介護現場の感染症対策の実務|手指衛生・PPE・ゾーニング・委員会運営まで
介護職向け

介護現場の感染症対策の実務|手指衛生・PPE・ゾーニング・委員会運営まで

介護施設で働く職員向けに、標準予防策+感染経路別予防策の使い分け、PPE着脱の正しい手順、ゾーニング設計、感染対策委員会の運営、保健所届出フローまで、厚労省「介護現場における感染対策の手引き」第3版に基づき実務目線で解説します。

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この記事のポイント

介護現場の感染症対策は「標準予防策(スタンダードプリコーション)+感染経路別予防策」の2層構造で組み立てます。実務の柱は、(1)体液すべてを感染源とみなした手指衛生とPPE使用、(2)接触・飛沫・空気の3経路別の上乗せ対策、(3)レッド/イエロー/グリーンのゾーニング、(4)施設系3月に1回・居宅系6月に1回の感染対策委員会、(5)同一感染症で患者10名以上または利用者の半数以上発生時の保健所への速やか報告、の5点です。標準予防策が機能している施設は職員も入居者も守れます。

目次

「感染対策の研修は受けたけれど、現場では結局マスクと手洗いしかしていない」「アウトブレイクが起きてから初めてゾーニングを考えた」「感染対策委員会が形骸化していて何を議題にすればよいか分からない」――介護現場でよく聞こえてくる声です。

高齢者は感染症への抵抗力が弱く、集団生活であるがゆえに一度持ち込まれた病原体は連鎖的に広がります。それを止めるのは特別な装備ではなく、「日常の標準予防策」と「感染症ごとの上乗せ対策」を切り分けて、誰が見ても同じ手順で動ける仕組みです。本記事は、厚生労働省「介護現場における感染対策の手引き 第3版(令和5年9月)」と「高齢者介護施設における感染対策マニュアル改訂版(2019年)」を骨格に、現場で機能する実務の組み立て方を整理しました。手指衛生・PPE着脱・ゾーニング・委員会運営・保健所届出のすべてを一気通貫で押さえます。

感染対策の2層構造|標準予防策+感染経路別予防策

厚労省の手引きが繰り返し強調する「感染経路の遮断」は、次の2層で構成されます。1層目がベース、2層目がプラスαと整理してください。

1層目:標準予防策(スタンダードプリコーション)

感染症の有無や種類にかかわらず、汗を除くすべての体液・血液・分泌物・排泄物・粘膜・正常でない皮膚は感染源とみなして取り扱うという考え方です。1996年にCDCが提唱し、現在は世界標準。具体的には次を日常的に行います。

  • 手指衛生(流水+液体石けんで2〜3mL、爪・指の間・親指・手首を意識して60秒もみ洗い→15秒すすぎ。または速乾性アルコール3mLで擦り込み乾燥)
  • PPE装着(手袋・マスク・エプロン/ガウン・ゴーグル等を、ケアの場面と汚染リスクに応じて選択)
  • ケア器具の洗浄・消毒(体温計・血圧計などは個人専用が原則。共用時は消毒用エタノールで都度消毒)
  • 環境対策(多くの人が触れるドアノブ・手すり・スイッチを状況に応じて消毒)
  • 感染性廃棄物の分別(オムツ・血液・体液付着物は密閉容器で他廃棄物と区別)

2層目:感染経路別予防策

標準予防策に「その感染症の経路に応じた上乗せ」を加えます。経路は4つ。

  • 接触感染予防策(ノロウイルス、疥癬、MRSA、新型コロナ等):手袋+長袖ガウンを着用し、汚染物との接触ごとに手袋交換。原則個室管理、または同病者の集団隔離(コホーティング)。
  • 飛沫感染予防策(インフルエンザ、新型コロナ、肺炎球菌等):サージカルマスクを着用。隔離できない場合はベッド間隔2m以上、またはカーテン・パーテーションで仕切る。
  • 空気感染予防策(結核菌、麻疹、水痘):職員はN95マスク、利用者はサージカルマスク。原則個室・換気を徹底し、入院による治療が前提。
  • 血液媒介感染予防策(B型・C型肝炎、HIV、梅毒):出血や褥瘡ケアで血液に触れる可能性があれば手袋・ガウンを必ず着用。針刺し事故は即座に流水で洗い、施設のフローで医師に報告。

