財政審、27年度介護報酬改定で「報酬適正化」要求|訪問介護12.4%・通所介護8.7%の利益率を問題視

財政審、27年度介護報酬改定で「報酬適正化」要求|訪問介護12.4%・通所介護8.7%の利益率を問題視

財政制度等審議会・財政制度分科会(2026年4月28日)が示した「サービス類型ごとの報酬適正化」「処遇改善加算へのテクノロジー要件追加」「利用者負担2割対象拡大」の論点を、介護現場・転職希望者の視点で読み解く。

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財務省は2026年4月28日の財政制度等審議会・財政制度分科会で、2027年度介護報酬改定に向けて「サービス類型ごとの報酬適正化」を要求した。訪問介護の利益率12.4%、通所介護8.7%など特定サービスの収益高水準を問題視し、報酬カットや処遇改善加算へのテクノロジー要件追加、利用者負担2割対象の拡大などを提言。介護職の給料・現場のサービス供給に直接波及する論点が並ぶ。

目次

解説動画:財政審の主張と介護職への影響を1分で

はじめに

2026年4月28日に開催された財政制度等審議会・財政制度分科会で、財務省は2027年度(令和9年度)介護報酬改定に向けた具体的な提言を打ち出した。「介護サービス事業所の利益率は、過去や他産業と比較して高い水準にある」「サービス類型ごとに大きな差がある」との認識に立ち、訪問介護や通所介護の報酬水準について「適正化」を要求している。

同分科会の議論は5月にまとめられる「春の建議」を経て、政府の「骨太方針2026」に反映される見込みだ。これは6月閣議決定の経済財政運営の基本方針となり、12月の社会保障審議会・介護給付費分科会の最終答申、そして2027年4月施行の次期介護報酬改定の枠組みを規定する重要な転換点である。

本稿では財政審が示した3つの論点——サービス類型別の報酬適正化、処遇改善加算へのテクノロジー要件追加、利用者負担2割対象の拡大——を一次資料に基づいて整理し、介護現場で働く職員・転職を検討する読者にとって何が変わるのかを読み解く。

財政審が示した「サービス類型ごとの報酬適正化」論

「他産業より高い利益率」を根拠に報酬カットを要求

財務省は4月28日提出の資料「持続可能な社会保障制度の構築(財政各論Ⅱ)」で、2027年度介護報酬改定の方向性として次の3点を打ち出した。

  • 賃金・物価動向の変化に的確に対応する必要がある
  • 2026年度に期中(臨時)の介護報酬改定を行ったことを踏まえ、職員の賃上げと、生産性向上投資の好循環を実現することが重要
  • 介護サービスの利益率は「過去や他産業と比較して高い水準」かつ「サービス類型ごとに大きな差がある」状況であり、サービス類型・提供実態に応じて報酬を「適正化」する必要がある

「適正化」という用語は、財務省の社会保障改革議論では事実上「報酬引き下げの検討」を意味してきた。介護業界紙でも「収支差率の良好なサービスについては、報酬水準の適正化・効率化を徹底すべき」との財務省提言を「報酬カット要請」と表現する記事が並んでいる。

2024年度改定でも「訪問介護の基本報酬引き下げ」が実施された経緯

過去にも、財政審の同様の主張が現場に痛みを与えた事例がある。2024年度介護報酬改定では、訪問介護事業所の利益率が当時9.5%(2022年度決算)と高水準だったことを根拠に基本報酬が引き下げられた。同改定では新設の介護職員等処遇改善加算の加算率引き上げで補う設計だったが、実際には2024年4〜5月の事業利益率が前年同月のプラス2.3%からマイナス0.7%へ転落した訪問介護法人が報告されるなど、混乱が広がった。

今回の財政審の主張は、この2024年改定で機能した「利益率の高いサービスは引き下げの対象とする」という論理を、2027年改定でも適用しようとする内容である。訪問介護に加えて、通所介護や認知症対応型共同生活介護など複数のサービスが対象に含まれる可能性が高い。

利益率データの中身:訪問介護12.4%、特養2.0%の格差

財務省が示した最新の利益率(収支差率)

