心不全の親を在宅で支える|増悪サイン・体重管理・塩分制限と緊急対応
ご家族・ご利用者向け

心不全の親を在宅で支える|増悪サイン・体重管理・塩分制限と緊急対応

高齢の心不全パンデミック時代に、家族が在宅で親を支えるための実践ガイド。10の増悪サイン、毎日の体重管理、1日6g以下の塩分制限、心不全手帳の点数化受診基準、入浴・服薬の注意点、訪問看護や心臓機能障害手帳の活用、ACPまでを循環器学会・国循ガイドラインに沿って網羅。

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高齢の親が心不全と診断されたら、家族はまず「毎朝同じ条件での体重測定」と「1日6g未満の塩分制限」を生活に組み込み、1週間で2kg以上の体重増加・横になると苦しい・足のむくみのいずれかが出たら主治医に連絡してください。心不全は一度低下した心機能が戻らない進行性の病気ですが、増悪サインに早く気づき、利尿薬などを自己判断で中止せずに飲み続けることで、入院を防ぎ在宅で穏やかに暮らせる時間を延ばせます。安静時に息苦しい・胸痛・意識消失があれば迷わず救急要請(119)を選んでください。

目次

「最近、お父さんが2階に上がるとすぐ息切れする」「夜中に何度もトイレに起きるようになった」「足のすねを押すとへこみが残る」——こうした変化に気づいて病院に連れて行ったら、心不全と診断された。そんな経験をするご家族が、いま急速に増えています。

日本の心不全患者は約120万人、2030年には130万人に達すると推計され、感染症の流行になぞらえて「心不全パンデミック」と呼ばれるほどの社会問題になっています(公益財団法人 日本心臓財団)。米国の研究では、50歳代の心不全発症率が1%であるのに対し、80歳以上では10%にのぼり、超高齢社会の日本ではさらに患者数の増加が続くと予想されています。

心不全は、心臓のポンプ機能が低下し、息切れ・むくみが起こって徐々に悪化し、生命を縮める病気です(国立循環器病研究センター)。一度低下した心機能は元に戻らないため、根治を目指す病気ではなく、「悪化させずに付き合っていく病気」です。そして、その鍵を握るのが、毎日の生活を一緒に見守る家族の存在です。

この記事では、循環器内科医・心不全認定看護師が監修する公的ガイドライン(『急性・慢性心不全診療ガイドライン』日本循環器学会、『心不全手帳(第3版)』日本心不全学会、厚労省研究班『地域のかかりつけ医と多職種のための心不全診療ガイドブック』)に沿って、ご家族が在宅で親の心不全を支えるために知っておくべき知識を、増悪サインの見極めから緊急受診の判断、ACP(人生会議)までを通しで解説します。

※本記事は一般的な情報提供です。実際の治療・生活管理は必ず主治医(循環器内科・かかりつけ医)の指示に従ってください。

高齢者の心不全とは|「心不全パンデミック」の時代に

心不全とは、心臓の筋肉の障害や弁の異常などによってポンプ機能が低下し、体に必要な酸素や栄養を十分送り出せなくなった状態を指す「症候群」です。特定の一つの病気ではなく、心筋梗塞・狭心症・高血圧・心臓弁膜症・心筋症・不整脈などの心臓病が長年積み重なった結果として現れる、心臓病の終末像とされています(国立循環器病研究センター)。

「心不全パンデミック」とは

日本心臓財団によると、わが国の心不全患者数は約120万人、2030年には130万人に達すると推計されています。がんの罹患者数(約100万人)を上回る規模で、感染症の爆発的拡大に重ね合わせて「心不全パンデミック」と呼ばれています。背景には、虚血性心疾患の生存率向上と、高血圧・弁膜症が増える超高齢化があります。

厚生労働省の人口動態統計でも、心疾患は悪性新生物に次ぐ死因の第2位を維持しており、急性心筋梗塞の死亡率は減少傾向にある一方で、心不全による死亡は増加傾向です。

高齢者の心不全に特有の難しさ

75歳以上の後期高齢心不全患者は、心臓だけの問題では済みません。日本心不全学会の『高齢心不全患者の治療に関するステートメント』では、以下のような特徴が指摘されています。

  • 多疾患合併(糖尿病・腎機能低下・COPD・整形疾患などを複数抱える)
  • フレイル・サルコペニア(筋力・体力の低下)の併存
  • 認知症による服薬・体重測定・受診判断の難しさ
  • HFpEF(左室駆出率の保たれた心不全)の比率が高く、利尿薬以外の特効薬が限られる
  • 入退院を繰り返すたびにADL(日常生活動作)が落ち、施設入居や寝たきりにつながりやすい

このため、高齢者の在宅療養では、医療だけでなく介護・福祉・地域の見守りまで含めた多職種チームでの支援、そして毎日生活を共にする家族の観察力が、再入院を防ぐ最大の武器になります。

