財務省、訪問介護・通所介護の賃上げ要件に介護テクノロジー導入を|ケアプー導入率28.2%が後押し
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財務省、訪問介護・通所介護の賃上げ要件に介護テクノロジー導入を|ケアプー導入率28.2%が後押し

財政制度等審議会・財政制度分科会(2026年4月28日)で財務省が、訪問介護・通所介護のさらなる賃上げ要件に介護テクノロジー導入の追加を要請。ケアプー導入率が3月時点で28.2%に急伸した実績を背景に、2027年度介護報酬改定の新たな論点として浮上した。

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2026年4月28日の財政制度等審議会・財政制度分科会で財務省は、訪問介護・通所介護のさらなる賃上げの要件として、介護記録ソフトなど介護テクノロジーの導入を追加すべきと提言した。背景にあるのは、ケアプランデータ連携システム(ケアプー)の導入率が前年11月の9.3%から2026年3月時点で28.2%へと3倍超に急伸した実績だ。財務省は「インセンティブ付けが効果的」と評価し、生産性向上を賃上げと一体で進める枠組みを2027年度介護報酬改定の論点として打ち出した。

目次

解説動画

2027年度の介護報酬改定議論が、これまでとは異なる角度から動き始めている。きっかけは、財務省が2026年4月28日の財政制度等審議会・財政制度分科会で示した一枚の提言だ。「訪問介護や通所介護といったサービスでも、介護記録ソフトなどの介護テクノロジー導入を賃上げの要件に追加すべき」。生産性向上を賃上げの条件として求める姿勢を、財務省は明確に打ち出した。

そこには、ケアプランデータ連携システム(通称ケアプー)が短期間で大きく普及した「成功体験」がある。2024年11月時点で導入率9.3%にとどまっていたケアプーは、処遇改善加算や補助金の要件に組み込まれた結果、2026年3月には28.2%まで急上昇した。財務省はこの伸びを「インセンティブ付けが効果的」と評価し、同じ手法を介護記録ソフトなど他のテクノロジーにも横展開すべきだとしている。

この提言は、訪問介護・通所介護の現場、そしてそこで働く介護職員のキャリア環境に何をもたらすのか。本記事では、財政制度分科会の資料と一次情報をもとに、財務省提言の中身、ケアプー普及の経緯、2027年度改定議論への波及、そして読者一人ひとりのキャリア選択への示唆までを整理する。

財務省は何を要請したのか

「賃上げの要件に介護テクノロジーの導入を加える検討を」

2026年4月28日に開催された財政制度等審議会・財政制度分科会では、来年度の介護報酬改定が主要議題の一つとして取り上げられた。財務省が提出した資料「持続可能な社会保障制度の構築(財政各論Ⅱ)」のなかで、介護分野の生産性向上は今回の改定議論の柱の一つと位置づけられている。

この場で財務省は、介護職員のさらなる賃上げに踏み込む方針を示しつつ、その条件として介護現場のテクノロジー導入を要求した。具体的には「訪問介護や通所介護などの生産性向上をさらに進める観点から、賃上げの要件に介護テクノロジーの導入を加える検討をすべき」と明記。介護記録ソフトをはじめとするICTツールの導入を、処遇改善加算など賃金原資につながる仕組みの要件に組み込む構想だ。

分科会の論調は、賃上げそのものを否定するものではない。むしろ「賃金・物価動向の変化に的確に対応する必要がある」と認めたうえで、介護報酬による直接の賃上げに、生産性向上投資のドライバー機能を持たせるべきだという論理構成になっている。財務省は資料中で「介護現場が生産性向上に取り組み、対応可能な利用者が増えて収益が増加することで、職員の賃上げとさらなる生産性向上の投資につながる、という好循環を実現することが重要」と表現した。

「インセンティブ付けが効果的」とした財務省の認識

財務省がこの提言の根拠として挙げたのが、ケアプランデータ連携システムの普及スピードだ。2026年3月時点の導入率は28.2%。2024年11月時点の9.3%から、わずか4か月で3倍以上に伸びた計算になる。

この急伸の引き金になったのは、2025年12月から始まった「介護分野の賃上げ・職場環境改善事業」と、2026年6月の介護職員等処遇改善加算の臨時改定だ。両者の要件にケアプーの加入・利用が組み込まれたことで、加算や補助金を取りに行く事業所がケアプー導入に動いた。

