
財務省、ケアマネ報酬に「自立支援アウトカム連動」を提言|要介護度改善で報酬増の仕組みへ・27年度改定論点
2026年4月28日の財政制度等審議会で財務省が提言した「居宅介護支援の報酬体系に自立・要介護度改善のインセンティブを組み込む」論点を一次資料から解説。LIFEとの接続、ケアマネ業務への影響、成功報酬型の利点とリスクを読み解く。
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この記事のポイント
財務省は2026年4月28日の財政制度等審議会・財政制度分科会で、居宅介護支援(ケアマネジメント)の報酬体系に「自立や要介護度の改善を促進する構造」を組み込むべきだと提言した。現行は要介護度が重くなるほど基本報酬が上がるため、自立支援に取り組むほど事業所の収入が減る逆インセンティブが生じている。財務省は2027年度(令和9年度)介護報酬改定に向けて、「ケアマネジメントの報酬における自立・要介護度改善へのインセンティブ付け」の検討を厚労省に求めた。同資料では居宅介護支援事業所の利益率6.2%や、労働投入時間と基本報酬の3.0倍乖離といった具体データも示されている。
目次
財務省、ケアマネ報酬に「自立支援アウトカム連動」を提言|要介護度改善で報酬増の仕組みへ・27年度改定論点
介護現場で長年指摘されてきた「ケアマネジメント報酬の構造的ねじれ」が、ついに国の財政審議会で改革テーマとして俎上に載った。財務省が2026年4月28日の財政制度等審議会・財政制度分科会で公表した資料「持続可能な社会保障制度の構築(財政各論Ⅱ)」は、居宅介護支援の基本報酬について、要介護度が重くなるほど報酬が上がる現行構造を「利用者のwell-beingや給付費抑制の観点」から見直すべきだと明記した。
提言の核心は、要介護度の改善や自立支援の成果に応じて報酬が上下する「アウトカム連動型」への転換である。ケアマネジャーが利用者の状態を改善させるほど事業所の収益が増える仕組みにすれば、限られた介護給付費の枠内で質の高いケアマネジメントを引き出せるという論理だ。すでに2021年度に運用が始まった科学的介護情報システム(LIFE)と組み合わせれば、ADLや認知機能の変化を客観データで把握できる土台も整いつつある。介護給付費は2024年度予算で約13.8兆円規模に達しており、今後の高齢化進展を踏まえると「給付効率の質的向上」が避けて通れない論点となっている点も、提言の背景にある。
本記事では、財政審資料の原文と裏付けデータをもとに、提言の具体像、ケアマネ業務に与える影響、そして成功報酬型がはらむ利点と副作用を整理する。2027年度(令和9年度)介護報酬改定の重要論点として、現場で働くケアマネ・介護職・管理者がいま押さえておくべきポイントをまとめた。利用者負担2割対象拡大やサービス類型ごとの「報酬適正化」と並行して、ケアマネ報酬の質的転換が改定議論の柱の1つになるとの見立てから論じていく。
財務省提言の中身:「要介護度が改善したら報酬が増える」構造への転換
「自立や要介護度の改善を促進する構造にすべき」
財務省が公表した「持続可能な社会保障制度の構築(財政各論Ⅱ)」の中で、居宅介護支援の報酬構造に関する記述は次のように明確だ。
「介護報酬は、利用者の要介護度が進むにつれて報酬が高くなる構造だが、利用者のwell-beingや給付費抑制の観点からは、本来、要介護状態からの自立や、要介護度の改善を促進する構造にすべき。ケアマネジメントの報酬における自立・要介護度改善へのインセンティブ付けを検討すべき」(同資料58頁)。
これは単なる「報酬を下げる」議論ではなく、報酬体系の設計思想を変えるべきだという問題提起である。現行の居宅介護支援費は、要支援1から要介護5までの認定区分ごとに月額単位の基本報酬が設定されており、重度化するほど報酬が上がる仕組みになっている。介護保険制度が2000年に創設されて以来、四半世紀にわたって維持されてきた基本構造への転換要求と言える。
労働投入時間と報酬のギャップ。財務省が示した数字
財務省は提言の根拠として、ケアマネジメントの労働投入時間と基本報酬の乖離を示す具体的なデータを掲げた。資料によれば、ケアマネジャーが要支援1の利用者にかける労働時間を1とすると、要介護5の利用者では1.4倍にとどまるが、基本報酬は3.0倍となる。要支援1で4,720円、要介護1で10,860円、要介護3〜5で14,110円という階段状の基本報酬に対し、利用者1人あたりの労働投入時間は89分から122分の範囲に収まる。