心不全の4ステージ(A〜D)と検査|今の段階を把握する

心不全は「進行性の病気」と言われますが、いきなり重症になるわけではありません。日本循環器学会『急性・慢性心不全診療ガイドライン(2017年改訂版)』では、ACCF/AHA分類に基づき4つのステージに区分しています。親が今どこにいるかを把握すると、家族の関わり方が変わります。

4ステージの意味

  • ステージA(リスクステージ):高血圧・糖尿病・動脈硬化など心不全のリスクはあるが、心臓に異常はなく症状もない段階。生活習慣の改善で発症予防を狙う。
  • ステージB(器質的心疾患あり・無症状):心筋梗塞の既往や心肥大などはあるが、息切れ・むくみといった心不全症状はまだ出ていない段階。症状の発症予防が目標。
  • ステージC(症候性心不全):器質的心疾患があり、息切れ・むくみ・倦怠感などの心不全症状が出ている、または過去に出たことがある段階。在宅で過ごす多くの高齢患者がここ。症状コントロール・QOL改善・入院予防・死亡回避が治療目標。
  • ステージD(治療抵抗性):標準治療を尽くしてもNYHA心機能分類III度(軽い労作で症状)以上から改善しない段階。年に2回以上の心不全入院を繰り返す。補助人工心臓・心臓移植が検討されるか、緩和ケア・終末期ケアが中心になる。

家族にとって重要なのは、ステージは戻らないという事実です。ステージCに進んだ親をステージBに戻すことはできませんが、ステージCの中で安定させ、ステージDへの移行を遅らせることはできます。

NYHA心機能分類

もう一つよく使われるのが、運動耐容能でみるNYHA分類(I〜IV度)です。

  • I度:通常の身体活動では症状なし
  • II度:日常生活で軽度の息切れ・疲労が出る
  • III度:軽い労作(着替え・歩行)で症状
  • IV度:安静時にも症状(重症)

BNP・NT-proBNP検査

BNP(脳性ナトリウム利尿ペプチド)は、心臓に負担がかかると分泌量が増えるホルモンで、心不全の有無と重症度を血液検査で評価できます。一般的にBNPが100pg/mL以上、NT-proBNPは125pg/mL以上で心不全の疑いがあるとされ、最新のガイドラインでは「隠れ心不全」を早期発見するため、NT-proBNPのスクリーニング値が125pg/mLに下げられました。診察時にBNPの推移を聞いて、悪化傾向か安定しているかを把握しておくと、増悪の早期察知に役立ちます。

その他、胸部レントゲン(心拡大・肺うっ血・胸水の確認)、心電図(不整脈・虚血の確認)、心エコー(心臓の動き・弁の状態・LVEF=左室駆出率)、必要時は心臓カテーテル検査などが組み合わせて行われます(国立循環器病研究センター)。

家族が観察すべき心不全の増悪サイン10|「いつもと違う」を見逃さない

心不全の再入院を防ぐには、増悪(悪化)の予兆を本人より先に家族が気づくことが決定的に重要です。日本心不全学会『心不全手帳』や日本循環器学会・厚労省研究班のガイドブックに基づき、毎日チェックしたい10のサインを整理しました。

1. 急激な体重増加

もっとも重要なサイン。1週間で2kg以上、もしくは3日で2kg以上の体重増加は、体内に水分が貯留している証拠です。体重増加=太ったではなく、心臓のポンプ機能が弱り余分な水分が逃げきれていない状態と理解しましょう。

2. 息切れの悪化

「以前は1階から2階まで一気に上れたのに、途中で止まるようになった」「会話の途中で息継ぎが増えた」など、同じ動作で以前より早く息切れするのは要注意。本人は「年のせい」と片付けがちですが、家族の比較眼が頼りです。

3. 起座呼吸(横になると苦しい)

横になると肺うっ血が悪化し、上体を起こさないと苦しくなる症状。「枕を高くしないと眠れない」「ソファで寝るようになった」は心不全悪化の典型的サインで、本人にとっては「寝づらい」程度の感覚でも、医療的にはかなり進行している可能性があります。

4. 夜間発作性呼吸困難・咳・ピンク色の痰

就寝後1〜2時間で急に息苦しくなって起きる、夜中に咳が続く、ピンク色の泡状の痰が出るのは、肺水腫を疑う重大なサイン。安静時呼吸困難があれば救急要請を検討してください。

5. 下肢のむくみ(浮腫)

すねや足の甲を指で押してへこみが10秒以上残る、靴下のゴム跡が深い、靴がきつくなったは典型的なうっ血徴候。寝たきりの方では仙骨部(おしりの上部)にも出ます。左右差や変化の速さ、体重・呼吸状態と合わせて判断します。

6. 夜間頻尿

日中は活動で末梢に水分が溜まり、夜に横になることで腎臓へ血流が戻って尿になります。夜中のトイレ回数が急に増えたのは水分貯留のサイン。逆に、利尿薬の効きが悪くなり尿量が減った場合も腎機能悪化・脱水・心不全悪化の可能性があります。

7. 食欲低下・腹部膨満感

胃腸にもうっ血が及ぶと、食欲低下・吐き気・お腹の張りが出ます。「最近、ごはんを残すようになった」は心不全のサインのことがあり、放置すると栄養障害から悪循環に入ります。

