ケアマネの処遇改善、41.9%の居宅が「行っていない」|厚労省委託調査で判明・大規模は62.4%が「法人方針」
介護職向け

ケアマネの処遇改善、41.9%の居宅が「行っていない」|厚労省委託調査で判明・大規模は62.4%が「法人方針」

厚労省委託の三菱総合研究所調査で、居宅介護支援事業所の41.9%がケアマネ処遇改善を「行っていない」と判明。基本報酬が引き上げられたにもかかわらず、大規模の62.4%が「法人の方針」と回答。2027年度改定議論への影響を解説。

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居宅介護支援事業所の41.9%がケアマネの処遇改善を「行っていない」と回答したことが、2026年4月16日に報じられた厚生労働省の委託調査(三菱総合研究所)で判明した。2024年度の介護報酬改定で基本報酬が引き上げられたにもかかわらず、配分が進んでいない実態が浮き彫りになった。小規模事業所では「収益を確保できない」が主因、ケアマネ5人以上の大規模事業所では62.4%が「法人の方針」と回答しており、二層構造の課題が示された。2026年6月に新設される居宅介護支援への処遇改善加算(2.1%)の効果検証と、2027年度の本改定に向けた議論の焦点となる。

目次

介護人材需給データから見るケアマネ支援の必要性

厚生労働省の第9期介護保険事業計画に基づく推計では、介護職員は2022年度の約215万人から、2026年度に約240万人、2040年度に約272万人が必要とされています。介護職員の必要数が増えるほど、サービス調整を担うケアマネジャー側の業務負担も重くなります。

年度介護職員数・必要数2022年度との差見方
2022年度約215万人基準足下の介護職員数
2026年度約240万人+約25万人第9期計画期間の終期に必要な規模
2040年度約272万人+約57万人高齢化が進む2040年度に必要な規模

2040年度までに必要とされる上積みは約57万人です。これは、介護現場の努力だけで吸収するには大きい規模で、処遇改善、採用、定着支援、業務効率化を組み合わせて進める必要があります。処遇改善やICT化の議論は、介護職員だけでなく、ケアプラン作成・連携・相談対応を支える職種の持続性とあわせて見ると実態に近づきます。

出典: 厚生労働省「第9期介護保険事業計画に基づく介護職員の必要数について」(2024年7月12日公表)。2022年度の介護職員数は厚生労働省「令和4年介護サービス施設・事業所調査」、2026年度・2040年度は市町村の第9期介護保険事業計画に基づく都道府県推計の集計です。

「基本報酬が上がったのに、なぜ自分の給料は上がらないのか」——ケアマネジャーの現場から、こうした疑問の声が上がっている。

2026年4月、厚生労働省の委託を受けた三菱総合研究所が公表した調査レポートで、居宅介護支援事業所の41.9%が2024年度介護報酬改定後に「処遇改善を行っていない」と回答していたことが明らかになった。対象となったのは全国3,000事業所で、977事業所から有効回答を得た大規模調査だ。

ケアマネジャー(介護支援専門員)は、介護職員等処遇改善加算の対象外とされてきた職種である。2024年度改定では基本報酬がすべての区分で引き上げられ、事業所の判断で処遇改善に充てられる仕組みだったが、実際には4割超が賃上げに動かなかった。

本記事では、調査で明らかになった実施率の実態、事業所規模で分かれる「できない」と「しない」の二層構造、2026年6月に施行される居宅介護支援向け処遇改善加算の効果見通し、そして2027年度介護報酬改定の議論に与える影響まで、ケアマネのキャリア視点も含めて整理する。

調査で判明した「41.9%未実施」の実態

全国3,000事業所への調査、977事業所が回答

今回の調査は、厚生労働省の老人保健健康増進等事業(通称:老健事業)の一環として、三菱総合研究所が実施した。調査は2024年10月から11月にかけて、全国の居宅介護支援事業所3,000カ所を対象に実施され、977事業所(32.9%)から有効回答を得ている。

テーマは「2024年度介護報酬改定による影響」の把握で、基本報酬引き上げが現場の処遇改善にどう反映されたかを検証する内容だ。結果は令和8年(2026年)3月に報告書としてまとめられた。

「処遇改善していない」が41.9%でトップ

改定後の処遇改善対応について、事業所は複数回答で実施状況を回答した。もっとも多かったのは「処遇改善は行っていない」で41.9%。これに「賞与・手当の引き上げ」21.9%(一次ソース報道・note解説による)などが続く。

基本報酬の引き上げ幅は、要介護1・2で「1,076単位→1,086単位」、要介護3・4・5で「1,398単位→1,411単位」(居宅介護支援費(Ⅰ)(ⅰ))など、全区分でおおよそ0.9%のプラスだった。この増収分を原資にケアマネ処遇改善を進める想定だったが、4割超の事業所が動かなかった計算になる。

特定事業所加算の算定状況も判明

同調査では、特定事業所加算の最新の算定率も示された。2024年9月末時点で、加算Ⅰ=2.5%、加算Ⅱ=27.2%、加算Ⅲ=13.4%、加算A=0.9%、算定していない=52.6%。つまり、半数超の事業所は加算すら算定しておらず、基本報酬のみに収益を依存している構造が改めて確認された。