つまり、利用者を自立方向に支援できれば事業所の業務量も減るが、それと同時に報酬も大幅に減る。逆に、状態が悪化して要介護度が上がれば、業務量の増加(1.4倍)以上に報酬(3.0倍)が増える構造になっている。財務省はこの労働投入時間と報酬の不均衡を、自立支援への動機を削ぐ「逆インセンティブ」として問題視したかたちだ。
居宅介護支援の利益率は6.2%。介護全体平均を上回る
同じ財政審資料は、居宅介護支援事業所の利益率(税引前収支差率)が6.2%と、介護サービス全体の平均4.7%を上回ることも示した。さらに住宅型有料老人ホーム併設のケアマネ事業所では収支差率が6.9%と、自宅利用者を訪問する事業所(6.1%)よりさらに高い。サービス類型別では訪問介護9.6%、訪問看護10.3%、通所介護6.2%といずれも他産業(中小企業3.3%)を上回る水準にある。
財務省はこの数字を背景に、2027年度(令和9年度)介護報酬改定でサービス類型ごとの「報酬適正化」と並行して、ケアマネジメント報酬の質的転換を求めた。利益率の高さを単純に切り下げるのではなく、「自立支援に取り組む事業所が報われる」評価軸を導入することで、限られた財源を効果的に振り向けようという発想である。
ケアマネ利用者負担導入と並ぶ「両輪改革」
同じ資料は、登録制の対象となる住宅型有料老人ホーム入居者向けに「新たな相談支援の類型」を設け、ケアマネジメントに利用者負担を導入する方針も示している。これは2025年12月24日の大臣折衝事項として政府レベルで決まった事項であり、社会福祉法改正案として今国会に提出済みだ。アウトカム連動の議論は、この利用者負担導入とセットで「ケアマネジメントの質を上げ、対価に見合うサービスにする」改革パッケージの一部として位置づけられている。
LIFEと既存アウトカム加算:「測る土台」はすでに整いつつある
科学的介護情報システム(LIFE)が提供する評価インフラ
アウトカム連動の議論で必ず参照されるのが、2021年度の介護報酬改定で運用が始まった科学的介護情報システム(LIFE)である。LIFEは介護施設・事業所が利用者の状態とケア内容を入力し、厚生労働省が蓄積したデータをもとにフィードバックを返す全国規模の情報基盤で、ADL・栄養・口腔・認知機能・褥瘡などの指標を標準化されたフォーマットで収集する。
2024年度改定で対象サービスが拡大され、訪問介護や訪問看護、居宅介護支援も含めて「ケアプランの情報をLIFEに提出する」流れが強まっている。さらに2026年5月11日からはLIFEの運営が国民健康保険中央会へ移管され、新システムへの切替えと介護情報基盤との連動が予定されている。状態改善を測定するインフラ整備は、すでに着実に進んでいる。
すでに存在する「アウトカム評価加算」。ADL維持等加算の蓄積
「アウトカムに応じた介護報酬」という発想自体は新しくない。通所介護や地域密着型通所介護で運用されているADL維持等加算は、利用者のADL(日常生活動作)をBarthel Indexで測定し、その維持・改善実績をLIFEに提出した事業所に上乗せ報酬を支払う仕組みである。2024年度改定では算定要件が緩和され、事業所単位でのアウトカム評価がさらに浸透した。
同様の発想で、施設系では褥瘡マネジメント加算や排せつ支援加算でもアウトカム評価が組み込まれている。財務省の提言は、この「測れる成果に対して報酬を支払う」考え方を、いよいよケアマネジメントの基本報酬体系そのものへ拡張せよという要請である。アウトカム評価加算が「上乗せ」だった段階から、基本報酬の構造そのものに食い込む段階に踏み込もうとしている点が大きな転換点だ。
想定される評価指標。ADL・IADL・要介護度の変化
具体的にどの指標で「状態改善」を判定するかは、今後の社会保障審議会介護給付費分科会で詰める論点になる。ただし既存制度をたどると、有力候補は次の3軸に整理できる。第1にADL(食事・更衣・移動など基本的動作)、第2にIADL(買い物・服薬管理など手段的動作)、第3に要介護認定区分そのものの変化である。
市町村に交付されるインセンティブ交付金(保険者機能強化推進交付金)でも、すでに「軽度者・中重度者の平均要介護度の変化率」がアウトカム指標として用いられている。財務省はこの自治体向けスキームの効果が限定的だと評価しており、ケアマネ事業所単位での評価に重心を移すべきだという含意も読み取れる。
市町村インセンティブ交付金の限界。「事業所単位」へ重心が移る理由
財政審資料は同時に、市町村・都道府県向けの保険者機能強化推進交付金(一般財源95億円)と介護保険保険者努力支援交付金(消費税財源200億円)について、平均要介護度の変化等のアウトカム指標で配分する仕組みが「機能していないのではないか」と問題提起している。アンケート調査では、自治体の取組による効果が出るまで時間がかかること、地域特性の影響と区別しにくいことが課題として挙がった。
