介護中の親を扶養に入れる|所得税の扶養控除・健康保険の被扶養者・別居でも対象になる条件
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介護中の親を扶養に入れる|所得税の扶養控除・健康保険の被扶養者・別居でも対象になる条件

親を扶養に入れる2種類(税法上・健康保険上)の違いを徹底解説。老人扶養親族58万円、別居の仕送り要件、75歳の壁、要介護認定で受けられる障害者控除まで、介護中の家族向けに最新の令和7年度税制改正も反映してまとめました。

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親を扶養に入れる方法は「税法上の扶養(所得税の扶養控除)」「社会保険上の扶養(健康保険の被扶養者)」の2種類があり、別々の制度として手続きします。70歳以上で同居している親なら所得税の控除額は58万円(同居老親等)、別居でも仕送りで生計を維持していれば48万円の控除が受けられます。健康保険の被扶養者は親の年収180万円未満(60歳以上)かつ75歳未満が条件です。

目次

親の介護が始まると、医療費・介護サービス費・通院の交通費など、想像以上に出費がかさみます。「親を自分の扶養に入れたら税金が安くなる」と聞いたことがあっても、いざ調べてみると「税法上の扶養」と「健康保険上の扶養」が別物だったり、別居でも対象になる条件があったり、逆に世帯収入が上がることで親が受けていた介護保険料の軽減措置がなくなる落とし穴があったりと、判断材料が多すぎて手が止まってしまいがちです。

この記事では、介護中のご家族が知っておきたい所得税の扶養控除・健康保険の被扶養者・別居でも対象になる条件・要介護認定者だけが使える障害者控除を、国税庁・全国健康保険協会の最新情報(令和7年度税制改正反映)に基づいて整理します。年末調整や確定申告の前に、家族会議の材料としてご活用ください。

※本記事は2026年5月時点の制度に基づいて執筆しています。税制は年度ごとに改正される可能性があるため、実際の申告時には国税庁や加入する健康保険組合の最新情報を必ずご確認ください。個別の判断は税理士・社会保険労務士・市区町村窓口にご相談されることをおすすめします。

「親を扶養に入れる」には2種類ある

日常会話で「扶養」と一言で言っても、税金と社会保険ではまったく別の制度です。介護中の親を支える場合、まずこの違いを押さえてからどちらに(あるいは両方に)入れるかを判断します。

① 税法上の扶養=所得税・住民税の扶養控除

納税者(あなた)の所得から一定額を差し引き、所得税と住民税を軽減する制度です。親が一定の収入要件を満たしていれば、年末調整や確定申告で「給与所得者の扶養控除等(異動)申告書」に記入することで適用されます。手続き先は勤務先(年末調整)または税務署(確定申告)です。

② 社会保険上の扶養=健康保険の被扶養者

会社員や公務員が加入する健康保険(協会けんぽ・組合健保・共済組合)で、被保険者(あなた)の家族を「被扶養者」として登録する制度です。被扶養者になれば親自身は健康保険料を払わずに保険給付を受けられます。手続き先は勤務先の人事・総務を通じて健康保険組合へ「被扶養者異動届」を提出します。

2つは別々に判定される

所得要件も手続き窓口も別なので、「税法上だけ扶養」「健康保険だけ扶養」「両方とも扶養」のいずれもあり得ます。たとえば年金収入が180万円ある親は税法上は扶養に入れられても健康保険の被扶養者にはなれない、というケースがあります。

また、自営業者や退職者で国民健康保険に加入している方は「被扶養者」という概念自体がないため、社会保険上の扶養に親を入れることはできません(世帯合算で保険料が計算されるだけです)。

所得税の扶養控除|控除額と所得要件(令和7年度改正反映)

所得税の扶養控除は、扶養親族の年齢区分によって控除額が異なります。介護中の親を扶養に入れる場合、ほとんどのケースで「老人扶養親族」または「同居老親等」に該当します。

