居宅ケアマネ初の処遇改善加算が2026年6月実現|長年の悲願達成と次なる目標
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居宅ケアマネ初の処遇改善加算が2026年6月実現|長年の悲願達成と次なる目標

2026年6月の臨時介護報酬改定で、居宅介護支援事業所のケアマネジャーに初めて処遇改善加算(加算率2.1%)が新設される。日本介護支援専門員協会・濵田和則副会長が悲願達成と語る経緯と、加算率引き上げ・独立型事業所支援など今後の課題を解説する。

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2026年6月の臨時介護報酬改定で、これまで対象外だった居宅介護支援事業所のケアマネジャーに初めて「介護職員等処遇改善加算」(加算率2.1%)が新設される。2009年の処遇改善交付金以来、介護職員との賃金差是正策の枠外に置かれてきたケアマネ職にとっては約17年越しの制度実現となる。日本介護支援専門員協会の濵田和則副会長は職能団体としての長年の要望活動が結実したとしつつ、加算率引き上げや独立型事業所の経営安定化を次の課題に挙げている。読者である現役ケアマネにとっては、月額換算で数千円〜1万円規模の手取り増と、職能評価そのものが制度に組み込まれた点に注目したい改定だ。

目次

居宅介護支援事業所で働くケアマネジャーが、介護報酬上の処遇改善加算の対象に正式に加わる。社会保障審議会・介護給付費分科会の議論を経て、2026年6月の臨時介護報酬改定(期中改定)で「介護職員等処遇改善加算」の対象サービスが拡大され、これまで除外されてきた居宅介護支援・介護予防支援・訪問看護・訪問リハビリテーションが新たに算定対象になる。

居宅介護支援への加算率は2.1%(21/1000)に設定された。職能団体である日本介護支援専門員協会では、副会長を務める濵田和則氏が今回の決定を「長年の悲願」と評価し、同時に「次なる目標」として加算率の引き上げや独立型事業所への配慮を挙げる論考を公表している。介護報酬制度上、ケアマネジャーが処遇改善の対象に正式に組み込まれるのは2009年の処遇改善交付金以来初めてのことで、職能評価のあり方そのものを問い直す改定として位置づけられる。

本記事では、2026年6月施行の制度改定の中身を一次資料に当たって整理したうえで、ケアマネ職のキャリアと年収にどう影響するか、独立型と併設型で経営インパクトがどう異なるかという、現役ケアマネ・受験予定者・転職検討者のいずれにとっても意思決定するうえで欠かせない論点を踏み込んで解説する。加えて、職能団体が「次なる目標」として掲げる加算率引き上げ・生産性向上加算の対象拡大・独立型事業所支援の3点を、2027年度本体改定議論との関係で読み解いていく。事業所選びや今後の働き方を考えるうえでの判断材料として、また自身のキャリアプランを描き直す出発点として活用してほしい。

2026年6月施行の改定内容と算定要件

居宅介護支援に加算率2.1%、訪問看護にも1.8%

2026年1月16日に開催された第253回社会保障審議会・介護給付費分科会で、令和8年度介護報酬改定の内容が正式に取りまとめられた。最大の注目点は、介護職員等処遇改善加算の対象が「介護職員」から「介護従事者全体」へと広がり、これまで対象外だった4サービス(居宅介護支援・介護予防支援・訪問看護・訪問リハビリテーション)が新たに算定対象に加わったことだ。

各サービスの加算率は、居宅介護支援・介護予防支援が所定単位数の2.1%、訪問看護が1.8%と設定された。新たに対象となる4サービスは、現行の介護職員等処遇改善加算Ⅳに準じる1区分の加算からの出発となる。施行時期は2026年6月分の介護報酬から、つまり同年6月サービス提供分(7月請求分)から算定可能となる。

居宅介護支援費Ⅰ(要介護3)に2.1%を乗じた場合、利用者1人あたり月ベースで数十単位の加算原資が発生する計算となり、担当件数の多い事業所ほど月額の加算原資総額が積み上がる構造になる。

算定要件はキャリアパス要件と職場環境要件

新たに対象となるサービスでは、現行の処遇改善加算Ⅳの取得に準ずる要件として「キャリアパス要件Ⅰ・Ⅱ」と「職場環境等要件」の整備が求められる。キャリアパス要件Ⅰは職位・職責・職務内容に応じた任用要件と賃金体系の整備、Ⅱは資質向上のための研修機会の確保や能力評価の実施が中心で、いずれも事業所単位での就業規則・賃金規程の整備が前提となる。