現場でよくある事故は、「インフルエンザ流行期に標準予防策だけで対応してしまう」「ノロウイルスの嘔吐物処理でアルコール消毒のみ実施(ノロにはアルコールが効かないので次亜塩素酸ナトリウムが必須)」の2つ。1層目と2層目の境界を理解できていないと、こうした穴が空きます。

手指衛生とPPE着脱の正しい手順|「外す順番」が事故を防ぐ

感染対策の95%は「手指衛生+PPEの正しい使い方」で決まると言ってよいほど、この基本動作が事故の有無を分けます。間違いやすいポイントを順に解説します。

手指衛生のタイミング(WHOの5モーメント)

WHOが定める「手指衛生の5つのタイミング」は、介護現場でもそのまま使えます。

  1. 利用者に触れる前
  2. 清潔・無菌操作(食事介助・口腔ケア・吸引・創傷処置等)の前
  3. 体液に曝露された可能性のある場合
  4. 利用者に触れた後
  5. 利用者周辺の環境(ベッド・テーブル等)に触れた後

目に見える汚染がある時は流水+石けん、汚染がなければ速乾性アルコールで構いません。手洗いだけでは菌は1/4〜1/13、アルコールでは1/10,000〜1/30,000まで減らせます(介護職員のための感染対策マニュアル第3版)。ノロウイルスやMRSA等の芽胞・無膜ウイルスにはアルコールが効きにくいため、流水洗浄を必ず行いましょう。

PPEの着用順(清潔な順に身につける)

  1. マスク(ノーズワイヤーを上に、鼻と口を完全に覆う)
  2. エプロン/ガウン(袖口・首元を整える)
  3. ゴーグル/フェイスシールド(飛沫や体液が顔に飛ぶ可能性があるとき)
  4. キャップ(咳込みが多い・喀痰吸引等、髪も汚染される場面)
  5. 手袋(最後に装着。ガウンの袖口をカフの中に入れる)

PPEを外す順(汚染が多い順に外す)

事故が最も起きやすいのが「外す」工程です。順番を間違えると、外した手や顔が汚染されます。手引きが示す順は以下。

  1. 手袋(最も汚染されている。外側の汚れに触れないよう、片方を引っ張って脱ぎ、内側に丸めて持つ。もう片方は袖口の内側に指を入れて反転させながら脱ぐ)
  2. 手指消毒(手袋を外した直後に必ず実施)
  3. ゴーグル/フェイスシールド(紐やこめかみ部分を持ち、外側に触れない)
  4. ガウン/エプロン(首元の紐を切り、外側が内側になるよう丸めて廃棄)
  5. 手指消毒
  6. マスク(紐だけを持ち、本体に触れない)
  7. 手指衛生(最後に流水+石けんで仕上げ)

研修ですべりやすいポイント

外す順番を「手袋→ゴーグル→ガウン→マスク」と覚えるだけでなく、「手袋を外したら必ず手指消毒」「マスクは最後」の2点を声に出して動作させると定着します。動画では厚労省YouTube「そうだったのか!感染対策」を視聴覚教材として使えます。

ゾーニングの実務|レッド/イエロー/グリーンの3区分

「ゾーニング」とは、感染エリアと清潔エリアを物理的・視覚的に分けることで、ウイルスを他のエリアに持ち出さない仕組みです。コロナ禍で広く知られるようになりましたが、ノロウイルスや疥癬の集団発生でも同じ考え方が使えます。