扶養控除額の一覧(令和7年分以後)

区分対象所得税の控除額住民税の控除額
一般の控除対象扶養親族16歳以上70歳未満38万円33万円
特定扶養親族19歳以上23歳未満63万円45万円
老人扶養親族(別居)70歳以上48万円38万円
同居老親等(同居)70歳以上で同居58万円45万円

出典:国税庁「No.1180 扶養控除」「No.1182 高齢者を扶養している人が受けられる扶養控除」

親の所得要件(合計所得58万円以下)

扶養親族になれるのは、その年12月31日時点で親の合計所得金額が58万円以下(令和6年分までは48万円以下でしたが、令和7年度税制改正で10万円引き上げ)の場合です。給与所得控除や公的年金等控除を差し引いた後の金額で判定します。

収入別の目安

  • 給与収入のみ:年収123万円以下(給与所得控除65万円を引いて58万円以下)
  • 年金収入のみ(65歳未満):年収108万円以下(公的年金等控除50万円を引いて58万円以下)
  • 年金収入のみ(65歳以上):年収158万円以下(公的年金等控除100万円を引いて58万円以下)

親の収入が国民年金(満額で年約81万円)や厚生年金中心であれば、多くの方がこの所得要件を満たします。逆に企業年金や個人年金、不動産収入がある親の場合は計算が必要なので、源泉徴収票や年金額改定通知書で正確に確認しましょう。

節税額のシミュレーション(70歳以上・同居の場合)

たとえば所得税率20%の方が70歳以上の親と同居して扶養に入れた場合、所得税は58万円×20%=11万6,000円、住民税は45万円×10%=4万5,000円、合計で年間約16万円の税負担軽減が期待できます。別居の場合でも所得税48万円×20%+住民税38万円×10%=年間約13万4,000円の節税効果があります。

別居の親でも扶養控除を受けられる|「生計を一にする」とは

「扶養=同居」というイメージがありますが、所得税の扶養控除では別居でも「生計を一にする」関係であれば対象になります。介護のために実家から離れて暮らしながら仕送りで支えているケースは、まさにこの典型です。

「生計を一にする」の意味

国税庁の見解では、同居していなくても次のような実態があれば「生計を一にする」と認められます。

  • 生活費、療養費、家賃などを常に送金している
  • 余暇には親元で起居を共にしている
  • 親が病気や老齢で自活できず、子の経済的支援で生活している

仕送り額にルールはあるか

所得税の扶養控除では仕送り額に法律上の最低基準はありません。ただし「生活費の主要部分を負担している」と説明できる実態が必要です。月数千円程度の送金で「生計を一にしている」と主張するのは現実的に難しいでしょう。

一方、健康保険の被扶養者では各健康保険組合ごとに「下限額」が設定されているケースがあります(例:1人につき月5万円以上、2人なら月9万円以上など)。協会けんぽでは「親の年収を超える仕送り額」が条件とされています。

送金の証拠を必ず残す

税務署や健保組合から「実態確認」を求められた場合に備えて、以下の書類を保管しておきます。

  • 銀行振込の控え・通帳のコピー(毎月定期的に送金している記録)
  • 現金書留の控え(手渡しや現金封筒は原則NG。第三者が確認できる方法で)
  • 仕送り目的のメモ(生活費・療養費の内訳など)

とくに健保組合の被扶養者調査では「過去1年間の仕送り証明書」の提出を求められることが多いため、振込日が明確に記録される銀行振込が最も確実です。手渡しでの送金は「証明できない」として認定されないケースがあります。

長期入院・施設入所はどう扱われるか

同居老親等(控除額58万円)の「同居」要件は、次のように判定されます。

状況同居扱い
1年以上の長期入院○ 同居として扱う(治療目的の入院は別居とみなさない)
有料老人ホーム・特養・グループホームへの入所× 別居扱い(生活の本拠が施設に移ったとみなす)
介護老人保健施設(老健)への短期入所原則別居扱い
子どもの家へ長期帰省中同居として扱う

