訪問看護のD to P with N オンライン診療補助、評価明確化
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訪問看護のD to P with N オンライン診療補助、評価明確化

厚労省は5月8日付Vol.1501で訪問看護師がD to P with Nによるオンライン診療を補助した場合の介護報酬請求方法を明確化。2026年6月の診療報酬改定と連動した運用ルールを解説。

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厚生労働省は2026年5月8日付の介護保険最新情報Vol.1501で、訪問看護事業所の看護師等が「D to P with N」(Doctor to Patient with Nurse)によるオンライン診療を補助した場合の介護報酬請求方法を明確化しました。訪問看護計画書に予定がない場面でのオンライン診療補助は月1回に限り、所要時間20分未満の訪問看護費(314単位)を算定できます。2026年6月の診療報酬改定で評価が明確化されたことを受けた介護保険側の整合措置で、訪問看護師の役割拡大と医療連携の実効性向上を狙った重要な制度改正です。本通知は次期介護報酬改定までの暫定運用ですが、2027年度本格改定での評価精緻化を見据えた第一歩です。

目次

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訪問看護のD to P with N解説(kaigonews)

在宅医療の現場では「医師が遠方の患者をオンライン診療する際、看護師が患家に同席して診療を補助する」という形態が広がっています。この「D to P with N」モデルは、医師の物理的訪問が困難な離島・中山間地域や、認知症等で本人だけではオンライン診療を受けにくい高齢者にとって貴重な医療アクセス手段です。コロナ禍を契機にオンライン診療の活用機会が増え、訪問看護師の役割としても定着しつつあります。

2026年6月の診療報酬改定で、医療保険側では新たな「訪問看護遠隔診療補助料」(C005-1-3)が設けられました。これに対応して、厚生労働省は2026年5月8日付Vol.1501で介護保険における取り扱いを明確化。訪問看護計画書に予定がない場面でD to P with Nのオンライン診療補助を行った場合、月1回に限り「所要時間20分未満」の訪問看護費を算定できる運用ルールが示されました。介護保険最新情報での通知発出は介護保険制度における運用ルールの正式変更を意味し、各都道府県・市町村を通じて全国の訪問看護事業所に周知されます。

本記事では、Vol.1501の通知の中身、医療保険との関係、現場運用への影響、そして今後の在宅医療における訪問看護師の役割拡大という観点から、独自視点で整理します。訪問看護ステーションの管理者・看護師にとって、6月の運用開始までに整備すべき実務ポイントも合わせて解説します。

D to P with Nとは何か(基礎)

本通知を理解する前提として、D to P with Nの仕組みと既存の遠隔診療形態を整理しておきます。

D to P with N の定義

「Doctor to Patient with Nurse」の略で、医師(D)と患者(P)の間に看護師(N)が同席する遠隔診療形態です。医師は遠隔地から情報通信機器(ビデオ通話システム)で患者の診察を行い、看護師が患家でバイタル測定・身体観察・必要な処置の補助・本人の状態説明を担当します。

従来の遠隔診療形態との違い

  • D to P:医師と患者の直接オンライン診療(看護師の同席なし)。本人が情報通信機器を操作できる方向け
  • D to D:医師同士の遠隔コンサルテーション。患者は対面で別の医師に診察される
  • D to P with N:看護師が患家に訪問してオンライン診療を補助。本人が機器操作困難な認知症・寝たきりの方向け

適用場面の典型例

  • 過疎地・離島で医師の訪問が困難な利用者の定期診察
  • 認知症で本人だけではビデオ通話を操作・回答できないケース
  • 体調急変時の医師判断(24時間対応の訪問看護ステーション)
  • 専門医による高度な医療判断が必要な利用者(がん終末期等)

通知の中身:算定できる訪問看護費

2026年5月8日付Vol.1501で示された運用ルールは次のとおりです。訪問看護指示書の有効期間内の利用者の訪問看護計画書上、予定された訪問看護がない場面でオンライン診療の補助を実施した場合に算定できます。

算定できる単位数(月1回限り)

訪問看護費

  • イ 指定訪問看護ステーションの場合:(1)所要時間20分未満 314単位
  • ロ 病院又は診療所の場合:(1)所要時間20分未満 266単位

介護予防訪問看護費

  • イ 指定訪問看護ステーションの場合:(1)所要時間20分未満 303単位
  • ロ 病院又は診療所の場合:(1)所要時間20分未満 256単位

適用範囲

「次期介護報酬改定までの間」として暫定的な運用となり、2027年度改定で恒久的な評価枠組みに組み込まれることが見込まれます。月1回に限定されているのは、過剰な算定を防ぎつつ実態を把握する段階としての位置づけです。

医療保険との連携:合議による費用精算

訪問看護計画書に基づく計画的な指定訪問看護の実施時にオンライン診療の補助も行った場合は、計画的な指定訪問看護に係る時間に当該補助に要した時間を合算した時間区分の訪問看護費を算定する仕組みです。

