
ターミナルケア(終末期ケア)とは
ターミナルケアとは、終末期の医療・看護・介護を含む総合ケアです。看取り介護・緩和ケア・ホスピスケアとの違い、看取り介護加算とターミナルケア加算、提供場所、多職種連携、グリーフケアまで定義特化で解説します。
この記事のポイント
ターミナルケア(終末期ケア)とは、病気や老衰により回復が見込めないと判断された人に対し、最期まで尊厳を保ち穏やかに過ごせるよう提供される医療・看護・介護を含む総合的なケアを指します。痛みの緩和や精神的サポートに加え、家族支援・グリーフケアまでを含む点が特徴で、看取り介護(生活援助中心)や緩和ケア(苦痛緩和中心)と区別されます。介護報酬上は看取り介護加算(特養等)とターミナルケア加算(老健・訪問看護等)で評価されます。
目次
ターミナルケアの定義|終末期に提供される総合ケア
ターミナルケア(terminal care)は日本語で「終末期医療」「終末期ケア」と訳され、余命が限られていると医学的に判断された方に対する医療・看護・介護・精神的サポートの総称です。延命を主目的とせず、残された時間のQOL(Quality of Life:生活の質)を最大化することを目的とします。
「終末期」の定義
明確な期間の定義はありませんが、一般的に複数の医師により回復が困難と判断され、余命が数週間〜数か月以内と見込まれる時期を指します。日本老年医学会は「病状が不可逆的かつ進行性で、近い将来の死が避けられないと判断される時期」と定義しています。
ターミナルケアの3つの柱
- 身体的ケア:疼痛コントロール(医療用麻薬等)、栄養・水分管理、口腔ケア、体位調整、清潔ケア
- 精神的ケア:傾聴、不安・抑うつへの対応、本人の意思尊重、スピリチュアルペインへの対応
- 社会的ケア:家族支援、経済的支援制度の案内、療養場所の調整、多職種連携
身体的苦痛だけでなく精神的・社会的・スピリチュアルな苦痛(トータルペイン)に包括的に対応する点が、ターミナルケアの本質です。
看取り介護・緩和ケア・ホスピスケアとの違い
ターミナルケアと混同されやすい3つの用語との違いを整理します。医療介入の有無・対象疾患・開始時期が主な区別ポイントです。
| 用語 | 主な目的 | 医療介入 | 対象 | 開始時期 | 主な提供場所 |
|---|---|---|---|---|---|
| ターミナルケア | 終末期のQOL維持 (医療+介護) | あり (疼痛コントロール等) | 疾患を問わず 終末期の方 | 余命数週〜数か月 | 病院・施設・在宅 |
| 看取り介護 | 日常生活の援助 (介護中心) | 最小限 (積極的医療なし) | 主に高齢者 | 看取り移行の同意後 (数日〜数か月) | 主に介護施設 |
| 緩和ケア | 身体的・精神的苦痛 の緩和 | あり | がん等の重い 病気の患者 | 診断時から | 病院(緩和ケア病棟) |
| ホスピスケア | 終末期の苦痛緩和 と尊厳維持 | あり (症状緩和に特化) | 主にがん末期等 | 余命概ね6か月以内 | ホスピス・ 緩和ケア病棟 |
もっとも重要な違い:医療介入の有無
ターミナルケアは医療行為(点滴・酸素吸入・疼痛コントロール等)を含むのに対し、看取り介護は医療行為を最小限にし、食事・排泄・清拭などの生活援助を中心に行います。介護施設では看取り介護として実施され、医療連携が必要な場面でターミナルケアの要素が加わる、という関係です。
緩和ケアとの違い
緩和ケアは診断時から並行して提供されるのに対し、ターミナルケアは終末期に限定されます。緩和ケアの中で、終末期に特化した部分がターミナルケアと重なるイメージです。
介護報酬上の評価|看取り介護加算とターミナルケア加算
終末期ケアは介護報酬上、施設・サービス類型ごとに異なる名称の加算で評価されます。代表的な2つの加算と提供場所を整理します。
看取り介護加算(特養・GH・有料老人ホーム等)
主に介護施設で算定される加算で、2024年度(令和6年度)介護報酬改定で単位数が拡充されました。特別養護老人ホームの場合の主な単位数は以下の通りです。
- 死亡日45日前〜31日前:72単位/日
- 死亡日30日前〜4日前:144単位/日
- 死亡日前々日・前日:680単位/日
- 死亡日:1,280単位/日
ターミナルケア加算(老健・訪問看護等)
介護老人保健施設や訪問看護ステーションで算定される加算です。2024年度改定で訪問看護のターミナルケア加算は2,000単位から2,500単位へ引き上げられました。死亡日または死亡日前14日以内に2回以上の訪問看護を行うことなどが要件です。
提供場所別の特徴
- 病院:医療設備が整い、急変時の対応が可能。緩和ケア病棟は全国468施設・9,746床(2024年6月時点)。
- 介護施設:特養・老健・GH等。看取り介護加算を算定し、生活の延長線上で穏やかに看取る環境。
- 在宅:訪問診療・訪問看護・訪問介護が連携。本人・家族の希望を最も反映しやすいが、家族の介護負担は大きい。
厚生労働省は「住み慣れた地域・住まいでの看取り」を地域包括ケアシステムの柱に位置付けており、在宅・施設での終末期ケアの体制整備が進んでいます。
ターミナルケアにおける多職種連携の役割
ターミナルケアは単一職種では成立せず、医療・看護・介護・福祉の多職種が連携してチームで提供します。それぞれの主な役割を整理します。
- 医師:終末期の判断、疼痛コントロール(医療用麻薬等)の処方、家族へのインフォームドコンセント、看取り時の死亡確認。