財務省はこの伸びを「賃上げの要件に組み込んだことが大きい」と評価し、「インセンティブ付けが効果的」との認識を分科会で示した。賃金面のメリットを直接結びつけることで、これまで進まなかったICT普及を一気に動かせる。この成功パターンを、訪問介護・通所介護などのテクノロジー全般に拡張するのが今回の提言の骨子である。

2027年度改定議論の論点として浮上

同じ4月28日の会合で財務省は、介護サービス全体の利益率にも踏み込んでいる。2024年度決算の介護サービス利益率(税引前収支差率)は平均4.7%。中小企業全体の3.8%を上回り、サービス類型別では訪問介護9.6%、通所介護6.2%、訪問看護10.3%、居宅介護支援6.2%といった水準だ。財務省はこれを「過去や他産業と比較して高い水準」と位置づけ、サービス類型ごとに介護報酬を適正化する必要があるとの見方を示した。

賃上げ・利益率・テクノロジー導入の3点セットは、いずれも2027年度(令和9年度)介護報酬改定の議論材料として、今後の社会保障審議会・介護給付費分科会に引き継がれていく。テクノロジーの要件化は、報酬引き上げと引き下げが交錯する改定論議のなかで、生産性向上を条件付きで賃上げに結びつける新しい設計思想として注目される。改定の方向性を最終的に決めるのは厚生労働省と分科会であり、財務省提言がそのまま実装されるとは限らないが、改定議論の出発点を大きく動かしたことは間違いない。

ケアプー導入率はなぜ急伸したのか

ケアプー導入率は半年で9.3%→28.2%に

ケアプランデータ連携システムは、ケアマネジャーとサービス事業所間でやり取りするケアプラン関連のデータをFAXや郵送ではなく電子的に連携できる仕組みで、国民健康保険中央会が運用している。2023年4月の本格運用開始から1年半近く、現場の認知度や使い勝手の課題から普及は伸び悩んでいた。

転機となったのは、2024年度補正予算で組まれた賃上げ・職場環境改善事業と、2026年6月施行の介護職員等処遇改善加算の臨時改定だ。いずれも生産性向上の取組としてケアプーの加入・利用を要件に位置づけた。これにより、加算上位区分や補助金加算分を狙う事業所が一斉に導入へ動き、導入率は急上昇曲線を描いた。

厚生労働省・老健局の黒田秀郎局長は、2026年4月10日の衆議院・厚生労働委員会で「現在の導入率は28%。補正予算の成立前後で短期間に18%上昇した」と答弁。「今後も今年6月の臨時改定の施行を控えており、この割合はさらに上昇すると見込まれる」と説明した。チームみらい・古川あおい議員の質問に対する答弁である。

「加入」ではなく「利用」が要件、スクショ2年保存も

厚生労働省は2026年に公表した介護職員等処遇改善加算Q&A(第1版)の問8-2で、令和8年度特例要件について「ケアプランデータ連携システムへの加入だけではなく、利用することが必要」と明確化している。実績報告書において利用実績の記載を求めるとともに、根拠資料として「使用画面のスクリーンショット(データの送信または受信の記録がわかるよう撮影されたものに限る)」を例示し、保存期間は2年間とした。

つまり、契約だけして使っていない事業所は要件を満たしたとみなされない。賃金原資となる加算を確保するには、現場で実際にケアプーを動かしている記録を継続的に残す運用が必要になる。導入率の伸びの裏側で、利用実態を伴う運用への移行も同時並行で進められている。

居宅サービスの利益率と中小企業比較

財務省資料が示した2024年度の介護サービス収支差率は、サービスごとに大きな幅がある。訪問介護9.6%、通所介護6.2%、訪問看護10.3%、居宅介護支援6.2%、認知症対応型共同生活介護(グループホーム)はサービス類型別の数値で全体平均4.7%を上回る。一方で介護老人福祉施設(特養)は1.4%、介護老人保健施設(老健)は0.8%にとどまり、施設サービスの収益環境は厳しい。

中小企業全体の利益率3.8%と比較すると、訪問介護・通所介護はいずれも上回る水準にある。財務省はこのデータを背景に「足元で物価上昇の影響がある中でも、過去や他産業と比較して高い水準」と評価し、サービス類型ごとの実態に応じた介護報酬の適正化が必要だと主張している。賃上げの要件にテクノロジー導入を加える提言は、こうした「利益率は高いから生産性向上を進められるはず」という財務省の論理と一体で打ち出されたものだ。