3つのゾーンの定義

  • レッドゾーン(汚染区域):感染者・感染疑い者がいる居室や区画。職員はフルPPE(マスク、ガウン、ゴーグル、手袋)で入室。
  • イエローゾーン(中間区域):レッドゾーンの出入口付近。PPEを脱ぐ場所。汚染物を廃棄するボックスを配置し、グリーンゾーンに出る前に手袋・ガウン・フェイスシールドをこの区域で破棄する。床テープで明示する。
  • グリーンゾーン(清潔区域):感染がない区域。スタッフルーム、未感染入居者の居室、廊下など。通常のサージカルマスク程度で活動。

ゾーニング設計の手順

  1. 感染(疑い)者を個室に移動(できない場合は、その場から動かさず、エリア全体をレッドゾーンとみなす)
  2. 境界線を物理的に明示(床テープ、パーテーション、カラーコーンなど)。「誰が見ても境界が分かる」ことが必須
  3. 動線を分離(感染者の食事配膳・オムツ廃棄・洗濯物が清潔エリアと交わらないルートを設計)
  4. 担当職員を分ける(レッドゾーン担当とその他の入居者担当を可能な限り分ける)
  5. 持ち込み・持ち出し物品のルール(タブレット、ボールペン、聴診器も汚染を考慮)
  6. トイレの取り扱い(個室にトイレがない場合はポータブルトイレを用意。共用なら使用後に速やかに清拭・消毒)

「個室が足りない」ときの現実的な対応

多床室主体の特養や介護老人保健施設では、感染(疑い)者を完全に個室隔離できないケースが多くあります。手引きの対応は次の通り。

  • 4人部屋を1人で使用する、または感染者同士を同室に集める(コホーティング)
  • 感染者と濃厚接触者を同室にすることは避ける
  • 感染が疑われる人達を「移動させる」のではなく、その場のエリア全体をレッドゾーンとみなしてゾーニングする(手引き第3版・別添2)

研修では「個室が足りない場合のゾーニング図」を施設の見取り図に書き込む演習が効果的です。

主要感染症ごとの実務対応比較|ノロ・インフル・コロナ・MRSA・疥癬

感染経路別予防策の具体像を、介護現場で頻出する5つの感染症で比較します。詳細は各用語ページにリンクしているので、現場での対応マニュアル作成時に参照してください。

感染症主な経路消毒薬個室対応備考
ノロウイルス接触・経口(嘔吐物の飛沫吸入)0.02〜0.1%次亜塩素酸ナトリウム
(アルコール無効)
原則個室、または同病者集団隔離嘔吐物処理は使い捨てペーパー+次亜塩素酸で「外側から内側へ拭き取り→廃棄」
インフルエンザ飛沫・接触アルコール、次亜塩素酸
いずれも有効
原則個室。隔離できない場合はベッド間2m+カーテン発症前日〜発症後5日が感染力。職員・利用者ともワクチン接種が基本
新型コロナ飛沫・エアロゾル・接触アルコール、次亜塩素酸
いずれも有効
原則個室。施設内療養が基本5類移行後も高齢者施設はクラスター防止対策を継続。発症2日前〜発症後5〜10日が感染力
MRSA接触アルコール、次亜塩素酸
いずれも有効
保菌のみなら個室不要。創部・痰排出が多ければ個室抗菌薬が効きにくい耐性菌。保菌=感染ではないので過度な隔離は不要
疥癬(通常型)長時間の直接接触イベルメクチン内服・フェノトリン外用不要(角化型のみ個室)角化型疥癬は強い感染力。リネン・寝具の熱処理が必要

消毒薬の選択を誤らない

最も多い実務事故が「ノロウイルスにアルコールを使ってしまう」というもの。ノロは無膜ウイルスのためアルコールが効きにくく、次亜塩素酸ナトリウム(200ppm〜1000ppm)が必須です。逆にMRSAやインフル・コロナは膜のあるウイルス/グラム陽性菌なのでアルコール有効。委員会で消毒薬の使い分け表を壁に貼り、新人研修で必ず確認しましょう。