- 看護師:医療的ケア(点滴・吸引・服薬管理)、症状観察、医師との橋渡し、家族への状態説明。訪問看護師は在宅ターミナルケアの中核を担う。
- 介護職員:日常生活援助(体位変換・口腔ケア・清拭・排泄介助)、傾聴と寄り添い、家族のケア参加促進。喀痰吸引等研修修了者は痰の吸引も実施可能。
- ケアマネジャー:看取り介護計画書の作成、サービス調整、本人・家族の意思確認、多職種カンファレンスの調整役。
- 医療ソーシャルワーカー(MSW):高額療養費制度等の経済的支援、療養場所の調整、家族の心理的サポート、退院支援。
- 薬剤師:医療用麻薬を含む服薬管理、副作用モニタリング、在宅では訪問薬剤管理指導を実施。
- リハビリ専門職:終末期でも可能な範囲での関節可動域維持、ポジショニング、呼吸理学療法。
- 公認心理師・臨床心理士:本人・家族のスピリチュアルペインへの対応、グリーフケア。
これらの専門職がACP(アドバンス・ケア・プランニング/人生会議)に基づき本人の意思を共有し、定期的なカンファレンスで方針を擦り合わせることが、質の高いターミナルケアの基盤になります。
家族支援とグリーフケア|遺された人へのサポート
ターミナルケアは本人だけでなく、家族(遺族)への支援も重要な構成要素です。死別前後の家族支援はグリーフケア(Grief Care/悲嘆ケア)と呼ばれます。
死別前の家族支援
- 状態変化のこまめな共有(電話・面会時の声かけ)
- ケアへの参加促進(口腔ケアや清拭を一緒に行う)
- 休息・食事・睡眠への配慮(家族が倒れない関わり)
- 看取り直前の付き添い・宿泊への配慮
死別後のグリーフケア
大切な人を亡くした家族は、悲しみ・喪失感・罪悪感など複雑な感情を抱えます。施設や訪問看護ステーションでは、以下のような支援が行われます。
- 葬儀後の遺族訪問や手紙・電話による声かけ
- デスカンファレンス(職員によるケアの振り返り会議)への家族同席
- 遺族会・ピアサポートの紹介
- 必要に応じた専門カウンセラー・グリーフケアサポートグループへの紹介
グリーフケアは「悲しみを忘れさせる」ものではなく、悲嘆と向き合いながら新しい生活へ移行するプロセスを支えるものです。介護職員も「お疲れさまでした」「最期まで一緒にケアできてよかったです」といった声かけが、家族の心の整理に寄与します。
ターミナルケアに関するよくある質問
Q1. ターミナルケアと看取り介護はどちらが正しい呼び方ですか?
A. どちらも正しい用語ですが、使い分けがあります。「ターミナルケア」は医療を含む終末期ケア全般を指す広い概念で、「看取り介護」は介護施設で実施される生活援助中心の終末期ケアを指します。介護報酬上も「看取り介護加算」(特養・GH等)と「ターミナルケア加算」(老健・訪問看護等)で名称が分かれています。
Q2. ターミナルケアはいつから始まりますか?
A. 医学的に明確な開始時期はありませんが、複数の医師により回復が困難と判断され、余命が数週間〜数か月以内と見込まれた時点から始まるのが一般的です。本人・家族・医療者が方針について同意した段階で正式に移行します。
Q3. ターミナルケアは在宅でも受けられますか?
A. 受けられます。訪問診療・訪問看護・訪問介護を組み合わせ、24時間連絡可能な体制を整えることで在宅ターミナルケアが可能です。訪問看護のターミナルケア加算は2024年度改定で2,500単位に引き上げられ、在宅看取りを後押ししています。ただし家族の介護負担が大きいため、レスパイト入院やショートステイの併用も検討されます。
Q4. ターミナルケアと安楽死は同じですか?
A. まったく異なります。安楽死は積極的に死期を早める行為で日本では認められていません。ターミナルケアは死を早めも遅らせもせず、自然な経過の中で苦痛を和らげ、残された時間のQOLを最大化することを目的としています。
Q5. 介護職員はターミナルケアでどんな研修を受けますか?
A. 看取り介護加算・ターミナルケア加算の算定要件として、施設は職員向けに看取り研修・グリーフケア研修等を実施します。さらに専門性を高める資格として「終末期ケア専門士」「看取りケアパートナー」等の民間資格や、痰の吸引が可能になる「喀痰吸引等研修」があります。
参考文献・出典
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まとめ|ターミナルケアは終末期のQOLを支える総合ケア
ターミナルケアは、回復が困難と判断された方が最期まで尊厳を保ち穏やかに過ごせるよう、医療・看護・介護・精神面を統合的に支える総合ケアです。看取り介護(生活援助中心)・緩和ケア(苦痛緩和中心・診断時から)・ホスピスケア(症状緩和特化)とは、医療介入の有無や対象、開始時期で区別されます。介護報酬上は看取り介護加算とターミナルケア加算の2系統で評価され、2024年度改定で拡充されました。
提供場所は病院・介護施設・在宅と多様化し、地域包括ケアの観点から「住み慣れた場所での看取り」が推進されています。質の高いターミナルケアには医師・看護師・介護職員・ケアマネ・MSW・薬剤師・リハビリ職などの多職種連携と、本人の意思を尊重するACP(人生会議)が不可欠です。さらに、本人だけでなく死別前後の家族を支えるグリーフケアまで含むことが、ターミナルケアの本質といえます。
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執筆者
介護のハタラクナカマ編集部
編集部
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