
住宅改修(介護保険)とは
介護保険の住宅改修とは、要支援・要介護者の自宅を生活しやすく改修する際に20万円を上限に支給する制度。手すり設置・段差解消など対象6種、9割給付、事前申請の流れ、注意点を解説。
この記事のポイント
住宅改修(介護保険)とは、要支援1〜2・要介護1〜5の認定を受けた人が自宅を介護生活向けに改修する際、介護保険から最大20万円(支給限度基準額)まで費用を給付する制度です。介護保険法第45条が根拠で、自己負担割合に応じて1〜3割負担の現役世代でも介護保険が7〜9割を支給します。手すり取り付け・段差解消・床材変更・引き戸への扉交換・洋式便器化・付帯工事の6種類が対象。事前申請が必須で、無断で工事をすると保険給付の対象外になります。
目次
住宅改修制度の定義と給付の仕組み
住宅改修は、介護保険法第45条「居宅介護住宅改修費の支給」および第57条「介護予防住宅改修費の支給」を根拠とする現物給付ではなく現金給付の保険給付です。要介護者・要支援者が住み慣れた自宅で安全に生活できるよう、対象工事に係った費用の7〜9割(自己負担割合の裏返し)を介護保険が支給します。
支給限度基準額は20万円。1割負担の人なら自己負担2万円・保険給付18万円、2割負担なら自己負担4万円・保険給付16万円という構造です。20万円は同一の住居に対する生涯の上限ではなく、原則1人1住居につき20万円です。20万円を超えた工事費は全額自己負担となります。
支給対象は要支援1・2、要介護1〜5の認定を受け、改修対象の住宅に居住する被保険者(住民票がある住宅)。施設入所中・入院中は対象外で、退所予定で自宅復帰のために改修する場合のみ要件付きで認められます。賃貸住宅でも家主の承諾があれば対象になります。
支給対象となる6種類の工事
厚生労働省告示(平成12年厚生省告示第95号)で対象工事は以下6種類に限定されています。
- 1. 手すりの取付け:廊下・便所・浴室・玄関・玄関から道路までの通路など。固定式が原則で、置き型・突っ張り型は福祉用具レンタル対象。
- 2. 段差の解消:居室・廊下・便所・浴室・玄関などの段差解消、上がり框・浴室の取替え、傾斜地のスロープ設置など。
- 3. 滑り防止および移動の円滑化等のための床または通路面の材料の変更:畳→板床、浴室の床→滑りにくい床材、屋外通路面のセメント化など。
- 4. 引き戸等への扉の取替え:開き戸→引き戸・折り戸・アコーディオンカーテン、扉のドアノブ変更、戸車設置による開閉の円滑化。
- 5. 洋式便器等への便器の取替え:和式→洋式、既存洋式の高さや向き変更、便座の取替え(暖房機能・洗浄機能のみは対象外)。
- 6. その他、上記5種に付帯する工事:手すり取付けのための壁下地補強、扉取替えに伴う壁・柱の改修、便器取替えに伴う給排水・床の補修など。
これら以外の工事(バリアフリーリフォーム、新築・増築、間取り変更など)は介護保険対象外です。階段昇降機の設置、システムキッチン交換、屋根葺き替え、外壁塗装も対象外です。
対象外となる工事の例
| 工事内容 | 判定 | 理由 |
|---|---|---|
| 玄関の手すり設置 | 対象 | 固定式の手すり取付け |
| 突っ張り型手すり | 対象外 | 福祉用具貸与・購入の対象 |
| 洗面台の交換 | 対象外 | 6種以外の改修 |
| 浴槽の交換(高さ低下) | 対象外 | 福祉用具購入の対象(特定福祉用具の入浴補助用具) |
| シャワーチェアの設置 | 対象外 | 特定福祉用具購入 |
| 段差解消用スロープ(移動可能) | 対象外 | 福祉用具貸与 |
| 段差解消(コンクリート造の据置) | 対象 | 固定式の段差解消 |
| 階段昇降機 | 対象外 | 6種以外 |
| 暖房便座への交換 | 対象外 | 機能付加(修繕・経年対応とみなされる) |
| 畳→フローリング張替え | 対象 | 滑り防止・移動円滑化 |
福祉用具レンタル・購入と住宅改修は使い分けが必要です。判断に迷ったらケアマネジャーや福祉用具専門相談員、市町村介護保険担当課に事前に確認するのが鉄則です。
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申請から給付までの流れ(事前申請が必須)
- ケアマネジャー・地域包括支援センターに相談:要介護者は担当ケアマネ、要支援者は地域包括支援センターに改修内容を相談。利用者の身体状態に合致するか専門的助言を受ける。
