
ADL維持等加算とは
ADL維持等加算は、通所介護・特養・特定施設・介護医療院などで利用者のADL(日常生活動作)を維持・改善した事業所に対し、月30〜60単位の介護報酬を加算する制度。Barthel Index評価とLIFE提出が必須要件で、自立支援・重度化防止の評価指標として注目される。
この記事のポイント
ADL維持等加算は、通所介護・特養(介護老人福祉施設)・特定施設入居者生活介護・介護老人保健施設・介護医療院などで、利用者のADL(日常生活動作)を維持または改善した事業所に対して算定される介護報酬の加算です。Barthel Index(バーセルインデックス、BI)による評価と科学的介護情報システムLIFEへのデータ提出が必須要件で、ADL利得(変化量)が一定基準以上であれば「加算(Ⅰ)30単位/月」または「加算(Ⅱ)60単位/月」が利用者ごとに加算されます。
目次
20秒でわかる「ADL維持等加算」
ADL維持等加算の制度概要
ADL維持等加算は、2018年度の介護報酬改定で通所介護に新設され、その後対象サービスが順次拡大してきた加算です。「重度化防止・自立支援」という介護保険の基本理念を実現するために、結果(アウトカム)に応じた評価を行う先駆的な仕組みとして位置づけられています。
2024年度(令和6年度)介護報酬改定では算定要件が見直され、対象サービスは以下のとおり拡大しました。
- 通所介護(デイサービス)
- 地域密着型通所介護
- 認知症対応型通所介護
- 介護老人福祉施設(特養)
- 地域密着型介護老人福祉施設
- 特定施設入居者生活介護
- 地域密着型特定施設入居者生活介護
- 介護老人保健施設(老健)
- 介護医療院
単位数は加算(Ⅰ):30単位/月、加算(Ⅱ):60単位/月。利用者1人あたりの加算で、複数の利用者で算定する場合は事業所全体で大きな収入インパクトとなります。
主な算定要件
- 利用者数の要件(10人以上):評価対象期間に当該事業所を6月以上利用している利用者が10人以上(特養等は20人以上)
- Barthel Indexによる評価:利用開始時と6月後に同じ職員(または同等の研修を受けた職員)が評価。Barthel Indexは100点満点で食事・移乗・整容・トイレ・入浴・歩行・階段昇降・着替え・排便・排尿の10項目を評価
- ADL利得の計算:「利用開始月のBI」と「6月後のBI」の差を「ADL利得」として算出。ADL利得が一定基準以上であることが条件
- LIFEへのデータ提出:BI評価結果を含む情報を科学的介護情報システム(LIFE)に提出し、フィードバックを活用したケア計画への反映
- 事前届出:算定にあたっては「介護給付費算定に係る体制等に関する届出」を保険者(市区町村・都道府県)に提出
加算(Ⅱ)はADL利得が大きい(より明確に維持・改善している)事業所に適用される上位区分で、加算(Ⅰ)の倍の単位数(60単位/月)が設定されています。
ADL維持等加算を取得するためのポイント
- BI評価の標準化:評価者による解釈ばらつきを減らすため、事業所内で評価マニュアルを作成し研修を実施
- LIFE運用体制の整備:ICT環境(PC・タブレット)の整備、入力担当者の配置、提出スケジュール管理
- 個別機能訓練計画との連動:個別機能訓練加算とセットで運用するとADL利得につながりやすい
- 多職種連携:機能訓練指導員・看護師・介護職員・栄養士が連携して、生活場面でのADL維持を意識する
- 環境調整:福祉用具・住環境の見直しでADL動作を継続できる環境を整える
- 書類管理:BI評価記録、LIFE提出記録、ケアプランへの反映記録を整備し、実地指導に備える
算定までの流れ
- 事業所内体制整備:BI評価の研修、LIFE登録、評価者・入力担当者の決定
- 体制届出:保険者へ「介護給付費算定に係る体制等に関する届出」を提出
- 利用開始月にBI評価:基本ADL10項目を評価し、LIFEへ提出
- 6月後に再評価:同じ評価者または同等研修を受けた者が再評価しLIFEへ提出
- ADL利得の算定:差分が基準値(事業所全体の利用者で平均化)を満たすかを判定
- LIFEフィードバックの活用:個別ケアプランへ反映
- 翌年度の加算継続:要件を継続して満たす限り算定継続可能
よくある質問
Q1. 加算(Ⅰ)と(Ⅱ)の違いは?
A. ADL利得(BI差分)の大きさで区分されます。Ⅰ:30単位/月、Ⅱ:60単位/月で、Ⅱはより高いADL改善実績がある事業所が算定可能です。
Q2. Barthel Indexは誰が評価する?
A. 介護職員、看護師、機能訓練指導員などの専門職が評価します。事業所内で評価者を決め、研修を受けたうえで標準化することが推奨されます。
Q3. LIFE提出が必須ですか?
A. はい。LIFE未提出ではADL維持等加算は算定できません。LIFE導入には電子申請の体制構築が必要です。
Q4. ADLが悪化した利用者がいた場合は?
A. 加算は事業所全体の平均値で判定されるため、個別の悪化が直ちに不算定にはつながりません。ただし悪化要因の分析は重要です。
Q5. 通所リハビリは対象?
A. 通所リハビリ(デイケア)は対象外。リハビリ系サービスでは別途「リハビリテーションマネジメント加算」の体系が用いられます。
参考資料
- 厚生労働省「令和6年度介護報酬改定について」https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/0000188411_00043.html
- 厚生労働省「科学的介護情報システム(LIFE)」https://life.mhlw.go.jp/
- 厚生労働省告示「指定居宅サービスに要する費用の額の算定に関する基準」
- 「介護給付費の算定に係る体制等に関する留意事項について」
- Barthel DW. (1965) Functional evaluation: the Barthel Index. Md State Med J.
まとめ
ADL維持等加算は、利用者のADL維持・改善という結果に対して報酬が支払われるアウトカム評価型の加算です。Barthel IndexとLIFEを軸に、介護現場における自立支援・重度化防止の取り組みを「見える化」する制度として、今後さらに拡大が予想されます。算定要件を満たす体制づくりは事業所収益と利用者QOLの両面に寄与します。
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執筆者
介護のハタラクナカマ編集部
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