連携保険医療機関からの依頼ケース

連携する保険医療機関からの依頼を受けて、訪問看護指示書の交付がない利用者に対して訪問看護計画書に基づいて行う指定訪問看護以外の場面で、在宅で療養を行っている又は緊急に診療を要する患者であって通院が困難なものに対し、保険医療機関の医師が看護師等が同席の下で診療を行う必要があると判断した場合に、患者の同意を得て看護師等が患家を訪問し、情報通信機器を用いた診療の補助を行ったケース。

診療報酬「訪問看護遠隔診療補助料」(C005-1-3)

このケースでは、診療報酬医科点数表の区分番号「C005-1-3」訪問看護遠隔診療補助料を保険医療機関が算定し、合議の上、費用の精算を行う形になります。介護保険と医療保険の併行運用で、訪問看護ステーションと医療機関の合議が必要です。

現場運用への影響(独自見解)

本通知は訪問看護師の役割を大きく広げる契機になります。次の3点で現場運用に影響が出ます。

1. 訪問看護師の医療連携実務が増加

「医師に代わって患家に行く」役割が制度化されることで、医療機関との連携実務が増えます。特に過疎地・離島の訪問看護ステーションでは医師の訪問頻度が限定的なため、看護師がオンライン診療を補助する形態が日常的な業務になる可能性があります。事業所は連携医療機関との取り決め、診療補助時のマニュアル、合議による費用精算ルールを整備する必要があります。とりわけ複数医療機関と契約を結ぶステーションでは、機関ごとに精算様式や合議手順が異なるケースが多く、事務処理負荷を軽減するための様式統一・電子化が急務となります。

2. 利用者・家族への説明責任

D to P with Nは利用者にとって「いつもの看護師さんと一緒に医師の診察を画面で受ける」という形態。本人や家族への事前説明、同意取得、情報通信機器の操作支援が看護師に求められます。認知症利用者への対応では家族の同席が必須になる場面も増えるでしょう。同意書のひな型整備、家族向け案内パンフレットの作成、通信トラブル時のリカバリー手順なども事業所として準備しておきたい項目です。

3. 訪問看護ステーションの収益構造の変化

月1回限定とはいえ、計画外の訪問が制度化されたことで訪問看護ステーションの収益構造に新たな柱が加わります。特に小規模事業所では追加収入として無視できない規模で、月20人の対象利用者があれば月6,280単位(20人×314単位)の追加算定が見込まれます。連携医療機関の開拓が事業所収益に直結する時代に入ります。地域包括ケアシステムにおける訪問看護ステーションの位置づけは、医療連携拠点としての性格を一段と強めることになるでしょう。

2027年度改定への布石

本通知は「次期介護報酬改定までの間」という暫定的な位置づけです。2027年度の本格的な介護報酬改定では、D to P with Nの評価がより精緻化されることが見込まれます。

議論ポイント

  • 月1回上限の妥当性(実態調査を踏まえた上限引き上げの可能性)
  • 所要時間20分未満区分の妥当性(より長時間の補助への対応)
  • 計画的訪問看護との合算ルールの精緻化
  • 看護師の研修・資格要件(医療連携技術の標準化)

厚労省の方向性

2026年4月27日の社会保障審議会介護給付費分科会では「令和9年度(2027年度)介護報酬改定に向けた検討の進め方」が示され、訪問看護の機能強化と医療連携の効率化が重点論点に位置づけられました。本通知はその第一歩であり、訪問看護師の役割が「身体ケア提供」から「医療連携の中核」へとシフトする流れが続く見込みです。

訪問看護師のキャリアへの影響

本制度改正は、訪問看護師のキャリア価値を高める方向に作用します。医師との連携実務の経験は、認定看護師・専門看護師・特定行為研修修了者といったキャリアパスでも評価される要素であり、訪問看護経験者の転職市場での価値が一段と上がる可能性があります。

まとめ

訪問看護のD to P with Nオンライン診療補助の評価明確化は、訪問看護師の医療連携実務を制度的に裏付ける重要な改正です。月1回限定の暫定運用ですが、訪問看護計画外の補助が初めて公的に評価対象となった点に大きな意義があります。事業所は連携医療機関との取り決め、合議による費用精算ルール、看護師の研修体制を6月の運用開始までに整備する必要があります。

本通知は2027年度介護報酬改定への布石でもあり、訪問看護師の役割が「身体ケア提供」から「医療連携の中核」へシフトする流れは続きます。訪問看護経験者のキャリア価値が高まる時代に入ったと言えるでしょう。在宅医療の質を支える制度改正として、医師・看護師・利用者・家族すべてのステークホルダーが恩恵を受ける設計を、現場運用で確実に実装していくことが求められます。

訪問看護ステーションの管理者・看護師は、6月の運用開始までに次の準備を進めることをお勧めします。①連携医療機関との合議書面の整備、②D to P with N対象利用者リストの作成、③情報通信機器の機器選定とトラブル対応マニュアル、④看護師向け医療連携研修の実施。これらを整えれば、月1回の算定機会を確実に活かせるとともに、利用者からの信頼向上にもつながります。

執筆者

介護のハタラクナカマ編集部

編集部

介護業界の転職・キャリア情報を発信。厚生労働省の公的データと現場の声をもとに、介護職で働く方・転職を検討する方に役立つ情報をお届けしています。

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