親が老人ホームに入所した場合は「同居老親等58万円」ではなく「老人扶養親族48万円」になります。施設入所のタイミングで控除額が10万円下がることに注意してください。

健康保険の被扶養者|年収・年齢・別居の条件

親を健康保険の被扶養者にできれば、親の国民健康保険料の負担がゼロになります。年金生活の親にとっては大きなメリットです。ただし税法上の扶養とは別ルールがあるため、条件をひとつずつ確認しましょう。

被扶養者になれる3つの条件

① 親の年齢が75歳未満であること

健康保険の被扶養者になれるのは75歳の誕生日の前日までです。75歳になると自動的に後期高齢者医療制度に移行し、本人が独立した被保険者として保険料を負担することになります。これは介護保険のような世帯ベースではなく、個人単位での制度です。

② 親の年間収入が一定額未満であること

親の状況年収要件
60歳未満年収130万円未満
60歳以上、または障害厚生年金を受給年収180万円未満

介護中の親は60歳以上であることが多いため、年収180万円未満がボーダーラインです。注意点として、健康保険でいう「収入」は税法上の所得とは違い、非課税の遺族年金・障害年金、雇用保険の失業給付なども含めた総額で判定されます。たとえば老齢年金120万円+遺族年金80万円=合計200万円なら、被扶養者になれません。

③ 生計を維持されていること

同居/別居追加要件
同居親の年収が被保険者(あなた)の年収の1/2未満
別居仕送り額が親の年収を上回ること(協会けんぽ基準)

出典:全国健康保険協会「被扶養者の収入の基準」

税法上と健康保険上の扶養の違いまとめ

項目税法上の扶養(所得税)健康保険の被扶養者
所得・収入の基準合計所得58万円以下(年金65歳以上なら年収158万円以下)年収130万円未満(60歳以上は180万円未満)
収入の範囲課税対象の所得のみ遺族年金・障害年金・失業給付も含む
年齢制限制限なし(70歳以上は控除額アップ)75歳未満
判定タイミングその年12月31日時点将来見込みベース(認定時点)
手続き先勤務先(年末調整)または税務署勤務先経由で健康保険組合
必要書類扶養控除等申告書被扶養者異動届、収入証明、仕送り証明、住民票など

健保組合ごとの独自ルールに注意

協会けんぽは全国一律の基準ですが、大企業の健康保険組合(組合健保)では、別居の仕送り額に下限を設けたり、被扶養者の年齢上限を独自に定めたりするケースがあります。手続き前に必ず勤務先の人事担当または加入する健保組合のホームページで最新の基準を確認しましょう。

親を扶養に入れるメリットとデメリット

メリット

1. 子(あなた)の所得税・住民税が下がる

同居老親なら年間16万円前後、別居の老人扶養親族でも13万円前後の税負担軽減が期待できます。所得税率が高い高所得者ほど効果は大きく、税率30%の方が同居老親を扶養に入れれば、所得税だけで17万4,000円が軽減されます。

2. 親の健康保険料がゼロになる

親が国民健康保険に加入している場合、地域や所得によりますが年間数万円〜十数万円の保険料を支払っています。子の健康保険の被扶養者になれば、この負担がそのままゼロになります。

3. 親自身も窓口負担だけで医療を受けられる

被扶養者になっても医療機関での自己負担割合(70歳未満3割、70歳以上2割など)は変わりません。年齢区分に応じた負担割合のまま、保険料負担だけが軽減される仕組みです。

4. 勤務先によっては家族手当の対象になる

会社によっては扶養家族1人あたり月数千円〜2万円程度の家族手当(扶養手当)が支給される場合があります。給与規程を確認しましょう。

デメリット(特に注意すべき点)

