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📑目次

  1. 01「過去10年で最大の変革」と評される訪問看護改定
  2. 02訪問看護ベースアップ評価料の見直し|(Ⅰ)1,050円・(Ⅱ)36区分への大幅拡充
  3. 03「適切な実施」要件と質の高い訪問看護への評価引き上げ
  4. 04介護報酬2026臨時改定との連動|医療保険・介護保険の二本立て賃上げ
  5. 05訪問看護師のキャリア選択とステーション経営への影響
  6. 06参考資料
  7. 07まとめ|「賃上げ+質の証明」を満たすステーションを選ぶ時代へ
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訪問看護ベースアップ評価料、1,050円から最大2,880円へ|2026年6月診療報酬改定で「質の評価」と賃上げ二本柱

訪問看護ベースアップ評価料、1,050円から最大2,880円へ|2026年6月診療報酬改定で「質の評価」と賃上げ二本柱

2026年6月施行の令和8年度診療報酬改定で、訪問看護ベースアップ評価料(Ⅰ)が780円→1,050円(継続賃上げ実施STは1,830円)に拡充。Ⅱは18→36区分。一方で「適切な実施」要件と質の高い訪問看護への評価引き上げが柱に。改定率+3.09%・賃上げ目標+3.2%の意味、現場の給与・働き方への影響を一次資料から読み解きます。</meta_description> <parameter name="status">draft

ポイント

この記事の結論

2026年6月1日施行の令和8年度診療報酬改定で、訪問看護ベースアップ評価料(Ⅰ)は現行780円から1,050円へ、継続的に賃上げを実施しているステーションは1,830円へ引き上げられる。本体改定率は+3.09%(2年度平均)、うち賃上げ分が+1.70%を占める。同時に「漫然かつ画一的な訪問看護」の禁止や訪問開始・終了時刻の記録義務化など「適切な実施」要件が新設され、質の高い訪問看護に対する機能強化型管理療養費の引き上げと併せ、ステーションは「賃上げと質の証明」の両方が問われる。届出期限は5月7日〜6月1日(必着)で、既算定ステーションも再届出が必須となる。

📑目次▾
  1. 01「過去10年で最大の変革」と評される訪問看護改定
  2. 02訪問看護ベースアップ評価料の見直し|(Ⅰ)1,050円・(Ⅱ)36区分への大幅拡充
  3. 03「適切な実施」要件と質の高い訪問看護への評価引き上げ
  4. 04介護報酬2026臨時改定との連動|医療保険・介護保険の二本立て賃上げ
  5. 05訪問看護師のキャリア選択とステーション経営への影響
  6. 06参考資料
  7. 07まとめ|「賃上げ+質の証明」を満たすステーションを選ぶ時代へ

「過去10年で最大の変革」と評される訪問看護改定

2026年6月、令和8年度診療報酬改定が施行される。本体+3.09%という大型改定の背後には、訪問看護にとって「過去10年で最大の変革」と評される制度設計が組み込まれている。柱は二つ。一つは訪問看護ベースアップ評価料の大幅な拡充による賃上げ原資の確保。もう一つは「適切な実施」を厳しく問う運営基準の見直しと、質の高い訪問看護を提供するステーションへの報酬引き上げである。

同じ2026年6月には、介護報酬側でも臨時改定が実施され、訪問看護には介護保険ベースで1.8%の処遇改善加算率が新たに設定された。医療保険・介護保険の両建てで賃上げ財源が積み上がる構図だが、その裏側で「漫然とした訪問」「同一建物への画一的訪問」「キックバックによる利用者誘導」など、これまでグレーゾーンとされてきた運営形態には強い規制が入る。

本記事では、厚生労働省の説明資料・中医協答申・告示・事務連絡をもとに、訪問看護ベースアップ評価料の点数構造、質の高い訪問看護への評価引き上げ、そしてこの改定が訪問看護師個人のキャリア選択とステーション経営にどう影響するかを、一次資料に立脚して整理する。読者である訪問看護師・ステーション勤務者・看護職転職検討者が、自分の職場の方向性を読み解く視座を提供したい。

訪問看護ベースアップ評価料の見直し|(Ⅰ)1,050円・(Ⅱ)36区分への大幅拡充

評価料(Ⅰ)は780円→1,050円、継続賃上げ実施STは1,830円

厚生労働省「令和8年度診療報酬改定について(訪問看護ステーション向け)」によれば、訪問看護ベースアップ評価料(Ⅰ)は現行780円から1,050円に引き上げられる。さらに、令和7年度以前から継続的に賃上げを実施しているステーションには、より高い水準として1,830円が適用される。