8. 易疲労感・活動量の低下

「なんとなくだるい」「動くのがおっくう」「身の回りのことが面倒になった」など、漠然とした訴えが増悪初期のサインのことがあります。会話量・笑顔・テレビへの集中力など、機能面の変化も観察ポイントです。

9. めまい・ふらつき・脈の異常

立ち上がる時のふらつき、安静時の動悸、脈拍が120回/分以上の頻脈、極端な徐脈は、不整脈・脱水・薬剤調整不全のサイン。利尿薬で電解質(ナトリウム・カリウム)バランスが崩れている可能性もあります。

10. せん妄・意識の変化

急に話が噛み合わなくなる、夜中に騒ぐ、ぼんやりして反応が鈍い——高齢者では心不全悪化や薬剤副作用が意識・認知症状の変化として現れることがあります。「いつもの認知症の進行」と片付けず、循環器の悪化を疑う視点を持ってください。

心不全手帳の「ポイント制」受診基準

京都府立医科大学を中心に普及している『心不全手帳』では、上記サインを点数化して受診タイミングを明確化しています(参考:京都府立医科大学版心不全手帳)。

  • 目標体重の5%増 … 3点
  • 安静時息切れ … 3点
  • 動作時息切れ … 1点/むくみ … 1点/脈拍120以上 … 1点
  • 合計3点 → 1週間以内にかかりつけ医を受診
  • 合計4〜5点 → 翌日の外来を受診
  • 合計6〜9点 → 今すぐかかりつけ医に受診
  • 苦しくて冷や汗/横になると息苦しくて起き上がる/気を失いそう → 救急車を呼ぶ

家族が一覧表として冷蔵庫に貼っておくと、受診すべきか迷うときの判断基準として機能します。

体重管理|毎朝同じ条件で測り、グラフ化する

心不全管理の「家計簿」にあたるのが、毎日の体重測定です。日本心不全学会の心不全手帳でも体重管理は最重要項目とされ、増悪サインを最も早く客観的に捉えられる指標です。

正しい測定の4条件

体重は時間や状態で1〜2kg簡単に変動するため、毎日同じ条件で測ることが鉄則です(参考:心不全のいろは)。

  • 起床直後(1時間以内)
  • 排尿後(朝のトイレを済ませた後)
  • 朝食前・服薬前
  • 下着姿または同じ寝間着(毎回同じ服装)

体重計はデジタル式で50g単位まで測れるものが望ましく、お風呂場ではなく毎日同じ床で計測します。

「目標体重」を主治医に確認する

退院時や外来診療で、主治医から「あなたの目標体重は◯kg」と提示されます。これは利尿薬が効いて余分な水分が抜けた状態の体重で、心不全手帳には「目標体重±◯kg」として記録欄が用意されています。家族もこの数字を共有しておきましょう。

主治医連絡の目安

日本心不全学会・京都府立医科大学版心不全手帳および日本心臓リハビリテーション学会の標準プログラムを総合すると、以下が一般的な連絡基準です。

  • 3日間で2kg以上の体重増加 → 直ちに対応(主治医連絡)
  • 7日間で2kg以上の体重増加 → 監視強化(受診を相談)
  • 目標体重の5%増 → 心不全ポイント3点 → 1週間以内に受診

50kgの方であれば2.5kgが5%。「2kg増えた」程度では本人は気にしないことが多いので、家族が客観的に数字で判断する役割を担います。

記録のコツ

紙の体重表でもアプリでも構いませんが、折れ線グラフで可視化すると変化に気づきやすくなります。記録項目の例:

  • 体重(kg)
  • 血圧(朝・夜の2回、上腕式血圧計)
  • 脈拍(手首で15秒測って4倍)
  • むくみの有無(あり/なし)
  • 息切れ・咳の有無
  • 食事量(普通/少なめ)
  • その日の出来事(外出、入浴など)

受診時にこの記録を主治医に見せると、薬剤調整の精度が大きく上がります。日本心不全学会の『心不全手帳(第3版)』はPDFが公開されており、印刷して使えます。

塩分制限|1日6g未満を実現する具体的な工夫

塩分の過剰摂取は、心不全増悪のもっとも頻度の高い原因の一つです。塩分(ナトリウム)には水を体内に保持する性質があり、塩を摂りすぎると血液量が増えて心臓に負担がかかります。

目標値

日本循環器学会『急性・慢性心不全診療ガイドライン』および国立循環器病研究センターは、1日6g未満を心不全患者の目安としています。日本心臓財団のガイドでは「軽症は7g以下、重症は3g以下」とも示されますが、いずれにせよ日本人成人男性の平均塩分摂取量(約10.7g/日、令和元年国民健康・栄養調査)と比べて、かなり踏み込んだ減塩が必要です。

