
脳卒中とは
脳卒中は脳の血管が詰まる・破れることで起こる疾患の総称。脳梗塞・脳出血・くも膜下出血の違い、後遺症、介護現場での観察ポイントを看護師視点で解説。
この記事のポイント
脳卒中(のうそっちゅう)とは、脳の血管が詰まる、または破れることで脳細胞が障害を受ける疾患の総称です。脳梗塞・脳出血・くも膜下出血の3つに大別され、要介護になる原因疾患として認知症と並び上位を占めます。発症後の後遺症(片麻痺・嚥下障害・高次脳機能障害)への介護対応が現場で重要になります。
目次
脳卒中の定義と3つのタイプ
脳卒中(stroke)は、脳の血管に異常が起こり、脳細胞へ酸素と栄養を運ぶ血流が途絶えることで急性の神経症状を呈する疾患群です。日本脳卒中学会の「脳卒中治療ガイドライン2021(改訂2023)」では、虚血性(血管が詰まる)と出血性(血管が破れる)に分類されます。
1. 脳梗塞:脳の動脈が血栓や塞栓で詰まり、血流が途絶える虚血性脳卒中。脳卒中全体の約75%を占め、最多のタイプです。さらにラクナ梗塞・アテローム血栓性脳梗塞・心原性脳塞栓症の3病型に分けられます。
2. 脳出血:脳実質内の細い血管が破れて出血するタイプ。脳卒中の約18%。高血圧が最大の原因で、加齢で動脈硬化が進んだ高齢者に多発します。被殻・視床・小脳・脳幹など出血部位によって症状と予後が異なります。
3. くも膜下出血:脳表面のくも膜と軟膜の間にある血管(多くは脳動脈瘤)が破裂して出血するタイプ。脳卒中の約7%。「バットで殴られたような突然の激しい頭痛」が典型症状で、発症直後の死亡率が高い緊急疾患です。
厚生労働省「令和4年(2022)国民生活基礎調査」では、要介護(要支援を除く)になった原因の第1位は認知症(23.6%)、第2位が脳血管疾患(19.0%)で、脳卒中が引き起こす要介護状態は介護現場の主要テーマの一つです。
FAST:脳卒中を疑うサイン(介護現場での観察ポイント)
日本脳卒中協会と国立循環器病研究センターが推奨する「FAST」は、脳卒中の早期発見に有効な簡易スクリーニングです。介護施設・在宅で利用者の異変に気付いた介護職・看護師が、救急要請の判断に使えます。
- F(Face)顔の麻痺:にっこり笑ってもらい、片方の口角だけ下がる/表情が左右非対称になる
- A(Arm)腕の麻痺:両腕を前にまっすぐ上げてもらい、片方だけ下がってくる・力が入らない
- S(Speech)言葉の障害:簡単な文を復唱してもらい、ろれつが回らない・言葉が出てこない・意味不明な発語
- T(Time)発症時刻:症状に気付いた時刻を記録し、ためらわず119番。最終健常時刻も伝える
脳梗塞は発症後4.5時間以内ならt-PA静注療法、24時間以内なら血栓回収療法の適応があります。「様子を見ましょう」は禁物で、迅速な救急要請が予後を左右します。
脳梗塞・脳出血・くも膜下出血の違い(早見表)
| 項目 | 脳梗塞 | 脳出血 | くも膜下出血 |
|---|---|---|---|
| 機序 | 血管が詰まる | 脳実質の血管が破れる | くも膜下の動脈瘤が破れる |
| 頻度 | 約75% | 約18% | 約7% |
| 好発年齢 | 70〜80代 | 60〜70代 | 50〜60代 |
| 主な原因 | 動脈硬化・心房細動 | 高血圧 | 脳動脈瘤破裂 |
| 典型症状 | 片麻痺・構音障害が徐々に進行 | 頭痛・嘔吐・片麻痺が急激に出現 | 突然の激しい頭痛・意識消失 |
| 発症パターン | 朝起床時に多い | 日中の活動時に多い | 労作・排便時など |
| 急性期治療 | 血栓溶解・血栓回収 | 降圧・血腫除去手術 | クリッピング・コイル塞栓 |