感染対策委員会の運営|開催頻度・メンバー・議題・議事録

2024年4月、3年間の経過措置が終了し、感染対策委員会の設置は介護保険指定基準上の義務となりました(指定介護老人福祉施設の人員、設備及び運営に関する基準 第27条ほか)。「ある/ない」ではなく「実質的に機能しているか」が運営指導でチェックされます。

開催頻度(2024年義務化完了)

  • 施設系サービス(特養、老健、介護医療院、グループホーム等):おおむね3月に1回以上
  • 居宅系・通所系・短期入所系・その他(訪問介護、デイサービス、訪問看護等):おおむね6月に1回以上
  • テレビ電話等の情報通信機器の活用が省令で明記(リアル参集と同等の運営が可能)
  • 定期開催に加え、感染症流行期・発生疑い時には随時開催

必須メンバー構成(厚労省マニュアル例)

  • 施設長(管理者):全体の責任者
  • 事務長:物資調達・会計
  • 医師(配置医・嘱託医):医療判断、ICD(インフェクションコントロールドクター)が望ましい
  • 看護職員(複数名が望ましい):感染対策担当者は看護師が務めるケースが多い。ICN(感染管理認定看護師)の協力が理想
  • 介護職員:各フロア/ユニット代表+デイ等併設サービスから1名
  • 栄養士:食中毒対策・抵抗力維持
  • 生活相談員:入所者対応の取りまとめ

外部の感染管理専門家(協力病院ICN、保健所職員)を顧問として活用するのも有効です。

標準的な議題(年間で押さえるべき項目)

  1. 感染症の発生状況のサーベイランス:発熱・嘔吐・下痢者数の推移、職員の体調不良の有無
  2. 感染対策指針・マニュアルの見直し:年1回以上の改定
  3. 職員研修の企画:年2回以上の研修+新規採用時研修(手引きが推奨)
  4. 実地訓練(シミュレーション)の企画:年1回以上、ノロ嘔吐物処理・ゾーニング展開・PPE着脱訓練
  5. BCP(業務継続計画)との連動:2024年から策定義務化。職員大量欠勤時のサービス縮小ルール
  6. 物資の在庫管理:マスク・手袋・ガウン・消毒薬の備蓄量(最低2週間分が目安)
  7. 新規入所者のスクリーニング:感染症既往と既存対策の引き継ぎ
  8. 面会・委託業者・実習生の管理:流行期の制限ルール

議事録に必ず残すべき要素

運営指導で「委員会は開催したが議事録の中身が薄い」と指摘されるケースが多発しています。最低限、以下を残します。

  • 開催日時、場所、開催方法(対面/テレビ電話)
  • 出席者・欠席者(職種ごと)
  • 議題ごとの決定事項と「いつ・誰が・何をするか」のアクションプラン
  • 前回議事録のフォローアップ(やった/やらないと結果)
  • 次回開催予定

「開催したエビデンス」だけでは不十分で、「PDCAが回っているエビデンス」を残すことが運営指導での突破ポイントです。

保健所への届出フロー|10名以上または利用者の半数以上で報告義務

感染症が発生した際の行政報告は、平成17年2月22日付の厚生労働省5局長連名通知「社会福祉施設等における感染症等発生時に係る報告について」が根拠です。「個別の感染症で迷う」ことが多い場面ですが、報告基準は明確に数値化されています。

報告義務の3つのトリガー

次のいずれかに該当した場合、施設長は市町村の社会福祉施設等主管部局と保健所の両方に迅速に報告し、指示を求めなければなりません。

  1. ア:同一の感染症または食中毒(疑い)による死亡者または重篤患者が、1週間内に2名以上発生した場合
  2. イ:同一の感染症または食中毒(疑い)の患者が、10名以上または全利用者の半数以上発生した場合(ある時点において)
  3. ウ:上記ア・イに該当しなくても、通常の発生動向を上回り、施設長が報告を必要と認めた場合