1. 親の住民税非課税世帯の優遇がなくなる可能性

これが介護中の家族にとって最大の落とし穴です。住民税非課税世帯には、以下のような優遇措置が用意されています。

  • 介護保険料が大幅に減額(第1〜3段階)
  • 介護サービス利用料の負担限度額認定(特養の食費・居住費の軽減)
  • 高額介護サービス費の自己負担上限が低い区分(月15,000円)
  • 後期高齢者医療の保険料軽減
  • 自治体独自の高齢者福祉サービス(紙おむつ支給、配食サービスなど)

同居して住民票上同じ世帯になれば「世帯」全体の所得で判定されるため、子の所得が高いと親が非課税世帯から外れ、これらの優遇が一気に失われる可能性があります。

2. 高額療養費の自己負担限度額が上がる

高額療養費制度の自己負担限度額は所得(標準報酬月額)で区分されます。親が被扶養者になると、世帯主である子の所得で限度額が決まるため、親が単独で国保に入っていた頃よりも限度額が上がる(=医療費の自己負担が増える)ケースがあります。

3. 介護サービス利用料が1割→2割・3割になる可能性

65歳以上の介護保険サービス利用者の自己負担は、合計所得金額や年金収入に応じて1割・2割・3割に分かれます。扶養に入れることで判定基準が変わるケースは限定的ですが、同居して同一世帯となる場合は「世帯内に第1号被保険者が2人以上いる場合の合計収入」で判定されるため、子の収入が高いと負担割合が上がることがあります。

4. 兄弟姉妹間でのトラブル

扶養控除は1人の親に対して1人の子しか適用できません。「自分が扶養に入れて節税したい」と勝手に手続きすると、別の兄弟が想定していた控除が受けられなくなります。手続き前に必ず家族会議で「誰が扶養に入れるか」を決めましょう。

要介護認定の親なら使える「障害者控除」も忘れずに

介護中のご家族で見落とされがちなのが障害者控除です。障害者手帳を持っていない高齢者でも、要介護認定を受けていれば多くの自治体で「障害者控除対象者認定書」を交付してもらえ、所得税・住民税の控除が大幅に増えます。

障害者控除の控除額

区分所得税の控除額住民税の控除額
障害者27万円26万円
特別障害者40万円30万円
同居特別障害者75万円53万円

出典:国税庁「No.1160 障害者控除」「No.1185 市町村長等の障害者認定と介護保険法の要介護認定について」

扶養控除との併用ができる

障害者控除は扶養控除に上乗せできます。同居している要介護3以上の親(特別障害者該当)を扶養に入れた場合、控除額の合計は次のようになります。

  • 同居老親等の扶養控除:58万円
  • 同居特別障害者控除:75万円
  • 合計133万円の所得控除(所得税率20%なら年間26万円超の節税)

要介護認定だけでは自動適用にならない

所得税法上、要介護認定そのものが障害者控除の要件にはなっていません。重要なのは、「市町村長が交付する障害者控除対象者認定書」を申請して取得することです。

認定書の取得手順

  1. 親が住んでいる市区町村役場の高齢福祉課・介護保険課に申請
  2. 申請書に介護保険被保険者証の写し、本人確認書類を添付
  3. 1〜2週間程度で認定書が交付される(自治体により判定基準が異なる)
  4. 所得税の確定申告書・年末調整の扶養控除等申告書に認定書を添付して提出

認定の目安(自治体により異なる)

多くの自治体では、要介護認定の結果や心身の状況をもとに以下のような基準で判定します。

  • 「障害者」相当:要介護1〜2、または認知症高齢者の日常生活自立度Ⅱa〜Ⅱb
  • 「特別障害者」相当:要介護3〜5、または認知症高齢者の日常生活自立度Ⅲ〜M、寝たきり状態

判定基準は自治体ごとに異なり、要介護認定の結果だけで自動判定する自治体もあれば、医師の意見書を求める自治体もあります。お住まいの市区町村の高齢福祉課へ事前に基準を確認してください。

