
手すりとは
手すりの種類(I型・L型・横型)と設置場所別の高さ基準、介護保険の住宅改修(20万円支給)と福祉用具貸与(据置型)の違いを一次資料ベースで解説します。
この記事のポイント
手すり(てすり)とは、住宅内の段差・通路・水回りに設置して、立ち座り・歩行・移乗を支える介護用備品です。形状はI型・L型・横型・縦型、設置場所は玄関・廊下・トイレ・浴室・階段など多岐にわたります。介護保険では工事を伴うものが住宅改修費(上限20万円・1〜3割負担)、工事不要の据置型が福祉用具貸与の対象で、選択肢は要介護度・住宅構造・利用目的に応じて変わります。設置高さの目安は床から75〜85cm(大転子の高さ)です。
目次
手すりの役割と介護保険上の位置づけ
手すりは、住宅内で立ち座り動作・歩行・移乗・階段昇降の各場面で身体を支え、転倒・転落事故を予防するための備品です。高齢者の家庭内事故の発生場所は浴室・トイレ・階段・玄関の順に多く、これらの場所に手すりを設置することで事故率が大幅に下がることが、消費者庁・国民生活センターの統計で示されています。
介護保険制度上、手すりの給付には3つの経路があります。
- 住宅改修(介護保険):壁や床に固定する工事を伴う手すり設置。上限20万円(生涯限度額)の9割(1割負担)が支給されます。要支援1以上から利用可能で、申請には事前に市区町村への届出が必要です。
- 福祉用具貸与(手すり):工事不要の据置型・突っ張り型手すり。月額レンタル料の1〜3割負担。要介護2以上が原則対象で、軽度者でも例外給付の対象になることがあります。
- 特定福祉用具販売:浴室内の入浴用手すり(吸盤型・置き型)など、貸与に馴染まないものは購入対象。年間10万円までの1〜3割負担。
どの経路を使うかは、住宅構造(賃貸か持ち家か)・要介護度・設置場所・利用期間によって変わります。一般に、長期間使う・しっかり固定したい場合は住宅改修、短期間で済む・賃貸で工事不可の場合は福祉用具貸与、浴室内は特定福祉用具販売と使い分けるのが基本です。
手すりの選定・配置は本来、福祉住環境コーディネーター・福祉用具専門相談員・作業療法士が利用者の動作(立ち上がり・回転・伸び上がり等)を観察したうえで行うのが望ましく、ケアマネジャー経由で専門家のアセスメントを受けるのが安全です。
手すりの主な種類と形状
I型手すり(縦型・横型)
- 1本の真っすぐな手すり。最もシンプル
- 縦型:玄関の上がり框・浴槽またぎなど、立ち上がり・段差越え用。床から1m前後に設置
- 横型:廊下・階段・トイレなど、歩行や立ち座り補助用。床から75〜85cmが目安
L型手すり
- 縦と横を組み合わせたL字形状。立ち座りと姿勢保持を1本で兼ねられる
- トイレ・浴室・玄関で多用される
波型・ディンプル付き手すり
- 表面に凹凸があり握りやすい。脱衣所・浴室の濡れた手でも滑りにくい
据置型手すり(福祉用具貸与)
- 工事不要で床に置くだけ。重量で安定
- 賃貸住宅・短期使用に適する
- ベッド横の立ち上がり補助・トイレ前の体勢保持などに使用
突っ張り型手すり(福祉用具貸与)
- 天井と床で突っ張って固定。工事不要だが天井強度が必要
- 立ち座り補助・歩行起点として使用
入浴用手すり(特定福祉用具販売)
- 浴槽の縁に挟み込むタイプ・吸盤式タイル張り付けタイプ
- 浴槽内での立ち座り・またぎ動作を補助
木製・樹脂製・金属製
- 木製:握り心地が良く屋内向き。屋外は腐食に注意
- 樹脂製:水回り・屋外向き。耐水性◎
- 金属(ステンレス・アルミ):耐久性◎。ただし冬場は冷たさを感じやすい
場所別の取り付け基準・高さの目安
| 設置場所 | 形状 | 高さ・配置の目安 | 主な目的 |
|---|---|---|---|
| 玄関上がり框 | 縦型I型・L型 | 床から75〜85cm(横)/立ち上がり時の手の届く位置(縦は1m前後) | 段差越え・靴の脱ぎ履き |
| 廊下 | 横型I型(連続) | 床から75〜85cm | 歩行補助 |
| 階段 | 横型I型(傾斜沿い) | 段鼻から75〜85cm。両側設置が理想、片側なら下りに利き手側 | 昇降時の支持 |
| トイレ | L型・縦型 | 便座から30cm前方/座面より20cm上に横棒 | 立ち座り・姿勢保持 |
| 浴室入口 | 縦型I型 | 段差の手前・床から1m前後 | 段差越え・滑り対策 |
| 浴槽縁 | L型・入浴用手すり | 浴槽縁から20cm上 | 浴槽またぎ・立ち座り |
| 洗面台脇 | 縦型I型 | 床から1m前後 | 立位保持 |
手すりの太さは直径32〜36mmが握りやすい標準とされ、握力が弱い人は太め(36mm以上)、握る力に問題がない場合は細め(28〜32mm)が選ばれます。建築基準法に手すり高さの法的義務はないものの、住宅金融支援機構のフラット35適合基準やバリアフリー新法では75〜85cmが推奨されています。
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介護保険で手すりを設置するまでの流れ
住宅改修(工事を伴う手すり設置)の場合、必ず工事前に市区町村への事前申請が必要です。事後申請では給付対象外になるため、手順を間違えないよう注意してください。
- ケアマネジャー(または地域包括支援センター)に相談:要介護度に応じた利用可能な制度を整理し、ケアプランに位置付けます
- 福祉住環境コーディネーター・福祉用具専門相談員のアセスメント:自宅訪問で動作観察・配置計画を作成
- 住宅改修事業者の見積もり取得:複数社から相見積もりを取ると価格透明性が高まります
