
介護職員の平均給与が31.4万円に上昇|全産業との差が1000円縮小【厚労省2026年4月発表】
厚労省が2026年4月10日に発表した介護職員給与の最新データを解説。2025年の賞与込み月給は31.4万円で前年比1.1万円増、全産業平均との差は1000円縮小。処遇改善加算拡充の効果と今後の見通しまで。
この記事のポイント
厚生労働省は2026年4月10日、2025年の介護職員1人あたりの賞与込み月間給与が31万4000円(前年比1万1000円増)になったと発表しました。全産業平均との差は前年より1000円縮小し、2024年度介護報酬改定での処遇改善加算拡充が賃金上昇を押し上げた形です。一方で全産業との月額格差は依然8万2000円残っており、2026年6月の臨時改定で訪問看護・訪問リハ・居宅介護支援にも処遇改善加算が新設されます。
目次
2026年4月10日、厚生労働省が介護職員の賃金推移に関する最新データを公表しました。2025年の介護職員1人あたりの賞与込み月間給与は31万4000円で、前年の30万3000円から1万1000円増加。全産業平均との賃金格差は8万2000円で、前年(8万3000円)から1000円分わずかに縮まりました。
この数字は、2024年度介護報酬改定で一本化・拡充された「介護職員等処遇改善加算」の効果が一定程度現れた結果といえます。ただし他産業でも賃上げが加速しており、賃金格差の本質的な縮小には至っていません。2026年6月には臨時の介護報酬改定(期中改定)が控えており、対象サービス拡大と加算率引き上げによって介護従事者全体への賃上げ効果が期待されています。本記事では、今回の発表内容と今後の見通しを、転職を検討する介護職員の視点で整理します。
厚労省発表の概要:31.4万円の中身と前年からの変化
厚生労働省が2026年4月10日に公表したのは、毎年公表される介護職員の賃金推移データです。2025年の介護職員1人あたりの月間給与は、賞与分を月額換算した金額を含めて31万4000円となり、前年の30万3000円から1万1000円(約3.6%)の上昇となりました。
発表された主要データ
- 2025年の介護職員平均月給(賞与込み):31万4000円(前年比+1万1000円)
- 2024年の同平均月給:30万3000円
- 全産業平均の月給:39万6000円(賞与込み)
- 全産業との賃金格差:8万2000円(前年は8万3000円、差は1000円縮小)
数値は、処遇改善加算を算定している事業所の実態を踏まえたもので、現場の介護職員の実収入に近い水準を示しています。全産業との格差が「1000円縮小」というのは、介護職の上昇幅(約3.6%)が全産業平均の上昇幅をわずかに上回ったことを意味します。
なぜ上昇したのか
賃金上昇の主因は、2024年6月に施行された介護職員等処遇改善加算の一本化・拡充です。従来の3加算(処遇改善・特定処遇改善・ベースアップ等支援)が1本に統合され、加算率の引き上げと配分ルールの柔軟化が行われました。これにより、事業所が受け取る原資が増え、多くの事業所で基本給や月額手当の引き上げが実施されています。
処遇改善加算拡充の効果:令和6年度調査で月給33.82万円
厚生労働省の「令和6年度介護従事者処遇状況等調査」(2025年公表)では、処遇改善加算を取得している事業所の介護職員の平均給与額について、以下の結果が示されています。
令和6年度調査の主要数値
- 月間平均給与額(手当・賞与含む):33万8200円(前年比+1万3960円、+4.3%)
- 基本給:25万3810円(前年比+1万1130円、+4.6%)
- 処遇改善加算取得事業所の割合:95.5%(未取得は4.5%)
- 2020年からの5年間で約2万円以上の月給上昇(31.5万円→33.8万円)
この調査は2024年6月の新加算施行後の実態を反映しており、加算を取得している事業所では平均33万円台後半の月給が支払われていることがわかります。基本給の上昇率(+4.6%)は、賞与や手当を含めた月給の上昇率(+4.3%)を上回っており、「一時金ではなく基本給を底上げする」という新加算の設計思想が一定の成果を上げていることを示しています。
資格による差の大きさ
同調査では資格別の月給差も明確です。介護福祉士の月給は35万0050円、介護職員初任者研修は32万4830円、無資格は29万0620円で、介護福祉士と無資格者の差は月約6万円に達します。処遇改善加算が事業所に入った原資は、資格や経験年数で傾斜配分されるケースが多く、資格取得は依然として収入アップの有効な手段です。
出典:厚生労働省「令和6年度介護従事者処遇状況等調査結果の概要」
他産業との賃金格差の現状:なぜ「縮小」と「拡大」が同時に語られるのか
今回の発表では「全産業との差が1000円縮小」と報じられた一方、別の統計をもとに「格差は8万2000円で依然大きい」「むしろ拡大懸念」とも報じられています。なぜ同じ介護職の賃金について矛盾するように見える情報が並び立つのでしょうか。結論から言えば、調査手法と比較対象の違いによるものです。
2つの統計を読み分ける
介護職の賃金を語る際、主に参照される統計は2系統あります。
- 賃金構造基本統計調査(厚労省):職種別に集計される大規模調査。介護職員に絞った全国平均を把握できる。2025年の介護職員平均31.4万円、全産業平均39.6万円、差8.2万円という数字はこちら。
- 介護従事者処遇状況等調査(厚労省):処遇改善加算取得事業所を対象とした調査。月給33.8万円、基本給25.3万円などの数字はこちら。