報告すべき内容

  • 感染が疑われる者等の人数(部屋・階・ユニット別)
  • 症状と発症日時
  • 受診・診断・検査・治療状況
  • 施設としての対応状況(ゾーニング、コホーティング、職員の配置変更等)
  • 職員の健康状態

報告後の動き

報告を受けた保健所は、必要に応じて感染症法第15条に基づく積極的疫学調査または食品衛生法第58条に基づく調査を実施し、まん延防止に必要な衛生上の指導を行います。施設は次の対応も同時並行で行います。

  • 検体の確保(血液・便・吐物等):診察医と連携して原因究明用に保存
  • 協力病院への連絡:搬送・入院調整
  • 家族への連絡:感染状況・面会制限の説明
  • 濃厚接触者の特定:発症2日前以降の接触者をリストアップ
  • 記録の作成:時系列の対応記録(人権配慮しつつ匿名化)

個別の感染症の届出義務

感染症法に基づく医師届出が別途必要な疾患もあります。代表例:

  • 結核(2類):診断医師が直ちに届出
  • 麻疹・風疹・侵襲性髄膜炎菌感染症(5類):直ちに届出
  • レジオネラ症(4類):直ちに届出
  • 多剤耐性菌感染症(CRE等):7日以内

施設長や看護職員は、配置医・嘱託医・協力病院と日常から連絡網を更新しておくことが重要です。

転職者視点|「感染対策が機能している施設」の見分け方

当サイトは介護転職者向けのため、「自分が働く施設を選ぶ/いまの施設を評価する」視点でもう一歩踏み込みます。求人票や面接、見学時に次のチェック項目を確認することで、感染対策が形だけかどうかを推定できます。

面接・施設見学で確認したい7項目

  1. 感染対策委員会の開催頻度と直近の議題を質問する。即答できない施設は形骸化している可能性が高い。
  2. 各居室・廊下に手指消毒剤が設置されているか。「玄関だけ」の施設は要注意。
  3. PPE備蓄量を聞く。「マスク・手袋・ガウンを2週間分以上備蓄」が手引きの推奨ライン。
  4. ノロウイルス嘔吐物処理キットの設置場所を聞く。各ユニット/フロアにあれば実務的。
  5. 過去のクラスター発生時の対応を聞く。「発生したが○○で広がりを抑えた」と具体的に語れる施設は学習している。
  6. 研修頻度:年2回以上の集合研修+新規採用時オリエンに感染対策が組み込まれているか。
  7. BCP(業務継続計画)の有無と直近の訓練実施日。BCPは2024年4月から義務化済み。

転職時の「感染症既往」の取り扱い

過去にB型・C型肝炎、結核既往、MRSA保菌歴などがある場合、転職時に申告する義務はありません。ただし、就業時健康診断で胸部X線・血液検査が行われるため、配置医や看護師長と相談のうえ、必要な配慮(針刺し事故時の対応など)を伝えておくとスムーズです。

感染対策に強くなることがキャリアになる

感染管理認定看護師(ICN)、感染症看護専門看護師、ICD制度協議会認定の介護職員等は、施設のリスクマネジメント責任者として高く評価されます。看護師として介護現場に転職する場合、ICN資格はキャリアアップの大きな武器になります。介護福祉士・初任者研修修了者でも、施設内の「感染対策担当者」を担うことで主任・リーダー昇格の足がかりになります。

介護現場の感染症対策に関するよくある質問

Q. 感染対策委員会は必ず開催しなければいけませんか?

A. はい、2024年4月以降は介護保険指定基準(指定介護老人福祉施設の人員、設備及び運営に関する基準 第27条等)に基づき義務化されています。施設系は3月に1回以上、居宅・通所・短期入所系は6月に1回以上、テレビ電話等を活用しても可です。未開催は運営指導・実地指導での指摘事項となります。