段階的な引き上げも明示されており、令和9年6月以降は「新たに賃上げを行うステーション」が2,100円、「継続的賃上げ実施ステーション」が2,880円へと、ほぼ倍増する設計となっている。利用者1人につき月1回算定できるこの評価料は、ステーションの基礎収益を底上げする中核的な仕組みである。

評価料(Ⅱ)は18区分から36区分へ細分化、最大1,580円

評価料(Ⅱ)は、賃上げ原資が(Ⅰ)だけでは不足するステーションが追加で算定する仕組みで、現行は18区分(10円〜500円)だった。改定後は36区分に倍増し、令和8年6月時点で30円〜1,080円、令和9年6月以降は最大1,580円(区分36)まで拡大する。

各ステーションの「賃金改善に必要な額」を、より粒度高く反映できるよう設計された。月額賃金総額に厚生労働大臣が定める係数(令和8年度は1.29)を乗じて算定基礎額を計算し、対応する区分を選ぶ仕組みである。係数には法定福利費や賞与分が織り込まれている。

対象職員が拡大|事務職員・40歳未満医師等も賃上げ対象に

大きな変更点が、ベースアップ評価料の対象職員の拡大である。現行制度では「主として医療に従事する職員(医師及び歯科医師を除く)」に限定されていたが、改定後は「当該訪問看護ステーションに勤務する職員」へと文言が改められ、事務職員等も明確に対象に含まれる。さらに、40歳未満の医師・歯科医師・薬局薬剤師なども新たに対象範囲に加わった(経営者・役員等は除く)。

政府は、本改定により対象職員の賃金総額に対し令和8年度+3.2%、令和9年度+3.2%のベースアップを目指すとしている。看護補助者・事務職員については「他産業との人材獲得競争」を踏まえ、それぞれ+5.7%×2年というより高い水準が掲げられた。

使途に「夜勤手当の増額」が追加|24時間体制の人材確保を後押し

もう一つ実務的に重要な変更が、評価料収入の使途に「夜勤手当の増額」が明記された点である。看護職員処遇改善評価料及びベースアップ評価料による収入を、夜勤手当に充てることが可能となった。訪問看護では24時間対応体制が求められるが、夜間対応スタッフの確保は多くのステーションで課題となっており、夜勤インセンティブを強化する原資として活用できる。

届出期限は5月7日〜6月1日|既算定STも再届出が必須

厚生労働省保険局医療課が令和8年4月24日付で発出した事務連絡「令和8年度診療報酬改定におけるベースアップ評価料に係る施設基準の届出について(周知)」では、「令和8年度診療報酬改定以前にベースアップ評価料に係る届出を行っており、引き続き令和8年6月1日以降もベースアップ評価料を算定する保険医療機関等であっても、施設基準において求められる内容が変更されていることから、令和8年6月1日までに改めてベースアップ評価料の届出を行う必要がある」と明記された。

提出期間は5月7日(木)から6月1日(月)必着で、地方厚生局(都道府県事務所)への提出が求められる。届出を失念すると6月以降の算定ができず、月額数十万円規模の収益機会を失うため、ステーション管理者の最優先事項となっている。

「適切な実施」要件と質の高い訪問看護への評価引き上げ

「漫然かつ画一的な訪問看護」の禁止が留意事項通知に明記

賃上げ拡充の一方で、運営面では強力な適正化策が導入された。算定留意事項通知に「指定訪問看護の実施にあたっては、利用者の心身の状況等に応じて妥当適切に行い、漫然かつ画一的なものとならないよう、看護目標及び訪問看護計画に沿って行うこと」という文言が追加された。

さらに「利用者の心身の状況等を踏まえずに一律に指定訪問看護の日数、回数、実施時間及び人数を定めることや、定期的な指定訪問看護を実施していない者が指定訪問看護の日数等を定めることは認められない」とも記載されている。これは、高齢者住まい等で入居者全員に画一的なメニューで訪問看護を提供してきた一部の運営形態に対する明確な警告である。