2027年度改定議論との接続:独自見解(A)

処遇改善加算とケアプー要件化が示した「成功パターン」

今回の財務省提言を読み解く鍵は、ケアプーの普及プロセスが描いた一つの「方程式」にある。賃金原資となる加算・補助金の要件にICTの加入・利用を組み込む。この単純な設計が、4か月で導入率を3倍に伸ばしたという事実は、政策担当者にとって大きな成功体験となった。

これまで国は「介護現場の生産性向上ガイドライン」の普及や、ICT導入補助金、介護ロボット導入支援事業など、生産性向上を目的とした支援策を多層的に整備してきた。しかし、補助金で機器を買えても運用に乗せきれない、ガイドラインを読んでも個々の事業所で動きが起きない、という壁があった。これに対し、処遇改善加算の上位区分取得や補助金額の上乗せの「要件」としてケアプーを位置づけたアプローチは、事業所側に経営判断としての導入インセンティブを直接与えた格好だ。

財務省提言は、この方法論を訪問介護・通所介護のテクノロジー全般に広げようとしている。介護記録ソフト、見守りセンサー、音声入力ツール、業務管理クラウドなど、これまで導入の判断を事業者の自発性に委ねてきた領域に、賃上げ要件という形で明示的なドライバーを設定するという発想である。

2027年度改定で論点となる「適正化」とのセット構造

留意すべきは、テクノロジー要件化が単独ではなく、介護報酬の「適正化」とセットで提示されている点である。財務省は同じ財政各論Ⅱ資料のなかで、訪問介護9.6%・通所介護6.2%という収支差率を根拠に、サービス類型ごとに報酬を見直す必要があるとも訴えている。

整理すると、財務省が描く2027年度改定の構図は次のようになる。一方で利益率の高いサービス類型を中心に基本報酬を「適正化」して給付費の伸びを抑える。他方で処遇改善加算による賃上げは継続するが、その要件を生産性向上策(ケアプー、介護記録ソフト、その他テクノロジー)と紐付ける。事業所側は、報酬の引き下げ圧力を生産性向上で吸収し、賃上げ原資を確保するという循環を求められる。

この設計は、社会保障審議会・介護給付費分科会の最終的な答申にそのまま反映されるとは限らない。財務省提言はあくまで予算編成過程での論点提示であり、改定の方向性を決めるのは厚生労働省と分科会だ。それでも、ケアプー要件化が短期間で導入率を動かした実績を背景に、2027年度改定議論ではテクノロジー要件化が一つの主要争点になる可能性が高い。

独自見解(A):テクノロジー要件化が現場に与える影響

テクノロジー要件化は、現場に三つの異なる作用をもたらすと考えられる。第一に、すでに介護記録ソフトや見守り機器を導入済みの先行事業所にとっては、過去の投資が賃上げ要件として「報われる」構造になり得る。先行投資のコストが回収しやすくなる方向に働く。

第二に、未導入の中小事業所には初期投資と運用負担が一気にのしかかる。スマートフォンやタブレット端末の整備、介護ソフトの月額利用料、職員のITスキル教育など、数十万円から数百万円規模の支出が発生する事業所もある。補助金や加算で吸収できる範囲を超える場合、賃上げ原資を確保できないまま要件を満たせない事態も起こり得る。

第三に、テクノロジー導入が形式要件化することへの懸念もある。ケアプーで起きた「加入だけでは不十分、利用実態が必要」というQ&A補足のように、何をもって「導入」とみなすか、利用ログをどう確認するかといった運用設計次第で、現場の事務負担が大きく振れる。要件化は方向性として理にかなっていても、運用の精緻さが伴わなければ、生産性向上どころか書類仕事を増やすだけに終わるリスクがある。

現場と読者キャリアへの波及:独自見解(B)

事業所選びの新しい目線。テクノロジー対応で広がる格差

賃上げ要件にテクノロジー導入が加わる方向性は、訪問介護・通所介護で働く介護職員にとって、転職や事業所選びの際に注目すべき新しい指標を増やす。これまで処遇改善加算の取得状況や事業所規模、法人形態が事業所評価の主な軸だったが、今後はそこに「介護記録ソフトを実装し運用しているか」「ケアプーを実利用しているか」「業務効率化への投資判断ができる経営層がいるか」という観点が加わる。