職場環境等要件は、入職促進・資質向上・両立支援・腰痛対策・生産性向上・やりがい支援といった6カテゴリから複数項目を満たす形で運用されており、ケアマネ事業所においても在宅勤務制度・ICT記録ソフトの整備・短時間勤務制度などが該当項目として認められる方向だ。

事業所の事務負担に配慮し、令和8年度に限っては誓約書による算定を可能とする経過措置が設けられる方向で議論されている。算定額は介護職員のみならず事業所内の介護従事者に配分する必要があり、ケアマネ事業所の場合は管理者を含むケアマネジャー全員が配分対象となる見込みだ。なお、配分計画書・実績報告書の提出は他サービスと同様に求められるため、事業所側は事務フロー整備も並行して進める必要がある。

2025年12月から「つなぎ補助金」で先行支援

2026年6月の加算施行までに半年の空白期間が生じることから、2025年度補正予算で「介護分野の職員の賃上げ・職場環境改善支援事業」が措置された。2025年12月分から2026年5月分までの賃上げ相当額を、補助金として事業所に交付する仕組みだ。

つなぎ補助金の対象には、6月から正式に加算対象となる居宅介護支援事業所も含まれる方向で、加算施行を待たずに賃上げを開始できる体制が整えられた。事業所側は補助金申請の準備と、6月以降の加算算定に向けた賃金規程の改正を並行して進める必要がある。

補助金フェーズと加算フェーズで支給ルートが異なるため、現役ケアマネ・求職者は勤務先・応募先がどちらのフェーズから賃上げを実装するか、賃金規程と就業規則の改正タイミングを確認しておきたい。事業所選びの判断材料として、賃金改定の具体的なスケジュール提示の有無が新たな評価軸となる。

ケアマネ職が処遇改善の対象外だった構造的背景

2009年処遇改善交付金から続く約17年の経緯

介護職員の賃金引き上げを目的とした公的な処遇改善策は、2009年度に導入された「介護職員処遇改善交付金」が出発点だ。当時は介護職員の月額平均賃金を1.5万円程度引き上げることを目標に、交付金として事業所に直接配分された。2012年度に「介護職員処遇改善加算」として介護報酬に組み込まれ、以後、複数回の改定で加算率と区分が拡充されてきた。

2019年には特定処遇改善加算が新設され、経験技能のある介護職員への重点配分が進められた。2024年6月の改定で従来の3加算(処遇改善加算・特定処遇改善加算・ベースアップ等支援加算)が「介護職員等処遇改善加算」に一本化され、加算Ⅰ〜Ⅳの4区分体制となった。一連の制度改正を経て、介護職員の賃金は段階的に底上げが進んだ。

一方、居宅介護支援事業所のケアマネジャーは、これら処遇改善策の対象から一貫して外されてきた。理由として整理されてきたのは、ケアマネは介護保険制度上「介護職員」とは位置づけが異なる専門職であること、居宅介護支援は介護給付ではなく予防給付・居宅サービス計画作成の独立した報酬体系であることなどだ。結果として、介護現場全体の賃金引き上げが進むなかで、ケアマネ職の相対的な賃金水準は徐々に伸び悩む構造が続いた。

介護職との賃金差縮小がケアマネ確保を困難に

厚生労働省「令和5年度介護従事者処遇状況等調査」によれば、介護職員の平均給与額は処遇改善加算の累次拡充によって着実に上昇している。一方で介護支援専門員の常勤・月給者の平均給与額は、介護福祉士のそれと比較した優位性が縮小しつつある。

本来であれば、現場経験を積んで実務研修を修了し、5年ごとの更新研修を継続することで担う上位職であるケアマネジャーが、給与面で介護職員と差がない、あるいは下回るケースさえ生じている。この賃金構造の歪みは、現役介護福祉士がケアマネ受験を躊躇する一因とされ、ケアマネジャー試験の受験者数低迷や、居宅介護支援事業所の人員確保難の背景にも挙げられてきた。

2023年度のケアマネジャー試験の受験者数は5万人台で推移し、2010年代前半のピーク時(10万人超)と比較すると約半数の水準にとどまる。受験者減少の要因は試験制度変更・研修負担増など複合的だが、賃金面のインセンティブ不足は職能団体・現場から繰り返し指摘されてきた根本要因の一つだ。

職能団体の要望活動と議員連盟の動きが結実

日本介護支援専門員協会は、社会保障審議会などの審議会への意見提出に加え、相談支援専門員協会との合同での署名活動、日本ケアマネジメント推進議員連盟との連携などを通じて、ケアマネ職への処遇改善加算適用を継続的に要望してきた。地方支部レベルでも、都道府県議会や自治体への要望書提出が進められ、政策議論の裾野が広がってきた経緯がある。