Q. ノロウイルスの嘔吐物処理にアルコール消毒はダメですか?

A. はい、ノロウイルスは無膜ウイルスのためアルコールがほぼ効きません。次亜塩素酸ナトリウム(0.02〜0.1%、200〜1000ppm)を使用してください。0.02%は環境消毒、0.1%は嘔吐物・排泄物の処理が目安です。塩素は金属を腐食させるので消毒後は水拭きで仕上げます。

Q. PPEを脱ぐ順番を間違えると何が問題ですか?

A. 最も汚染されている手袋を最後まで残すと、手袋の外側に付着した病原体が顔やマスクに触れる事故が起こります。「手袋→手指消毒→ゴーグル→ガウン→手指消毒→マスク→手指衛生」の順を守りましょう。マスクを最後に外すのは、レッドゾーンで吸気を最後まで守るためです。

Q. 個室が足りずゾーニングできない場合はどうしますか?

A. 厚労省手引きでは「感染者を移動させるのではなく、エリア全体をレッドゾーンとみなして対応する」ことが示されています。4人部屋を1人で使う、感染者同士の集団隔離(コホーティング)、感染者と濃厚接触者を分けるといった工夫を組み合わせます。床テープやパーテーションで境界を視覚化することが必須です。

Q. 集団発生はいつ保健所に報告すべきですか?

A. (1)同一感染症で死亡または重篤患者が1週間内に2名以上、(2)患者または疑い者が10名以上または利用者の半数以上、(3)通常の発生動向を超え施設長が必要と判断した場合――いずれかに該当した時点で、市町村と保健所の両方に迅速に報告します。判断に迷う場合は早めに保健所に相談する方が安全です。

Q. 新型コロナは5類になったので対策は不要では?

A. いいえ。高齢者施設は感染症法上の位置づけ変更後も対策の徹底を継続するよう厚労省事務連絡(令和5年4月18日)で示されています。具体的には、職員のマスク常時着用、有症状者の出勤抑制、面会時の感染対策などです。重症化リスクの高い高齢者を守る場としての対応水準は維持されます。

Q. インフルエンザのワクチン接種は義務ですか?

A. 法律上の義務ではありませんが、厚労省マニュアルで職員・利用者ともに接種が強く推奨されており、感染対策委員会で「職員の接種率目標」を立てている施設が多数です。接種費用を施設負担としているところもあります。

Q. 感染対策担当者は必ず看護師でなければいけませんか?

A. 必須ではありません。多くの施設で看護職員が担っていますが、感染対策に詳しい介護福祉士やケアマネジャーが担当する例もあります。重要なのは外部研修(自治体・職能団体等)を継続的に受講し、最新の知見をアップデートし続けることです。

参考文献・出典

まとめ|感染症対策の実務は「日常」と「有事」の往復で磨かれる

介護現場の感染症対策は、「特別な訓練」ではなく「日常業務の精度」で決まります。日々の手指衛生とPPEの使い方、感染対策委員会で回すPDCA、そしてアウトブレイク時に動けるゾーニングと届出フロー――これらは独立ではなく、相互に補強し合う仕組みです。

  • 標準予防策+感染経路別予防策の2層構造を全職員が共通言語で語れる状態を目指す
  • PPEの「外す順番」を声出し確認する習慣をユニット単位で徹底する
  • 感染対策委員会の議事録には「決定事項」だけでなく「次回までのアクション」を必ず残す
  • 保健所への報告は数値基準(10名/半数/重篤2名)で機械的に判断、迷いを排除する
  • 転職時は「委員会・備蓄・研修・BCP」の4観点で感染対策の成熟度を見極める

感染対策に強い職員は、利用者・同僚・自分自身の3者を守れる職員です。本記事のリンクから関連用語ページに進み、現場のマニュアル整備に活用してください。働き方を見直したい方は、施設タイプ別の感染対策体制の違いも踏まえつつ、ご自身に合った職場を探してみましょう。

執筆者

介護のハタラクナカマ編集部

編集部

介護業界の転職・キャリア情報を発信。厚生労働省の公的データと現場の声をもとに、介護職で働く方・転職を検討する方に役立つ情報をお届けしています。

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