厳しすぎる減塩は逆効果

注意したいのは、日本心不全学会の『心不全手帳』が明記する通り、過度の塩分制限は食欲不振を招き、食事量低下→栄養失調→筋力低下→フレイル悪化につながる危険がある点です。高齢者では「塩分6g」より「食べられる量を確保しながら塩分7〜8g」の方が結果的に予後が良いこともあり、主治医・管理栄養士と相談しながら現実的な落としどころを探りましょう。

家庭でできる減塩の工夫

  • 味噌汁は1日1杯まで、具沢山にして汁を減らす
  • 漬物・佃煮・梅干しを控える(梅干し1個で約2g)
  • 麺類の汁は飲み干さない(ラーメン1杯で6g超)
  • 減塩しょうゆ・減塩味噌を活用(通常の半分の塩分)
  • 酸味・香辛料・出汁・香味野菜で味を補う(レモン、酢、生姜、しそ、こしょう、カレー粉、削り節)
  • 表面に味付けする(煮物に味をしみ込ませず、後がけ)
  • 加工食品・惣菜・コンビニ食品の栄養成分表示を必ず確認(食塩相当量=ナトリウム×2.54÷1000)

隠れ塩分に注意

意外と塩分が多いのは、パン(食パン1枚で0.7g)、かまぼこ・ちくわ(1切れで0.5g)、ハム・ベーコン、塩鮭(1切れで2g超)、即席めん、冷凍食品、市販の惣菜です。一見薄味でも塩分は高いことがあります。栄養成分表示を見る習慣をつけましょう。

外食・配食サービスの活用

家族が毎日減塩食を作るのは大きな負担です。介護食宅配サービス(ワタミの宅食ダイレクトの塩分制限食、ニチレイフーズダイレクト気くばり御膳など)を活用すれば、1食2.0g以下の食事が手に入ります。介護保険外サービスですが、配食サービスを利用する自治体補助制度がある地域もあるため、地域包括支援センターに相談しましょう。

水分管理|「とにかく1.5L」ではなく、主治医の指示が絶対

水分管理は塩分以上に個別性が高く、「心不全だから水を制限する」と一律に決めつけるのは危険です。日本循環器学会『急性・慢性心不全診療ガイドライン』は、軽症の慢性心不全では水分制限は不要だが、口渇による過剰摂取に注意するよう求めています。

水分管理が必要なケース/不要なケース

水分制限が指示されることが多いのは:

  • 低ナトリウム血症(血液中ナトリウム濃度が低下している)
  • 利尿薬の効きが悪く体重コントロールが難しい
  • 重症心不全(NYHA III〜IV度)

主治医から指示があった場合は、「1日◯mLまで」と具体的に確認します。1.5L目安と言われることが多いものの、500mL〜2,000mLまで個人差があります。

「水分」に含めるものとは

水・お茶だけでなく、味噌汁・スープ・牛乳・コーヒー・ジュース・かき氷・アイスクリーム・果物の水分もカウントします。汁物を含めて計算すると、知らないうちにオーバーしがちです。

過度な水分制限は脱水・腎機能悪化を招く

夏場や発熱時に「制限されているから」と頑なに水を控えると、脱水→腎機能悪化→利尿薬がさらに効かない→心不全悪化の悪循環に入ります。体重・尿量・口の渇き・血圧低下・ふらつきを観察し、異常時は主治医に相談して水分量を調整してもらいます。自己判断で大きく増減しないことが原則です。

利尿薬と水分の関係

利尿薬(フロセミドなど)は体内の余分な水分を尿として排出させる薬です。「夜中のトイレが嫌だから」と利尿薬を自己中断するのは絶対にやめてください。飲み忘れが続くと数日で心不全が悪化し、再入院につながります。夜間頻尿が辛い場合は、服用時刻を朝にずらせないか主治医に相談してください。

服薬管理|「fantastic four」を絶対に自己中断させない

慢性心不全の薬物治療は、近年大きく進歩しました。国立循環器病研究センターは、内服を必ず継続すること・食生活に気をつけること・自己管理を行うことの3つを心不全管理の柱に挙げており、中でも内服中断は心不全悪化の最多原因です。

心不全治療薬の主要4種「fantastic four」

左室駆出率の低下した心不全(HFrEF)では、世界的に以下の4種類の併用が標準治療とされ、「ファンタスティック・フォー」と呼ばれます。

  • ACE阻害薬/ARB/ARNI(サクビトリルバルサルタン):レニン・アンジオテンシン系を抑え、心臓の負担を減らす
  • β遮断薬:交感神経を抑えて心拍数を下げ、心臓を休ませる
  • MRA(ミネラルコルチコイド受容体拮抗薬/スピロノラクトンなど):心臓の線維化を抑える
  • SGLT2阻害薬(ダパグリフロジン・エンパグリフロジン):もとは糖尿病薬だが、心不全の入院・死亡を減らすことが証明され、HFrEF・HFpEF両方で標準治療入り