同じ「介護職員の平均月給」でも、集計範囲が違うため数値がずれます。加算取得事業所は全体の95.5%を占めるため、現場実態としては両方が参考になりますが、マクロの業界比較には賃金構造基本統計調査、事業所単位の処遇改善効果検証には処遇状況等調査というのが一般的な使い分けです。
格差の構造的要因
月額8万円超の差が縮まりにくい背景には、介護サービスの価格が国の定める介護報酬の枠内に収まるという「公定価格」の構造があります。一般企業のように需給で単価を上げられないため、賃上げ原資は介護報酬改定を通じた国の意思決定に依存します。3年に1回の定期改定サイクルは、年単位で春闘を行う民間市場のスピードと比べて遅く、物価や他産業賃金が急上昇する局面では、介護側の追随が構造的に遅れてしまいます。
月額差8.2万円が家計に与える影響
月8.2万円の差は年収換算で約100万円。賞与は基本給を基礎に算出されるため、基本給の差はボーナスや退職金、厚生年金にも長期的に響きます。住宅ローン審査でも安定的な基本給が評価対象となるため、単年だけでなく生涯収入ベースで見た格差はさらに大きくなります。
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2026年度介護報酬改定 臨時改定で何が変わるか
厚生労働省は2026年6月施行で、介護報酬の臨時(期中)改定を行います。改定率は処遇改善分と食費基準費用額の引き上げを合わせて+2.03%。介護職員等処遇改善加算の対象拡大と加算率の引き上げが最大の目玉です。
改定の主要ポイント(2026年6月施行)
- 新規対象サービスの追加:訪問看護(加算率1.8%)、訪問リハビリテーション(加算率1.5%)、居宅介護支援・介護予防支援(加算率2.1%)が新たに処遇改善加算の対象に。これまで対象外だったケアマネジャーや訪問看護師も賃金改善の原資を得られるようになります。
- 訪問介護の加算率を最大28.7%に引き上げ:加算I「ロ」の新設により、生産性向上やケアプランデータ連携システム導入などの新要件を満たす事業所は加算率が現行の24.5%→28.7%に上昇。サービス種別で最も高い加算率です。
- 加算区分の6区分化:既存の加算I・IIに「イ(従来要件)」「ロ(新要件上乗せ)」が新設され、加算I「イ」(27.0%)/I「ロ」(28.7%)/II「イ」(24.9%)/II「ロ」(26.6%)/III(20.7%)/IV(17.0%)の6区分に細分化。
- 対象職員の拡大:「介護職員のみ」から「介護従事者全体」へ。事業所の裁量で看護師・相談員・事務員などにも配分可能となり、チーム全体での処遇改善を目指します。
- 賃上げ目標額:月1万円ベース、定期昇給・生産性向上上乗せを含めて最大月1万9000円のベースアップを目指すとされています(月1万円+生産性向上上乗せ7000円+定期昇給2000円程度)。
- 食費基準費用額:2026年8月から1445円→1545円に引き上げ(+100円)。補足給付対象者の第3段階は据え置きか増額幅抑制。
加算率引き上げ例(訪問介護)
- 加算I「イ」:24.5%→27.0%(+2.5pt)
- 加算I「ロ」(新設):28.7%(現加算Iから+4.2pt)
- 加算II「イ」:22.4%→24.9%(+2.5pt)
- 加算II「ロ」(新設):26.6%(現加算IIから+4.2pt)
出典:社会保障審議会・介護給付費分科会(2026年1月16日答申)
介護職員が今後意識すべき3つのこと
給与上昇トレンドは続いていますが、恩恵の受け方は職場選びと自身の行動で大きく変わります。今回の発表と2026年改定を踏まえ、介護職員が実務で意識したい3つの視点を整理します。
1. 勤務先の処遇改善加算の算定区分を確認する
処遇改善加算は加算I〜IVの4区分(2026年6月からは6区分)で、上位区分ほど事業所が受け取る原資が多くなります。訪問介護の場合、加算Iと加算IVでは加算率が10ポイント以上違い、その差がそのまま職員配分の原資差になります。求人票や採用面接で「処遇改善加算はどの区分を算定していますか」と直接確認しましょう。事業所の入口に「加算Ⅰ〜Ⅳ」の掲示義務があるため、見学時にチェックも可能です。
2. 介護福祉士資格の取得で月5〜6万円の差を狙う
令和6年度調査では、介護福祉士(月給35.0万円)と無資格者(月給29.1万円)の差は約6万円。初任者研修(32.5万円)と比較しても介護福祉士の給与は頭一つ抜けています。実務者研修を修了し、実務経験3年以上で介護福祉士の受験資格が得られるため、現場経験を積みながら計画的に資格取得を進めるのが収入アップの王道です。処遇改善加算の配分ルールでも、資格保有者が加点対象となるケースが多数あります。
3. 転職・交渉時に「賃上げトレンド」を材料として活用する
2026年6月からは訪問看護・訪問リハ・居宅介護支援にも処遇改善加算が新設されます。これらのサービスへの転職や、施設内でこれらのポジションを担う場合、これまで対象外だった賃上げ原資が新たに加わります。また、2024〜2026年の連続的な処遇改善策を背景に、求人票記載の給与水準と実支給額の関係を具体的に確認することが重要です。「加算を基本給に組み込んでいる」「一時金で支給している」など運用方法は事業所ごとに異なるため、年収ベースでの比較を徹底しましょう。
よくある質問
よくある質問
Q1. 31万4000円という数字には何が含まれていますか?