こうした活動が、2024年度本体改定では実現に至らなかったものの、2026年6月の臨時改定で結実する形となった。職能団体としては約17年越しの政策実現であり、職能評価が報酬体系に正式に組み込まれた点は制度史上の転換点と位置づけられる。

現役ケアマネのキャリア・年収への影響

月額換算で数千円〜1万円規模の手取り増が見込める

加算率2.1%が事業所に配分された場合、現役ケアマネジャーの賃金にはどの程度の影響があるのか。試算例として、居宅介護支援費Ⅰ(要介護3)に特定事業所加算Ⅱを算定し、ケアマネ4人体制で1人あたり35件(合計140件)を担当する標準的な事業所の場合、月額の加算原資は約5.6万円とされる。これを事業所内のケアマネ全員に配分すると、1人あたり月額1万円超の上乗せが原資ベースで発生する計算になる。

ただし、加算は全員一律支給ではなく、各事業所の配分設計に従って運用される。賞与で配分する事業所、月例給に組み込む事業所、経験年数や担当件数に応じて傾斜配分する事業所など、対応は分かれる見込みだ。読者である現役ケアマネは、勤務先がどのような配分設計を採るのか、賃金規程の改定方針を事業所側に確認しておきたい。

担当件数の少ない事業所(人員1〜2名規模)や、要支援者比率が高くケアプラン単価が低めの事業所では、加算原資の絶対額が小さく、配分後の上乗せが月数千円台にとどまる可能性もある。一方、特定事業所加算Ⅰ・Ⅱを算定している大規模事業所では、加算原資が積み上がり、配分次第では月額1.5万〜2万円規模の上乗せに到達するケースも想定される。

キャリアアップの「給与的見返り」が見える化される意義

制度改定の本質的な意義は、月額の手取り増だけでなく、キャリアアップの結果が報酬体系に明示的に反映されるようになる点にある。これまで「ケアマネを取っても給与が変わらない」「介護職のままの方が稼げる」と語られてきた現場感覚が、制度設計レベルで一定程度修正されることになる。

転職市場の観点では、求人票に処遇改善加算Ⅳ算定の有無、配分方法、賃金規程の整備状況が明示されるようになると予想される。応募者側は、加算算定の有無に加え、配分の透明性と昇給ルールの一貫性を判断材料にできる。事業所選びの軸が増える一方、加算未算定の事業所は人材確保面で不利になる可能性が高まる。

長期的には、ケアマネジャー試験の受験者数低迷にも一定の歯止め効果が期待される。実務研修修了から5年間の更新研修まで、相応の学習負担を伴う資格である以上、賃金面でのインセンティブが伴ってこそ、現役介護福祉士のキャリアパス選択肢として再評価される素地が整う。今回の改定は、専門職としてのケアマネ職を制度的に再評価する第一歩と位置づけられる。

独立型ケアマネ事業所の経営課題は残る

今回の改定で課題が残るのは、独立型の居宅介護支援事業所だ。併設型(医療法人・社会福祉法人傘下、訪問介護・通所介護との一体運営)の場合、母体組織からの人件費補填や事務の集約化で経営の安定が図れる。一方、独立型は単独の居宅介護支援報酬と特定事業所加算でしか収益を確保できず、固定費(家賃・通信・労務管理)の負担が重い。

加算率2.1%は介護職員の加算率(最大区分で20%を超えるケースもある)と比較すると控えめな水準で、独立型事業所の経営構造を抜本的に変えるほどのインパクトとは言いがたい。職能団体が「次なる目標」として独立型事業所の経営安定化を掲げているのは、今回の加算新設だけでは独立型と併設型の経営格差が縮まらないという現場認識に基づく。

独立型事業所で働くケアマネ・転職を検討する読者は、加算算定で得られる賃上げ分と、事業所全体の経営健全性(特定事業所加算の算定区分・担当件数・離職率)をセットで評価する視点が欠かせない。加算が新設されても、母体事業の支えがない独立型では、収益構造そのものの脆弱性は残るためだ。

次なる目標と2027年度本体改定議論への波及

「次なる目標」は加算率引き上げと生産性向上加算の対象拡大

職能団体が公式に掲げる次の課題は3点に整理できる。第一に、今回新設された加算率2.1%の段階的な引き上げ。介護職員等処遇改善加算は最上位区分(加算Ⅰ)で訪問介護28.7%、特養14.5%といった高水準が設定されており、ケアマネ事業所の2.1%との差は依然大きい。次回以降の改定で区分の細分化と加算率の上積みを求める動きが強まる見通しだ。