これらに加えて、利尿薬(フロセミド、トルバプタンなど)で症状改善、抗凝固薬(DOACなど)で心房細動に伴う脳梗塞を予防します。

家族が知っておきたい服薬の鉄則

  1. 「調子が良いから」で自己中断させない:心機能改善薬を中止すると、せっかく良くなった心臓の動きが短期間で元通り悪化する研究があります(国立循環器病研究センター)。
  2. 体調が悪い時こそ主治医に相談:ふらつき・低血圧・徐脈などの副作用が出たら、勝手に減量せず必ず主治医へ連絡。
  3. お薬手帳を一元管理:複数の医療機関にかかる場合、すべての薬を一冊のお薬手帳にまとめ、すべての医師・薬剤師に見せる(ポリファーマシー予防)。
  4. 残薬を毎月確認:飲み残しがある場合は、飲み忘れか副作用回避かを把握し、次回受診で薬剤師・主治医に相談。
  5. 服薬カレンダー・一包化を活用:薬局で一包化を依頼すれば朝・昼・夕の薬を1袋にまとめてもらえます。認知症が進んだ場合は訪問薬剤管理指導(月最大4回、介護保険併用可)も検討。

気をつけたい副作用

  • ACE阻害薬:空咳(からせき)、まれに血管浮腫
  • β遮断薬:徐脈、めまい、低血糖症状の隠蔽(糖尿病患者)
  • 利尿薬:脱水、低カリウム血症(脱力・不整脈)
  • SGLT2阻害薬:尿路・性器感染症、脱水、まれにケトアシドーシス
  • 抗凝固薬:出血傾向(歯科治療・手術前は主治医に必ず相談)

入浴・運動の注意点|ヒートショックと心臓リハビリ

入浴は心不全患者にとって、心臓への負担とリラックス効果が紙一重の生活動作です。日本心臓財団・日本心不全学会の心不全手帳に沿って、家族が見守るポイントを整理します。

入浴前のチェック(一つでも該当したら入浴を見合わせる)

  • 胸が苦しい・息切れがいつもより強いなど自覚症状がある
  • 顔色不良・むくみがいつもより強い
  • 3日間で約2kgの体重増加がある
  • 安静時心拍数がいつもより多い

心臓に優しい入浴の手順

  • 脱衣所・浴室を温める(冬場は特に重要):脱衣所と浴室の温度差はヒートショックを引き起こし、急激な血圧変動で心筋梗塞・脳卒中の引き金になる
  • かけ湯から始める:急な温度変化を予防
  • 湯温は40℃以下:42℃以上は交感神経を活性化させ血圧上昇
  • 湯位は胸まで・半身浴:肩までの全身浴は心臓への水圧負荷が大きい
  • 10分以内:長湯は発汗による脱水・血液凝固亢進を招く
  • 洗髪は前傾姿勢を避ける:頭を保持する等尺性負荷で血圧上昇。シャンプーハットや座位用シャワーチェアを活用
  • 浴槽から出る時はゆっくり:副交感神経優位+立位への移行で血圧低下しやすい
  • 入浴後の水分補給を忘れずに(脱水予防)

入浴前後で血圧が20mmHg以上上昇、または10mmHg以上低下、頻脈が出る場合は心負荷が過剰の可能性があります。入浴を分割する(体洗いと洗髪を別日にする)、訪問入浴サービス(介護保険)の利用も検討しましょう。

運動・心臓リハビリテーション

「心不全だから安静」は古い考え方です。日本循環器学会『心血管疾患におけるリハビリテーションに関するガイドライン』では、適切な強度の運動療法が心不全患者の予後を改善し、再入院を減らすことが示されています。

家庭でできる運動の目安:

  • 「ややきつい」と感じる手前まで(自覚的運動強度11〜13)
  • 歩行を1日合計20〜30分から始める
  • 1日2kgの体重増加・息切れ悪化・胸痛がある日は中止
  • 転倒予防のため、家の中の段差・敷物・コードを整理

訪問リハビリの活用

介護保険の訪問リハビリテーションまたは外来心臓リハビリを利用すると、理学療法士が状態に合わせた運動指導をしてくれます。特に退院直後やADL低下時に有効で、心臓リハビリ実施病院は日本心臓リハビリテーション学会のサイトで検索できます。

緊急対応|「迷ったら主治医・即119」の判断軸

家族にとって最も悩むのが「これは様子見か、夜間でも受診か、救急車か」の判断です。日本心不全学会『心不全手帳』と訪問看護の実務ガイドを参考に、3つのレベルで整理します。

レベル1:翌日までに主治医・かかりつけ医に連絡

  • 3〜7日で2kg以上の体重増加
  • むくみが新たに出た/いつもより強い
  • 同じ動作で息切れがやや強くなった
  • 夜間頻尿が増えた/尿量が減った
  • 食欲が落ちて2〜3日経つ
  • 軽い動悸・ふらつき

主治医に電話する時は、「いつから・何が・どのくらい変化したか」を簡潔に伝えます。心不全手帳の記録を手元に置いて電話すると正確に伝えられます。

レベル2:時間外でも病院・在宅医に電話

  • 横になると苦しくて起き上がる(起座呼吸)
  • 夜中に急に息苦しくなって目覚める
  • ピンク色の泡状の痰が出る
  • 顔色が悪く、唇や指先が青紫色(チアノーゼ)
  • 強い倦怠感で動けない
  • 体重が3日で3kg以上増加
  • 普段と明らかに違うせん妄・意識朦朧