テクノロジー導入が遅れている事業所は、賃上げ要件を満たせない可能性があり、結果として処遇改善加算の上位区分が取れず、月給ベースで他の事業所に見劣りする状況になり得る。逆に、すでにICTやデータ連携に投資してきた事業所は、加算の上位区分を取りやすく、人材獲得競争で有利に立つ。同じ訪問介護でも、事業所間で月数万円の処遇差が生まれる構造はすでに存在しているが、テクノロジー要件化はこの差をさらに拡大させる方向に働きやすい。

特に注視したいのが、訪問介護9.6%・通所介護6.2%といった利益率の数字が「適正化」の根拠にもなり得る点だ。利益率の高さを理由に基本報酬が見直され、同時に賃上げ要件としてテクノロジー導入が課されると、生産性向上で吸収できる事業所と、そうでない事業所の経営格差が一気に広がる。職員側も、所属する事業所がこの両面を乗り越えられる体力を持っているかを見極める必要が出てくる。

キャリア戦略としてのIT・データリテラシー

介護職員側のキャリアにも、テクノロジー要件化の波は確実に届く。タブレットでの記録入力、ケアプーでのデータ送受信、AI音声入力での申し送り作成。こうした業務が「特別なスキル」から「標準業務」へと位置づけが変わる過程で、ITに対する苦手意識を放置するキャリア上のコストが上がる。

逆に言えば、ICT・データ活用に積極的に取り組める介護職員は、加算上位区分を維持できる事業所に転職しやすくなり、サービス提供責任者・管理者・主任など昇進ポストにも届きやすい。介護福祉士などの専門資格に加え、介護現場のDX推進スキルが評価軸として明確に立ち上がっていくと考えられる。

独自見解(B):読者キャリアへの示唆

本記事の読者の多くは、訪問介護・通所介護や居宅介護支援の現場で働いている、あるいはそうしたキャリアを検討している方々だ。財務省提言を踏まえたうえで、現実的にとれる行動として三つの視点を挙げたい。

一つ目は、自分が所属する事業所のテクノロジー導入状況を改めて確認することだ。ケアプーを使っているか、介護記録ソフトはどのレベルで運用されているか、業務管理クラウドや勤怠システムは整っているか。これらは2027年度改定後、賃金水準を左右する変数として無視できないものになる可能性が高い。

二つ目は、転職を検討する際にテクノロジー対応を判断軸に加えることだ。求人票や面接で「介護記録はどのソフトを使っているか」「タブレット端末は支給されるか」「ケアプーの利用実績はあるか」といった質問を投げる価値が増す。生産性向上に投資できる経営体力のある法人かどうかを見極める手がかりにもなる。

三つ目は、自身のITリテラシーへの投資だ。Excelの基本操作、クラウド型介護ソフトの活用、データを読んでケアに反映する力。こうしたスキルは介護福祉士やケアマネジャーなど資格取得と並走させる形で身につけたい領域である。テクノロジー要件化は、現場で淡々と質の高いケアを提供してきた介護職員の価値を否定するものではないが、その価値が制度上認められるためには、データで成果を示せるリテラシーが従来以上に求められる時代に入る。今のうちから一つずつスキルを積み上げておくことが、長期的なキャリアの安定につながる。

参考文献・出典

まとめ

2026年4月28日の財政制度等審議会・財政制度分科会は、訪問介護・通所介護のさらなる賃上げ要件に介護テクノロジー導入を加える検討を求める財務省提言を生み出した。背景にはケアプランデータ連携システムが半年弱で導入率9.3%から28.2%へ急伸した事実があり、財務省は処遇改善加算と生産性向上策を紐付ける手法を「インセンティブ付けが効果的」と評価した。このアプローチを介護記録ソフト等の他テクノロジーにも横展開しようというのが今回の方針の骨子である。

2027年度介護報酬改定では、利益率を根拠とした基本報酬の「適正化」と、賃上げ要件としての「テクノロジー導入」が一体で議論される見通しだ。事業所にとっては、テクノロジー対応の有無が加算上位区分の取得可否を左右し、結果として介護職員の処遇水準にも直結する構造が強まる。読者一人ひとりにとって、自分の事業所の生産性向上施策と、自身のITリテラシーへの投資が、これまで以上に賃金やキャリアに跳ね返ってくる時代に入りつつある。

執筆者

介護のハタラクナカマ編集部

編集部

介護業界の転職・キャリア情報を発信。厚生労働省の公的データと現場の声をもとに、介護職で働く方・転職を検討する方に役立つ情報をお届けしています。

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