
ベースアップ評価料とは
ベースアップ評価料は看護職員等の賃上げを診療報酬で手当する仕組み。外来・在宅/訪問看護の2系統の点数、対象職員、処遇改善加算との違い、2026年6月改定での拡充を解説します。
ベースアップ評価料とは(要点)
ベースアップ評価料とは、看護職員などの賃上げ財源を診療報酬で手当する仕組みで、2024年6月に新設された加算です。外来・在宅ベースアップ評価料(保険医療機関向け)と訪問看護ベースアップ評価料(訪問看護ステーション向け)の2系統があり、得られた収入は全額、対象職員の基本給・手当・賞与等の引上げに充てる必要があります。2026年6月診療報酬改定で点数が大幅に拡充されました。
目次
制度の位置づけと全体像
ベースアップ評価料の位置づけ
ベースアップ評価料は、医療従事者の賃上げを目的に2024年(令和6年)6月の診療報酬改定で新設された評価料です。一般的な診療報酬が「医療行為の対価」であるのに対し、ベースアップ評価料は「賃金改善のための財源」として機能する点が特徴で、得られた収入は全額、対象職員の基本給または毎月決まって支払われる手当の引上げ、およびそれに伴う賞与・時間外手当・法定福利費の増加分に充てる必要があります。
2系統の評価料
制度は対象施設によって2系統に分かれます。1つ目は外来・在宅ベースアップ評価料で、外来診療または在宅医療を実施する保険医療機関(病院・有床診療所・無床診療所)が対象です。2つ目は訪問看護ベースアップ評価料で、訪問看護ステーションが対象となります。いずれも(Ⅰ)と(Ⅱ)の区分があり、(Ⅰ)が基本となる評価料、(Ⅱ)は(Ⅰ)だけでは賃金改善が不十分な場合に追加的に算定する評価料です。
対象職員
賃上げの対象となるのは、看護職員、薬剤師、その他医療関係職種(理学療法士・作業療法士・言語聴覚士・管理栄養士・社会福祉士・精神保健福祉士・診療放射線技師・臨床検査技師・歯科衛生士・介護職員等)です。医師・歯科医師は対象外となります。訪問看護ステーションでは看護職員・看護補助者・理学療法士等が対象です。
2026年6月改定での拡充
2026年(令和8年)6月の診療報酬改定では、医療従事者の大幅な賃上げを目指して点数が大幅に引き上げられました。特に外来・在宅/訪問看護ベースアップ評価料(Ⅰ)は、現行から2〜3倍近い水準への増点が予定されており、2026年6月から2027年5月までの第1段階と、2027年6月からの第2段階の2段階で引き上げが行われます。
点数と算定単位(2026年6月改定)
ベースアップ評価料の点数(2026年6月改定)
外来・在宅ベースアップ評価料(Ⅰ)
- 初診時:6点 → 2026年6月〜:17点 → 2027年6月〜:34点
- 再診時等:2点(1日につき)
- 訪問診療時(同一建物居住者等以外):28点
- 訪問診療時(同一建物居住者等):7点
訪問看護ベースアップ評価料(Ⅰ)
- 算定単位:利用者1人につき月1回
- 現行:780円 → 2026年6月〜:1,050円(+270円)
- 2027年6月〜:2,100円へ大幅増点
継続的賃上げ要件を満たす場合(訪問看護)
- 2026年6月〜:1,830円
- 2027年6月〜:2,880円
共通の使途ルール
得られた収入は全額、対象職員の以下に充てる必要があります。
- 基本給または毎月決まって支払われる手当の引上げ
- 上記引上げに伴う賞与の増加分
- 上記引上げに伴う時間外手当の増加分
- 上記引上げに伴う法定福利費(社会保険料等)の増加分
処遇改善加算との違い
ベースアップ評価料と処遇改善加算の違い
「賃上げ財源」という点では介護分野の処遇改善加算と似ていますが、根拠制度・対象職種・財源の出どころが異なります。
| 項目 | ベースアップ評価料 | 処遇改善加算(介護) |
|---|---|---|
| 根拠制度 | 診療報酬(医療保険) | 介護報酬(介護保険) |
| 対象施設 | 保険医療機関・訪問看護ステーション | 介護サービス事業所 |
| 対象職員 | 看護職員・薬剤師・コメディカル等(医師除く) | 介護職員(2024年6月から介護職員以外への配分も柔軟化) |
| 新設時期 | 2024年6月 | 2012年度(旧処遇改善交付金は2009年) |