さらに毎年度の交付額が変動するため自治体は安定財源と見なせず、交付金の84.8%が新規事業ではなく既存の第1号保険料相当額に充当されている実態も示された。財務省はこの「自治体段階のインセンティブ機能不全」を踏まえ、利用者と直接接するケアマネ事業所レベルでアウトカム評価の設計をやり直すべきだという論理を組み立てている。
独自見解(A)|ケアマネ業務はどう変わるか:「プラン作成者」から「成果プロデューサー」へ
アセスメント精度とリハ職連携の比重が一段と高まる
仮にアウトカム連動の報酬体系が導入された場合、ケアマネジャーの仕事のウエイトは大きくシフトする。これまでサービス調整の比重が大きかった業務に、利用者の状態を計測・改善する設計力が加わる。具体的には、初回アセスメントでADL・IADL・認知機能を客観指標で記録し、目標設定を「現状維持」ではなく「機能改善」に置く設計が標準になる可能性が高い。
そのためにはリハビリ職(PT・OT・ST)や訪問看護師との情報共有を密にし、ケアプラン上のサービス組み合わせを「改善目標から逆算する」発想に切り替える必要がある。財政審資料が示したケアマネジャーの労働投入時間内訳でも、ケアプラン作成に50分、モニタリングに39分、利用者宅への移動15分、関係者への連絡40分が割かれており、このモニタリング時間と関係者連絡時間の使い方こそ成果に直結する変数となる。
LIFEデータ入力業務とその工数負担
状態改善の評価に必要なデータをケアマネ事業所がLIFEに入力する負担は無視できない。すでに通所系サービスでは、ADLや認知機能のスコアを月次・四半期単位で入力する業務が定着しているが、入力負担に対する加算額が見合わないという声も現場から上がっている。
居宅介護支援にアウトカム評価を組み込む場合、入力業務をどこまで簡素化できるか、また既存のケアプランデータ連携システムと統合できるかが実装可能性を左右する。財政審が同時に推進を求めた「ケアプランデータ連携システム」の普及や、AIを活用したケア記録支援機器の導入支援は、この観点でも重要な前提条件になる。事業所間のデータ連携でケアプランのやりとりをオンライン完結する仕組みは、生産性向上と評価データ整備の両方に効くインフラだ。
「改善ケース」と「重度化対応」の役割分担が見えやすくなる
アウトカム評価の導入は、ケアマネジャー個々人が自分の得意領域を可視化するきっかけにもなり得る。要支援・軽度者の自立支援が得意なケアマネと、看取り期や認知症重度者の伴走が得意なケアマネでは、求められるスキルが異なる。報酬体系がアウトカム軸を持てば、得意領域を伸ばすキャリア戦略を描きやすくなる。
転職市場の視点では、「自立支援アウトカムを上げる事業所運営をしている居宅介護支援事業所」が今後、ブランドや採用競争力を獲得していく可能性が高い。ケアマネ資格を取得して間もない世代にとっては、どの事業所で経験を積むかが、長期キャリアに与える影響も無視できない要素になる。経営の協働化・大規模化を進める社会福祉連携推進法人グループに所属する事業所は、複数事業所のデータを束ねて改善ノウハウを横展開しやすく、結果としてアウトカム評価の獲得も有利になりやすい。
主任ケアマネ・包括支援センターの役割再編
アウトカム評価が基本報酬に組み込まれれば、事業所内のスーパーバイズ機能や教育体制の重要性も増す。経験の浅いケアマネが単独でアセスメント精度を高めるのは難しく、主任ケアマネジャーや地域包括支援センターによる伴走支援が、事業所の評価を支える土台になる。財政審資料でも大分県の事例として、ベテラン専門職の視点・判断をシステム化して地域包括支援センターの介護予防ケアマネジメント業務に活用する取組が紹介されている。
独自見解(B)|成功報酬型がはらむ利点と副作用:「クリームスキミング」をどう防ぐか
利点|質の高いケアマネジメントに財源が向かう循環
アウトカム連動型の最大の利点は、給付費の効率性が向上することだ。財務省は資料の中で、地域支援事業へのインセンティブ交付金(保険者機能強化推進交付金・努力支援交付金)が自治体段階では十分に機能していないと指摘し、その大半が第1号保険料の削減に流れ事業拡大に活用されていない実態を問題視している。
一方、ケアマネ事業所単位でアウトカム評価を組めば、利用者の改善に直結する取り組みが直接報酬につながる。財政審資料が描いた「生産性向上→収益増加→賃上げ→人材確保」の好循環の議論をケアマネ報酬にも適用すれば、自立支援に強い事業所が結果として職員の処遇も改善できる、という構図を想定できる。