かかりつけ医・在宅医の時間外連絡先を冷蔵庫に貼っておくこと。訪問看護を利用していれば24時間対応のステーションが多く、まず相談できます。

レベル3:迷わず救急要請(119)

  • 安静時に強い呼吸困難・冷や汗
  • 胸が締め付けられる・激しい胸痛(心筋梗塞の可能性)
  • 意識を失った/意識が朦朧として呼びかけに反応しない
  • 急に話せなくなった・顔がゆがむ・手が上がらない(脳卒中の可能性)
  • 会話困難なほどの息苦しさ

救急車を呼ぶ判断に迷ったら、救急安心センター事業「#7119」(実施地域)に電話すると、看護師・医師が緊急度を判断してくれます。

家族側の準備

緊急時に慌てないために、平時から以下を用意しておきます:

  • お薬手帳(最新版を玄関や枕元に)
  • かかりつけ医・主治医・訪問看護の連絡先一覧
  • 診察券・保険証・介護保険証・身体障害者手帳のコピー
  • 救急隊員に渡す「救急医療情報キット」(自治体配布のことあり、冷蔵庫保管が標準)
  • 本人の意思(延命治療の希望など、ACPの記録)

在宅医療・訪問看護・訪問リハビリを使い倒す

高齢心不全患者の在宅療養は、家族だけで抱え込まないことが鉄則です。厚生労働省研究班『地域のかかりつけ医と多職種のための心不全診療ガイドブック』も、多職種チームによる包括的ケアを推奨しています。心不全患者が利用できる主な在宅医療・介護サービスを整理します。

訪問診療(在宅医)

外来通院が困難になった場合、定期的に医師が自宅を訪問して診察・薬剤調整を行うサービス。月2回程度の定期訪問に加え、24時間対応の在宅医に切り替えると、夜間の急変時にも電話相談・往診が可能になります。心不全に強い在宅医(循環器内科出身、心不全認定医)を選ぶと、薬剤調整や酸素療法(HOT)にも対応できます。

訪問看護

看護師が週1〜3回訪問し、体重・血圧・脈拍・SpO2(酸素飽和度)・むくみ・呼吸状態を測定し、増悪兆候を早期発見。服薬支援、家族指導、主治医との連絡調整を行います。24時間対応の訪問看護ステーションを選ぶと、夜間の電話相談・緊急訪問が可能。介護保険または医療保険のいずれかで利用でき、心不全は「特掲診療料の施設基準等別表第七」には該当しないため通常は介護保険優先ですが、急性増悪時の「特別訪問看護指示書」が出れば医療保険で頻回訪問可能です。

訪問リハビリテーション

理学療法士・作業療法士が訪問し、運動指導・ADL訓練・住環境調整を実施。退院直後や入院後の体力低下時に有効です。介護保険で週1〜2回程度利用。

訪問薬剤管理指導

薬剤師が自宅を訪問し、服薬状況の確認・一包化・残薬整理・副作用モニタリングを行うサービス。ポリファーマシー対策に有効。月最大4回、医療保険・介護保険で利用可。

訪問入浴

介護スタッフ3名(看護師1名含む)が専用の浴槽を持参して入浴介助。心不全の中等症〜重症で自宅入浴が危険な方に有効。介護保険で要介護1以上から利用可。

居宅療養管理指導・在宅酸素療法(HOT)

重症心不全で安静時にも息切れがある場合、在宅酸素療法(HOT)が導入されることがあります。酸素濃縮器が自宅に設置され、鼻カニュラで酸素を吸入。日常生活が大きく楽になります。

サービス調整は地域包括支援センター・ケアマネジャーへ

これらのサービスは個別に申し込むのではなく、まず地域包括支援センター(おおむね中学校区に1か所、無料)に相談し、要介護認定を申請。担当ケアマネジャーがケアプランを作成して必要サービスを組み立てます。退院前カンファレンスに参加してもらうと、退院直後からスムーズに開始できます。

介護保険・身体障害者手帳・障害年金|申請忘れの多い制度

心不全患者は、医療費・介護費が長期に渡って家計を圧迫します。利用できる公的制度を把握し、申請漏れを防ぎましょう。

介護保険

65歳以上はすべて第1号被保険者として、要介護認定を申請できます。心不全で外出・入浴・家事に支援が必要なら、まず市区町村の介護保険窓口または地域包括支援センターに相談。認定区分(要支援1〜2、要介護1〜5)に応じて、訪問介護・訪問看護・デイサービス・福祉用具レンタル・住宅改修などが1〜3割負担で使えます。心不全は40〜64歳の第2号被保険者でも「初老期における認知症・脳血管疾患等」に該当する場合がありますが、心不全単独では原則対象外のため、64歳までは医療保険ベースの対応になります。

身体障害者手帳(心臓機能障害)