財務省資料に掲載された介護サービス事業所の利益率(収支差率)は、サービス類型によって大きく異なる。

  • 介護サービス事業全体:6.8%
  • 訪問介護:12.4%
  • 通所介護:8.7%
  • 居宅介護支援:8.4%
  • 認知症対応型共同生活介護(グループホーム):7.7%
  • 介護老人福祉施設(特別養護老人ホーム):2.0%
  • 介護老人保健施設:0.8%

訪問介護と老健施設では利益率に12ポイント以上の差がある。特養や老健は2024年度の改定後も0〜2%台にとどまり、社会保障審議会・介護給付費分科会では「事業所の倒産や廃業」「老健の約7%が4月時点で廃業リスクにある」(東憲太郎・全国老人保健施設協会会長)といった声が上がっている。

「同一建物減算」など既存の仕組みも適正化の対象に

財政審が「サービス提供の実態に応じて」適正化を求めるのは、訪問介護や通所介護のうち「サービス付き高齢者向け住宅・有料老人ホームの入居者を中心に提供している事業所」と、「在宅で生活する地域住民を訪問する事業所」とで実態が異なることを念頭に置いた表現と読める。

2024年度改定では同一建物減算が強化されたが、今回の財政審はさらに踏み込み、サービス類型単位での基本報酬の引き下げまで視野に入れている可能性がある。事業者団体からは「在宅サービスを担う小規模事業所が淘汰される」との反発が想定される。

処遇改善加算に「テクノロジー要件」追加へ|配分対象拡大の延長線

2026年度臨時改定で配分対象を拡大、次は「ICT導入を要件化」

財政審の今回の提言で、介護職の給与に直接影響する論点が「処遇改善加算の要件追加」だ。財務省は具体的に、訪問・通所系サービスについて「介護記録ソフトなどの介護テクノロジーの導入も要件に追加する」よう求めた。

2026年6月には介護報酬の臨時改定が施行され、改定率はプラス2.03%、うち1.95%が処遇改善に充てられる(2026年度予算ベースで国費518億円)。介護従事者を対象に幅広く月1.0万円の賃上げを実現する措置と、協働化等に取り組む事業者の介護職員に0.7万円を上乗せする措置(定期昇給を含めて最大月1.9万円の賃上げ実現)が盛り込まれた。

2026年6月時点ではケアプランデータ連携システムの導入は「誓約」でも算定可能とされたが、財政審は「2027年度以降は実際の導入を要件化すべき」というスタンスを取り、さらに介護記録ソフトなど現場のICT化全般を加算要件に組み込む方向を主張している。

「お金は出すが、業務効率化もセットで」のロジック

この提言の根底には「賃上げ財源を投入する以上、生産性向上による収益拡大の循環を作るべき」という考え方がある。財務省資料では、ケアプランデータ連携システムの導入率が2026年3月時点で28.2%にとどまっていることを問題視し、データ連携や記録の電子化を進めない事業所には処遇改善加算の上位区分を取得させない仕組みを志向する。

介護現場で働く職員にとっては、自分の給料アップが「事業所のICT導入の進捗次第」で左右される構造になりつつある。ITに不慣れな小規模事業所や個人立の訪問介護事業所では、加算取得のハードルが上がる懸念が指摘される。

利用者負担2割対象拡大の論点|年金収入230〜260万円層が候補に

「利用控えは限定的」と財務省、過去の調査データを根拠に

財政審が同時に主張しているのが、介護保険サービスの「利用者負担2割」対象者の拡大だ。現行は年収280万円以上の高齢者が2割負担の対象だが、財務省は「年金収入230〜260万円層」(現役時代の給与換算で730〜870万円程度、大企業課長〜部長級相当)まで広げるべきだと提言した。

反論として現場や利用者団体から指摘されるのが「利用控え」の懸念だが、財務省は厚生労働省の老人保健健康増進等事業の調査データを引用し、過去の2割・3割負担導入時の影響を以下の通り示している。