リスク①|クリームスキミング。改善しやすい利用者だけ取る
成功報酬型に常につきまとうリスクが、改善見込みの高い利用者だけを選ぶ「クリームスキミング」である。ケアマネジャーが要介護度の改善実績で評価される場合、改善余地の小さい重度・終末期の利用者を敬遠する誘因が生まれかねない。
これを防ぐには、評価指標を「絶対値の改善幅」だけでなく、利用者の初期状態に応じた「リスク調整済みアウトカム」として設計する必要がある。医療分野ではDPC包括払いの導入時に同様の議論が行われ、患者属性で重みづけする調整係数が導入された経緯がある。介護版でも、要介護度・年齢・主病名・認知機能スコアなどで補正したアウトカム評価が現実的な設計となる。
リスク②|「改善至上主義」と尊厳ケアの両立
もう1つの懸念は、改善が見込めない利用者へのケアの質低下である。看取り期の利用者や進行性疾患の利用者は、要介護度が改善することは原理的に難しい。改善実績だけを評価軸にすると、こうした利用者へのケアマネジメントが「報酬上は不利」となる構造が生まれる。
このため、報酬体系の設計では「改善型アウトカム」と並んで「重度化スピードの抑制」「QOL維持」「家族介護負担の軽減」といった多面的な指標を組み合わせる必要がある。LIFEのデータ蓄積はADL以外にも栄養・口腔・認知機能の指標を含んでおり、技術的には複合指標の設計は可能である。
2027年度(令和9年度)改定への波及。ケアマネ処遇改善加算との整合
2026年6月の介護報酬期中改定で、居宅介護支援にも処遇改善加算(加算率2.1%、合計)が初めて新設される。アウトカム連動を本格的に組み込むのは2027年度改定が現実的なタイムラインとなる。社会保障審議会介護給付費分科会は2026年4月27日に2027年度改定の議論を本格スタートしており、財務省提言は分科会の論点ペーパーに反映されていく見通しだ。
事業所運営の視点では、2026年6月施行の処遇改善加算とアウトカム評価加算の双方を確実に算定できる体制を、2027年度本格改定までの1年間で整えておくことが現実的な備えとなる。LIFEデータ提出のフロー整備、リハ職との連携体制、初任ケアマネへの教育プログラムが、転職市場における事業所選びの基準としても比重を増していくだろう。
参考文献・出典
- [1]持続可能な社会保障制度の構築(財政各論Ⅱ)資料- 財務省 財政制度等審議会・財政制度分科会(2026年4月28日)
- [2]
- [3]科学的介護情報システム(LIFE)について- 厚生労働省
- [4]居宅介護支援及び介護予防支援における令和3年度介護報酬改定の影響に関する業務実態の調査研究事業報告書- 厚生労働省(2023年3月)
- [5]令和7年度介護事業経営概況調査- 厚生労働省
- [6]社会保障審議会・介護給付費分科会 資料- 厚生労働省(2026年4月27日)
- [7]全世代型社会保障構築を目指す改革の道筋(改革工程)- 内閣官房(2023年12月22日閣議決定)
まとめ
財務省が2026年4月28日の財政制度等審議会・財政制度分科会で示した「居宅介護支援の報酬に自立・要介護度改善のインセンティブを組み込むべき」という提言は、ケアマネジメントの基本構造そのものへの問題提起である。要介護度が重くなるほど報酬が増える現行体系は、自立支援の動機を弱める逆インセンティブとなっている。これが財務省の論理であり、労働投入時間(要介護5は要支援1の1.4倍)と基本報酬(同3.0倍)の乖離が定量的な裏付けとなった。同時に居宅介護支援の利益率6.2%という収支データが、改革の財源面の余地としても提示された。
制度改革の実装には、LIFEを軸とした評価インフラ、ADL維持等加算で蓄積した運用ノウハウ、そしてクリームスキミングを防ぐリスク調整の3点が同時に求められる。2027年度(令和9年度)介護報酬改定は、ケアマネジャーがどんな仕事をする職種なのかを再定義する局面になる。事業所選びの軸も、利益率の高さや拠点数だけでなく、アウトカムを上げる体制があるかどうかへとシフトしていくだろう。読者がこれからケアマネ職としてキャリアを築くにあたっては、リハ職連携・LIFE運用・主任ケアマネによるOJTの3点セットが整っている事業所かどうかを、面接段階で確認しておくことをすすめたい。
執筆者
介護のハタラクナカマ編集部
編集部
介護業界の転職・キャリア情報を発信。厚生労働省の公的データと現場の声をもとに、介護職で働く方・転職を検討する方に役立つ情報をお届けしています。
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