加算ⅠからⅢを算定している事業所のほうが、ケアマネジャーの年収がやや高い傾向も確認されたと報告されている。逆にいえば、加算を取れていない事業所は収益基盤が薄く、基本報酬の上積みが処遇改善に回りにくい実態を裏付けている。

なぜ処遇改善が進まないのか|規模で分かれる「できない」と「しない」

小規模事業所は「収益を確保できない」が主因

処遇改善を行っていない理由は、事業所の規模によって異なる傾向が鮮明に表れた。小規模な事業所では「事業運営が困難になる」「処遇改善にあてられる収益を確保できない」といった、経営的な制約を理由に挙げる回答が多い。

ケアマネジャー1名のみで運営する居宅介護支援事業所の場合、月あたりの増収額は数千円〜1万円台にとどまるケースもある。人件費率が高く、家賃・システム利用料などの固定費を差し引くと、賃上げに回せる余力がそもそも乏しい構造だ。小規模事業所にとって、基本報酬の約0.9%引き上げは「給与に反映する以前に、事業継続のための緩衝材」として吸収されていると推察される。

大規模事業所は62.4%が「法人の方針」と回答

一方、ケアマネジャーが5人以上の大規模な事業所では、処遇改善を行わない理由として62.4%が「法人の方針のため」と答えている。ここでは「できない」ではなく「しない」という判断が介在する。

多くのケアマネ事業所は、特別養護老人ホームや老健、訪問介護事業所などを併設する法人の一部として運営されている。法人全体の収支を調整するなかで、居宅介護支援の増収分を他部門の補填や内部留保に回す判断がなされている可能性がある。

調査レポートでは、これを踏まえた有識者の厳しいコメントも紹介されている。「法人や事業所の経営努力に課題がある。適切に経営努力をすれば処遇改善は可能なはず」「介護施設などと比べて固定費が少ない。処遇改善が進まないのは法人の経営努力が足りないと考えざるを得ない」——こうした指摘は、今後の制度設計に一定の影響を与えるとみられる。

「基本報酬を上げても還元されない」への懸念

さらに調査に関わった検討委員会からは「基本報酬をいくら上げても適切に還元されない懸念がある。ケアマネジャーに直接配分される仕組みを検討すべき」との意見も出ている。

現行制度では、基本報酬や加算はいずれも法人単位で支給され、職員個人への配分は法人の裁量に委ねられる。介護職員等処遇改善加算には「賃金改善実績の報告」義務があるが、基本報酬の引き上げ分にはそうした担保がない。この仕組みの限界が、4割超の未実施という数字に表れた形だ。

2026年6月臨時改定で処遇改善加算が新設|しかし届かない層も

居宅介護支援に2.1%の処遇改善加算が新設

今回の調査結果は、タイミング的にも重要な意味を持つ。2026年6月1日から、居宅介護支援・訪問看護・訪問リハビリテーションを対象に、介護職員等処遇改善加算が新たに設けられるためだ。

居宅介護支援費に対する加算率は最大2.1%(所定単位数の1000分の21)で、ケアマネジャー1人あたり月額9,000円前後の原資が確保できる計算になる。ケアマネジャー、事務職員、管理栄養士など事業所内の職員が配分対象となり、基本給・手当・賞与のいずれかで賃金改善を行うことが要件だ。

「構造側」には届くが「意志側」には届かない可能性

ここで今回の調査結果と照らし合わせると、新設加算の効果は二層で大きく異なる見通しになる。

小規模事業所の「収益を確保できない」層に対しては、加算の原資は外部から直接入る形になるため、処遇改善の下支えとして機能しやすい。届出要件を満たして算定できれば、これまで自前で捻出できなかった賃上げ原資がひとまず確保される。

一方、大規模事業所の「法人の方針」層には、この加算も必ずしも届かないリスクがある。処遇改善加算には賃金改善実績の報告義務があるため、露骨な流用は難しいが、既存職員の賞与調整や、法人内の他事業所との人件費配分の工夫によって、実質的な賃上げ効果が希薄化する余地は残る。

算定要件のハードルも論点

新設加算には、職場環境等要件の公表、キャリアパス要件、ケアプランデータ連携システム加入などの算定要件が課されている。特に令和8年度の特例要件として「ケアプランデータ連携システム加入」「生産性向上推進体制加算の算定」「社会福祉連携推進法人への所属」のいずれかが求められる。

規模の小さい事業所ほど、こうした届出・要件整備の事務負担が相対的に重くなる。せっかく新設された加算が、算定率が伸び悩む結果になれば、今回の調査で示された「4割未実施」の構造は温存されかねない。厚労省は2026年夏に算定状況調査を予定しており、その結果が次の制度設計に反映される見通しだ。

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2027年度同時改定に向けた論点|「直接配分」議論の行方

医療・介護・障害福祉のトリプル改定イヤー

2027年度は、介護報酬・診療報酬・障害福祉サービス等報酬の3制度が同時改定される「トリプル改定」の年にあたる。介護給付費分科会では2025年後半から本格的な議論が始まる見込みで、今回の調査はその論拠の一つとして使われることになる。

