
居宅介護支援の特定事業所加算Ⅰ、算定率1.71%の壁|審議会で要介護3以上40%要件の緩和論相次ぐ
厚労省は6月29日の介護給付費分科会で居宅介護支援を審議。特定事業所加算Ⅰの事業所ベース算定率が1.71%にとどまる実態を示し、全老施協・日本医師会・日本介護支援専門員協会の委員が要介護3以上40%要件や24時間連絡体制要件の緩和を求めました。
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この記事のポイント
厚生労働省は令和8年6月29日、社会保障審議会・介護給付費分科会(第259回)で令和9年度介護報酬改定に向けて居宅介護支援を審議し、質の高いケアマネジメント体制を評価する「特定事業所加算」の算定要件見直しを求める意見が委員から相次ぎました。最上位区分の特定事業所加算Ⅰは、事業所ベースの算定率がわずか1.71%(令和7年11月審査分)にとどまっており、全国老人福祉施設協議会や日本医師会、日本介護支援専門員協会の委員が「要介護3以上40%」「24時間連絡体制の確保」といった算定要件のハードルの高さを具体的に指摘しました。ケアマネジャーの負担軽減や事業所の経営基盤強化に直結するテーマであり、居宅介護支援事業所で働く読者にとっては、自分の職場の加算取得状況を見直す契機にもなります。
目次
解説動画|特定事業所加算Ⅰの算定率と要件緩和論
居宅介護支援事業所の経営を大きく左右する加算のひとつに「特定事業所加算」があります。主任介護支援専門員の配置や24時間連絡体制の確保、重度者への対応実績など、質の高いケアマネジメント体制を評価する仕組みで、最上位の加算Ⅰを取得できれば所定単位数の20%が上乗せされます。1件あたりの単価に換算すれば決して小さくない金額で、経営体力の弱い小規模事業所ほどこの加算の有無が事業の持続可能性を左右します。
ところが、この加算Ⅰを実際に算定している事業所は、全国でわずか1.71%(事業所ベース、令和7年11月審査分)にとどまります。制度としては存在していても、大多数の事業所にとっては「手が届かない加算」になっている実態が、厚生労働省のデータから浮かび上がりました。
令和8年6月29日に開かれた社会保障審議会・介護給付費分科会(第259回)では、令和9年度の介護報酬改定に向けて居宅介護支援がテーマとして取り上げられ、この算定率の低さを踏まえた要件見直しを求める声が、事業者団体や医師会、ケアマネジャー団体の委員から相次いで上がりました。背景には、ケアマネジャーの高齢化と人材減少、増え続ける複雑な介護ニーズへの対応という、居宅介護支援を取り巻く構造的な課題があります。
本記事では、6月29日の審議会で示されたデータと委員意見を一次資料に基づいて整理し、なぜ加算Ⅰの取得が進まないのか、令和9年度改定でどのような見直しが検討されているのかを解説します。あわせて、この議論がケアマネジャーの働き方や事業所選びにどう影響するのか、kaigonews独自の視点から考えます。
審議会で示された「1.71%の壁」と要件緩和論
特定事業所加算とは何か
特定事業所加算は、居宅介護支援事業所のうち、主任介護支援専門員の配置や研修体制、24時間の連絡体制、重度者への対応実績など、質の高いケアマネジメント体制を整えている事業所を評価する仕組みです。区分は加算Ⅰ(所定単位数の20%)、加算Ⅱ(10%)、加算Ⅲ(10%)、加算A(3%)に分かれ、要件を満たす体制要件・人材要件・重度者等対応要件の組み合わせによって取得できる区分が決まります。
厚生労働省が示したデータによれば、令和7年11月審査分の算定状況は、加算Ⅰが事業所ベースで1.71%、加算Ⅱが23.84%、加算Ⅲが14.08%、加算Aが0.89%です。件数ベースで見ても加算Ⅰは4.93%にとどまり、多くの事業所が加算Ⅱ・Ⅲの取得にとどまっている、あるいはいずれも取得できていない実態がうかがえます。
要介護3以上40%要件が壁になっている
審議会で最も具体的な指摘があったのは、加算Ⅰの重度者等対応要件です。公益社団法人全国老人福祉施設協議会の小泉立志副会長(社会福祉法人鶯園常務理事)は、「算定率が極めて低い最大の要因は、要介護3以上の利用者が40%以上という算定要件にある」と問題提起しました。そのうえで、「実態に即した算定要件の緩和が必須」と主張しています。