3疾患は原因も治療法も異なりますが、いずれも後遺症として片麻痺・嚥下障害・高次脳機能障害・抑うつなどを残しやすく、介護保険サービスの利用に至るケースが多い点で共通しています。
介護現場で注意したい後遺症と対応
脳卒中の急性期治療を終えて在宅・施設に戻った利用者は、複数の後遺症を抱えていることが多く、看護師・介護職が連携して観察と対応を行います。
1. 片麻痺と廃用症候群
麻痺側の関節拘縮・筋萎縮を防ぐため、理学療法士と連携して関節可動域訓練を継続します。健側だけで動作することによる「学習性不使用」を防ぐため、麻痺側にも声かけと使用機会を意図的に作ります。
2. 嚥下障害と誤嚥性肺炎
脳卒中後は嚥下機能低下による誤嚥性肺炎のリスクが高まります。食事形態の段階的調整、食前の口腔体操、食後30分の座位保持を徹底します。微熱・痰の増加・SpO2低下はバイタルサインとして早期察知が重要です。
3. 再発予防の服薬管理
抗血小板薬(アスピリン・クロピドグレル)や抗凝固薬(DOAC・ワルファリン)の服用継続が再発予防の要です。服薬管理では飲み忘れ・自己中断による再発リスクを家族・本人に説明し、お薬カレンダーや一包化を活用します。
4. 高次脳機能障害と認知症
失語症・半側空間無視・遂行機能障害などの高次脳機能障害は、外見からは分かりにくく介護現場で誤解されがちです。脳卒中後は脳血管性認知症を発症するリスクも高く、認知機能の評価とケアプランへの反映が必要になります。
よくある質問
Q1. 脳卒中と脳梗塞は同じ意味ですか?
違います。脳卒中は「脳血管疾患による急性の神経症状」の総称で、脳梗塞・脳出血・くも膜下出血の3つを含みます。脳梗塞は脳卒中の中で最多(約75%)のタイプです。詳しくは脳梗塞とはを参照してください。
Q2. 脳卒中の前兆はありますか?
「一過性脳虚血発作(TIA)」と呼ばれる前兆症状があります。片麻痺・構音障害・視野障害が数分〜24時間以内に消失するのが特徴で、放置すると約10〜15%が90日以内に脳梗塞を発症します。一時的でも症状があれば必ず受診を勧めてください。
Q3. 介護現場で脳卒中を疑ったら何をすれば良いですか?
FASTサイン(顔の麻痺・腕の麻痺・言葉の障害)が1つでも出現したら、迷わず119番通報します。発症時刻を記録し、最終健常時刻(普段通りに過ごしていた最後の時刻)を救急隊に伝えます。血栓溶解療法の適応判断に必須の情報です。
Q4. 脳卒中の再発予防に介護職ができることは?
(1)血圧測定の声かけと記録、(2)処方薬の飲み忘れ防止、(3)塩分制限食の継続、(4)水分摂取の確保(脱水予防)、(5)禁煙支援が基本です。家族と医療職の連携を仲介する役割も重要です。
Q5. 脳卒中後の介護度はどのくらい上がりますか?
後遺症の程度によりますが、片麻痺と嚥下障害を残した場合は要介護2〜4が目安です。重度の意識障害や寝たきりでは要介護5になります。回復期リハ病棟を経てから自宅・施設復帰するケースが多く、介護保険申請のタイミング判断が重要です。
まとめ
脳卒中は脳梗塞・脳出血・くも膜下出血の総称で、要介護原因の上位を占める疾患群です。発症時にはFASTサインで早期発見し迅速な救急要請を、回復期以降は片麻痺・嚥下障害・高次脳機能障害・再発予防という4本柱でケアを組み立てます。介護現場の看護師・介護職は、医療職との連携と家族支援の両面で利用者の在宅生活継続を支える重要な役割を担います。
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執筆者
介護のハタラクナカマ編集部
編集部
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