  • 2割負担導入後の2割負担者(n=2,650):「合計利用単位数を変更しなかった」または「特に変化しなかった/増えた」が95.5%
  • 3割負担導入後の3割負担者(n=4,446):同じく93.6%
  • 「介護に係る支出が重い」ことを理由にサービス利用を中止した割合:1.3〜1.9%にとどまる

これらのデータを根拠に「利用控えは限定的」と結論づけ、2割対象の拡大を強く求めた格好だ。

配慮措置として「月0.7万円までに抑制」も提案

急激な負担増への配慮として、財政審は「当分の間、負担増分を月0.7万円までに抑える」措置や、「預貯金が一定額以下の利用者は申請により1割に戻す」などの仕組みも併せて検討すべきとした。

介護職にとって直接の給与影響はないが、利用控えが「限定的」であっても発生すれば、訪問介護・通所介護の事業所収益に下押し圧力がかかる。事業所の経営悪化は処遇改善加算の原資にも響くため、間接的に職員の賃金に波及する構造である。

介護現場・転職希望者が読むべき3つのメッセージ

(1) 給料アップは「事業所のICT・協働化」次第になる

2026年6月臨時改定で打ち出された「協働化等に取り組む事業者の介護職員には月0.7万円を上乗せ」という設計は、2027年度本改定でさらに強化される可能性が高い。財政審の主張通り処遇改善加算へのテクノロジー要件が追加されれば、ICT投資を進めない事業所の職員は加算上位区分を受け取れず、結果として賃上げ幅で差がつく。

転職希望者にとっては、求人票の額面給与だけでなく「ケアプランデータ連携システム導入済みか」「介護記録ソフトを導入しているか」「処遇改善加算の取得区分はⅠ(最上位)かⅡ以下か」を確認することが、5年後の自分の給与を左右する判断材料になる。

(2) サービス類型による「採用しやすさ」の格差が広がる

利益率12.4%の訪問介護に対して、特養2.0%・老健0.8%という収益構造の差は、賃金原資の差にも直結する。2027年度改定で訪問介護の基本報酬がさらに引き下げられた場合、訪問介護事業所の経営難から人員削減・小規模事業所の廃業が進む可能性がある。一方、特養・老健は逆に「経営安定」を理由とした基本報酬の据え置きや小幅引き上げが検討される可能性が残る。

転職市場では、「在宅志向で訪問介護を希望する」「夜勤負担を避けて通所介護を希望する」といった選択をする際、向こう3年の事業所経営の安定性を見極める視点がこれまで以上に重要になる。

(3) 利用者負担拡大は「業界全体への向かい風」

利用者負担2割対象の拡大が決まれば、たとえ利用控えが「限定的」だとしても、訪問介護・通所介護の利用回数減少や保険外サービスへの移行が一定程度発生する。事業所収益が減少すれば、処遇改善加算の原資(介護報酬の総額)にも影響する。

介護職にとっては「自分の給料は守られる方向」だが、業界全体としては「給与原資の伸びが鈍化する」リスクを抱える。長期的なキャリア形成では、認知症ケア・看取り・医療連携など「報酬適正化の対象から外れにくい」専門性を磨く戦略が、より重要性を増していく。

参考資料

まとめ|2027年度改定の議論から見える「介護現場のリアル」

財政審の4月28日の提言は、2027年度介護報酬改定の方向性を規定する重要な転換点だ。「介護事業所の利益率は他産業より高水準」というメッセージは、現場で働く職員の実感とは大きく乖離している部分もあるが、報酬の財源論という観点からは無視できない数字でもある。

介護職にとっての示唆は明確だ。給料の伸びは「事業所のICT・協働化への対応力」、サービス類型による「経営安定の格差」、そして「利用者負担拡大による業界全体への向かい風」という3つの軸で決まる時代に入っている。事業所選びの目線をアップデートし、自分の専門性を高める戦略が、より重要性を増している。

これから介護業界で働く方、転職を検討している方は、求人票の数字だけでなく「事業所のICT投資状況」「処遇改善加算の取得区分」「サービス類型の経営安定性」を見極める視点を持ちたい。

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執筆者

介護のハタラクナカマ編集部

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