訪問開始時刻・終了時刻の記録義務化と時間規定の厳格化

訪問看護記録書への記載事項として「実際の指定訪問看護の開始時刻及び終了時刻」を記録し保管することが明確化された。訪問看護基本療養費(Ⅰ)・(Ⅱ)の実施時間は30分から1時間30分程度を標準とし、20分を下回る訪問は原則として算定できないこと、同一日に同一利用者へ標準時間を下回る訪問が複数回行われる運用は「指定訪問看護を実施したとは認められない」ことが明記された。

これは「短時間訪問を回数で稼ぐ」運営モデルへの規制であると同時に、看護記録の電子化・1分単位での時間管理を実務上必須にする変更でもある。紙記録のままでは事務負担が爆発するため、電子カルテ・タブレット端末への投資が経営判断の鍵となる。

機能強化型訪問看護管理療養費の引き上げと精神科特化型(4)新設

質の高い訪問看護への評価引き上げとして、機能強化型訪問看護管理療養費の月初日評価が引き上げられた。中医協答申をもとに整理すると、機能強化型1は13,730円(+500円)、機能強化型2は10,430円(+400円)、機能強化型3は9,000円(+300円)。これに加え、機能強化型4が新設され、月初日9,030円が設定された。

機能強化型4は、支援ニーズの高い精神科訪問看護利用者を積極的に受け入れ、精神科病院や保健所等の地域関係機関と連携する体制を持つステーションを評価する区分である。常勤の保健師・助産師・看護師・准看護師4名以上、看護職員割合6割以上、24時間対応体制加算届出など、相当に厳しい施設基準が設定されている。精神保健福祉士等の配置や地域連携実績が鍵となる見込みだ。

運営基準にBCP・安全管理・誘引禁止が新規定

指定訪問看護の事業の人員及び運営に関する基準も改正された。事故発生時の対応体制、感染症・災害時の業務継続計画(BCP)の策定と研修・訓練の実施が運営基準として明確化された。残薬対策の取り組みも新たに位置づけられている。

さらに、保険医療機関及び保険医療養担当規則の見直しにより、「特定の訪問看護ステーション等を利用するべき旨の指示等を行うことの対償として、財産上の利益を収受すること」、すなわち医療機関と訪問看護ステーション間でのキックバック類似の利益供与が禁止された。自社グループ内での過度な囲い込みや経済的利益による不適切誘導は、指導・監査の対象となる。

同一建物減算の細分化と包括型訪問看護療養費の新設

同一建物(同一敷地内を含む)に居住する利用者への訪問看護評価も大幅に再設計された。訪問看護管理療養費の月の2日目以降は、単一建物居住者数(20人未満/20〜49人/50人以上)と1月当たりの訪問日数(15日以下/16〜24日/25日以上)の組み合わせで報酬が細分化される。

さらに、高齢者向け住まい等に併設・隣接するステーションが、別表第7・第8該当者や特別訪問看護指示書対象者に対して24時間体制で計画的・随時の頻回訪問を行った場合に、1日単位で算定する「包括型訪問看護療養費」が新設された。算定には24時間対応体制、日中・夜間各1回以上の訪問、地域の医療機関・他ステーションとの合同研修・事例検討会の実績などが要件となる(地域連携実績は令和9年5月までの経過措置あり)。

ICT連携加算とD to P with Nの本格評価

質の評価の柱として、ICT連携も大きく前進した。他の保険医療機関等の関係職種がICTを用いて記録した利用者の診療情報等を活用して訪問看護の計画的管理を行った場合、「訪問看護医療情報連携加算」1,000円/月が新設された。算定には特別の関係にない連携機関5以上などの要件がある。

また、医師がオンライン診療を行う際に訪問看護師が利用者宅に同行して診療補助を行うD to P with Nの仕組みに対し、「訪問看護遠隔診療補助料」2,650円/日が新設された。これまで制度的に位置づけが弱かった「訪問看護師×医師のリアルタイム連携」が、初めて本格的に診療報酬で評価された画期的な改定項目である。

介護報酬2026臨時改定との連動|医療保険・介護保険の二本立て賃上げ

介護保険側の訪問看護処遇改善加算は1.8%

2026年6月に施行されるのは診療報酬改定だけではない。同日付で介護報酬の臨時改定も実施され、介護保険側の処遇改善加算(介護職員等処遇改善加算)が訪問看護に新たに適用される。厚生労働省告示で確定した訪問看護の加算率は1.8%である。同じ臨時改定では、訪問介護28.7%、特養17.6%、グループホーム22.8%、訪問リハ1.5%、居宅介護支援2.1%という、サービス間で大きな差がついた構造になっている。

