
高血圧とは
高血圧は収縮期140mmHg以上または拡張期90mmHg以上が続く状態。高齢者の血圧管理目標、降圧薬の種類と注意点、減塩食・服薬管理を看護師視点で解説。
この記事のポイント
高血圧(こうけつあつ)とは、診察室血圧で収縮期血圧140mmHg以上または拡張期血圧90mmHg以上が持続する状態です。日本人の3人に1人が該当する生活習慣病で、脳卒中・心筋梗塞・心不全・腎不全の最大の危険因子。介護現場では降圧薬の服薬管理、減塩食、毎日の血圧測定が中心テーマになります。
目次
高血圧の定義と日本人の有病率
高血圧(hypertension)は、安静時の血圧が慢性的に高い状態を指す疾患です。日本高血圧学会「高血圧治療ガイドライン2019(JSH2019)」では、診察室血圧で収縮期140mmHg以上または拡張期90mmHg以上を高血圧と定義しています。家庭血圧では135/85mmHg以上が基準になります。
厚生労働省「2019年国民健康・栄養調査」によれば、収縮期140mmHg以上の高血圧有病者は男性29.9%、女性24.9%。65歳以上の高齢者では男性64.5%、女性58.6%と過半数が該当する非常に頻度の高い疾患です。日本全体では約4,300万人と推計され、生活習慣病の中で最大の患者集団を形成しています。
高血圧は通常自覚症状がなく「サイレントキラー」と呼ばれます。長期間放置すると動脈硬化が進み、脳卒中・心筋梗塞・心不全・慢性腎臓病・血管性認知症の発症リスクが大幅に上昇します。介護現場で関わる多くの利用者が、この高血圧を背景に何らかの心血管疾患を発症している、という構造を理解しておくことが重要です。
高血圧の分類と原因
高血圧は原因によって2つに分類されます。介護現場で関わる高齢者は、ほとんどが本態性高血圧です。
- 本態性高血圧(約90%):明確な原因疾患がなく、遺伝的素因に塩分過剰・肥満・運動不足・飲酒・喫煙・ストレスなどの生活習慣が組み合わさって発症するタイプ。日本人は塩分感受性が高く、塩分摂取量が多いことが大きな要因です。
- 二次性高血圧(約10%):腎血管性高血圧・原発性アルドステロン症・睡眠時無呼吸症候群・甲状腺機能異常・薬剤性(NSAIDs・ステロイド・甘草等)など、原因疾患・薬剤がある高血圧。原因治療で改善する可能性があります。
高齢者高血圧の特徴
- 収縮期高血圧優位:動脈硬化の進行で収縮期だけが高く、拡張期は正常〜低めになる「収縮期高血圧」が多い
- 血圧変動が大きい:起立性低血圧、食後低血圧、早朝高血圧、夜間血圧上昇など、1日のなかで変動が激しい
- 白衣高血圧・仮面高血圧:診察室と家庭で血圧が大きく異なるケースが増える。家庭血圧測定の重要性が高い
- 複数疾患併存:糖尿病・脂質異常症・慢性腎臓病・心房細動などとの合併が多く、薬剤調整が複雑になる
年齢別の血圧管理目標値(JSH2019)
日本高血圧学会「高血圧治療ガイドライン2019」では、年齢・併存疾患別に降圧目標が設定されています。介護現場で関わる高齢者は次の表が目安です。
| 対象 | 診察室血圧目標 | 家庭血圧目標 |
|---|---|---|
| 75歳未満の成人 | 130/80mmHg未満 | 125/75mmHg未満 |
| 75歳以上の高齢者 | 140/90mmHg未満 | 135/85mmHg未満 |
| 糖尿病合併 | 130/80mmHg未満 | 125/75mmHg未満 |
| 慢性腎臓病(CKD・蛋白尿あり) | 130/80mmHg未満 | 125/75mmHg未満 |
| 脳血管障害既往 | 130/80mmHg未満 | 125/75mmHg未満 |
| 冠動脈疾患既往 | 130/80mmHg未満 | 125/75mmHg未満 |
注意点: 高齢者では一律の厳格降圧でなく、起立性低血圧・転倒・認知機能低下リスクを評価しながら段階的に下げる「忍容性を確認しながら降圧」が原則です。フレイル・認知症・要介護4〜5の利用者では、医師判断で目標を緩める場合もあります。