焦点は「基本報酬の上積みを、どうすればケアマネ本人に届けられるか」という設計問題だ。今回の調査で検討委員会が指摘した「直接配分の仕組み」は、処遇改善加算ではなく、基本報酬の還元経路そのものを問い直す提言として注目される。

「法人経由」モデルの限界が露呈

これまで介護分野の処遇改善は、加算を法人に支給し、法人が職員個人に配分する「法人経由」モデルで運用されてきた。しかし今回の調査は、同モデルでは大規模法人の「意志」を動かせないケースがあることを、具体的な数字で示した。62.4%という法人方針ブロックの厚さは、制度設計者にとって想定以上だった可能性がある。

2027年度改定の議論では、ケアマネジャーへの「直接配分」を念頭に、加算の算定要件として「個人別の賃金改善額の可視化」を追加する案、基本報酬引き上げに「賃金改善報告義務」を紐付ける案などが浮上しうる。ただし、いずれも法人の裁量を制約する方向の改革であり、業界団体からの反発も予想される。

ケアマネ確保政策との連動

処遇改善の議論は、ケアマネジャーの担い手不足とも直結する。2024年度改定では、担当件数の上限引き上げ(ICT活用時に1人50件→50件/データ連携システム活用時に49件)や、主任ケアマネ要件の緩和などが実施された。しかし処遇が改善しなければ、資格取得意欲も離職防止も効果は限定的だ。

介護労働実態調査によれば、ケアマネジャーの離職率は2023年度で10.0%と、介護職全体(13.1%)よりは低いものの、高齢化が進む業界の中核人材として無視できない水準だ。2027年度改定では、処遇改善と担い手確保を一体で設計する総合政策パッケージが求められる。

ケアマネのキャリア視点|「動かない法人」から離れる判断軸

同じ資格でも、法人で年収が大きく変わる現実

今回の調査結果が示すのは、ケアマネジャーにとって「どの法人で働くか」が年収・待遇に直結する構造だ。基本報酬が同じ水準まで上がっても、それを処遇改善に充てる法人と、充てない法人がほぼ半々で存在している。

特定事業所加算Ⅰ〜Ⅲを算定している事業所のほうが、算定していない事業所よりもケアマネの年収が高い傾向も示された。加算算定にはケアマネ配置数・24時間対応・主任ケアマネ配置など一定のハードルがあるものの、算定実績の有無は法人の投資姿勢を映す鏡にもなる。

転職・キャリア判断で確認すべきポイント

ケアマネジャーが転職や異動を検討する場面では、求人票の基本給だけでなく、次のような観点を確認する価値がある。

  • 特定事業所加算(Ⅰ〜Ⅲ、A)の算定の有無と、その賃金への反映方法
  • 2024年度介護報酬改定後に基本給・手当・賞与が引き上げられたか
  • 2026年6月施行の処遇改善加算について、算定届出と賃金改善計画の提示があるか
  • ケアプランデータ連携システム、生産性向上推進体制加算など、算定要件関連への法人の対応状況

これらは面接時の質問で確認できる項目であり、「改定後にどう賃金が変わったか」を具体的に提示できる法人ほど、制度変更に敏感で処遇改善に前向きな経営姿勢を持っていると評価できる。

主任ケアマネ・特定事業所加算取得は「個人のレバー」

法人の方針が変わるのを待つだけでなく、個人側でキャリア資産を積むことも重要だ。主任介護支援専門員の取得は、特定事業所加算Ⅰ・Ⅱの算定要件であり、法人が加算を取りに行く動機づけにもなる。資格を持つケアマネが加わることで、事業所単位の収益構造そのものを変えられる余地があるからだ。

また、ケアプランデータ連携システムの活用や、医療機関との連携加算(入院時情報連携加算、通院時情報連携加算など)を積極的に取る事業所へ移ることで、年収水準を引き上げる選択肢もある。制度改定が続く今の局面では、「制度に強い法人」で働くこと自体が、個人のキャリア防衛策になりうる。

参考文献・出典

参考資料

まとめ

厚労省委託の三菱総合研究所調査(2024年10〜11月、3,000事業所対象、977事業所が有効回答)で、居宅介護支援事業所の41.9%がケアマネの処遇改善を「行っていない」ことが判明した。小規模事業所は「収益を確保できない」という経営的制約が主因、ケアマネ5人以上の大規模事業所では62.4%が「法人の方針」と回答しており、「できない」と「しない」が半々で並ぶ二層構造が浮かび上がった。

2026年6月には居宅介護支援に処遇改善加算(2.1%)が新設されるが、「法人方針」層に届くかは不透明だ。検討委員会は「基本報酬を上げてもケアマネに還元されない懸念」を指摘し、直接配分の仕組み検討を求めている。2027年度のトリプル改定では、加算の算定要件や賃金改善報告の仕組みが再設計される可能性がある。ケアマネ個人にとっては、法人の処遇改善姿勢を見極めて働く場所を選ぶことが、これまで以上に重要な判断軸になる。

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執筆者

介護のハタラクナカマ編集部

編集部

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