第二に、生産性向上加算・職場環境改善加算の対象拡大。これらは加算Ⅰ・Ⅱの算定要件として位置づけられているが、現在は居宅介護支援が対象外となっている。ICT活用や事務効率化が進む居宅介護支援事業所においても、生産性向上に向けた取り組みを評価する枠組みの導入が論点になる。記録ソフトの導入、AIアセスメントツールの試験運用、複数事業所連携によるケアマネジメント業務の標準化など、現場では生産性向上の取り組みが先行しており、これを加算評価につなげる制度設計が求められる。

第三に、加算未算定事業所への対応。処遇改善加算は申請が任意であり、要件整備や事務負担を理由に算定しない事業所も一定数存在する。算定率が低位にとどまれば、ケアマネ全体の賃金底上げ効果は限定的になるため、算定促進策と算定状況の公開が課題に挙がる。職能団体は加算算定率の公表と、未算定事業所への研修・伴走支援の制度化を要望していく見込みだ。

2027年度本体改定議論との連動

今回の臨時改定はあくまで「期中改定」であり、2027年度には次期介護保険事業計画期間(第10期)に向けた本体改定の議論が控えている。本体改定では介護報酬全体の改定率設定とあわせて、処遇改善加算の区分構造そのものが見直される可能性が高い。

具体的には、対象サービスをさらに拡大して通所介護・短期入所などの居宅サービスを含めた整理、加算Ⅳ準拠から上位区分への昇格ルートの設定、生産性向上加算の対象拡大などが論点になる見通しだ。日本介護支援専門員協会をはじめとする職能団体は、2027年度改定議論に向けて加算率引き上げと適用範囲拡大を主張していくと見られる。

本体改定議論と同時に、第10期介護保険事業計画では「ケアマネジメントの質確保」「医療介護連携の強化」「地域包括ケアシステムの深化」といった政策テーマが軸となる見込みで、ケアマネ職への期待役割は2027年度以降さらに拡大する方向にある。役割拡大に伴う処遇引き上げ要求の正当性は、政策論としても強まる流れだ。

地域包括ケアと「ケアマネジメントの専門性評価」の文脈

処遇改善加算のケアマネ事業所への適用は、地域包括ケアシステムにおけるケアマネジメントの専門性評価という、より大きな政策文脈の中にも位置づけられる。地域包括ケアシステムは医療・介護・住まい・予防・生活支援を一体的に提供する枠組みで、その結節点に立つのが居宅介護支援事業所のケアマネジャーだ。

多職種連携や入退院支援、医療系サービスとの調整など、ケアマネに期待される役割は年々拡大している。今回の加算新設は、こうした役割の重要性を報酬体系で評価する第一歩と位置づけられる一方、加算率2.1%という水準が役割拡大に見合っているかは、現場と職能団体から継続して問われていくことになる。

読者である現役ケアマネ・受験予定者にとっては、自身の専門性が制度的に再評価されつつある時期と認識し、研修受講や担当事例の言語化など、専門性の証明手段を蓄積していくことが今後のキャリア形成上重要になる。特に、入退院支援・看取り・認知症ケア・医療依存度の高い在宅ケースなど、専門性が問われる領域の経験を意識的に積むことが、加算の上位区分が新設された際に評価される実務的な備えとなる。

まとめ

2026年6月の臨時介護報酬改定で、居宅介護支援事業所のケアマネジャーが処遇改善加算の対象に正式に加わる。加算率2.1%は介護職員の最上位区分と比べれば控えめな水準だが、2009年の処遇改善交付金以来、約17年間対象外とされてきた構造が初めて転換した点に大きな意義がある。月額換算で数千円〜1万円規模の手取り増が見込まれるとともに、ケアマネジメントという専門性が報酬体系に明示的に位置づけられたことが、転職市場と人材確保の両面で影響を持つ見通しだ。

今後は加算率の段階的引き上げ、生産性向上加算の対象拡大、独立型事業所の経営安定化、加算未算定事業所への対応など、複数の課題が残る。2027年度本体改定議論に向けて、職能団体の要望活動と実際の算定状況がどう動くかが注目される。現役ケアマネ・受験予定者は、勤務先の加算算定状況と配分設計の透明性を意識した事業所選びが、これまで以上に重要になる。応募時に賃金規程改定スケジュールと加算配分方法を確認すること、加算算定の上位区分が新設された際の評価対象となる専門性領域(入退院支援・看取り・認知症ケアなど)の実務経験を意識的に積み上げることが、これからのキャリア設計の実践的な指針となる。自身のキャリア設計の見直しに、この機会を活かしてほしい。

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執筆者

介護のハタラクナカマ編集部

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