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介護現場での血圧管理と服薬支援
1. 家庭血圧測定の習慣化
JSH2019では、診察室血圧より家庭血圧を重視します。朝(起床後1時間以内・排尿後・朝食前・服薬前)と夜(就寝前)の2回、各2回測定して平均を記録します。バイタルサインの一部として記録用紙やアプリで管理し、外来受診時に医師へ提示します。
2. 主な降圧薬と注意点
- カルシウム拮抗薬(アムロジピン等):第一選択。ふくらはぎの浮腫・歯肉肥厚に注意。グレープフルーツジュースは併用禁忌
- ARB/ACE阻害薬:腎保護効果。空咳(ACE)、高カリウム血症に注意
- サイアザイド系利尿薬:低K血症・脱水・尿酸上昇に注意。夏季は脱水リスク要観察
- β遮断薬:徐脈・倦怠感・気管支喘息悪化に注意。自己中断で反跳性高血圧
3. 減塩食のポイント
日本高血圧学会推奨の食塩摂取量は1日6g未満。日本人平均(10g前後)の半分強です。介護施設では栄養士と連携し、減塩しょうゆ・酢・香辛料・出汁の活用、加工食品の選択基準(食塩相当量2g未満を目安)を共有します。低栄養を招かないバランスが重要です。
4. 起立性低血圧と食後低血圧
降圧薬服用中の高齢者は、立ち上がり時や食後30〜60分にめまい・ふらつき・失神が起きやすくなります。立ち上がりはゆっくり・段階的に、食後30分は安静をすすめます。転倒は脳出血の引き金にもなるため、観察と環境整備を徹底します。
よくある質問
Q1. 介護現場で血圧が高い利用者を発見したらどう対応する?
まずは安静にして5分後に再測定し、複数回の値を確認します。収縮期180mmHg以上または拡張期110mmHg以上、もしくは普段より20mmHg以上高い場合は看護師・医師へ報告。頭痛・嘔吐・麻痺・意識障害を伴う場合は脳卒中の可能性があり、即119番です。
Q2. 降圧薬を飲んだら食事制限は不要ですか?
不要にはなりません。減塩・体重管理・運動は薬と並行して継続することで降圧効果が高まり、薬の用量を減らせる可能性があります。「薬さえ飲めばOK」という認識を本人・家族に持たせないコミュニケーションが重要です。
Q3. 自己判断で降圧薬を中断するとどうなりますか?
反跳性高血圧(リバウンド)で、急激に血圧が上昇し脳出血・心筋梗塞のリスクが高まります。特にβ遮断薬・α2作動薬(クロニジン)は突然中止すると危険です。服薬管理では「自己判断で止めない」を本人・家族に繰り返し伝えます。
Q4. 高齢者の血圧は下げすぎても良くないと聞きますが?
はい。下げすぎは脳血流低下による失神・転倒・認知機能低下を招きます。フレイル高齢者では収縮期120mmHg未満は推奨されず、医師と相談しながら個別目標を設定します。「低いほど良い」ではない点に注意です。
Q5. 寒い日に血圧が上がるのはなぜ?
寒冷刺激で末梢血管が収縮し、末梢血管抵抗が上昇するためです。冬季の浴室・トイレでの「ヒートショック」は脳出血・心筋梗塞の引き金になります。脱衣所と浴室の温度差を5℃以内に保つ、ぬるめの湯(41℃以下)に浸かるなどの対策が有効です。
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まとめ
高血圧は日本人高齢者の過半数が該当する生活習慣病で、脳卒中・心不全・腎不全のリスクを大幅に高めます。介護現場では家庭血圧測定の習慣化、降圧薬の服薬支援、減塩食、起立性低血圧の観察が中心テーマです。「下げれば良い」ではなく、利用者ごとに個別の管理目標を設定し、医療職と連携して持続可能な血圧コントロールを支援することが看護師・介護職の役割になります。
執筆者
介護のハタラクナカマ編集部
編集部
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