A. 厚労省が発表した31万4000円は、月額の基本給・毎月支給される各種手当(職務手当・夜勤手当・処遇改善手当など)に加えて、賞与(ボーナス)を月額換算した金額を合算した「賞与込み月間給与」です。税引き前の総支給額ベースであり、手取り額ではありません。また、対象は賃金構造基本統計調査における介護職員の全国平均値です。
Q2. 施設・サービス種別で給与に差はありますか?
A. あります。令和6年度調査によると、介護老人福祉施設(特養)や介護老人保健施設(老健)などの入所系施設は夜勤手当が加わるため、訪問系や通所系に比べて月給が高い傾向にあります。2026年6月改定では、訪問介護の処遇改善加算率が最大28.7%とサービス種別で最も高く設定されており、訪問介護員の処遇改善原資が大きく増える見込みです。
Q3. 「月額格差8.2万円」と「差が1000円縮小」は矛盾していませんか?
A. 矛盾していません。「8.2万円」は2025年時点の全産業平均(39.6万円)と介護職員平均(31.4万円)の差の絶対額、「1000円縮小」は前年差8.3万円と比較した変化分です。つまり「依然として大きな格差があるが、前年よりはわずかに縮まった」というのが正確な理解です。他産業の賃上げも進んでいるため、格差の本質的な縮小には至っていません。
Q4. 2026年6月の改定で、自分の月給はいくら上がりますか?
A. 勤務先のサービス種別・加算区分・事業所の配分ルールによって大きく異なります。政府の目標としては「月1万円(処遇改善加算分)+定期昇給込みで最大1万9000円」が示されていますが、これは上限値で、実際には介護職員以外にも配分される場合や、基本給組み込み・一時金支給などの運用差があります。勤務先の賃金改善計画書の内容を確認することが重要です。
Q5. 処遇改善加算の対象外だった訪問看護やケアマネはどう変わりますか?
A. 2026年6月から新たに加算対象となります。加算率は訪問看護1.8%、訪問リハビリテーション1.5%、居宅介護支援・介護予防支援2.1%。事業所が申請・算定することで原資が入り、職員の賃金改善に充てられる仕組みです。ただし制度開始直後は申請準備が間に合わない事業所もあるため、取得率の上昇には時間がかかる見込みです。
Q6. 2027年度の定期改定ではさらに賃上げが進みますか?
A. 厚労省は2027年度の定期介護報酬改定に向けて、物価や賃金上昇を適切に反映する方針を示しています。介護事業経営実態調査などで状況を把握した上で対応する見通しで、2026年度臨時改定の効果検証結果も踏まえて議論される予定です。処遇改善加算の制度設計を「加算から基本報酬への組み込み」に再編する議論も始まっており、今後数年で賃金構造そのものが変わる可能性もあります。
まとめ:賃上げの流れは続くが、職場選びと資格がカギ
厚生労働省が2026年4月10日に発表した最新データは、介護職員の賃金が着実に上昇している事実を裏付けました。2025年の賞与込み月給31万4000円、前年比1万1000円増、全産業との格差も1000円ながら縮小しており、2024年度介護報酬改定での処遇改善加算拡充が実績として現れています。
一方で、月額8.2万円という全産業との賃金格差は依然として大きく、公定価格という制度的制約の中で介護職の賃金が他産業に追いつくには、継続的な制度改定と国の意思決定が必要です。2026年6月の臨時改定では訪問看護・訪問リハ・居宅介護支援にも処遇改善加算が新設され、介護従事者全体への賃上げが進みます。さらに2027年度の定期改定では基本報酬の引き上げ議論も本格化する見通しです。
個々の介護職員にとって重要なのは、加算区分の高い事業所を選ぶこと、介護福祉士など資格を取得して配分原資を確保すること、そして制度動向を把握したうえで転職や交渉を進めることです。賃上げのマクロトレンドを、自分自身のキャリアと家計にどう取り込むか。その視点で情報を読み解いていくことが、今後ますます重要になります。
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