訪問看護ステーションでは、医療保険利用者に対しては診療報酬のベースアップ評価料を、介護保険利用者に対しては介護報酬の処遇改善加算を、それぞれ算定する二本立てとなる。実務上は利用者ごとの保険適用区分を整理し、両方の届出と賃金改善計画を同時に管理する必要がある。

給付金との合わせ技|2026年5月までのつなぎ補助

2026年6月の本格改定までのつなぎとして、令和7年度補正予算で「医療機関等における賃上げ・物価上昇支援事業」が実施された。訪問看護ステーションには1施設あたり228,000円が給付される(病院は許可病床数×84,000円、無床診療所は1施設×150,000円)。給付金の支給対象は令和8年3月1日時点でベースアップ評価料を届け出ていたステーションに限られた。

つなぎ給付金から本改定への接続によって、令和7年12月から令和9年5月までの賃金改善が制度的に途切れない仕組みになっている。経営者の視点では、給付金で確保した原資を令和8年6月以降の本格的なベア継続にどう接続するかが問われる。

「継続的賃上げ実施ステーション」優遇のロジック

今回の改定で特徴的なのが、令和6・7年度から賃上げに取り組んできた「継続的賃上げ実施ステーション」を、新たに賃上げを行うステーションよりも高い水準で評価する仕組みである。日本看護協会の整理によれば、「令和8年3月31日までにベースアップ評価料の届出を行ったステーション」、または届け出ていなくても「令和6年3月時点と比較して5.5%(看護補助者・事務職員は8%)に相当する水準以上のベア等を行っていれば」継続的賃上げ実施ステーションに該当する。

これは「過去の賃上げ努力を制度として評価する」設計であり、後発で賃上げを始めるステーションとの間に明確な点数差をつけることで、継続的なベア実施を促す仕組みになっている。看護職員の側から見れば、継続的賃上げ実施ステーションかどうかは、勤務先選びの重要な判断材料となる。

令和9年度の倍増設計と附帯意見の宿題

もう一つ重要なのが、令和9年度(2027年6月以降)に評価料の額がほぼ倍増する段階的設計である。これは一時的な賃上げではなく、継続的なベア実施を制度として定着させる強い意志を示している。

一方で、中医協の答申附帯意見では、訪問看護について「同一建物居住者への訪問看護の評価の見直しや、一連の訪問看護を1日あたりで包括的に評価する仕組みが新設されたこと等を踏まえ、指定訪問看護事業所の経営状況等の把握や今回改定の検証を行った上で、評価の在り方について引き続き検討する」とされている。包括型訪問看護療養費の運用結果次第では、令和10年度改定でさらに大きな再編が来る可能性がある。

訪問看護師のキャリア選択とステーション経営への影響

給与改善は「職場の選び方」で大きく差がつく時代に

本改定で訪問看護師個人の給与水準は底上げされる方向だが、その恩恵の大きさは勤務先のステーションがどの評価区分を取れるかで大きく左右される。具体的には次の3つの軸で職場が分化していく。

第一に、評価料(Ⅰ)が継続的賃上げ実施ステーションの1,830円か、新規賃上げの1,050円か。第二に、評価料(Ⅱ)を算定するか、しないか、また算定する場合の区分(30円〜1,080円)。第三に、機能強化型管理療養費の取得有無と区分(1〜4)。これらの組み合わせで、同じ訪問看護師でも年収数十万円規模の差が生まれる構造になる。

転職を検討する看護職にとっては、求人票の賃金水準だけでなく、応募先ステーションが「継続的賃上げ実施ステーション」に該当するか、機能強化型のどの区分か、評価料(Ⅱ)を算定しているかを確認することが、実質的な処遇判断のチェックポイントになる。

「賃上げ目標+3.2%」の意味|年収換算でいくら上がるか

政府が掲げる賃上げ目標は対象職員の賃金総額に対し+3.2%×2年(看護補助者・事務職員は+5.7%×2年)。仮に年収450万円の訪問看護師の場合、+3.2%は年額14万4,000円程度のベア、2年累計では+6.5%(年額29万円規模)に相当する。これはあくまで「制度が支援する目標」であり、各ステーションの実際の賃上げ率は経営判断に委ねられる。