日本医師会の江澤和彦常任理事も同じ要件に言及し、加算Ⅰを算定するために事業所が要介護1、2の軽度者を敬遠する懸念があると指摘しました。加算取得のために利用者の要介護度で選別が起きれば、本来自由に選べるはずのケアマネジメントの入り口が歪みかねません。江澤氏は「見直していく必要がある」と要件緩和を促しています。
この指摘が意味するのは、加算要件が「質の高いケアマネジメントを評価する」という本来の目的から離れ、むしろ事業所の利用者選別を誘発しかねないという構造的な矛盾です。重度者に手厚く対応する事業所を正しく評価しようとした制度設計が、皮肉にも軽度者の受け皿を狭める副作用を生んでいる可能性があります。
24時間連絡体制の要件緩和も焦点に
もう一つの論点が、加算Ⅰからⅲに共通する24時間の連絡体制確保要件です。一般社団法人日本介護支援専門員協会の濵田和則副会長は、この要件の緩和を求めました。ケアマネジャーが携帯電話などを持って勤務時間外でも対応する現在の運用は、ケアマネジャー個人への負担が大きいと指摘し、「併設の関連施設でいったん受け付けたり、オンコールの代行事業者による対応を認めたりするなど、働く環境の改善へ向けて緩和の検討を」と呼びかけました。
24時間対応というと聞こえはよいものの、実態としてはケアマネジャー本人のプライベートな時間に業務用の電話を携行し続けることを意味します。夜間や休日の呼び出しに常に備える働き方は、ケアマネジャーの心身の負担となり、なり手不足に拍車をかける要因のひとつとされてきました。オンコール代行の活用や併設施設での一次受付を認める運用改善は、要件を緩めながら実質的な安心体制は維持するという、現実的な折衷案といえます。
ケアマネジャーの安全確保も報酬評価の議論に
審議会では、ケアマネジャーの安全確保を介護報酬上どう評価するかという論点も示されました。委員からは、介護支援専門員が利用者宅で危害を加えられる痛ましい事件があったことを踏まえ、複数名での訪問を介護報酬で評価することを検討すべきだとの意見が出されています。訪問系サービス全般の安全確保については、厚生労働省が令和8年6月3日付の介護保険最新情報Vol.1508で組織的な体制整備を都道府県・市町村に求める通知を発出済みですが、今回の議論はそれをさらに一歩進め、複数名訪問の費用そのものを介護報酬の仕組みに組み込むかどうかという、より制度的な検討です。通知による行政的な後押しと、報酬による経済的な裏づけの両輪が揃うかどうかが、今後の焦点になります。
特定事業所加算Ⅰ:単位数と算定要件の具体的な中身
特定事業所加算Ⅰの評価は、令和6年度介護報酬改定後の単位数で1か月につき519単位です(加算Ⅱは421単位、加算Ⅲは323単位、加算Aは114単位)。算定要件は主に3つの階層に分かれます。1つ目は人員体制で、専ら指定居宅介護支援の提供にあたる常勤の主任介護支援専門員を2名以上、常勤の介護支援専門員を3名以上配置することが求められます。2つ目は運営体制で、利用者に関する情報伝達を目的とした会議の定期開催、24時間の連絡体制の確保、計画的な研修の実施などが要件になります。3つ目が重度者等対応要件で、算定日の属する月の利用者総数のうち要介護3・4・5である者の占める割合が100分の40以上であることが求められます。この3つ目の要件が、審議会で最も強く問題視された「40%要件」にあたります。
単位数だけを見ると加算Ⅰと加算Ⅱの差は98単位(519単位-421単位)にとどまりますが、加算Ⅰでは主任介護支援専門員の複数配置という人件費面のハードルも重なるため、実質的な取得コストは単位数の差以上に大きくなります。小規模事業所ほど、主任介護支援専門員を2名専従で置く体制を組みにくく、これが算定率1.71%という低水準の背景のひとつになっていると見られます。
収支差率「6.2%」の内訳と、平均値批判のもう一つの声
審議会では、居宅介護支援の収支差率6.2%(令和6年度決算、物価高騰対策関連補助金を除く税引前)というデータについて、全国老人保健施設協会の東憲太郎会長からも指摘がありました。集合住宅併設型と独立型とで収益構造が大きく異なる点を踏まえ、平均値だけで居宅介護支援事業所の経営状況を語るべきではないという趣旨です。実際、厚生労働省の令和7年度介護事業経営概況調査によれば、税引前収支差率は令和3年度3.7%、令和4年度4.9%、令和5年度6.2%、令和6年度6.2%と推移しており、全サービス平均の4.7%をやや上回る水準まで改善してきています。ただし、この改善が独立型・小規模型の事業所にも均等に及んでいるかどうかは、平均値だけでは見えてきません。