心不全の重症度によっては、身体障害者手帳(心臓機能障害)が交付されます。等級は1級・3級・4級(2級なし)で、認定基準は以下の通り:

  • 1級:心臓の機能障害により自己の身辺の日常生活活動が極度に制限されるもの(安静時に心不全症状あり、ペースメーカー植込みで日常生活活動が極度に制限など)
  • 3級:家庭内での日常生活活動が著しく制限されるもの(家庭内では支障ないが、それ以上で心不全症状)
  • 4級:社会での日常生活活動が著しく制限されるもの

手帳取得のメリットは大きく、医療費助成(自治体により無料・低額)、税金控除(所得税・住民税・自動車税)、公共交通機関の運賃割引、NHK受信料減免、各種福祉サービス利用などが受けられます。心不全と診断されたら、主治医に「身体障害者手帳の対象になりますか」と必ず確認しましょう。

障害年金

65歳未満で初診日があり、初診から1年6か月経過時点で重症心不全(NYHA III度以上)であれば、障害年金の対象になることがあります。ペースメーカー・ICD・人工弁を装着している場合は原則3級、安静時にも症状があれば1〜2級。国民年金加入者は1〜2級、厚生年金加入者は1〜3級まで対象。

申請には初診日の確定・年金納付状況・診断書が必要で、書類審査が複雑なため、社会保険労務士に相談すると通りやすくなります。

高額療養費制度・特定疾病療養受療証

心不全の入院・カテーテル治療・心臓手術は高額になりますが、高額療養費制度により所得に応じて自己負担上限が決まります(70歳未満の標準所得層で月8万円程度)。入院前に「限度額適用認定証」を健康保険組合に申請しておけば、窓口での自己負担を上限額までに抑えられます。

ACP(人生会議)と看取りの場所|「もしも」を元気なうちに話す

心不全はがんと比べて軌道予測が難しく、「良くなったり悪くなったりを繰り返しながら、ある時急に悪化して亡くなる」パターンが多い病気です。日本循環器学会・日本心不全学会も、心不全患者へのACP(アドバンス・ケア・プランニング、人生会議)の早期導入を推奨しています。

ACP(人生会議)とは

ACPは、本人の価値観・人生観・希望に基づいて、将来の医療・ケアの方針を本人・家族・医療チームで繰り返し話し合うプロセスです。厚生労働省も「人生の最終段階における医療・ケアの決定プロセスに関するガイドライン」でACPを推奨しており、11月30日を「人生会議の日」としています。

心不全で話し合っておきたい論点

  • 急変時の救急要請をどうするか:救急搬送→集中治療→挿管・人工呼吸器の流れに進むか、自宅・施設での看取りを優先するか
  • 心肺停止時の蘇生処置(CPR・DNAR):胸骨圧迫・電気ショックを希望するか
  • 補助循環装置・心臓移植:重症化時にどこまで侵襲的治療を望むか
  • 胃ろう・経管栄養:食事が摂れなくなった時に人工的水分・栄養補給法(AHN)を行うか
  • 看取りの場所:自宅、緩和ケア病棟、療養病床、介護施設のどこを希望するか
  • 葬儀・お墓・家族への伝言

話し合いのコツ

  • 体調が安定している時に始める:急変してからでは本人の意思確認が困難
  • 一度で決めない:年に1〜2回、状況の変化に応じて見直す
  • 家族間で共有する:きょうだい間で意見が割れると、急変時にトラブルになる
  • 主治医・訪問看護師に同席してもらう:医学的見通しを聞きながら話し合える
  • 記録に残す:「事前指示書」「リビングウィル」として書面化(自治体によっては配布あり)

在宅看取りという選択肢

「最後は家で過ごしたい」という希望があれば、在宅緩和ケアを提供する在宅医・訪問看護師チームと連携することで、自宅での看取りが可能です。心不全の在宅看取りは、痛み・呼吸困難への対症療法(モルヒネ少量投与、酸素、利尿薬の調整)が中心になります。死亡診断は在宅医が訪問して行い、救急要請の必要はありません。

家族にとって心の準備は容易ではありませんが、「いつか必ず来る最期」を意識しておくことで、いざという時の混乱を減らせます。

よくある質問(FAQ)

Q. 親が「もう薬は飲みたくない」と言います。どう対応すればいいですか?

A. 自己中断は心不全悪化の最多原因です(国立循環器病研究センター)。まず本人の不満(飲み込みにくい、量が多い、副作用が出る、効果を実感しない等)を具体的に聞き、主治医・薬剤師に相談してください。一包化、剤型変更(粉砕・OD錠)、服用回数の見直し、副作用への対処などで継続できることが多いです。「飲まなくていいよ」と家族判断で中止するのは絶対に避けてください。

Q. 体重が2kg増えましたが、便秘で出ていないだけかもしれません。受診すべき?

A. 便秘での体重増加は通常500g〜1kg程度。2kg以上の急増は水分貯留の可能性が高いです。むくみ・息切れ・夜間頻尿の悪化が同時にあるかを確認し、いずれかあれば主治医に連絡を。便秘の自覚があるなら下剤や水分の調整も同時に主治医に相談してください。