ただし、評価料収入を賃金改善に充てることが施設基準として求められるため、評価料を算定するステーションでは制度上、賃上げが義務化される構造である。届出様式の中には「賃金改善実績報告書」の提出が含まれ、毎年8月の報告で実績がチェックされる。

精神科訪問看護・小規模特化型・大規模統合型への分化

機能強化型4の新設で、精神科訪問看護に特化した運営戦略の経済的価値が明確に位置づけられた。精神保健福祉士の配置や精神科病院との連携実績を持つステーションは、月初日9,030円の算定が可能となり、利用者数によっては年間数百万円規模の収益要因となる。

同時に、同一建物減算の細分化と包括型訪問看護療養費の新設により、サ高住・住宅型有老ホーム併設の大規模ステーションは「効率的に頻回訪問できる体制」を整える経営判断を迫られる。一方、地域密着で多様な疾患・病態の利用者を訪問する小規模ステーションは、機能強化型2・3を目指して常勤看護師数や24時間対応体制を整える方向に向かう。訪問看護師は、自分が「どの方向性のステーションで専門性を磨きたいか」を選ぶ時代に入る。

ステーション経営の「アクションリスト」

ステーション管理者・経営者の側から見れば、本改定への対応は次の優先順位で進める必要がある。最優先(5月中)は、ベースアップ評価料の再届出(5月7日〜6月1日必着)、訪問看護記録書への開始・終了時刻記載体制の整備、就業規則・賃金規定の改定。高優先(6月まで)は、電子カルテ・記録ツールの導入検討、機能強化型・評価料(Ⅱ)の算定可否の精査、賃金改善計画の職員説明。

中期的(令和9年6月までの1年間)には、継続的賃上げ実施ステーションとしての要件維持、ICT連携加算・D to P with N対応のためのオンライン環境整備、精神科訪問看護への参入可否、包括型算定のための地域連携実績作りなど、令和9年度の倍増設計に乗るための準備が求められる。

未届出・賃上げ未実施STは「淘汰のリスク」を抱える

逆に、評価料の届出を行わない、あるいは継続的な賃上げを実施しないステーションは、入院基本料等での減算規定(医療機関側)と類似の構造で、相対的な収益減と人材流出のリスクを抱える。賃上げ余力のないステーションでは看護師の離職が進み、24時間対応体制が維持できなくなり、機能強化型から落ちる、というスパイラルに陥る可能性がある。

厚生労働省の制度設計は、結果として「賃上げを実施し質を担保するステーションへの集約」を促す方向にあるといえる。訪問看護需要は人口高齢化で右肩上がりだが、その需要を担えるのは、今回の改定の波に乗れたステーションに限られる構造になりつつある。

まとめ

2026年6月施行の令和8年度診療報酬改定は、訪問看護にとって「過去10年で最大の変革」と評される内容となった。本体改定率+3.09%・賃上げ分+1.70%という大型予算を背景に、訪問看護ベースアップ評価料(Ⅰ)は780円から1,050円(継続的賃上げ実施STは1,830円)へ、評価料(Ⅱ)は18区分から36区分へと大幅に拡充され、令和9年6月以降は最大1,580円までの段階的引き上げが予定されている。対象職員は事務職員等にも拡大し、夜勤手当への充当も可能になった。

同時に、「漫然かつ画一的な訪問看護」の禁止、訪問開始・終了時刻の記録義務化、キックバック類似行為の禁止、機能強化型管理療養費の引き上げと精神科特化型(4)の新設、包括型訪問看護療養費の新設など、「適切な実施」を厳しく問う運営基準と質の高い訪問看護への評価引き上げが両輪で進む。介護報酬2026臨時改定の処遇改善加算1.8%との二本立てで賃上げ財源は積み上がるが、その恩恵は「届出を行い、要件を満たし、賃上げを継続するステーション」に集中する設計である。

訪問看護師の側から見れば、職場選びは「給与の数字」だけでなく「継続的賃上げ実施ステーションかどうか」「機能強化型のどの区分か」「評価料(Ⅱ)を算定しているか」という制度的な強さを見極める時代に入った。あなたの今いるステーションは、令和9年度の倍増設計に乗れる体制だろうか。あるいは、転職を考えるなら、どの方向性のステーションで自分の専門性を磨きたいだろうか。

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公開日: 2026年4月28日最終更新: 2026年4月28日

執筆者

介護のハタラクナカマ編集部

編集部

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