所は、制度への対応がしっかりしている証拠です。
2. 生産性向上への取り組みを確認する
上乗せ区分(月0.7万円分)の算定には、生産性向上・協働化が必要です。見学・面接時に以下を質問しましょう。
- 「タブレット記録やインカムなどのICT機器を導入していますか?」
- 「ケアプランデータ連携システムに加入していますか?」
- 「生産性向上推進体制加算を取得していますか?(施設系の場合)」
これらに「はい」と答えられる事業所は、上乗せ区分を算定できる=給料が高い可能性が高いです。逆に「ICTは導入していない」「ケアプランデータ連携は未対応」という事業所は、上乗せなしの可能性があります。年間約8.4万円の差は、5年で42万円にもなります。
3. 処遇改善加算の配分方針を確認する
加算額を「誰に・いくら配るか」は事業所の裁量です。面接時に「処遇改善加算はどのように配分されていますか?」と聞きましょう。
- 基本給に反映:最も安定的。ボーナスにも連動するため年収が高くなりやすい。退職金にも影響
- 手当で支給:毎月一定額が「処遇改善手当」として支給される。透明性が高い
- 賞与・一時金で支給:年に1〜2回まとめて支給。月々の手取りには反映されにくい
基本給に組み込まれている方が、退職金やボーナスの計算基礎にも反映されるため長期的に有利です。「処遇改善加算は基本給に含まれていますか、それとも別手当ですか?」と聞くだけで、事業所の姿勢がわかります。
4. 実際の給与明細の内訳を確認する
求人票の「月給」に処遇改善加算が含まれているか別なのかを確認。「月給25万円+処遇改善手当3万円」と「月給28万円(処遇改善含む)」では、見た目は同じ28万円でもボーナスの計算基礎が異なります。前者のボーナスは25万円ベース、後者は28万円ベース。年間ボーナスが4ヶ月分なら、この差だけで年12万円の違いが出ます。
5. 改定後の給与見込みを面接で聞く
「2026年6月の臨時改定後、給与はどのくらい上がる見込みですか?」と具体的に質問しましょう。明確に答えられる事業所は、改定への準備が進んでいる証拠です。「まだ検討中です」や「国の方針次第です」と答える事業所は、対応が遅れている可能性があります。加算の届出は4月から始まるため、3〜4月の時点で具体的な見込みを持っていない事業所は注意が必要です。
「月1.9万円アップ」の落とし穴と注意点
「最大月1.9万円の賃上げ」は事実ですが、全員が必ず月1.9万円上がるわけではありません。以下の注意点を理解しておきましょう。
注意1:「最大」は3つの条件がすべて揃った場合
月1.9万円は「ベース1.0万円+上乗せ0.7万円+定期昇給0.2万円」の合計です。上乗せ(0.7万円)は生産性向上に取り組む事業所のみ、定期昇給(0.2万円)は事業所の自主的な取り組みです。3つの条件を満たさない場合、実際の賃上げは月1.0万円にとどまる可能性があります。1階部分のみと3階建てフルスペックでは、年間約10.8万円の差です。
注意2:配分は事業所の裁量で決まる
国が支給するのは「事業所全体への加算総額」であり、「一人ひとりにいくら配るか」は事業所が決めます。経験・技能のある介護福祉士を優先する方針のため、以下のような差が生じます。
- 介護福祉士(勤続10年以上):月2〜3万円アップの可能性も
- 一般の介護職員:月1〜1.5万円アップの可能性
- その他の職種(看護・リハ・事務等):月0.5〜1万円アップの可能性
逆に言えば、介護福祉士の資格を持ち長く働いている方は、平均以上の賃上げを受けられる可能性が高いです。資格取得は賃上げの恩恵を最大化する確実な方法と言えます。
注意3:処遇改善加算を取得していない事業所もある
処遇改善加算の取得率は約90%ですが、約10%の事業所は未取得です。加算を取得していない事業所では、今回の賃上げの恩恵を受けられません。転職前に必ず確認しましょう。特に小規模な事業所(職員5〜9人)は、算定要件(キャリアパス制度の整備、職場環境改善等)を満たすのが難しく、加算を取得していないケースが見られます。
注意4:「別の手当を減らして調整」のリスク
残念ながら、一部の事業所では処遇改善加算分を充てる代わりに、既存の手当(住宅手当、資格手当、夜勤手当等)を減額するケースが報告されています。「処遇改善手当は増えたのに、他の手当が減って総額が変わらない」という事態です。
こうした対応は制度の趣旨に反しますが、法的に明確に禁止されているわけではありません。6月以降の給与明細を受け取ったら、処遇改善手当だけでなく総支給額を前月と比較しましょう。総額が変わっていない、あるいは減っている場合は管理者に確認してください。
注意5:食費の自己負担が増える(入所施設利用者向け)
2026年8月から、施設の食費基準費用額が1日100円引き上げられます(1,510円→1,610円)。月額では約3,000円の負担増です。これは利用者の自己負担に影響するもので、介護職員の給与には直接関係しませんが、利用者やご家族から質問を受ける場面があるでしょう。背景として、物価高騰による食材費の上昇があります。
よくある質問
Q. 2026年6月から全員の給料が月1.9万円上がりますか?
A. いいえ。月1.9万円は「ベース1.0万円+上乗せ0.7万円+定期昇給0.2万円」がすべて揃った場合の最大値です。上乗せは生産性向上に取り組む事業所のみ、配分額は事業所の裁量で決まるため、実際の上昇額は事業所によって異なります。ベースの月1.0万円は処遇改善加算を取得している全事業所で確保される見込みです。