| 使途 | 全額を賃金改善に充当(基本給・手当・賞与・法定福利費) | 全額を賃金改善に充当(一時金・基本給・手当) |
| 算定単位 | 外来・在宅は1日/訪問看護は利用者1人月1回 | サービス別の総報酬への加算率方式 |
看護師・訪問看護師の給与への反映
訪問看護ステーション勤務の看護師・理学療法士等は訪問看護ベースアップ評価料の対象、病院・診療所勤務の看護師は外来・在宅ベースアップ評価料と入院ベースアップ評価料(病棟勤務の場合)の対象になります。介護施設併設の医療機関に勤める場合は両制度の対象となるケースもあるため、給与明細の「処遇改善手当」「ベースアップ手当」等の項目を確認することで、自身がどの制度から賃上げを受けているか把握できます。
職員側のチェックポイント
職員として確認しておきたい3つのポイント
1. 給与明細の項目をチェック
ベースアップ評価料による賃上げは、基本給または毎月の手当として支給されることが原則です。「ベースアップ手当」「賃金改善手当」等の名称で計上されるケースが多く、毎月の支給額が安定して上乗せされているか確認しましょう。一時金(賞与のみ)での支給は使途要件を満たさない可能性があります。
2. 賃金改善計画の確認
事業所はベースアップ評価料による賃金改善計画を作成する義務があります。職員説明会の有無、計画書の閲覧可否、年1回の実績報告書(令和7年度算定分は令和8年8月提出)の内容について、管理者に確認してみる価値があります。
3. 転職時の比較材料に
2026年6月改定で訪問看護ベースアップ評価料(Ⅰ)は1,050円、継続的賃上げ要件を満たす事業所では1,830円まで引き上げられます。利用者100人を担当するステーションでは月18.3万円、年220万円の賃上げ財源が新たに発生する計算です。求人票の「処遇改善実施」「ベースアップ評価料算定」の記載は、賃上げ体制の有無を判断する重要な指標になります。
よくある質問
Q1. ベースアップ評価料は誰の給与が上がるのですか?
看護職員・薬剤師・理学療法士・作業療法士・言語聴覚士・管理栄養士・社会福祉士・診療放射線技師・臨床検査技師・歯科衛生士・介護職員などが対象です。医師・歯科医師は対象外です。訪問看護ステーションでは看護職員・看護補助者・リハ職等が対象となります。
Q2. 外来・在宅ベースアップ評価料と訪問看護ベースアップ評価料の違いは?
対象施設が異なります。外来・在宅ベースアップ評価料は外来・在宅医療を行う保険医療機関(病院・診療所)が対象で、診療1日ごとに算定します。訪問看護ベースアップ評価料は訪問看護ステーション専用で、利用者1人につき月1回算定します。
Q3. ベースアップ評価料による収入の使い道に制限はありますか?
はい。得られた収入は全額、対象職員の基本給・毎月の手当の引上げと、それに伴う賞与・時間外手当・法定福利費の増加分に充てる必要があります。事業所の利益や設備投資に流用することはできません。
Q4. ベースアップ評価料(Ⅱ)はいつ算定するのですか?
ベースアップ評価料(Ⅰ)だけでは目標とする賃金改善が達成できない場合に、追加的に届出・算定する評価料です。施設基準上の賃金改善目標(前年度比2.5%等)を達成するため、(Ⅰ)と組み合わせて算定します。
Q5. 処遇改善加算と二重に受け取れますか?
制度の根拠が異なるため、医療機関と介護事業所を兼業する施設では両方の対象となるケースがあります。ただし同じ職種・同じ業務時間に対しては、原則として一方の制度から賃上げを受けます。配分ルールは事業所の賃金規程で定められています。
まとめ
ベースアップ評価料は、看護職員等の賃上げ財源を診療報酬で恒常的に確保する仕組みです。外来・在宅と訪問看護の2系統があり、2026年6月改定で点数が大幅に引き上げられました。職員側は給与明細の項目と賃金改善計画を確認し、転職時には算定状況を比較材料に活用することで、制度の恩恵を最大化できます。
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執筆者
介護のハタラクナカマ編集部
編集部
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