- 事前申請(市区町村):「住宅改修事前申請書」「工事見積書」「改修前の写真」「ケアマネジャー作成の理由書」等を提出
- 市区町村の確認・承認:通常2〜4週間。申請内容を確認してから工事許可
- 工事実施:承認後に工事開始
- 事後申請(市区町村):「住宅改修費支給申請書」「改修後の写真」「領収書」を提出
- 給付金の支給:「償還払い」(一旦全額支払い、後日9割返金)が原則。「受領委任払い」(最初から1割負担)が可能な自治体もあります
住宅改修費の限度額は生涯20万円(要介護度3段階以上の改善時または転居時にリセット)で、1〜3割の自己負担を除いた額が支給されます(1割負担なら最大18万円が給付)。1度に使い切る必要はなく、複数回に分けて利用可能です。
福祉用具貸与(据置型手すり)の場合
- ケアマネジャーが福祉用具貸与事業所を選定
- 事業所の福祉用具専門相談員が訪問アセスメント
- 機種選定・搬入・設置(即日〜数日)
- 月額レンタル料の1〜3割を毎月支払い
手すり設置の安全と費用のポイント
- 下地のある壁に固定:石膏ボードに直接打つと抜け落ちます。間柱・下地補強板にビス止めが必須。下地がない場所は補強板の追加施工が必要(住宅改修費に含まれます)
- 太さは利用者の握力で選ぶ:握力が弱い人は太め(36mm以上)、しっかり握れる人は細め(28〜32mm)。一般的な標準は32〜36mm
- 水回りは樹脂・ステンレス:木製は腐食しやすいため、浴室・脱衣所は樹脂製または錆びにくい金属製を選びます
- 夜間の視認性を確保:暗所でも見えるよう、コントラストのある色(白い壁に濃い色)を選ぶか、足元灯を併設
- 賃貸住宅では事前に大家・管理会社と相談:原状回復義務が発生する場合は据置型・突っ張り型(工事不要)を検討
- 事前申請を必ず行う:住宅改修は事後申請では給付対象外。工事開始前にケアマネジャー経由で市区町村申請が必須
- 福祉住環境コーディネーターの意見書を活用:2級・3級保有者は住宅改修の理由書(ケアマネジャーの代替)を作成可能で、より専門的なアセスメントが受けられます
手すりに関するよくある質問
Q1. 手すりは介護保険でいくら給付されますか?
A. 工事を伴う手すり設置は住宅改修費(生涯20万円・1〜3割負担)の対象です。1割負担の場合、最大18万円が支給されます。20万円は1度に使い切る必要はなく、複数回の工事を合算可能です。
Q2. 賃貸住宅でも介護保険で手すりは付けられますか?
A. 大家・管理会社の承諾があれば住宅改修費の対象です。承諾が得られない場合は福祉用具貸与の据置型・突っ張り型手すりを選びます。賃貸の場合、退去時の原状回復義務にも注意が必要です。
Q3. 手すりの高さはどのくらいが適切ですか?
A. 床から75〜85cmが一般的な目安で、利用者の大転子(股関節横の出っ張り)の高さに合わせます。階段は段鼻(段の前縁)から75〜85cm、トイレは便座から20cm上に横棒を取り付けます。本人の身長・歩行姿勢で微調整します。
Q4. 住宅改修と福祉用具貸与はどちらを選ぶべきですか?
A. 長期間使う・しっかり固定したい場合は住宅改修、賃貸・短期使用・工事を避けたい場合は福祉用具貸与がおすすめです。住宅改修は20万円までの一回性給付、福祉用具貸与は毎月のレンタル料という違いがあります。
Q5. 手すりは事後申請でも給付されますか?
A. 住宅改修は事前申請が必須です。事後申請では給付対象外になるため、必ず工事前にケアマネジャー経由で市区町村に申請してください。緊急の場合でも事前申請は省略できません。
参考資料・一次ソース
- 厚生労働省「介護保険における住宅改修」
https://www.mhlw.go.jp/topics/kaigo/osirase/jukaishu/index.html - 厚生労働省「介護保険における福祉用具」
https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/hukushi_kaigo/kaigo_koureisha/yougu/index.html - e-Gov 法令検索「介護保険法施行規則」
https://laws.e-gov.go.jp/law/411M50000100036 - 住宅金融支援機構「フラット35 バリアフリー基準」
https://www.flat35.com/ - 国民生活センター「家庭内事故の発生場所別データ」
https://www.kokusen.go.jp/ - 東京商工会議所「福祉住環境コーディネーター検定試験 公式テキスト」
https://www.kentei.org/fukushi/
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まとめ
手すりは住宅内での立ち座り・歩行・移乗を支える重要な介護備品で、玄関・廊下・階段・トイレ・浴室など各場所に応じた形状(I型・L型)と高さ(床から75〜85cm)が推奨されます。介護保険では工事を伴うものが住宅改修費(生涯20万円)、工事不要の据置型は福祉用具貸与、浴室の入浴用は特定福祉用具販売の対象です。住宅改修は事前申請必須のため、必ずケアマネジャー経由で市区町村申請を行いましょう。福祉住環境コーディネーター・専門相談員のアセスメントを受けて、自分の住環境に合った手すりを選んでください。
執筆者
介護のハタラクナカマ編集部
編集部
介護業界の転職・キャリア情報を発信。厚生労働省の公的データと現場の声をもとに、介護職で働く方・転職を検討する方に役立つ情報をお届けしています。
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