Q. 認知症の親が水分・塩分管理を理解できません。家族はどこまで管理すべき?

A. 厳密な数値管理を求めるより、環境を整えるアプローチが現実的です。冷蔵庫を見直して塩分の少ない常備菜に置き換える、ペットボトルを置く位置で1日の上限を視覚化する、配食サービスを導入する、訪問介護で食事準備を任せるなど。本人を責めるとケア拒否につながるので、「忘れる前提」で仕組みを作りましょう。

Q. 父が入院から退院しました。再入院しないために最も大事なことは?

A. 退院後30日が最大の再入院リスク期間です。退院直後から訪問看護を週2〜3回入れる、退院時の処方をお薬カレンダーで一包化、毎日の体重・血圧記録を開始、退院前カンファレンスでケアマネとサービスを確定、目標体重を主治医に確認、症状チェック表を冷蔵庫に貼る——この5点が再入院予防の鉄則です。

Q. 心不全と診断されたら、お酒・タバコは絶対やめないとダメ?

A. タバコは禁煙が絶対条件(日本心臓財団)。受動喫煙も避けるため、家族の喫煙も配慮が必要です。アルコールは「アルコール性心筋症」が疑われる場合は禁酒必須、それ以外でも純アルコール20g(ビール500mL/日本酒1合)以下に制限。お酒のつまみは塩分過多になりやすく、利尿作用で脱水を招くため、入浴前後・運動前後・就寝前の飲酒は厳禁です。

Q. 親が一人暮らしです。在宅で支えることは可能ですか?

A. 可能ですが、24時間対応の訪問看護・在宅医・配食サービス・見守りサービスの組み合わせが必須です。週3回以上の訪問看護で体重・症状を確認、緊急通報装置(自治体貸与または民間サービス)、地域包括支援センター経由でケアプラン構築。遠距離介護なら、テレビ電話・体重計連動アプリで体重を共有する仕組みも有効です。重症化したら同居・施設入居の判断も。

Q. 心臓リハビリは必要ですか?体に負担になりませんか?

A. 適切な強度の運動は心不全の予後を改善し、再入院を減らすことが日本循環器学会ガイドラインで示されています(『心血管疾患におけるリハビリテーションに関するガイドライン2021年改訂版』)。心臓リハビリ実施施設の専門医・理学療法士が運動処方を作成し、心電図モニターで監視しながら開始するので安全。退院後は外来心リハ→訪問リハ→自宅運動の流れがおすすめです。

参考文献・出典

まとめ|「観察する家族」が在宅心不全ケアの最大の武器

高齢の親が心不全と診断されたとき、ご家族が圧倒される最大の理由は、「治らない病気と一緒に何年も暮らす」という長期戦の構図にあります。しかしこの記事で見てきた通り、心不全は毎日の体重・症状の観察、塩分制限、服薬継続、入浴・運動の工夫、訪問医療チームとの連携といった一つ一つの積み重ねで、入院を防ぎ、自宅で穏やかに過ごせる時間を確実に延ばせる病気です。

覚えておいていただきたい在宅心不全ケアの5原則:

  1. 毎朝同じ条件で体重を測り、グラフ化する。3日で2kg/7日で2kg増、目標体重の5%増は主治医連絡のサイン
  2. 10の増悪サインを冷蔵庫に貼り、心不全手帳のポイント制で受診タイミングを判断する
  3. 塩分1日6g未満を目指すが、食べられる量を確保することも同じくらい大切。フレイル悪化を防ぐ
  4. 「ファンタスティック・フォー」など処方された薬は絶対に自己中断させない。副作用は主治医に必ず相談
  5. 訪問看護・訪問リハ・在宅医・地域包括支援センターを早期に巻き込み、家族だけで抱え込まない

そして、安静時の強い呼吸困難・激しい胸痛・意識消失があれば、迷わず119(救急要請)。判断に迷う症状は#7119(救急安心センター)へ。

同時に、心不全は「予測不能な急変」と「年単位の慢性経過」が同居する病気だからこそ、ACP(人生会議)を体調が安定している時期から始めておくことが、本人にとっても家族にとっても大きな安心になります。

身体障害者手帳(心臓機能障害)・障害年金・介護保険・高額療養費制度など、利用できる公的支援は意外と多く、申請漏れを防ぐだけで家計負担と介護負担が大きく軽減されます。「主治医に聞く」「地域包括支援センターに聞く」「ケアマネに聞く」を躊躇しないでください。

あなたが今日からできる小さな一歩は、体重計を玄関近くの目に入る場所に置き、お薬手帳と心不全手帳を冷蔵庫に貼ることです。明日の朝、親と一緒に体重を測ることから、家族で支える心不全ケアが始まります。

執筆者

介護のハタラクナカマ編集部

編集部

介護保険、施設選び、在宅介護など、介護を受ける方・ご家族が判断に迷いやすいテーマを、公的情報と実務上の確認ポイントに沿って解説しています。

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