褥瘡(じょくそう・床ずれ)とは

褥瘡(じょくそう・床ずれ)とは

褥瘡(じょくそう、床ずれ)の定義と発生メカニズム、好発部位、NPUAP/EPUAP分類のステージⅠ〜Ⅳ・DTI・判定不能、体位変換と栄養管理を中心とした予防の流れ、介護職としての観察ポイントを日本褥瘡学会など公的資料を根拠に整理しました。

ポイント

褥瘡(床ずれ)とは

褥瘡(じょくそう)とは、骨の突出部などに長時間圧迫が加わることで、皮膚と骨の間にある軟部組織の血流が低下・停止し、組織が不可逆的な阻血性障害を起こした状態を指します。一般には「床ずれ」とも呼ばれます。日本褥瘡学会の定義に基づき、外力・栄養状態・湿潤・自立度の4要因が重なるほど発生リスクが高まります。

目次

褥瘡が発生するメカニズムと好発部位

褥瘡は単なる「皮膚の傷」ではなく、皮膚と骨の間の軟部組織で起こる阻血性障害です。日本褥瘡学会は、身体に加わった外力(圧迫・ずれ・摩擦)が一定時間以上持続すると、骨突出部周辺の毛細血管が押し潰され、酸素と栄養が組織に届かなくなり、皮膚と皮下組織が壊死すると説明しています。

4つの発生要因

同学会では、褥瘡の発生に深く関わる要素として次の4つを示しています。

  • 外力:体位変換不足、寝具・ベッド・車いすからの圧迫、ずれや摩擦
  • 栄養状態:低栄養、たんぱく質・ビタミン不足、病的骨突出、浮腫
  • 湿潤:失禁・発汗・滲出液による皮膚のふやけ
  • 自立:寝たきり、関節拘縮、ADL低下による自力での体位変換困難

好発部位

骨が突出した部位ほど発生しやすく、仰臥位(あおむけ)では仙骨部で約4割を占めると報告されています。次いで踵部、尾骨部、大転子部、肩甲骨部、後頭部が多い好発部位です。側臥位では大転子部・耳介・くるぶし、座位では坐骨結節と尾骨部が要注意となります。

介護現場では、おむつ交換・移乗・体位変換のたびにこれらの部位を目視・触診で確認し、発赤の有無と消退するかどうかを記録する習慣が事故予防の第一歩になります。

NPUAP/EPUAP分類によるステージ判定

褥瘡の重症度は、米国褥瘡諮問委員会(NPUAP)と欧州褥瘡諮問委員会(EPUAP)が共同で策定した分類が国際的に用いられています。深さに応じてステージⅠ〜Ⅳに加え、DTI(深部組織損傷)疑いと判定不能の計6カテゴリで評価します。

カテゴリ状態主な所見
ステージⅠ消退しない発赤圧迫を除去しても色が戻らない発赤。皮膚の損傷はない。色素の濃い肌では発見が難しい。
ステージⅡ真皮の部分欠損創底が薄赤色の浅い潰瘍。水疱やびらんを伴うことがあり、壊死組織は伴わない。
ステージⅢ全層皮膚欠損皮下脂肪が見える全層欠損。骨・腱・筋肉は露出していない。ポケット形成あり。
ステージⅣ全層組織欠損骨・腱・筋肉が露出。壊死組織やポケット、瘻孔を伴うことが多い最重症。
DTI疑い深部組織損傷疑い表皮剥離はないが皮膚が紫色・栗色に変色、または血疱を形成。触診で熱感・硬結・疼痛。
判定不能Unstageable創底がスラフ(柔らかい壊死組織)やエスカー(固い壊死組織)に覆われ深さが判定できない。

日本では並行して、日本褥瘡学会が開発したDESIGN-R®2020も広く使われています。深さ(Depth)・滲出液(Exudate)・大きさ(Size)・炎症/感染(Inflammation/Infection)・肉芽組織(Granulation)・壊死組織(Necrotic tissue)・ポケット(Pocket)の7項目を点数化し、経過評価に用いる指標です。2020年改定で「DTI疑い」と「臨界的定着疑い」が追加されました。

褥瘡予防の基本フロー

褥瘡は「圧迫の除去・栄養確保・スキンケア」の3軸で予防します。介護現場で再現しやすいよう、日々のケアの流れに沿って整理します。

1. リスクアセスメント(入所・入居・退院時)

ブレーデンスケール(知覚の認知・湿潤・活動性・可動性・栄養状態・摩擦とずれの6項目)やOHスケールでリスクを点数化し、ケアプランへ反映します。低栄養や寝たきりに該当する場合は予防策を強化します。

2. 圧迫・ずれの除去(体位変換とポジショニング)

仰臥位・側臥位を含めて2時間ごとを目安に体位変換を行い、エアマットや低反発マットレス、クッションで体圧を分散します。ボディメカニクスを活かし、ずれを起こさないようスライディングシートで滑らせるように動かすのがコツです。ベッドの頭側挙上は30度以下に抑え、ギャッチアップ後は背抜き・尻抜き・踵抜きでずれを解消します。

3. 栄養管理

たんぱく質・エネルギー・亜鉛・ビタミンC・アルギニンなどが不足すると皮膚の再生力が落ちます。管理栄養士・看護師と連携し、必要に応じて経口補助食品(ONS)や補水を計画します。