Q. パート・派遣でも賃上げの対象になりますか?
A. 対象になります。処遇改善加算は雇用形態に関わらず、介護従事者全体が対象です。ただし、パートの場合は勤務時間に応じた按分になるため、フルタイムの方より金額は少なくなります。例えば週20時間勤務のパートなら、フルタイムの約半分の賃上げ額になります。派遣社員の場合は派遣元の事業所が加算を受けるため、派遣会社を通じた賃上げとなります。
Q. ケアマネジャーの給料はいくら上がりますか?
A. 居宅介護支援に新設される処遇改善加算の加算率は2.1%です。ケアマネの平均月給は約36万円のため、単純計算で月0.7〜0.8万円程度(年間約8〜10万円)の賃上げが見込まれます。これまで対象外だったケアマネに初めて処遇改善加算が適用されるため、今後さらなる拡充も期待されます。
Q. 今の職場が処遇改善加算を取得しているか確認する方法は?
A. 3つの方法があります。①「介護サービス情報公表システム」(厚生労働省の無料データベース)で施設名を検索し、取得している加算の区分を確認。②給与明細に「処遇改善手当」や「特定処遇改善手当」の項目があれば、加算を取得している証拠です。③不明な場合は事業所の管理者に直接「処遇改善加算はどの区分を取得していますか?」と質問しましょう。
Q. 2026年6月以降、さらに給料は上がりますか?
A. 次回の本格的な介護報酬改定は令和9年度(2027年度)に予定されています。政府は「他産業と遜色のない処遇」を目標に掲げており、さらなる引き上げの可能性はあります。ただし、改定率は社会保障審議会の議論次第です。確実に言えるのは、処遇改善加算Ⅰの上位区分を取得している事業所ほど、今後の改定でも恩恵が大きいということです。
Q. 介護福祉士の資格を持っていると、より多く賃上げされますか?
A. はい。処遇改善加算の配分ルールでは、「経験・技能のある介護福祉士」への優先配分が求められています。具体的には「勤続10年以上の介護福祉士」が最優先で、月額8万円相当の賃上げまたは年収440万円以上の設定が推奨されています。介護福祉士の資格取得は、賃上げの恩恵を最大化する確実な方法です。
Q. 転職のタイミングはいつがベストですか?
A. 2026年6月の改定を考慮すると、2026年4〜5月に転職活動を始めるのが理想的です。改定後の加算区分や給与見込みを面接で確認でき、6月の施行に合わせて入職すれば初月から恩恵を受けられます。ただし、現職で賃上げが実施される場合は、まず6月の給与明細を確認してから判断しても遅くありません。
Q. 処遇改善加算の「区分」はどうやって上がるのですか?
A. 加算の区分(Ⅰ〜Ⅳ)は事業所が満たす要件によって決まります。上位区分を取得するには、キャリアパス制度の整備(昇給・昇格の仕組み)、研修の実施、職場環境の改善(ICT導入・休暇制度等)などの要件をクリアする必要があります。個人の力では変えられませんが、「加算Ⅰの施設に転職する」ことで自分の給与を上げることは可能です。
Q. 訪問介護の加算率が28.7%と高いのはなぜですか?
A. 訪問介護は介護保険サービスの中で最も人手不足が深刻な分野です。2024年の訪問介護事業所の倒産件数は過去最多の72件に達し、人手不足を理由とした事業所の休止・廃止が急増しています。高い加算率は「訪問介護の存続に向けた緊急対策」という意味合いがあり、訪問介護で働く職員にとっては大きな追い風です。
参考文献・出典
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まとめ
2026年6月臨時改定の要点
| 項目 | 内容 |
|---|---|
| 改定率 | +2.03%(処遇改善1.95%+食費0.09%) |
| 最大賃上げ額 | 月1.9万円(ベース1.0万+上乗せ0.7万+定期昇給0.2万) |
| 対象拡大 | 介護職員→介護従事者全体(看護師・ケアマネ・リハビリ職等も含む) |
| 新規対象 | 訪問看護(1.8%)、訪問リハ(1.5%)、居宅介護支援(2.1%) |
| 新区分 | 加算Ⅰロ・Ⅱロ(生産性向上・協働化に取り組む事業所の上乗せ) |
| 施行時期 | 処遇改善: 2026年6月、食費: 2026年8月 |
介護職員が今やるべきこと
- 自分の事業所の加算区分を確認する:給与明細や「介護サービス情報公表システム」でチェック。加算Ⅰロなら最大の恩恵を受けられる
- 6月以降の給与明細を注視する:処遇改善手当の増額を確認。総支給額が本当に増えているか、他の手当が減っていないかも検証
- 介護福祉士の取得を検討する:資格保有者は配分の最優先対象。勤続10年以上なら年収440万円以上を目指せる
- ICTスキルを身につける:生産性向上への取り組みが加算の条件に。ICTに強い職員の市場価値が上がっている
- 転職を検討中なら加算区分で比較する:同じ仕事でも事業所の加算区分で年収30〜50万円の差が生じうる
2026年6月の臨時改定は、2012年の処遇改善加算創設以来、最も大規模な賃上げ施策です。しかしその恩恵を最大限受けるには、加算区分が高く、生産性向上に取り組む事業所で働くことが条件です。この記事のサービス別加算率一覧とシミュレーションを参考に、自分の給与がどう変わるかを確認してください。必要であれば、より加算区分の高い事業所への転職も有効な選択肢です。介護業界全体の待遇改善が進む今こそ、自分のキャリアと給与を見直す絶好のタイミングです。
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