ターミナルケアマネジメント加算の要件厳格化も論点に
特定事業所医療介護連携加算の算定要件をめぐっては、民間介護事業推進委員会の今井準幸代表委員が別の角度から問題提起しています。令和6年度改定で、この加算の要件となるターミナルケアマネジメント加算の年間算定回数が「5回以上」から「15回以上」へと引き上げられましたが、今井氏は小規模事業所にとってこの基準のクリアが難しいと指摘し、事業所規模に応じた要件・基準値の検討を求めました。特定事業所加算Ⅰの40%要件と同様、「画一的な基準が小規模事業所を排除しかねない」という問題意識が、この論点にも通底しています。
また、日本労働組合総連合会の平山春樹総合政策推進局生活福祉局局長は、ケアマネジャーの負担軽減に向けて業務範囲の明確化を積極的に進めるべきだと訴えました。ケアプラン作成以外の事務作業や、頼れる身寄りがいない高齢者への生活支援対応(いわゆるシャドーワーク)が労働時間を圧迫している実態を踏まえた発言で、特定事業所加算の要件緩和と並ぶ、もうひとつの負担軽減策として位置づけられます。
令和6年度改定で加算区分そのものも再編されていた
特定事業所加算の区分は、実は令和6年度介護報酬改定でも見直されています。看取り期にある利用者への対応を適切に評価する観点から重度者対応要件に「看取り期にある者」への対応が追加されたほか、中山間地域等でやむを得ず移動距離を要し、事業運営が非効率にならざるを得ない事業所が、利用者へ継続的なサービスを行っていることを評価する仕組みも新たに設けられました。従来の加算Ⅳを廃止し、旧加算Ⅴを新加算Ⅳに変更したうえで、新たに加算Ⅴを新設するという再編も行われています。つまり特定事業所加算は、改定のたびに要件が細かく組み替えられてきた経緯があり、事業所側からすれば「制度についていくだけでも負担が大きい」という声が出やすい構造でもあります。
今回、審議会で要件緩和論が相次いだ背景には、こうした過去の複雑な再編の積み重ねに対する疲労感もにじみます。令和6年度改定に関する審議報告でも「利用者のわかりやすさという観点や介護サービス事業者の事務負担軽減の観点から、報酬体系の簡素化について、引き続き検討していくべきである」との課題が明記されており、令和9年度改定はこの宿題に答える機会でもあります。
加算Ⅱ・Ⅲの算定率は決して低くない
誤解してはならないのは、特定事業所加算そのものが不人気というわけではない点です。加算Ⅱは事業所ベースで23.84%、加算Ⅲは14.08%が算定しており、合わせれば4割近い事業所が何らかの区分を取得しています。問題は、あくまで最上位の加算Ⅰに限って算定率が極端に低いという偏りです。この偏りは、加算Ⅰだけに課される重度者要件の高さが、他の要件と比べて突出して厳しいことを示唆しています。中間区分までは手が届くが、最上位だけは別次元のハードルがある、という構図が、今回の委員発言から浮かび上がります。
ケアマネジャー減少と業務負担、データで見る現場の実態
居宅介護支援事業所数はピークから1割減
厚生労働省が示した統計によれば、居宅介護支援の請求事業所数は平成30年度の40,065事業所をピークに減少に転じ、令和7年度は35,943事業所まで落ち込みました。介護保険制度が拡大を続け、要介護認定者数が増加基調にあるにもかかわらず、事業所数は右肩下がりという逆行した動きが続いています。
介護支援専門員の従事者数も同様の傾向です。居宅介護支援に従事する介護支援専門員は、平成30年度の120,002人から令和6年度は113,381人へと減少しました。介護保険制度の入り口を支える人材が、量的に細っている実態がうかがえます。
介護支援専門員の6割が50歳以上、高齢化も進む
年齢構成のデータも見過ごせません。介護労働実態調査によれば、介護支援専門員のうち60歳以上が占める割合は令和6年度に31.7%に達し、平成25年度の16.2%から倍増しています。一方で30歳代以下の割合は年々縮小しており、若手の参入が細る一方でベテラン層への依存が強まる構図が鮮明です。
ケアマネジャーの高齢化と減少が同時に進めば、今後10年でさらに深刻な担い手不足に陥りかねません。特定事業所加算の要件緩和は、単なる報酬上の技術論ではなく、この構造的な人材危機への対応という文脈で理解する必要があります。
ケアプラン作成に月38時間、業務負担の実態