過去にさかのぼって申告できる

「扶養に入れていなかったが、要介護認定を受けていた」「障害者控除があると知らなかった」というケースでは、過去5年分まで「更正の請求」で還付申告ができます。親が亡くなった後でも適用可能なので、心当たりがあれば税務署へ相談してください。

申告書類と手続きの流れ|年末調整・確定申告・健保異動届

1. 所得税の扶養控除の手続き

会社員の場合(年末調整)

  1. 勤務先から配布される「給与所得者の扶養控除等(異動)申告書」に親の氏名・続柄・生年月日・所得見積額を記入
  2. 同居老親等に該当する場合は「同居老親等」欄にチェック
  3. 障害者控除を受ける場合は「障害者控除対象者認定書」のコピーを添付
  4. 11月〜12月の期限までに勤務先へ提出

自営業や年末調整漏れの場合(確定申告)

  1. 翌年2月16日〜3月15日の期間に確定申告書を提出
  2. 第二表「配偶者や親族に関する事項」に親の情報を記入
  3. 必要に応じて障害者控除対象者認定書、別居の親の場合は送金記録を保管

2. 健康保険の被扶養者の手続き

  1. 勤務先の人事・総務に「被扶養者異動届」を提出することを伝える
  2. 必要書類を準備(健保組合により異なるが、おおむね下記)
    • 戸籍謄本または住民票(続柄を証明)
    • 親の所得証明書・非課税証明書(市役所で発行)
    • 年金額改定通知書のコピー(受給中の場合)
    • 別居の場合:仕送りの振込記録(過去6か月〜12か月分)、仕送り誓約書
  3. 勤務先経由で健保組合へ提出
  4. 認定されれば「資格情報のお知らせ」が発行され、親はマイナ保険証で受診できる

3. 年の途中で扶養に入れる場合のタイミング

所得税の扶養控除はその年12月31日時点で判定するため、年の途中で親が退職して所得が下がったら、その年の年末調整から扶養に入れられます。

健康保険の被扶養者認定は申請時点から将来見込みで判定するため、退職や年金受給開始のタイミングで早めに手続きします。手続きが遅れると親が国民健康保険料を二重に負担することになるので、要件を満たした時点で速やかに動きましょう。

4. 扶養から外れる時の手続き

親が亡くなったとき、年収が要件を超えたとき、75歳になったときには扶養から外す手続きが必要です。

  • 所得税:翌年の年末調整で「異動」として申告書に記入
  • 健康保険:5日以内に「被扶養者異動届(削除用)」を提出。75歳到達の場合は自動的に資格喪失するが、健保組合への届出は必要

外し忘れると過去にさかのぼって保険料を請求されたり、健保組合の被扶養者調査で発覚して遡及取り消しになることがあります。

5. 介護休業給付金との関係

仕事を休んで親を介護する際に受給する介護休業給付金(雇用保険から賃金の67%を最長93日)は、給付を受けたあなた本人の収入であり、親の収入にはなりません。

また、介護休業給付金は非課税のため、あなたの所得には含まれず、扶養控除や被扶養者認定の判定にも影響しません。安心して制度を活用しましょう。

よくある質問

Q. 配偶者の親(義父母)を扶養に入れられますか?

A. はい、可能です。所得税法上、扶養親族の範囲は「6親等内の血族および3親等内の姻族」とされており、配偶者の父母は1親等の姻族として対象になります。健康保険の被扶養者でも、配偶者の父母は被保険者と「同居」していることが条件で対象になります(別居の義父母は健保の被扶養者にはなれません)。

Q. 親が遺族年金を年250万円受給しています。扶養に入れますか?

A. 税法上は入れますが、健康保険上は入れません。遺族年金は非課税のため所得税の合計所得金額には含まれず、税法上の扶養控除は適用できます。しかし健康保険の被扶養者判定では遺族年金も「収入」として扱われるため、180万円以上あると被扶養者になれません。