4. スキンケア・湿潤コントロール

失禁・発汗で皮膚がふやけると、わずかな摩擦でも表皮剥離(スキン-テア)や褥瘡につながります。弱酸性の洗浄剤で擦らずに洗い、保湿剤で皮膚バリアを保ち、おむつ内の湿潤は早めに解消します。

5. 早期発見と多職種連携

毎日のケア時に好発部位を観察し、消退しない発赤を見つけたら看護師に即時報告。医師・看護師・管理栄養士・リハビリ職・介護職でチーム介入します。ノーリフトケアの発想を取り入れ、持ち上げ介助による摩擦を減らすことも有効です。

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褥瘡とスキン-テア(皮膚裂傷)の違い

高齢者の皮膚トラブルでは、褥瘡とスキン-テアがしばしば混同されます。発生機序と対応が異なるため、観察・記録の段階で見分けることが大切です。

項目褥瘡スキン-テア
発生機序圧迫・ずれによる阻血性障害摩擦・ずれによる皮膚の裂傷
好発部位仙骨・踵・大転子など骨突出部前腕・手背・下腿など露出部
主な原因長時間同一体位、体圧、低栄養移乗時の擦れ、テープ剥離、ぶつけ
進行の特徴深さで重症度が変わる(ステージⅠ〜Ⅳ)皮弁の有無で分類(STAR分類)
主な予防策体位変換、体圧分散、栄養、保湿長袖の着衣、保湿、テープ剥離方法の改善

両者とも「保湿で皮膚バリアを保つ」点は共通しています。介護記録では発生部位・大きさ・色・滲出液の有無を写真や図で残し、看護師・医師の判断材料としましょう。

介護職としての観察ポイントと看護師連携

褥瘡の評価・処置は医師・看護師の役割ですが、最も早く異変に気付けるのはオムツ交換・清拭・移乗で日常的に皮膚を見ている介護職です。次の観察ポイントを習慣化すると、ステージⅠ段階で看護師にエスカレーションでき、重症化を防げます。

  • 消退しない発赤:指で軽く押して赤みが消えなければステージⅠ疑い。すぐ看護師に報告。
  • 皮膚の変色(紫・栗色):DTI疑いの可能性。表面はきれいに見えても深部で進行している場合あり。
  • 水疱・びらん:ステージⅡ以上の可能性。破らずに保護し、被覆材は看護師判断で。
  • 触ると熱感・硬結・冷感:炎症や深部組織損傷のサイン。
  • 痛みの訴え:認知機能が保たれている方では「痛い」「ピリピリする」が初期サイン。

記録のコツ

「右仙骨部に2cm×3cmの発赤、消退なし、痛み訴えあり」といった部位・大きさ・色・消退の有無・痛みを簡潔に書き残します。写真撮影の運用がある施設では、規定に沿って画像も残しましょう。

多職種カンファレンスでの介護職の役割

褥瘡対策チーム(皮膚・排泄ケア認定看護師、管理栄養士、リハビリ職など)の会議では、介護職は日常生活上の情報(食事摂取量、好む体位、排泄パターン、リハビリ参加状況)を提供する立場です。データに基づく意見が、ケアプランの精度を上げます。

よくある質問

よくある質問

Q1. 褥瘡と「床ずれ」は違うものですか?

同じものを指します。医療・介護の専門用語では「褥瘡(じょくそう)」、一般的な呼び名では「床ずれ」と呼びますが、定義・分類は同一です。

Q2. 体位変換は本当に2時間ごとに必要ですか?

日本褥瘡学会のガイドラインでは2時間以内が基本とされます。ただし体圧分散用具(エアマット等)を使用している場合は、利用者の状態に応じて間隔を延ばす運用も認められています。看護師・医師と相談のうえ施設のプロトコルに従ってください。

Q3. ステージⅠの発赤は介護職の判断でケアして良いですか?

発見と報告は介護職の重要な役割ですが、評価・処置の判断は看護師・医師が行います。発赤を見つけた段階でただちに看護師に報告し、観察記録を残しましょう。

Q4. 在宅で家族が褥瘡を予防するには何から始めれば良いですか?

体圧分散マットレスの導入、2時間ごとの体位変換、栄養(特にたんぱく質)の確保、おむつ内の湿潤対策が基本です。訪問看護・ケアマネジャーと相談し、福祉用具のレンタル制度(介護保険)も活用してください。

Q5. 褥瘡は治りますか?

日本褥瘡学会は「多職種連携によるチーム医療と、ガイドラインに基づく治療の実践により、多くの褥瘡が治癒するようになってきた」と説明しています。ただしステージⅢ・Ⅳになると治癒に数か月以上を要する場合もあるため、ステージⅠでの早期発見が最重要です。

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まとめ

褥瘡は、外力・栄養・湿潤・自立度の4要因が重なって発生する阻血性障害で、骨突出部に好発します。NPUAP/EPUAPによるステージⅠ〜Ⅳ・DTI疑い・判定不能の6カテゴリで重症度を評価し、日本ではDESIGN-R®2020と併用されています。介護職の役割は、消退しない発赤や皮膚変色を早期に見つけて看護師に報告し、体位変換・栄養・スキンケア・ノーリフトケアの組み合わせで予防に貢献することです。チームで「ステージⅠで止める」を合言葉にしましょう。

執筆者

介護のハタラクナカマ編集部

編集部

介護業界の転職・キャリア情報を発信。厚生労働省の公的データと現場の声をもとに、介護職で働く方・転職を検討する方に役立つ情報をお届けしています。

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