令和7年度老人保健健康増進等事業「居宅介護支援事業所における介護支援専門員等の業務実態に関する調査研究事業」(三菱総合研究所)によれば、介護支援専門員1人あたり1か月の労働投入時間は合計170.4時間にのぼり、このうちケアプラン作成に37.9時間(22.2%)、事業所内の連携や会議に9.4時間、事務作業に8.2時間が費やされています。担当利用者数が増えるほど労働投入時間は伸びる傾向があり、51人以上を担当する介護支援専門員では月172.0時間に達しています。
この業務量の多さは、審議会でも繰り返し取り上げられてきた論点です。2024年度の介護報酬改定でケアマネジャー1人当たりの取扱件数の上限が緩和されましたが、実態として40件、50件を担当することは容易ではないとの指摘が委員から出ています。基本報酬の引き上げによる経営支援を求める声も、こうした業務実態を踏まえたものです。
収支差率6.2%、事業形態によって差が大きい
居宅介護支援事業所の経営状況については、厚生労働省データで収支差率6.2%という数値が示されています。ただし審議会では、この平均値の解釈に注意を促す指摘もありました。集合住宅併設型の事業所と、独立して運営する事業所とでは収益構造が大きく異なり、独立型の事業所では6%の利益を出すこと自体が容易ではないとの意見です。訪問介護の同一建物減算をめぐる議論と同様、「平均値」だけでは見えない事業所間の格差を踏まえた制度設計が求められています。
更新制廃止・処遇改善と地続きの改革(独自見解)
更新制廃止・処遇改善と同じ流れの中にある議論
今回の特定事業所加算をめぐる議論は、単独で存在する論点ではありません。令和8年6月25日に公布された社会福祉法等の一部を改正する法律には、介護支援専門員の資格更新制の見直しが盛り込まれており、法定研修の受講を要件とした更新の仕組みが廃止される方向が固まっています。あわせて、令和8年6月施行の臨時(期中)介護報酬改定では、ケアマネジャーも処遇改善加算の対象に含まれました。
更新制の見直しは研修負担の軽減、処遇改善加算の対象拡大は賃金面のてこ入れ、そして今回の特定事業所加算の要件緩和論は事業所の経営基盤強化。この3つは別々の改革に見えて、実は「ケアマネジャーという担い手を制度的にどう支えるか」という一つの問いに対する、異なる角度からの答えです。読者であるケアマネジャーや居宅介護支援事業所の関係者にとっては、これらを個別の制度変更として捉えるのではなく、一連の人材確保策として理解することで、今後の見通しが立てやすくなります。
訪問介護の同一建物減算議論と通じる「実態を踏まえた評価」への転換
興味深いのは、同じ6月29日の分科会で審議された訪問介護の同一建物減算見直しと、居宅介護支援の特定事業所加算見直しに、共通する問題意識が流れている点です。訪問介護では、事業所の収支状況を全国平均だけで語らず、地域・規模・事業形態別に実態を踏まえて検討すべきだという論点が示されました。居宅介護支援の特定事業所加算Ⅰをめぐる議論も、要介護3以上40%という画一的な要件が、事業所の実態や利用者の要介護度構成の多様性を十分に反映できていないという批判です。
令和9年度改定の基調として見えてくるのは、「全国一律の基準」から「地域・事業所の実態に応じた評価」へという転換の芽です。中山間地域の小規模事業所への配慮、集合住宅併設型と独立型を分けた収支評価、そして特定事業所加算の要件緩和は、いずれもこの文脈の中に位置づけられます。
ケアマネジャーのキャリア選択への影響
特定事業所加算の取得状況は、実は求職者にとっても見えにくい指標です。加算Ⅰを取得している事業所は、主任介護支援専門員の配置や研修体制など、組織としてケアマネジメントの質を追求する体制を整えていることの裏づけになります。ただし、今回の議論が示すように、加算Ⅰを取得できていないからといって、その事業所のケアマネジメントの質が低いとは限りません。要介護3以上40%という要件が、必ずしも「質の高さ」を正確に測る指標になっていない可能性があるからです。
転職や就職を検討するケアマネジャーにとっては、加算の有無だけでなく、24時間連絡体制の実際の運用(携帯電話の個人携行かオンコール代行の活用か)、担当件数の実態、研修支援の充実度といった要素を、面接や求人票で具体的に確認することが重要になります。今回の審議会の議論は、そうした確認の視点を与えてくれるものでもあります。
今後の波及|要件緩和と質の担保のバランスが焦点に
今後のスケジュールと審議の進み方