Q. 親が3か月入院しています。同居老親として58万円控除を受けられますか?

A. 受けられます。1年程度の長期入院でも治療目的であれば「同居」として扱われます。ただし入院期間中に同時並行で老人ホームに住所を移すなど「生活の本拠が病院に移っている」と判断される場合は別居扱いになることがあります。

Q. 親が特別養護老人ホームに入所しました。扶養から外すべきですか?

A. 扶養自体は継続できます(生計を一にしていれば)が、「同居老親等58万円」から「老人扶養親族48万円」に変わります。また、施設での食費・居住費の負担限度額認定は住民税非課税世帯であることが条件のため、世帯分離をしている方が有利なケースもあります。市区町村の介護保険担当窓口で個別シミュレーションを受けましょう。

Q. 兄と私で半分ずつ親を扶養することはできますか?

A. できません。扶養控除は1人の親に対して1人の納税者しか適用できないため、兄弟姉妹で分割はできません。健康保険の被扶養者についても同様です。話し合いで「税法上は兄、健康保険は私」のように分担することは可能です。

Q. 扶養に入れていなかった過去分の控除を取り戻せますか?

A. 過去5年分まで「更正の請求」または「還付申告」で取り戻せます。とくに障害者控除対象者認定書を取得していなかった、要介護認定があったのに障害者控除を申告していなかった、というケースでは大きな還付が見込めます。お住まいの管轄税務署か税理士に相談してください。

Q. 親が亡くなった年も扶養控除は受けられますか?

A. 受けられます。扶養親族の判定は「死亡日時点で要件を満たしていたか」で行われます。年の途中で亡くなった場合でも、その時点で生計を一にしていて所得要件を満たしていれば、その年分の扶養控除は通年で適用されます。

Q. 同居だと住民税非課税世帯の優遇がなくなって損だと聞きました。回避方法はありますか?

A. 「世帯分離」という選択肢があります。同じ家に住みながら住民票上の世帯を分けることで、親を住民税非課税世帯のまま維持できる場合があります。ただし健康保険の被扶養者の同居条件には影響しないこと、自治体独自のサービスや高額介護サービス費の判定に影響することがあるため、市区町村窓口で個別シミュレーションが必須です。

参考文献・出典

まとめ|まず家族会議、次に市区町村窓口へ

介護中の親を扶養に入れる判断は、税法上の扶養(所得税の節税)と健康保険の被扶養者(保険料軽減)の2つを別々に検討する必要があります。とくに70歳以上の親と同居しているなら所得税で年間16万円前後の節税が見込め、加えて要介護認定があれば障害者控除対象者認定書の活用で更に大きな控除が受けられます。

一方で、同居や同一世帯にすることで親の住民税非課税世帯の優遇が失われ、介護保険料・サービス利用料・施設の食費負担などが増えるリスクもあります。「税で得しても介護費で損する」事態を避けるには、扶養に入れる前に以下のアクションを順番に進めましょう。

  1. 家族会議で「誰が扶養に入れるか」「同居するか別居のままか」を決める
  2. 市区町村の介護保険担当窓口で世帯構成を変えた場合の介護保険料・サービス利用料を試算
  3. 勤務先の人事で家族手当の有無、健康保険組合の被扶養者基準を確認
  4. 要介護認定があれば市区町村に障害者控除対象者認定書を申請
  5. 判断が難しい場合は税理士・社会保険労務士へ相談

制度は毎年改正されています(令和7年度税制改正で所得要件が48万円→58万円に引き上げられました)。本記事の内容は2026年5月時点の情報に基づきますが、実際の申告では必ず国税庁や加入する健康保険組合の最新情報をご確認ください。

執筆者

介護のハタラクナカマ編集部

編集部

介護保険、施設選び、在宅介護など、介護を受ける方・ご家族が判断に迷いやすいテーマを、公的情報と実務上の確認ポイントに沿って解説しています。

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