- 住宅改修が必要な理由書の作成:ケアマネ等が「住宅改修が必要な理由書」を作成(書式は市町村指定)。これは事前申請の必須添付書類。
- 施工事業者の見積取得:複数業者から見積を取り、図面(改修前後)・工事明細・写真を準備。利用者本人宛の見積書である必要がある。
- 事前申請:市町村介護保険担当課に住宅改修費支給申請書(事前申請)を提出。理由書・見積書・図面・写真・改修前の住宅状況を添付。
- 市町村の事前確認・承認:内容確認後、市町村が承認通知を発行。この承認前に工事を始めると保険対象外になるため厳守。
- 工事の実施:承認後に施工。完了時に工事前後の写真撮影、領収書受領を必ず行う。
- 事後申請(支給申請):工事完了後、領収書・工事費内訳書・改修後の写真を添付して支給申請を提出。
- 給付金の支給:審査後、市町村から指定口座に保険給付分(7〜9割相当)が振り込まれる。
受領委任払いを採用している自治体では、利用者は1割負担分のみを業者に支払い、残額は市町村から業者に直接支払う方式(償還払いではない)も選べます。手元資金を準備せず工事できるため、低所得者に優しい方式です。
20万円ルールと注意点
- 同一住居・原則1人20万円が上限:複数回に分けて利用可能だが、累計が20万円に達するまで。20万円超は全額自己負担。
- 2回目の20万円が認められる例外:(1) 引っ越して別の住居に住むようになった場合、(2) 要介護度が3段階以上重くなった場合、の2ケースで再度20万円が利用できる「リセット制度」がある。
- 事前申請が絶対条件:承認前に着工した工事は給付対象外。緊急工事でも例外なし(電話による事前相談で部分承認できる自治体あり)。
- 住所地と異なる住宅は対象外:被保険者証に記載された住所の住宅のみ対象。子の家・別荘・施設は対象外。
- 賃貸住宅:家主の承諾書が必要。原状回復が条件付けされることが多く、承諾を得られないケースも。
- 退所前改修:施設入所中の人が退所予定で自宅改修する場合、退所後に居住することが確実な場合に限り認められる。退所しなければ全額返還。
- 福祉用具との重複防止:手すり・スロープ・段差解消機などは「固定式は住宅改修」「移動式は福祉用具」と原則を覚える。
よくある質問
Q1. 自己負担はいくらですか?
自己負担割合(1〜3割)に応じて、20万円を限度とする工事費の1〜3割が本人負担、残り7〜9割が介護保険から給付されます。1割負担の方の場合、20万円の工事で本人負担2万円・給付18万円となります。
Q2. 申請なしで工事してしまった場合は?
事前申請をせずに着工した工事は介護保険給付の対象外で、全額自己負担となります。発見後に追加申請しても遡及給付はされないため、必ず承認後に着工してください。
Q3. 業者は誰でもよいですか?
原則自由ですが、市町村によっては登録事業者制度や要件(建設業許可、福祉住環境コーディネーター在籍 等)を設けています。住宅改修の手続きに不慣れな業者だと書類不備で給付が遅れることがあるため、介護保険対応実績のある業者を選ぶのが無難です。
Q4. 持ち家でないと使えない?
賃貸住宅でも家主の承諾書があれば利用できます。ただし退去時の原状回復義務が条件になりやすいため、家主との合意形成が重要です。サ高住・有料老人ホームの居室は対象外です。
Q5. 何回まで申請できますか?
20万円の限度内であれば回数制限はありません。最初に手すり10万円、次に段差解消5万円といった分割利用も可能です。
参考文献・出典
関連する詳しい解説
- 📖 親トピック:介護保険制度とは|2000年創設の社会保険・仕組みと自己負担をわかりやすく解説 — 住宅改修を含む介護保険給付の全体像
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まとめ
介護保険の住宅改修は、要介護・要支援認定者が自宅を生活しやすく改修する際に20万円を上限に7〜9割を給付する制度です。手すり・段差・床材・扉・便器・付帯工事の6種に限定され、事前申請が絶対条件です。20万円ルール(リセット要件含む)と福祉用具との使い分けを理解した上で、ケアマネと連携して計画的に活用しましょう。介護職にとっては利用者の在宅生活を支える重要な制度知識です。
執筆者
介護のハタラクナカマ編集部
編集部
介護業界の転職・キャリア情報を発信。厚生労働省の公的データと現場の声をもとに、介護職で働く方・転職を検討する方に役立つ情報をお届けしています。
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