令和9年度介護報酬改定に向けた審議は、令和8年4月27日に本格的にスタートしました。春から夏にかけて事業者団体からのヒアリングを交えながら各サービスの論点を検討し、10月以降は具体的な方向性に関する議論に移る見通しです。報酬・基準に関する基本的な考え方の整理・取りまとめは12月中、次期介護報酬改定案の諮問・答申は令和9年1月頃となる見込みです。今回取り上げた居宅介護支援の論点は、こうした審議スケジュールの中でも「1巡目」の議論にあたり、今後さらに具体的な要件緩和の内容が詰められていくことになります。
要件緩和と質の担保、両立の難しさ
特定事業所加算の要件緩和には、慎重に見るべき側面もあります。加算Ⅰの要介護3以上40%要件は、もともと重度者への対応を専門的に担う事業所を評価するために設けられたものです。この要件を緩めれば、より多くの事業所が加算Ⅰを取得しやすくなる一方で、加算が本来意図していた「重度者への手厚い対応を評価する」という機能が薄まる可能性もあります。24時間連絡体制についても、オンコール代行を認めることで職員負担は軽減されますが、利用者や家族からすれば、緊急時に誰が対応してくれるのかという安心感の質が変わることにもなります。
審議会での議論は、事業者側の負担軽減を求める声が中心でしたが、令和9年度改定の最終的な制度設計では、こうした「量的な緩和」と「質の担保」のバランスをどう取るかが問われることになります。単に基準を下げるのではなく、実質的な体制の質を測る新しい指標をどう組み込むかが、今後の議論の核心になるでしょう。
読者にとっての意味
居宅介護支援事業所で働くケアマネジャーにとって、この議論は自分の勤務先の将来像に直結します。特定事業所加算の要件が緩和されれば、これまで加算Ⅱ・Ⅲにとどまっていた事業所が加算Ⅰに手を伸ばしやすくなり、事業所全体の収益改善を通じて、処遇改善や増員に回せる原資が増える可能性があります。逆に、要介護3以上40%要件が維持されたまま他の要件だけが緩和されれば、加算Ⅰを取得できる事業所とできない事業所の差はむしろ固定化しかねません。
ケアマネジャーとして働く、あるいはこれから居宅介護支援事業所への就職・転職を考える読者は、今回の審議会の議論を、単なる制度ニュースとしてではなく、自分の職場の経営基盤や労働環境がどう変わりうるかという視点で追いかけておく価値があります。令和9年度改定の詳細が固まるまでの間、事業所側がどのような準備を進めているかも、働き方を考えるうえでの判断材料になります。
参考文献・出典
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まとめ
令和8年6月29日の社会保障審議会・介護給付費分科会(第259回)では、居宅介護支援の質の高いケアマネジメント体制を評価する「特定事業所加算」について、最上位区分の加算Ⅰの算定率がわずか1.71%にとどまる実態が示され、全国老人福祉施設協議会、日本医師会、日本介護支援専門員協会の委員から算定要件の緩和を求める意見が相次ぎました。要介護3以上40%という重度者要件、24時間連絡体制の確保要件がそれぞれ論点となり、ケアマネジャーの安全確保を報酬でどう評価するかという議論も並行して示されています。
背景には、居宅介護支援事業所数のピークからの減少、介護支援専門員の高齢化と担い手不足、月170時間を超える労働投入時間という構造的な課題があります。今回の議論は、令和8年6月に公布された更新制見直しやケアマネジャーの処遇改善加算対象化と同じ流れの中にあり、令和9年度改定に向けて「ケアマネジャーという担い手をどう支えるか」という一貫したテーマとして進んでいくと見られます。
居宅介護支援事業所で働く方、これから転職・就職を考える方にとって、特定事業所加算の要件緩和がどう決着するかは、自分の職場の経営基盤や働き方に直結する重要な変化です。令和9年1月頃に予定される改定案の答申まで、審議の行方を追いかけておく価値があるテーマといえます。あなたの職場では、特定事業所加算の取得状況をどこまで把握できているでしょうか。この機会に確認してみませんか。
執筆者
介護のハタラクナカマ編集部
編集部
介護業界の転職・キャリア情報を発信。厚生労働省の公的データと現場の声をもとに、介護職で働く方・転職を検討する方に役立つ情報をお届けしています。
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